ガーディストベルセルク

ぱとり乙人

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候補生金刃乱、誕生

悪夢の帰り道③

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 今日の空って結構曇り空だったんだな。一雨でも来そうな気がする。
 思い返してみれば、ここ最近天気予報なんて見てもいなかったな。そんな余裕なんて一切なかったし、当然と言えば当然か。
 でももうそんな事を気にする必要もなくなるのだろう。
「へへへへ!!ザマーミロ!!」
 犯人の高笑いしながら嘲笑する声が聞こえる。
 僕の身体は大きく宙を舞って地面に着地すると共にズザァッという音を立てながら地すべりをしていった。
 撃たれた。しかも確実に額と胸部に一発ずつ。致命傷どころの騒ぎではない。
 ……間違いなく即死コースだ。
「イ、イヤアアァァァッ!?」
 女子生徒の悲鳴が木霊する。そりゃそうだろう。助けに来たはずの男がいきなり殺されたのだから。また余計なトラウマを植え付けてしまったな。
 というか、時間稼ぎにもなっていないじゃないか。本当にごめんなさい。
 でも、大変申し上げにくいが……僕を恨まないで欲しい。これでも必死に考えたつもりなんだよ。
 だってさ?いきなりポルターガイストとの戦闘だよ?しかも僕がこのガイスト使えるようになったのは最近なんだよ?
 それをさ、僕の母さんったら強引に事を進めるんだもの。そりゃ結果は目に見えていたでしょ。瞬殺ですよ、瞬殺。
 ……しかしなぁ。この子もこうやって殺されてしまうのか。よく見ると可愛い顔をしている。
 肩までかかったロングヘア―。肌も真っ白で、実に健康的に見える。うわ、大分変態的な発言だ。まぁいいか。もう死ぬ訳だしこの際変態的でも何でも有りって事でさ。
 顔を小さくてまん丸としている。ちょっとした大福餅っぽいのが、またちょっと食べたくなっちゃうというか……ね?
 お目目もくりくりじゃないか。鼻筋も綺麗。出る所はそこそこ出ているねぇ。いや、これ本当に美人じゃないか?ヤバくね?
 こんな子を助けちゃったらさ、もうあれやこれやでムフフだったのでは?
 おっと、語彙力の崩壊が始まっている。そろそろ息絶える頃か。死ぬ間際には色々と昔の記憶……走馬灯ってやつか。あれをよく見るって話だったけど、ちっとも流れてこないな?
 あれか?あの子の可愛さの方が僕の貧相な過去よりも余程重要だって事かな。
 ちなみに今何分経過しているんだろ?5分は経過したかな?
『残り発動時間2分54秒です』
 おぉ!そう言えばこの首輪って残り時間伝えてくれるんだっけ?僕だけにしか聞こえないみたいだけど。
 そうかぁ。あと3分弱。それなら……。
「って!?はい!?」
 僕は上半身だけをガバッと起き上がらせた。
「あ゛!?……は!?」
 犯人の先程の嘲笑顔も、一瞬のうちに驚愕のあまり口を大きく開けながら餌を待つ鯉のようになっている。ちょっと面白い
「……!?」
 女子生徒も死人が急に立ち上がったのが衝撃的だったのか、声にならない小さな悲鳴をあげていたような気がした。
 わちゃわちゃと手を動かしながら、僕は撃たれた箇所を入念に触ってみる。
 とりあえず穴は開いていない。傷……も無し。胸部に大きな穴は開いていたものの、それは制服のブレザーまでであり、下着までは到達していなかった。
 結論から言って、金刃医師による独自の診断結果は……無傷です。そう、ノーダメージ!
「……マジかよ……!!!!」
 臨死体験を味わうどころか、まるで何事も無かったかのようにぴんぴんしています。制服以外は。
「テ、テメー……!?なんで生きていやがる!?」
 犯人は歯ぎしりをしながら、再度僕に指鉄砲を構えてきた。連続で被弾しても無事で済むかの検証なんてする余裕はまだない!ならば!!
 僕はなるだけ素早く起き上がり、フルパワーで両脚を踏み込んだ。
 ゴシャッという爆音と共に、僕の身体は遥か上空へと舞い上がった。
「な、なんだと!?」
 更に口を大きく開ける犯人さん。それ以上開けると顎外れちゃうぞ?俄然余裕が出て来た。
 あっちの攻撃はとりあえずこちらには通用しない。であるなら、こちらとしては焦る必要は無い。
 ちょっと他の事にも頭を回す事が出来る。まずはアイツのガイストの能力も言い当ててみるか。
「あんたのガイスト!とんでもないな!空気を圧縮して、それを相手に撃っているんだろう!?違うか!?」
「なっ……!?」
 あと少しで顎が外れそうだな。これくらいで許しておいてやるか。
 そう。あくまで僕の見立てではあるが、アイツのガイスト、【空気砲弾】の能力はその名の通り圧縮した空気を対象物に撃つ事が出来るというものだろう。
 要は空気銃と呼ばれる類のそれだ。しかし僕も詳しい事は分からないが、例え空気銃であっても実弾は使用するはずなのだ。ペレット弾って名前だったっけ。
 しかし、犯人はそのような実弾を撃っている様子はなかった。つまり、だ。
 徐々に高度が下がっていき、僕は数m上の空間からスタッと難なく着地する。
「おおよそだけど、そのガイストはエクトプラズムで見えない弾を作り出して、それを空気銃の要領で撃つ。どう?僕の憶測、間違っていないかな?」
「……ク、クソ!!」
 おお!図星か!再度分かりやすい反応、誠にありがとうございます!ならば畳み掛け時でしょうか?そうでしょう!一気に行きましょう!
「どうする!?今のであんたのガイストは僕には通用しない事がわかっただろう!?もうすぐ母さんも到着する!いい加減に諦めたらどうだ!?」
 毅然とした態度をとれ、金刃乱。犯人の心を折る絶好のタイミングだ。絶対に焦りを見せるな。強者ハリボテの余裕を見せつけるんだ。一瞬でも気を緩めてみろ。
 ……次は無いぞ。そう言い聞かせた。
 犯人の男の様子は、静かな沈黙であった。表情からは何を考えているか取りづらかったが、次の行動が僕の思考を勝利へと結びつけた。
 男が両手をゆっくりと上に挙げたのだ。所謂降参のポーズととっていいものであった。
「……分かればいいんだ。そのままじっと」
「どうしてお前達はそんなに恵まれている?」
「……え?なんだって?」
 ぼそりと犯人が何かを呟いたが、何を言ったのかさっぱり聞き取れなかった。
「親が国内最強と謳われるガーディスト。姉もあの花咲絢爛高校の生徒会長……それでお前もか!?お前までそんな能力を生まれ持っているのか!?おかしいだろうが!!」
 おーっと!?早々に勝利宣言したのは取り消します!この感じは全く違うやつです!
 これはあれです!自暴自棄になっている時の無敵モードに入りかけています!
「お、おい待て!僕だってな」
「黙れよ!お前も最初から俺達みたいなガイスタードを見下して生きてきたんだろう!?『能無し共』と散々蔑んできたんだろう!?ふざけやがって!!」
 鼻ピアスは先程とは比べ物にならないくらい光り始めた。これは絶対にマズイ!
 僕は急いで女子生徒と倒れている警官を抱え、出来るだけ遠くに逃げる方法を選択した。
「こんなクソみたいな世の中!消えてなくなっちまえばいいんだよ!!そうだよな!?じゃなきゃ不公平だろうが!」
 男は両手の指を大きく広げながら、まるでピアノを演奏するかの如くに指をパキパキと鳴らしながら、照準をこちらに向けた。
「おいおい……!?もしかして!?」
 僕はその構えを見た時に最悪なビジョンを考えてしまった。コイツのガイストの発動条件。
 それは。
「へへへへ!!末端部だったらどこでも俺の空気銃に早変わりよ!喰らいな!とっておきの10連射をよ!!」
 空気を切る発射音が連続して聞こえてくる。駄目だ!両手に二人抱えてて、現状の僕のガイストの出力は大幅減している!このままフルパワーにしてしまったら二人はトマトを潰すよりも簡単にペースト状になってしまう!
 ならばなんとかして!!出来るのか!?
「……やるしかないだろう!?凝視!」
 目だけだ!まずは目だけをフルパワーにして動体視力で少しの空気の歪みを見切るしかない!!
 飛んできた空気弾は!?あぁしかと歪んで見えるね!
「……正面から6発!!」
 瞬間的に二人を宙に放り投げる。
「きゃあっ。」
「すぐキャッチするから!!ごめんね!」
 こういうフォローは大事だからちゃんと言わなきゃね!瞬時に全身フルパワーにして6発空中で身体を最小限に動かして避けきってみせた。残り4発は!?
「……後ろか!?」
 ぐるりとまさしくをしてきた4発も、身体を翻しなんとか避けきれた。
「それでこのまま!!」
 それと同時に二人をナイスキャッチ。加減をするのを忘れずに。
「きゃっ。……す、凄い……。」
「ごめんね!怖かったよね!?」
「う、ううん!私は平気……です!」
 苦笑いしながら見せる彼女の表情はとてもそうには見なかった。しかし!これで10発全部避けきった!そしてそのまま地面に着地して、二人をゆっくり降ろす。
「……あのよー。」
「!?」
 ふと顔上げた瞬間に、目の前に空気の歪みが見えた。
「3発!?なんで!?」
 10連射って言っただろ!?
「誰もそれ以上連射出来ねーなんて言ってねーだろーが!へへへへ!!」
 確かに!それはそうだな!?だけどこの距離でも!!
「避けきってみせるさ!!」
 フルパワーで首のみを動かし、2発をなんとか避けきる。でも最後の1発がどうしても避けきれない。だが!
「1発だけなら!!」
 着弾予想地点は左手上腕部。目一杯そこに集中すれば受け切れるはず!
「よし!!これで!!」
『発動から5分経過。フィジカルポイントの発動を終了します』
「え。」
 首輪の光がフッと消えて、フィジカルポイントの効果が切れると同時に。
 ドシュッ。
 今まで聞いた事のないような音を立てながら、不可視の弾丸が僕の左手を無残に貫いていった。
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