ガーディストベルセルク

ぱとり乙人

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その生徒、都落ちにつき

禁句②

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「どぅぉぉおりゃぁぁあああ!!」
 振りかざした拳を、金剛は雷坂に向かって振り下ろす。
「ふむ!ではでは拙者も!」
「もうおせぇよバァカ!!木端微塵に消し飛べ!!」
 ドガァンッという破裂音と共に、砂煙が舞い上がながら周囲へ衝撃の振動が伝わっていく一方で。
「キャハハハハッ!!そっちもバラバラしたるわァボケェ!!死に晒せぇ!!」
 怒りに狂った玉手は、両手にマシンガンを持ちながら石黒に対して乱射し続け、その周辺は土煙が舞っていた。
 しばらくして銃撃音がピタッと止んで弾切れを示唆する、カチカチッと音が聞こえてくる。
「ハァッ……ハァッ……あぁ!クソが!やってもうた!」
 両手に持っていたマシンガンをブンッと宙に投げ捨てガシャンガシャンッと無惨にも自由落下して無機質な音を奏でたのを聞くと同時に、多少の後悔があるのだろうか頭をバリバリと掻き始める。
「いや!あっちが悪いんや!ウチは別に穏便に済まそうと思てたんや!せやって!別に本気で殺すつもりじゃ!」
「何今更悔やんでやがる!コイツ等もこれくらいの覚悟があるくらい分かっていて挑発してきたんだろうが!」
「せやけど!今までに実際に試験中で命を落とすような話を、あんたは聞いた話あるんか!?少なくともウチはないで!?これからどうするつもりやねん!?」
「……知らねぇよ、そんな事ァ!今ここで言ったって何の解決にもならねぇよ!」
「大変申し上げにくいのでござるが、その心配は不要でござるよ。」
「「!?」」
 歪な口調の声が、二人の会話を遮る。砂埃が段々とおさまっていき、その声の主が正体を現す。
「あ、あり得ねぇ!!」
「なんやて!?」
 そこには顔面に拳を受けながらも、腕組みをし仁王立ちを決めてドヤ顔と言って差し支えない程の笑顔をしている雷坂の姿があった。当然の如く無傷である。
「ふぅむ。確かに今までで一番良い攻撃と言って過言ではなさそうでござる。…が、しかしぃ。拙者達よりも一つ上の先輩に、がいると風の噂で聞いた事がある故、凡そであるがそちらに比べたら格落ちと言ったところでござるか?」
「くっ!?……っらあっ!!」
 金剛は顔を青くしながらも動じる事なく、一層力を込めて雷坂を蹴る殴るの怒涛の猛攻を仕掛けてみる。
 だが、結果は無情であった。
 相手が苦悶の表情を浮かべるのでもなく、傷がつく訳もなく、極めつけは攻撃に対して微動だにしていない。
 ただただ、自身が疲労していくだけである。
「ぜぇっ!はぁっ!?ぎ、ぐぎぃ……!」
「はーっはっはっはっ!無駄でござる!貴公の【ザ・マッスル】、見た所によると確かに筋肉を自由自在に操れるのは分かるのでござるが……結局自分の筋力の限界値以上の物は出せなさそうでござるな?」
「……!」
 金剛の攻撃の勢いがピタリと止まる。
「つまりは、それ以上に筋力を大きく上げる事は不可能。要するに貴公の身体の限界がだという事。つまりはのでござろう?……一応貴公の為に言っておこう。そろそろ止めにしようではないか?」
「っっっるせぇぇえ!!」
 ハチマキの【根性】の文字が再び燃え上がり、仁王立ちする雷坂の後ろに素早く回り込むと、その首にチョークスリーパーを仕掛けた。
「へっ!打撃が効かないってのなら、作戦を変えるだけだってぇの!文字通りその息の根を止めてやらぁ!!」
「ふぅむ?ま、気が済むまでやればいいでござる。」
 その必死な金剛の様子を見て、玉手は少し震えだす。
(あ、あり得へん……!いくらアイツが単純筋肉バカとはいえ、まともにアイツのマジの攻撃を喰らってバラバラにならへんのなんておかしい!それどころか無傷!?悪い夢でも見てるんとちゃうか!?……いや待ちぃ!?ならウチの方も!?)
 玉手は内心の恐怖を顔に出さないように、先程まで土煙が舞い上がっていた場所に振り向く。
「……!……は、ははは!」
 額に冷や汗を流しつつ、安堵の笑い声を彼女は漏らす。
 そこには血塗れになりながらも、なんとか両脚で立っている石黒の姿が見えた。
 しかも頭部への被弾を最も恐れていたのか、両手をクロスさせるように顔を隠していた。
 そのせいで片腕は千切れかけていて、今にも動けば地面に落ちそうである。
「まぁそらそうやろ!P90を2丁分ぶち込んだんや!それくらいになってへんと困るわ!!」
 震え声ながらも語気を強めて、玉手は次の武器を取り出そうとする。
 すると、出て来た武器に思わず地面に叩きつける。
「って!今こんなもんでどないせぇっちゅうねん!!」
 現れたのは、なんとグランドレーキ。所謂地面の凹凸を整備する為のもの、と呼ばれるものである。
「はぁー……!そう言えばせやったな……。次や次。」
「……なるなる。ソーユーコト。」
「あん?」
 大量の血を滴らせながら、じろーっと腕の隙間から玉手を睨みつけながら石黒は呟いた。
「なんや?何を勝手に納得してんねん。」
「アンタの……なんだっけ?カラオケ・ボックス?」
「【    ・    】!!なんで唄歌わんといかんねん!アホか!」
「キャハ☆それな!……そんで、今は思い通りの武器出せる系?それとも無理無理のモームリ?」
「!」
 少しだけ余裕が出ていた玉手の表情が、再び曇りを帯び始める。
「あーね?無理ぽよってコトか♪って訳ね?しかも。出てくる武器に臨機応変にアンタが対応しているだけで、大分使い勝手悪いガイストって訳ね?りょ☆」
「……だったらなんやっちゅう話や。あんたが圧倒的不利なんは変わりないで!」
 ガイストの秘密がバレたのか少し焦りを見せつつも、状況有利を確信している玉手は再び武器をどこからともなく手元に呼び出す。
「!……なんや?今日はやけに素直やないか。いつもこうであるならええんやけどな。」
 勝利が自分に更に近づいたと思ったのか、彼女はにんまりと笑いながら手元を見つめた。
 その手には、少し湾曲した短い刀が握られていた。
「本当ならもう少しまともな銃火器が欲しかったところやけど……まぁカトラス君に頑張ってもらおうか。」
「お?それで最後?ならあーしもとっておきの奥の手見せちゃるべ☆」
「強がりはよしぃや?せっかく助かった命や。取らんでおいてやるさかい、あんま下手に動かんといてや。」
 そう言ってカトラスの鞘を抜き投げ捨てる。
「あれ?あーしなんかのアレで見た事あっけど、それって捨てていいんだっけ?なんか駄目って聞いたけど?」
「……あんた、さっきからあやふや過ぎへんか?ホンマ調子狂うで!」
 カランッとその鞘が落ちると同時に、玉手は姿勢を低くしながら一気に石黒に距離を詰めた。
 そして。
「貰ったで!ちなみにそれは巌流島の戦いや!」
 その姿勢のまま下から上に斬り上げた。
「!」
 その剣筋の先にはあったのは、文字通り皮一枚程で繋がっていた石黒の片腕であった。
 防ぐ間もなく、その腕は宙へと舞い上がる。含み笑いをしつつ、勝利をしたと思い込む。
 そう、思い込んでしまったのである。
「よっと。」
「はぁ!?」
 玉手にとっては、予想外という言葉が相応しいのであろう。その場で絶叫しながらのたうち回る様子が再生されているはずだったのだが、別段石黒は痛がる素振りも見せず、それどころか平然としながらその宙に浮いた片腕をキャッチしていたのである。
「頭おかしいんかワレ!?」
 そして、そのまま。
「教えてくれてあざー♪てな訳でこれがあーしの奥の手!せーの!」
「ちょ!待ちぃ」
 ガツンッと何やら骨と骨とがぶつかるような鈍い音が聞こえた。
 石黒はあろうことか、自分の腕を鈍器代わりにして玉手の後頭部目がけて振り下ろしたのである。
 当然ながら不意を突かれた彼女はもろにその直撃を喰らってしまい。
「っが……!」
 そのまま意識を失い、地面へと身体を預けたのであった。
「ふぅぅーっ!!ヤリラフィー!!言うて、あーししか勝たんな!」
 勝利宣言をしつつ、鈍器代わりに使った自分の手にキスをしながらその手を元の場所にくっつけるように押し当てると、ピアスが光り出して腕は元通りに再生していた。
「た、玉手……!?」
 その様子に顔をしかめたのは、未だに全力で首を締め上げている金剛である。
「ふむ?どうやらあちらはカタがついたようでござるな?……拙者達もいい加減に決着をつける時ではござらぬか?」
 尚も涼しい顔で、まるで優しく諭すかのように雷坂は語りかけた。その言葉を聞いて愕然とする。
「な、なんでこの状態で平然と喋られる!?完全に技は決まっているはずだ!!」
 一瞬でも力を緩めた時はなく、金剛の太い前腕部と上腕部でしっかりと頸動脈を抑えつけているはずなのである。脳に行くはずの血液が辿り着く訳もなく、脳が酸欠状態を起こして気絶。そうでなくともこの状態であるなら呼吸が出来ていないくらいにしっかりと技がかけられている。声が出せる訳はがない。
 それにも関わらず、なんとあろうことか相手は話しかけてきたのである。
「はーはっはっは!拙者のガイストも把握せずに、勝手に攻撃を仕掛けて自滅している方が悪いでござるよ!拙者のガイスト、どういう能力か分かったのでござるか?」
「ほ、ほざけ!俺の【ザ・マッスル】がこんな事で負け……ぎぃっ!?」
 金剛が言い返そうとしたその時である。彼の身体がぶるぶると痙攣を起こしたように震えだした。
「あ、ば、がががっ。」
「はぁ……であるからして、そろそろ止めるように提案はしたのでござるが……。まぁ、聞く耳も筋肉で出来ていたようであるから、耳も筋肉で閉じていたという訳でござるな!」
 首を絞める力など到底なく、その手を放して痙攣する身体を抑え込むように倒れ込む。
「い、いで、いでぇ!!いでぇよぉ!!」
 情けなくその場にのめり込みながら地面に涙を垂らすその男の姿には、まるで根性など感じられなかった。
「エクトオーバーでござるな。さしずめ耐え難い筋肉痛と言ったところか。どの程度でおさまるかは知らぬが、これで勝敗は決したでござるな。」
「ぎぃえあっ。」
 とても人とは思えない断末魔を空に向かって言い放ち、その根性無しは地面へと完全に身を委ねて気を失った。
「拙者のガイスト、【アイアンボディ偽りの美丈夫】にはどんな攻撃も通用しないのでござるよ。それを知らずに無闇に攻撃したところで」
「ポンコツ、ソイツもうオチてる。」
「……む?」
 激痛によって白目をむきながら倒れている金剛を見ながら、呆れた様子で深く溜息をつく。
「せっかくこれから拙者のガイストの説明をしようとしたのに……興覚めでござる。」
「別に言わんでいいっしょ。そもそもコイツ等にはまだまだが足りなかっただけ。命だけは取らない?マジで笑えなくてやばみざわ。そんなん言ってたらあーしら即死だっての。」
「しかも闘う前に自分のガイストを説明しだすとは……論外でござるな。対策も含めじっくりと闘えてしまうでござる。結果こうなってしまっているのが何よりの証拠。でござるな。」
「それな。……この様子ならあっちの二人も大丈夫っしょ。んで?コイツ等どうすんべ?」
「とりあえずバッジだけは回収するでござるか。……あとは……むぅ。」
 わざとらしく手を顎に当てながら目をつぶって雷坂が考え始める。すると同時に石黒は閃いたかのようにポンッと手を叩いた。
「そうじゃん!BからDクラスの奴等にこの結果伝えたら、戦わずにバッジゲット出来んじゃね!?あーしソーリ大臣の座狙える!?」
「ちょ!?さ、流石にそんな脅迫じみた事で点数を稼ぐのはまずいのでは……?いくら彼等が他力本願の戦略をしてきたとしても、やっていい事と悪い事が……。」
「ポンコツは頭まで硬いからだめぽよ。とりま命に連絡してっと……よし!これでおけまる!イクゾー!」
「え、えぇ……!?ま、待つでござるよ石黒氏ィ!」
 そそくさと雷坂はバッジだけを回収し、意気揚々と他クラスへ向かう石黒を追いかけてバッジ集めと言う名のカツアゲを敢行すべくその場を離れたのであった。
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