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第3章 最初で最後の国体
第160話 混成のメリット、デメリット
しおりを挟む満月「へえ…!涼真君と慎太郎君2人とも国体本戦に出れるんだ!凄いね!」
国体選考が行われた次の日
昼休みに相変わらずいつものメンバー(涼真、慎太郎、武蔵、満月、美保、春香)でお弁当。
慎太郎「とは言え…全員死にものぐるいだったし俺も必死だったからな…よく勝ち残れたと思うよ」
涼真「まあ、これからが大変だけどな。バスケは5人しか一度に試合に出られないし、今回ロースターは15人。つまり3人に1人だ。バスケには便宜上ポジションは5つあるから…同じポジションのライバル2人を蹴落とさないとスタメンにはなれないって事だ」
慎太郎「俺の場合は…新城先輩と湘洋の平井さん…」
涼真「俺は桐神の長崎さんと相模の阿部先輩だ」
春香「どっちの相手も凄い人ばっかだねぇ」
武蔵「賢も伸びてたけど…ダメだったんだな、神崎先輩も」
涼真「4校以上の選考では同じ高校からは5人までみたいだし」
美保「そんな決まりあるのね…同じ高校に強い人が6人とかいても選ばれない可能性もあるじゃない?」
慎太郎「そういう時は大体その高校の単独チームか、それに近い感じになるよ。
現に今年の京都府は、インターハイ優勝の洛阪のメンバーが大半に京都府準優勝の嵐山のエースとセンター、それとベスト4の鴉羽から1人選ばれただけらしいし」
涼真「福岡も毎年ほぼ博多第一と博多大附属大濠の2校混成ってのがお決まりだしな」
美保「へぇ…」
武蔵「絶対じゃないが…国体のメンバー構成を見るとその都道府県のパワーバランスがうっすらわかるよな」
涼真「今年の神奈川みたいに混戦だと4、5校くらいの混戦、毎年同じ高校がインターハイに出るような県なら単独チームか1、2人有望な選手を入れる『準』混成みたいなチーム、全国レベルのチームが2校ある福岡みたいな例だとその2チーム+αみたいな感じだな」
慎太郎「女子はどうなったんだ?」
満月「インターハイの時の星垓のメンバーに金沢女子から3人入っただけのほぼ単独チームだよ」
春香「じゃあ、また満月ちゃんはお留守番なんだ」
満月「う、うん…」
ズーン…
落ち込む満月。
春香「ご、ごめんそんなつもりじゃ…」
涼真「ま、来年からフォーマットが変わって少年国体は高校1年生までの出場になったし、俺達1年にとっても最初で最後の少年国体だ」
慎太郎「優勝するっきゃないでしょ?」
涼真「ああ」
美保「まだ気が早いけど2人とも…楽しそうだね」
満月「くすん…最初で最後の国体がぁ…」
満月、昼ごはんの弁当に入ってた卵焼きをはむはむしつつ悔しそう。
春香「で、組み合わせって出てるの?」
武蔵「今朝ネットに出てた」
慎太郎「マジで?」
満月「どれどれ?」
一同、武蔵の携帯を覗き込む。
慎太郎「おお!神奈川第三シード!」
武蔵「インターハイでベスト4入ったからそりゃあな」
涼真「初戦は三重か石川の勝者か」
武蔵「いやその先よく見ろよ」
一同、トーナメント表をよく見る。
慎太郎「げえ…準々決勝で福井(北陵)かよ…」
武蔵「しかも福井2位の尚志のメンバーもいるから、連携は北陵単独程ではなくてもチーム力は高いぞ」
涼真「その前の宮城だって油断できねえぞ。屋代工業と東北決勝で僅差だった明桜主体に、東北大会ベスト4の仙台学院のメンバーが入ってるらしいから」
武蔵「まあ、下馬評で見るとうちのブロックはまだマシ…左下と右下は激戦区だ」
慎太郎「確かに…福岡、千葉、長野、静岡、香川、秋田って強豪が揃ってるな左下」
涼真「右下も鳥取、東京、宮崎、新潟、愛知か…」
(京都と千葉は反対側…高松さんとも霧谷さんとも両方戦うのは今回は無理か)
満月「女子は?」
武蔵「女子は…男子と同じく第三シード、初戦は長野と岡山の勝者だな。
で、準々決勝でおそらく新潟、勝てば準決勝で大阪と岐阜の勝者だね」
美保「それってどうなの?」
涼真「今言ったとこは確かに強豪だけど同じ高校生だし、楽な相手なんていねえだろ」
慎太郎「そういう事。どうせ全員倒すんだ、初戦から京都でも関係ねえよ」
春香「いや…さすがにそれはキツすぎでしょ…」
慎太郎「う…」
美保「まったく…」
(まあ、その方がむしろこの2人は燃えそうだけど)
そして週末。
国体が刻一刻と迫る中、どのチームもベストメンバーで練習できる事は少なかった。
強豪はメンバーがアンダーカテゴリーの日本代表に招集されており、特にU-18はアジア大会が国体の2週間前に迫っていたのだ。
神奈川は髙木がなかなか合流できず、涼真や慎太郎もU-16の方に出ていた為、ケミストリーに不安を抱えていた。
どのチームも万全ではない。
白石「スタメン候補の髙木がなかなか練習できないのは痛いですね」
唐沢「髙木君なら戦術理解度も高いので動きだけは問題ないのですがね…」
国体などの混成即興チームでは、戦術理解度だけでは足りない。
パスの出し手受け手の癖やタイミング、それぞれの選手の癖やタイミング、そういったものへの慣れも必要になってくる。
普段慣れている星垓の選手同士ならいいが、他校の選手となるとその癖は掴みきれていないのが現状。
そして
-とあるスポーツ雑誌の編集部-
山下「来月はNBAのFA移籍まとめと秋の国体がメインの内容になりそうですね」
村上「おいおいU-18のアジア大会の方も忘れるなよ」
山下「あ、そうでしたね、えへへ」
村上「えへへ、じゃねえよ、ったく」
机の上には、取材に行った国体のそれぞれの部門の優勝候補についての記事がまとまりつつある。
山下「私は少年国体の試合を現地取材ですから今から楽しみです!なんと言ってもインターハイ王者の洛阪に京都府2位の嵐山のフォワードとセンター1人ずつ、それに鴉羽からクレバーな2ウェイプレイヤーのフォワード1人を加えた京都はやはり強そうです」
村上「まあ確かに…現実的な優勝候補筆頭だろうな。で、その洛阪の決勝進出を阻めそうなチームは…福岡、秋田、千葉か」
山下「でも、その3チームはベスト4までに潰しあっちゃうんですよね、消耗した状態で京都と当たらなければいけない…」
村上「ハハハッ、物は言いようだな。その見方も間違っちゃいないが、1発勝負のトーナメントなら強敵を下して勢いに乗ることもできるんだ」
山下「なるほど…どっちに転ぶかですね!」
村上「逆の決勝の山も面白いじゃないか、順当に行けば神奈川と愛知の対決だが…そう簡単には勝ち上がれんだろう」
山下「目につくだけでも宮城、福井、愛媛、東京、宮崎、新潟と揃ってますね強豪が」
村上「だが国体で面白いのはな、混成チームの強みが出るか脆さが出るか蓋を開けるまでわからんところだ。お前との今の会話で上がった優勝候補の中で単独チームは秋田、宮崎、愛媛だけ。全体でも他には香川、鳥取、石川しか単独チームはない。それ以外は全て2校以上からなる混成チームだ。特に今年は愛知が4チームからなる混成、新潟も3チーム、東京も4チーム、福岡も3チーム、大阪や神奈川なんて5チームの混成だ」
山下「つまり…個々の能力はインターハイより高くても連携面で不安を抱える強豪が多いから足元をすくわれてもおかしくないと?」
村上「そういう事だ。国体ではその辺を踏まえて取材するようにな。俺はU-18と大学のオータムリーグの取材でお前の面倒まで見きれん。中途で入った新人だがバスケやってたお陰で詳しい奴をお前につけるから2人で取材行ってこい」
山下「わ、わかりました…」
国体開幕まで、あと3週間弱。
……To be continued
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