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一章
八話 - 二
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煙管から出てゆらゆらと揺れる煙を眺める。威は煙草を吸いながら筆を持つことはしない。喫煙時は彼にとっての休憩なのだろう。いまなら話しかけても大丈夫、仕事の邪魔をするかもと気に病む必要はない。と、理解しつつも、仄羽は話題を見つけられずに指先をもてあそんだ。
「仄羽」
威に呼びかけられ、頭をあげる。毎回話しかけられるタイミングがよすぎる。そんなに顔に出ているだろうか。
手招きされて、仄羽は文机を回りこみ、威の傍に腰を下ろす。そんな仄羽を見て、威は少しだけ眉を持ちあげた。やがて小さく咽喉を鳴らして笑い、仄羽に煙を吹きかける。油断していた仄羽は咳きこみ、その様子を見て、威はさらにくつくつと笑った。
「なに、するんですか」
咳きこみつつも隙間を縫って訴えてみるが、威は何食わぬ顔で煙管を咥えた。かと思えば顎をとられて口づけられ、薄く開いた唇から煙を吹きつけられる。初めての味に仄羽はさらに咳きこんだ。煙が咽喉を通っていったのがわかる。
「おいしくない……」
思わず漏れた言葉に、威はいかにも愉快そうに大笑した。
「そう」
再び煙管を咥えた威に身構えたが、今度は仄羽から顔を逸らして煙を吐いていた。
仄羽の両親とも煙草は吸わなかったし、貫爾も貫爾の両親も吸わなかった。通ってくる患者のなかには喫煙者もいたが、当然仄羽の家である診療所は完全禁煙であったし、通院中は禁煙を命じられている場合が大半であったから、仄羽にとって煙草はあまり馴染みのあるものではないのだ。
けほけほと咳を引きずっていると、いつの間にか浮かんでいた涙を威にぬぐわれる。そのまま頬をなでられ、仄羽は身をゆだねた。やさしい視線にふわふわとした心地になる。もう一度、今度は重ねるだけの口づけをされ、ほのかな苦味が伝わってきた。いつものこの味は煙草だったのかと気づく。
「仄羽」
至近距離で呼びかけられ、びくりと体がはねた。おそれのためではなく。
「本質を見極めろ」
柔らかな手つきで前髪を耳に寄せられる。まっすぐに射抜いてくる紅い瞳を、仄羽も見つめ返した。
「ほしいんだろう、役割が」
本質、と仄羽は口のなかで繰り返す。ほしいと思っていた。〔春日〕にいるための明確な理由と、威の役に立つような役割が。瑞矢や暁が威に尽くして春嵐を滞りなく回しているように、仄羽も威の傍にいるだけではなく、自分自身でも納得できる「いなくては困る」理由と役割。
それも見抜かれていたのだな、と仄羽は頭の片隅で感嘆する。もっとも、威からすれば仄羽などわかりやすいことこのうえないのかもしれない。今日に至る何から何まで、威には図星を指されてばかりなのだから。
「人、もの、関係、対象は問わない。表面に惑わされるな。心がけていればいずれ直感になり、確信になる」
「…………。暁さんみたいに、ですか?」
暁の勘のよさはおそろしいほどだ。少なくとも仄羽は暁の勘が外れているところを見たことがない。見てもいないのに「いまはおそらく威さまの機嫌がいい」だとか、「今日は客が多そうだ」だとか、とにかく当てる。本人は理由を「なんとなく」と言うが、瑞矢も暁に「いまはやめておいたほうがいいのでは」と言われれば眉根を寄せつつもそのとおりにして、信頼しているのがわかる。
首元にするりと威の手が入りこむ。ひんやりとした指先の感触に仄羽はかすかに震え、反射的に顎を引いた。
「そのアカが、なぜ勘がいいかわかるか」
首を横に振ろうとしたが、威の手がうなじに触れているので叶わなかった。整えてひとつにくくりなおした髪を少しだけ後悔する。威の指は表面をなでるように、輪郭を改めて確認すように、自由に動いている。ぞわりとした欲がかすかに背中を駆けあがった。普段から首を晒している、という事実が、なぜだか恥ずかしくなる。
「いえ……」
耐えきれなくなり、仄羽がついに目を伏せそうになるのとほぼ同時に、威は仄羽のうなじから手をどけた。至近距離から、他人に目撃されても恥ずかしくない程度には離れる。仄羽は自分で自分のうなじに触れつつ、姿勢を正した。ちらりと覗いてみれば、動揺している仄羽とは異なり、威は嫌味なくらい平素のとおりだった。もう煙管をふかしている。
「アカはもともと、葛佐規の傾城屋は〔鹿火〕にいた陰間だ」
傾城屋とは、女性の花魁しかいない〔春日〕とは異なり、生業は同じでも男性の陰間だけを扱う店のことだ。葛佐規は名字こそ異なれど祇矩藤の一族であるから、葛佐規の営む〔鹿火〕の名も〔春日〕と並んで町民で知らない者はいない。もちろん、いくら春霞に関することは遠ざけられていた仄羽といえど名前くらいは把握している。
「朝月夜、という名の男のことを知っている?」
ふっ、と威に吐かれた煙が、空に溶けるように消えた。
「知っては、います」
話の流れからして、朝月夜が暁の源氏名なのだろう。仄羽は首を傾げて、暁の姿を脳裏に浮かべる。暁は普段、陰間であったことは微塵も感じさせないが、ふとしたときに見せるおそろしさを思った。
「実在していたんですか」
正直な感想だった。これまでの傾城屋の歴史のなかで一、二を争う人気と稼ぎを見せただとか、葛佐規に身請けされただとか、ある日忽然と姿を消しただとか、噂だけならいくらでもある。仄羽の住んでいた四区は春霞から遠いので噂が届くのは遅かったし真実味も薄く、なにより仄羽自身が幼かったので、物語のひとつのような感覚で記憶していた。
仄羽の言葉に威はおかしそうに咽喉でくつくつと笑い、灰吹きに灰を落とした。
「かつてはしていた。花魁も陰間も大概は男女どちらかの人気に偏るものだけど、朝月夜は性別年齢を問わず人気を博していた。〔春日〕を含めても圧倒的なほど、春霞一の稼ぎだった」
威は言葉を続ける。
「まあそれが笑えるほどの口上だった。触れれば恍惚、抱けば昇天、抱かれれば陶然、話せば甘美ときたものだ。本人だったあれに言えば間違いなく赤面するだろうね」
笑えるほど、の言葉どおり声をあげて威は笑い、仄羽は困って眉をハの字にする。はっきりとは思い出せないものの、確かに近い言葉を噂で耳にしたことはあるような。
「それだけの人数を満足させてきたということだ」
威の紅い視線が仄羽に戻り、仄羽は見つめ返す。
「自分の立ち位置を把握し、相手の求める言葉や行動を見つけ、求められる以上のものにして渡す。一朝一夕でできるものじゃない」
つまり勘と言いつつも、暁の積み重なった経験から出てきている結果ということだ。そう説明されれば、威や瑞矢が「勘」を疑わないのもわかる。
「仄羽はどこまでできるようになるかな?」
手の甲で頬をひとなでされて、仄羽は睫毛を震わせた。弧を描く威の瞳と唇が、挑発的に仄羽を捉えている。
おそらく暁と同じものは求められていない。仮に相似していたとしても、もうひとつ何か、暁とは違う別のものを期待されているはずだ。威が同じものをふたつと手に入れたがるとは思えなかった。
「威さまの」
「うん?」
「威さまの求める以上の、ところまで」
いくら威に認められていても、自分自身で隣にいることに対して胸を張れるようにならなければ意味がない。なにより、悔しい。
仄羽が啖呵を切れば、威はその言葉を待っていたとばかり、愉快そうに目を細めて笑った。
しかし現実問題として、どうしていったらよいのか。執務室で書類を整理しながら、仄羽はこっそりと暁を盗み見る。特別なことをしているようには見えない。手元が疎かになっていたつもりはないのに、視線が見つかってにこりと微笑まれた。仄羽は慌てて小さく頭を下げる。そういえば〔春日〕への勤務を命じに四区の家まで来たときも、背後の十三天王隊士の態度を見もせず制していたのを思い出す。
暁は表情が柔和で睫毛も長い。長身が男性であることを強調してはいるものの、男性的でありながら女性的でもあり、なるほどその容姿だけでも陰間として大層人気だっただろうことが窺える。しかし容姿のうつくしさだけで人気がとれるわけではないことは、春霞の番付を見ればすぐに知れることだ。
本来なら仄羽も留袖新造として座敷に出て場数を踏み、やがて花魁になって客をとるはずだった。想像を重ねてみる。きっと暁も瑞矢ももっと遠い存在で、威に目通り叶うことは当然なく、おそらくは七嶺ではない別の花魁につけられていた。最初のうちは桃色の髪が話題になったかもしれない。春嵐は余所からの移住者も基本差別なく受け入れ、仄羽が知るかぎりは髪や目の色、肌の色が異なっていようと扱いに差はない。御職である七嶺の虹色に輝く髪も、朝月夜の橙の髪と茶の瞳も特に聞いたことがないのが証拠であるが、いずれ収束するにせよ、それでも目立つものはやはり口端に上りやすくはある。
話を聞いたり、会話を合わせるのはそれなりに得意だ。診療所に来る患者を診たり、薬の調合をするのは父母の役目だったが、診療までの時間、患者の無聊を慰めたり、相手をするのは仄羽の役目だった。足腰の悪い患者を補助したりするのも仄羽の役目であったから、他人に触れるのも大きな抵抗はない。
ただ、そのときかぎりでも、多少なりと枕を交わしてよいと思える程度に相手を好ましく思えるかは、いまでもわからない。そういうことはいずれ貫爾とするものだと漠然と思っていたし、貫爾と別れるとも思っていなかった。花魁という仕事でなくとも、複数人と関係を持つ、ということが、仄羽にはいまいち想像ができなかった。
(たとえば、いま)
いま、この状況のままやはり借金返済は必要だと花魁にされたとして、そこに貫爾が客として来たとして。肌を重ねない初会と裏は、仄羽には貫爾を拒否することはできないだろう。会話ができないのをよいことに、姿が見られることに安堵するかもしれない。問題は馴染みとなる三回目だ。以前に〔春日〕に貫爾が乗りこんできたときと違い、正当な手段である。貫爾もきっと、仄羽に気を遣うだろう。黒い化け物にはならない。想像のなかの貫爾が仄羽の肩に手を置いて、おそるおそる顔を近づけてくる。
「仄羽」
「は、はいっ」
威の冷ややかな声が聞こえてきて、びくりと震えるとともに反射的に大声で返事をする。
「……驚かせたか?」
振り返ってみれば、威ではなく瑞矢だった。仄羽は赤面し、ばくばくと鼓動を激しくする心臓を服の上から押えた。首を激しく横に振る。
瑞矢は怪訝そうな顔をしつつもそれ以上踏みこんではこず、手元の書類を仄羽に渡した。仄羽は受けとり、なんとか落ちつこうと意識してゆっくりと呼吸をする。
「悪いが、追加のぶんだ。わかるか?」
問われて、書類を覗く。
「はい。大丈夫です」
具体的に何をするわけではなく、書類の分類を繰り返しているだけだが、そのおかげで〔春日〕の内情や花魁の姿がすぐに立ち上ってくるようになった。一七になっても振袖新造である初名がいかに特別であるのかも、いまの仄羽にはわかる。祇矩藤ではなく瑞矢に返済義務がある、という立場もほかの花魁たちとは一線を画すところであるが、それでも振袖新造は一六までを目安としつつ、大概は一五の成人で花魁になる例が多いことを鑑みると、相当遅い、と言わざるをえない。
業務を再開しながら、先ほどの想像の続きを試みたがうまくいかない。「もしも」の可能性は考えるだけ無駄である、あるいはそんな想像はしなくてよいと威から言い渡されているようで、仄羽は小さく笑った。確かに、意味はない。仮に座敷に出て客をとる日がきたとしても、きっと貫爾はもう仄羽を指名しに来たりはしないだろう。
(未練なのかな)
少なくとも、考えているなかでは貫爾は黒い化け物に変化したりしない。引き裂かれる、あるいは引き裂くようにしてしまった別れを、もう一度きれいなものにして上塗りしたいのだろうか。
しかしそんな日はこない。威の傍にいると決めたかぎりは、威に自身を捧げ、もらい受けたかぎりは、もう貫爾との再びの別れの日はこない。仄羽は棚に書類を並べていく。どろりとしたものが溢れかけ、静かに抑えた。
この、「もしもそのまま花魁になっていたら」の妄想が、すでに何度目かだ。胸のうちに広がる感情や感想は毎回異なる。もはや自分で不安を煽ってしまうことも、貫爾はもはや指名しないだろうことを嘆くこともない。まさに妄想、実りのないこと、これからおそらくはこないであろう未来であると無意識に理解している。
威に言われた言葉をもう一度思い出してみる。本質を見極めろ、と彼は言った。人、もの、関係。本質とは、そもそも何なのだろうか。たとえば、そう、たとえばであるけれど、昼間設楽を見たときのなんとなくいやな感じ、この「なんとなく」を言語化すればよいのだろうか。しかし相手に勝手な烙印を押すことにならないだろうか。
ううん、と小さな唸り声が思わず口をついた。わからない。いまはとにかく、ひとつずつ〔春日〕内のことを把握していくしかない。
そして、貫爾のことも。
形や大きさ、姿を変えて、まだ仄羽のなかに貫爾への想いがくすぶっている。感情は自分で消化するものだ、と威は言った。
「女」
執務室の扉が勢いよく開くとともに、高めの声が入ってきた。鶫、と瑞矢と暁の鋭い声が飛ぶ。この部屋に女は仄羽ひとりしかいない。
子どもとはいえ、鶫と仄羽の歳の差はたった三つだ。高圧的な言動を受けて、仄羽の指先が小さくはねる。
「女、付き合え」
瑞矢と暁の叱声など気にも留めていない様子で、青髪の少年が続ける。仄羽はともすれば頷きそうになるのをぐっと堪え、視線を受けながら空を見つめた。本質。いま仄羽が知っている鶫の情報は、威のお気に入りであること、一四歳、低身長と声変わりがまだなことを気にしている、担当は外交、うつくしい顔をしているが女顔であることを気にしている、とにかく威が特別らしい、以上だ。
まず威が最初に気に入ったのは、間違いなく髪の色だろう。瞳は大半の春嵐の町民と同じく黒々としているが、髪は青い。次に気に入るとしたらどこだろうか。どうやら色が違えばいいというわけではないと七嶺で実証されているし、容姿の美醜が関係ないことも、七嶺と、かなしいかな、十人並みの仄羽で実証されている。
瑞矢が鶫に何か言おうとするのを、暁が制するのが視界の端に見えた。暁には考えがばれたらしい。制された瑞矢もすぐに察して、黙って筆をとった。
熟考の末、仄羽は書類整理を再開する。絶対は威さまである、と暁は言い、その威さまは鶫の顔色を窺うな、と言った。外交を任されているということは、おそらく交渉に長けているということだ。小柄で声変わりのしていない、春嵐でなくとも「子ども」と思われそうな鶫は、威の信頼を受け、町の外では誰が相手でも対等に話をしている。
それでは、口で勝つのは難しい。何か考えなければ。何か、せめて鶫からの見下しを対等にまで引き上げなければ。
「無視するな」
ぐい、と腕を引っ張られ、仄羽は鶫を見つめる。大きな双眸がまっすぐにこちらをねめつけていた。
気づけば口角を持ちあげていた。目を細めて、穏やかで柔和な表情を心がけ鶫に向ける。
「狄塚仄羽です、鶫ちゃん」
一音一音ゆったりと伝えれば、鶫は仄羽の腕を掴んだまま瞳を見開き、やがて耳まで紅潮させるとともにわなわなと震えはじめた。釘を刺すつもりの言葉を噛み砕いたりすることなくまっすぐに受けとったらしい鶫の顔には、屈辱の二文字が浮かんでいた。
勢いよく腕を離され、仄羽は反動で足を引っかけて床にころげる。鶫、という瑞矢の叱声と、仄羽ちゃん、と仄羽を案じる暁の声が同時に響いた。
「う、うるさいっ」
感情に任せた捨て科白を置き土産に、鶫は入ってきたときと同じく執務室の扉を必要以上の力をもって開け、走り去っていった。
ばたばたとした足音が遠ざかっていく。
掴まれ突き飛ばされた腕よりも、とっさに床についた手のひらのほうが痛い。仄羽は体を起こしつつ、両手をすり合わせる。
「大丈夫っすか?」
暁に言われ、大丈夫です、と笑みを返す。暁は仄羽に手を伸ばそうとしたが、ゆるりとひっこめた。仄羽は暁の動作を見ながら、そのほうがありがたい、と思った。
立ちあがって全身を確認する。特に怪我はなさそうだ。衿を正して、仄羽はふうと息を吐く。
「お見事でした」
いつもよりもやや深く笑んだ暁に言われ、仄羽は含羞の色を浮かべて小さく頭を下げた。
まだ取りくみはじめたばかりといえど、少しは威の求めるものに近づいただろうか。あるいは、求められているものはこれで間違っていないだろうか。
「あの、でも、大丈夫でしょうか。鶫……」
ちゃん、と続けてよいものか、仄羽がもごもごと言い淀んでいると、開け放されたままの扉を閉めながら瑞矢が言った。
「放っておけ。普段から我儘放題だからな。灸を据えるくらいで問題ない」
「気になるなら追いかけます? 場所ならだいたい見当つきますけど」
あまりよい別れ方はしていない。仄羽は暁の言葉に甘えてあとを追うことにした。
「鈴のところじゃないのか」
「瑞矢さんは自分の落ち度でへこんでるとき意中の相手のところにいくんすか?」
へらへらとする暁を瑞矢はじろりと睨み、自席に戻った。仄羽は候補に挙げられた場所をメモしていく。
いまの会話から察するに、どうやら鶫は鈴太夫と特別な仲のようだ。端々にこぼれている情報をひとつずつつまみあげる。鈴太夫といえば初名の「あね」であり、〔春日〕では七嶺に次ぐ花魁である。花魁は借金を完済するか、馴染みに身請けしてもらうか、どちらかと思っていたが、なるほど同じ〔春日〕内で接触があれば、恋仲になってもおかしくはない。
以前には威が暁と七嶺のことを揶揄していた。ふたりはどんな関係なのだろうか。赤くなっていた暁の頬は冷やしたのかもういつもどおり、何も変わらない。仲が、悪いのだろうか。
「じゃあ、ちょっと、いってきます」
「うん。いってらっしゃい」
ひとまずは鶫だ。仄羽が執務室を出ようとすると暁に呼びとめられ、振り返る。
「仄羽ちゃん。態度は貫き通さないと、ただの嫌味っすよ」
これはいま、助言をくれている。
気づいた仄羽は、暁に頭を下げて、教えてもらった場所に急いだ。
「仄羽」
威に呼びかけられ、頭をあげる。毎回話しかけられるタイミングがよすぎる。そんなに顔に出ているだろうか。
手招きされて、仄羽は文机を回りこみ、威の傍に腰を下ろす。そんな仄羽を見て、威は少しだけ眉を持ちあげた。やがて小さく咽喉を鳴らして笑い、仄羽に煙を吹きかける。油断していた仄羽は咳きこみ、その様子を見て、威はさらにくつくつと笑った。
「なに、するんですか」
咳きこみつつも隙間を縫って訴えてみるが、威は何食わぬ顔で煙管を咥えた。かと思えば顎をとられて口づけられ、薄く開いた唇から煙を吹きつけられる。初めての味に仄羽はさらに咳きこんだ。煙が咽喉を通っていったのがわかる。
「おいしくない……」
思わず漏れた言葉に、威はいかにも愉快そうに大笑した。
「そう」
再び煙管を咥えた威に身構えたが、今度は仄羽から顔を逸らして煙を吐いていた。
仄羽の両親とも煙草は吸わなかったし、貫爾も貫爾の両親も吸わなかった。通ってくる患者のなかには喫煙者もいたが、当然仄羽の家である診療所は完全禁煙であったし、通院中は禁煙を命じられている場合が大半であったから、仄羽にとって煙草はあまり馴染みのあるものではないのだ。
けほけほと咳を引きずっていると、いつの間にか浮かんでいた涙を威にぬぐわれる。そのまま頬をなでられ、仄羽は身をゆだねた。やさしい視線にふわふわとした心地になる。もう一度、今度は重ねるだけの口づけをされ、ほのかな苦味が伝わってきた。いつものこの味は煙草だったのかと気づく。
「仄羽」
至近距離で呼びかけられ、びくりと体がはねた。おそれのためではなく。
「本質を見極めろ」
柔らかな手つきで前髪を耳に寄せられる。まっすぐに射抜いてくる紅い瞳を、仄羽も見つめ返した。
「ほしいんだろう、役割が」
本質、と仄羽は口のなかで繰り返す。ほしいと思っていた。〔春日〕にいるための明確な理由と、威の役に立つような役割が。瑞矢や暁が威に尽くして春嵐を滞りなく回しているように、仄羽も威の傍にいるだけではなく、自分自身でも納得できる「いなくては困る」理由と役割。
それも見抜かれていたのだな、と仄羽は頭の片隅で感嘆する。もっとも、威からすれば仄羽などわかりやすいことこのうえないのかもしれない。今日に至る何から何まで、威には図星を指されてばかりなのだから。
「人、もの、関係、対象は問わない。表面に惑わされるな。心がけていればいずれ直感になり、確信になる」
「…………。暁さんみたいに、ですか?」
暁の勘のよさはおそろしいほどだ。少なくとも仄羽は暁の勘が外れているところを見たことがない。見てもいないのに「いまはおそらく威さまの機嫌がいい」だとか、「今日は客が多そうだ」だとか、とにかく当てる。本人は理由を「なんとなく」と言うが、瑞矢も暁に「いまはやめておいたほうがいいのでは」と言われれば眉根を寄せつつもそのとおりにして、信頼しているのがわかる。
首元にするりと威の手が入りこむ。ひんやりとした指先の感触に仄羽はかすかに震え、反射的に顎を引いた。
「そのアカが、なぜ勘がいいかわかるか」
首を横に振ろうとしたが、威の手がうなじに触れているので叶わなかった。整えてひとつにくくりなおした髪を少しだけ後悔する。威の指は表面をなでるように、輪郭を改めて確認すように、自由に動いている。ぞわりとした欲がかすかに背中を駆けあがった。普段から首を晒している、という事実が、なぜだか恥ずかしくなる。
「いえ……」
耐えきれなくなり、仄羽がついに目を伏せそうになるのとほぼ同時に、威は仄羽のうなじから手をどけた。至近距離から、他人に目撃されても恥ずかしくない程度には離れる。仄羽は自分で自分のうなじに触れつつ、姿勢を正した。ちらりと覗いてみれば、動揺している仄羽とは異なり、威は嫌味なくらい平素のとおりだった。もう煙管をふかしている。
「アカはもともと、葛佐規の傾城屋は〔鹿火〕にいた陰間だ」
傾城屋とは、女性の花魁しかいない〔春日〕とは異なり、生業は同じでも男性の陰間だけを扱う店のことだ。葛佐規は名字こそ異なれど祇矩藤の一族であるから、葛佐規の営む〔鹿火〕の名も〔春日〕と並んで町民で知らない者はいない。もちろん、いくら春霞に関することは遠ざけられていた仄羽といえど名前くらいは把握している。
「朝月夜、という名の男のことを知っている?」
ふっ、と威に吐かれた煙が、空に溶けるように消えた。
「知っては、います」
話の流れからして、朝月夜が暁の源氏名なのだろう。仄羽は首を傾げて、暁の姿を脳裏に浮かべる。暁は普段、陰間であったことは微塵も感じさせないが、ふとしたときに見せるおそろしさを思った。
「実在していたんですか」
正直な感想だった。これまでの傾城屋の歴史のなかで一、二を争う人気と稼ぎを見せただとか、葛佐規に身請けされただとか、ある日忽然と姿を消しただとか、噂だけならいくらでもある。仄羽の住んでいた四区は春霞から遠いので噂が届くのは遅かったし真実味も薄く、なにより仄羽自身が幼かったので、物語のひとつのような感覚で記憶していた。
仄羽の言葉に威はおかしそうに咽喉でくつくつと笑い、灰吹きに灰を落とした。
「かつてはしていた。花魁も陰間も大概は男女どちらかの人気に偏るものだけど、朝月夜は性別年齢を問わず人気を博していた。〔春日〕を含めても圧倒的なほど、春霞一の稼ぎだった」
威は言葉を続ける。
「まあそれが笑えるほどの口上だった。触れれば恍惚、抱けば昇天、抱かれれば陶然、話せば甘美ときたものだ。本人だったあれに言えば間違いなく赤面するだろうね」
笑えるほど、の言葉どおり声をあげて威は笑い、仄羽は困って眉をハの字にする。はっきりとは思い出せないものの、確かに近い言葉を噂で耳にしたことはあるような。
「それだけの人数を満足させてきたということだ」
威の紅い視線が仄羽に戻り、仄羽は見つめ返す。
「自分の立ち位置を把握し、相手の求める言葉や行動を見つけ、求められる以上のものにして渡す。一朝一夕でできるものじゃない」
つまり勘と言いつつも、暁の積み重なった経験から出てきている結果ということだ。そう説明されれば、威や瑞矢が「勘」を疑わないのもわかる。
「仄羽はどこまでできるようになるかな?」
手の甲で頬をひとなでされて、仄羽は睫毛を震わせた。弧を描く威の瞳と唇が、挑発的に仄羽を捉えている。
おそらく暁と同じものは求められていない。仮に相似していたとしても、もうひとつ何か、暁とは違う別のものを期待されているはずだ。威が同じものをふたつと手に入れたがるとは思えなかった。
「威さまの」
「うん?」
「威さまの求める以上の、ところまで」
いくら威に認められていても、自分自身で隣にいることに対して胸を張れるようにならなければ意味がない。なにより、悔しい。
仄羽が啖呵を切れば、威はその言葉を待っていたとばかり、愉快そうに目を細めて笑った。
しかし現実問題として、どうしていったらよいのか。執務室で書類を整理しながら、仄羽はこっそりと暁を盗み見る。特別なことをしているようには見えない。手元が疎かになっていたつもりはないのに、視線が見つかってにこりと微笑まれた。仄羽は慌てて小さく頭を下げる。そういえば〔春日〕への勤務を命じに四区の家まで来たときも、背後の十三天王隊士の態度を見もせず制していたのを思い出す。
暁は表情が柔和で睫毛も長い。長身が男性であることを強調してはいるものの、男性的でありながら女性的でもあり、なるほどその容姿だけでも陰間として大層人気だっただろうことが窺える。しかし容姿のうつくしさだけで人気がとれるわけではないことは、春霞の番付を見ればすぐに知れることだ。
本来なら仄羽も留袖新造として座敷に出て場数を踏み、やがて花魁になって客をとるはずだった。想像を重ねてみる。きっと暁も瑞矢ももっと遠い存在で、威に目通り叶うことは当然なく、おそらくは七嶺ではない別の花魁につけられていた。最初のうちは桃色の髪が話題になったかもしれない。春嵐は余所からの移住者も基本差別なく受け入れ、仄羽が知るかぎりは髪や目の色、肌の色が異なっていようと扱いに差はない。御職である七嶺の虹色に輝く髪も、朝月夜の橙の髪と茶の瞳も特に聞いたことがないのが証拠であるが、いずれ収束するにせよ、それでも目立つものはやはり口端に上りやすくはある。
話を聞いたり、会話を合わせるのはそれなりに得意だ。診療所に来る患者を診たり、薬の調合をするのは父母の役目だったが、診療までの時間、患者の無聊を慰めたり、相手をするのは仄羽の役目だった。足腰の悪い患者を補助したりするのも仄羽の役目であったから、他人に触れるのも大きな抵抗はない。
ただ、そのときかぎりでも、多少なりと枕を交わしてよいと思える程度に相手を好ましく思えるかは、いまでもわからない。そういうことはいずれ貫爾とするものだと漠然と思っていたし、貫爾と別れるとも思っていなかった。花魁という仕事でなくとも、複数人と関係を持つ、ということが、仄羽にはいまいち想像ができなかった。
(たとえば、いま)
いま、この状況のままやはり借金返済は必要だと花魁にされたとして、そこに貫爾が客として来たとして。肌を重ねない初会と裏は、仄羽には貫爾を拒否することはできないだろう。会話ができないのをよいことに、姿が見られることに安堵するかもしれない。問題は馴染みとなる三回目だ。以前に〔春日〕に貫爾が乗りこんできたときと違い、正当な手段である。貫爾もきっと、仄羽に気を遣うだろう。黒い化け物にはならない。想像のなかの貫爾が仄羽の肩に手を置いて、おそるおそる顔を近づけてくる。
「仄羽」
「は、はいっ」
威の冷ややかな声が聞こえてきて、びくりと震えるとともに反射的に大声で返事をする。
「……驚かせたか?」
振り返ってみれば、威ではなく瑞矢だった。仄羽は赤面し、ばくばくと鼓動を激しくする心臓を服の上から押えた。首を激しく横に振る。
瑞矢は怪訝そうな顔をしつつもそれ以上踏みこんではこず、手元の書類を仄羽に渡した。仄羽は受けとり、なんとか落ちつこうと意識してゆっくりと呼吸をする。
「悪いが、追加のぶんだ。わかるか?」
問われて、書類を覗く。
「はい。大丈夫です」
具体的に何をするわけではなく、書類の分類を繰り返しているだけだが、そのおかげで〔春日〕の内情や花魁の姿がすぐに立ち上ってくるようになった。一七になっても振袖新造である初名がいかに特別であるのかも、いまの仄羽にはわかる。祇矩藤ではなく瑞矢に返済義務がある、という立場もほかの花魁たちとは一線を画すところであるが、それでも振袖新造は一六までを目安としつつ、大概は一五の成人で花魁になる例が多いことを鑑みると、相当遅い、と言わざるをえない。
業務を再開しながら、先ほどの想像の続きを試みたがうまくいかない。「もしも」の可能性は考えるだけ無駄である、あるいはそんな想像はしなくてよいと威から言い渡されているようで、仄羽は小さく笑った。確かに、意味はない。仮に座敷に出て客をとる日がきたとしても、きっと貫爾はもう仄羽を指名しに来たりはしないだろう。
(未練なのかな)
少なくとも、考えているなかでは貫爾は黒い化け物に変化したりしない。引き裂かれる、あるいは引き裂くようにしてしまった別れを、もう一度きれいなものにして上塗りしたいのだろうか。
しかしそんな日はこない。威の傍にいると決めたかぎりは、威に自身を捧げ、もらい受けたかぎりは、もう貫爾との再びの別れの日はこない。仄羽は棚に書類を並べていく。どろりとしたものが溢れかけ、静かに抑えた。
この、「もしもそのまま花魁になっていたら」の妄想が、すでに何度目かだ。胸のうちに広がる感情や感想は毎回異なる。もはや自分で不安を煽ってしまうことも、貫爾はもはや指名しないだろうことを嘆くこともない。まさに妄想、実りのないこと、これからおそらくはこないであろう未来であると無意識に理解している。
威に言われた言葉をもう一度思い出してみる。本質を見極めろ、と彼は言った。人、もの、関係。本質とは、そもそも何なのだろうか。たとえば、そう、たとえばであるけれど、昼間設楽を見たときのなんとなくいやな感じ、この「なんとなく」を言語化すればよいのだろうか。しかし相手に勝手な烙印を押すことにならないだろうか。
ううん、と小さな唸り声が思わず口をついた。わからない。いまはとにかく、ひとつずつ〔春日〕内のことを把握していくしかない。
そして、貫爾のことも。
形や大きさ、姿を変えて、まだ仄羽のなかに貫爾への想いがくすぶっている。感情は自分で消化するものだ、と威は言った。
「女」
執務室の扉が勢いよく開くとともに、高めの声が入ってきた。鶫、と瑞矢と暁の鋭い声が飛ぶ。この部屋に女は仄羽ひとりしかいない。
子どもとはいえ、鶫と仄羽の歳の差はたった三つだ。高圧的な言動を受けて、仄羽の指先が小さくはねる。
「女、付き合え」
瑞矢と暁の叱声など気にも留めていない様子で、青髪の少年が続ける。仄羽はともすれば頷きそうになるのをぐっと堪え、視線を受けながら空を見つめた。本質。いま仄羽が知っている鶫の情報は、威のお気に入りであること、一四歳、低身長と声変わりがまだなことを気にしている、担当は外交、うつくしい顔をしているが女顔であることを気にしている、とにかく威が特別らしい、以上だ。
まず威が最初に気に入ったのは、間違いなく髪の色だろう。瞳は大半の春嵐の町民と同じく黒々としているが、髪は青い。次に気に入るとしたらどこだろうか。どうやら色が違えばいいというわけではないと七嶺で実証されているし、容姿の美醜が関係ないことも、七嶺と、かなしいかな、十人並みの仄羽で実証されている。
瑞矢が鶫に何か言おうとするのを、暁が制するのが視界の端に見えた。暁には考えがばれたらしい。制された瑞矢もすぐに察して、黙って筆をとった。
熟考の末、仄羽は書類整理を再開する。絶対は威さまである、と暁は言い、その威さまは鶫の顔色を窺うな、と言った。外交を任されているということは、おそらく交渉に長けているということだ。小柄で声変わりのしていない、春嵐でなくとも「子ども」と思われそうな鶫は、威の信頼を受け、町の外では誰が相手でも対等に話をしている。
それでは、口で勝つのは難しい。何か考えなければ。何か、せめて鶫からの見下しを対等にまで引き上げなければ。
「無視するな」
ぐい、と腕を引っ張られ、仄羽は鶫を見つめる。大きな双眸がまっすぐにこちらをねめつけていた。
気づけば口角を持ちあげていた。目を細めて、穏やかで柔和な表情を心がけ鶫に向ける。
「狄塚仄羽です、鶫ちゃん」
一音一音ゆったりと伝えれば、鶫は仄羽の腕を掴んだまま瞳を見開き、やがて耳まで紅潮させるとともにわなわなと震えはじめた。釘を刺すつもりの言葉を噛み砕いたりすることなくまっすぐに受けとったらしい鶫の顔には、屈辱の二文字が浮かんでいた。
勢いよく腕を離され、仄羽は反動で足を引っかけて床にころげる。鶫、という瑞矢の叱声と、仄羽ちゃん、と仄羽を案じる暁の声が同時に響いた。
「う、うるさいっ」
感情に任せた捨て科白を置き土産に、鶫は入ってきたときと同じく執務室の扉を必要以上の力をもって開け、走り去っていった。
ばたばたとした足音が遠ざかっていく。
掴まれ突き飛ばされた腕よりも、とっさに床についた手のひらのほうが痛い。仄羽は体を起こしつつ、両手をすり合わせる。
「大丈夫っすか?」
暁に言われ、大丈夫です、と笑みを返す。暁は仄羽に手を伸ばそうとしたが、ゆるりとひっこめた。仄羽は暁の動作を見ながら、そのほうがありがたい、と思った。
立ちあがって全身を確認する。特に怪我はなさそうだ。衿を正して、仄羽はふうと息を吐く。
「お見事でした」
いつもよりもやや深く笑んだ暁に言われ、仄羽は含羞の色を浮かべて小さく頭を下げた。
まだ取りくみはじめたばかりといえど、少しは威の求めるものに近づいただろうか。あるいは、求められているものはこれで間違っていないだろうか。
「あの、でも、大丈夫でしょうか。鶫……」
ちゃん、と続けてよいものか、仄羽がもごもごと言い淀んでいると、開け放されたままの扉を閉めながら瑞矢が言った。
「放っておけ。普段から我儘放題だからな。灸を据えるくらいで問題ない」
「気になるなら追いかけます? 場所ならだいたい見当つきますけど」
あまりよい別れ方はしていない。仄羽は暁の言葉に甘えてあとを追うことにした。
「鈴のところじゃないのか」
「瑞矢さんは自分の落ち度でへこんでるとき意中の相手のところにいくんすか?」
へらへらとする暁を瑞矢はじろりと睨み、自席に戻った。仄羽は候補に挙げられた場所をメモしていく。
いまの会話から察するに、どうやら鶫は鈴太夫と特別な仲のようだ。端々にこぼれている情報をひとつずつつまみあげる。鈴太夫といえば初名の「あね」であり、〔春日〕では七嶺に次ぐ花魁である。花魁は借金を完済するか、馴染みに身請けしてもらうか、どちらかと思っていたが、なるほど同じ〔春日〕内で接触があれば、恋仲になってもおかしくはない。
以前には威が暁と七嶺のことを揶揄していた。ふたりはどんな関係なのだろうか。赤くなっていた暁の頬は冷やしたのかもういつもどおり、何も変わらない。仲が、悪いのだろうか。
「じゃあ、ちょっと、いってきます」
「うん。いってらっしゃい」
ひとまずは鶫だ。仄羽が執務室を出ようとすると暁に呼びとめられ、振り返る。
「仄羽ちゃん。態度は貫き通さないと、ただの嫌味っすよ」
これはいま、助言をくれている。
気づいた仄羽は、暁に頭を下げて、教えてもらった場所に急いだ。
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