料理人がいく!

八神

文字の大きさ
7 / 113

7

しおりを挟む
「?わざわざ分けているのか?」

「魔物達の分は皿から溢れない程度にトロみをつけないといけないから」


そんな行動を見た青年の疑問に彼女は液体を入れてかき混ぜながら答えた。


「よし終わりっと…コレ、持って行って」

「…俺がか?」


大皿に大量のドロドロした料理を盛りながら彼女が指示するとさっきの事を思い出したのか青年はたじろいだ。


「襲われたくないなら、害が無い事を証明しないといけないだろ?」

「…それは、そうだが…いずれ退治する魔物に餌付けとは…」


青年はブツブツ言いながらもドアを開けてテーブルの上に置いている大皿を二枚両手に持ち外に出る。


そして慌てて戻って来たかと思えばテーブルの上に置かれてる大皿を見て、口角をヒクヒクさせるもまた外に持って行った。


「…ふう…寿命が縮む思いだ…」

「まあ度胸が鍛えられる良い経験じゃん、はい」


ドアを閉めて凭れ掛かり息を吐いた青年に彼女は適当に声をかけてテーブルに皿を置く。


「…ほお、あまり見た事のない料理だな…」

「テーリィって言う煮込み料理だよ、私の居た所ではカレーって言ってたけどね」

「テーリィか……っ!?美味い!ちょっと辛いが、ソレがまた…!」

「白米と一緒に食べたら美味しいんだけど…ペイをまだ精米?してないから今回はナン…いやミジで」


こうやって乗せて食べるんだー、と彼女はカレーをスプーンで掬ってナンに乗せて食べる。


「…!美味い!」


彼女と同じやり方で食べて驚いた青年はあっという間に食べ終わった。


「アレにあと一人分ぐらいは残ってるよ」

「本当か?ありがたくいただこう!」


まだ半分も残ってる料理を食べながら彼女は柄の付いた鍋を指差す。


「っと…そろそろかな…」


まだ皿に料理が半分も残ってるのに彼女は立ち上がり手袋をして大きな鍋を持ち上げて外に出る。


「…やっぱり」


空になった大皿をペロペロ舐めてる魔物達を見て彼女は呟き、大皿の近くに大きな鍋を下ろした。


そして大きな鍋の中のお玉を取って残ってる中身を大皿に盛る。


「…まああれだけじゃ行き渡らないよなー」


彼女はズルズルと大きな鍋を引きずって他の3つの大皿にも均等に盛っていく。


「よし、洗浄スキル『浄化』」


土で汚れた大きな鍋とオタマと手袋をスキルを使って綺麗にし、家の中に戻った。


「?どこに行ってたんだ?」


シンクで皿を洗っている青年が戻ってきた彼女の方を向いて聞く。


「足りないだろうと思ってたから補充」


大きな鍋をテーブルの上に置いた彼女は食事を再開する。


「…それにしても困ったな…こんな美味しい料理を食べたとあっては…魔物達はこの山から出ていかないだろう…」


青年は自分が使った皿と鍋を律儀に洗い終わった後に拭きながら呟いた。


「ちょうど良いじゃん、この山から出ていかないって事は他の街を襲わないって事だろ?」


ご飯は食べれるんだから、わざわざ人を襲う理由も無いワケだし…と彼女は料理を食べながら言う。


「!?そうか…!確かにそうだ!魔物にとっては住みやすいこの山から出る必要は無いハズだ!」

「あんた達が魔物を刺激するとか余計な事をしなけりゃね…ごちそうさん」


青年の喜んだような発言に彼女は皮肉で返し手を合わせる。


「洗浄スキル『浄化』」


何かを言い返そうとするも何も言い返せない青年を無視して彼女はスキルを使い皿とスプーンを綺麗にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

処理中です...