17 / 113
17
しおりを挟む
「どこかの小国にある剣道とかいう剣術の初歩的な技術を学ぶのと同じと言えるか…」
「剣道?…そういや日本に合気道とか柔道とか剣道とかそういったスポーツがあったな」
男の説明を聞き彼女は生地を踏み踏みしながら考えてちょっと納得する。
「俺が読んでるこの魔導書は導くという字で、魔術の更に上である魔法を学び身に付けるための書だ」
「魔法ねぇ…スポーツの柔道技と実戦で相手を破壊するための柔術…の違いみたいなもんか」
彼女は自分なりに分かりやすい例えに変換して納得した。
「で、なんでその難しい方の魔導書とやらを読んでんの?魔道の方が簡単なんしょ?」
「難しい分威力が桁違いだからな…だから俺は魔術を捨てて魔法に特化する事にしたのさ」
「ふーん…まあ読むだけで身に付くってのは楽で良いねぇ」
料理の指南書も読むだけで技術が身に付けば良いのにな、とバカにしたように笑う。
「…魔導の道を進む人以外の世の中のほとんどの人が勘違いしているが…魔道書を読むだけでほぼ使えるようになる魔術と違い、魔法というモノは魔導書を読むだけでは身に付かない」
男は少し怒ったように彼女の発言を否定する。
「まあだろうね」
彼女は軽いノリで男の発言に賛同した。
「…は?」
まさか彼女が理解するとは思ってなかったのか男は間抜けな声を出す。
「料理にしろ、剣や槍、弓や魔法にしろ、技術が必要なのは努力して磨かないと身に付かないのは一緒だろう?」
天才も凡人も努力しないと技術は身に付かねぇよ…と言って彼女は一旦ボウルから下りる。
「…その通りだ」
彼女の意見に男は意外そうに呟く。
「でも魔道書ってのが読むだけで魔術を身に付ける事を出来るのなら…まあ勘違いされても仕方ない」
魔道書と魔導書の違いなんて専門外の人には分からんし…と彼女は生地をひっくり返してビニールを敷いてからまた踏み始めた。
「っと…あんた、野菜と魚介と肉類どれがいい?」
彼女は生地を踏みながら思い出したように、何かを言おうとして口を噤む男に聞く。
「…そうだな、魚介が美味そうだから魚介で」
「んじゃまあ…魚介スープか」
考え込むように腕を組んで生地を踏む彼女が何かを決めたのか、踏むのを止めて冷蔵庫を開ける。
「おっ、スープ用のはまだ残ってるな…刺身を炙って具材にするのも良いかな?」
昼の料理の事を考えながらブツブツ呟いて大きめの鍋に水を溜め始めた。
「…昆布とかつお節と魚の骨で出汁をとって…そしたら麺もちょいと味を変えた方が…」
水の溜まった鍋をコンロに乗せて火を点けると大きなボウルの中にある生地を少し千切り、別の小さいボウルに移す。
「何でいこうかなー?」
彼女は調味料の入った小瓶を集めると一つ一つ指差し確認しながら迷う。
「…かみさまの、いうとおり…っと…」
目を瞑って何かを呟きながら両手の人差し指を動かし始める。
「きーまり、っと」
選んだ調味料を手に取ると小さいボウルの中に少量入れ、手で生地を捏ねた。
「剣道?…そういや日本に合気道とか柔道とか剣道とかそういったスポーツがあったな」
男の説明を聞き彼女は生地を踏み踏みしながら考えてちょっと納得する。
「俺が読んでるこの魔導書は導くという字で、魔術の更に上である魔法を学び身に付けるための書だ」
「魔法ねぇ…スポーツの柔道技と実戦で相手を破壊するための柔術…の違いみたいなもんか」
彼女は自分なりに分かりやすい例えに変換して納得した。
「で、なんでその難しい方の魔導書とやらを読んでんの?魔道の方が簡単なんしょ?」
「難しい分威力が桁違いだからな…だから俺は魔術を捨てて魔法に特化する事にしたのさ」
「ふーん…まあ読むだけで身に付くってのは楽で良いねぇ」
料理の指南書も読むだけで技術が身に付けば良いのにな、とバカにしたように笑う。
「…魔導の道を進む人以外の世の中のほとんどの人が勘違いしているが…魔道書を読むだけでほぼ使えるようになる魔術と違い、魔法というモノは魔導書を読むだけでは身に付かない」
男は少し怒ったように彼女の発言を否定する。
「まあだろうね」
彼女は軽いノリで男の発言に賛同した。
「…は?」
まさか彼女が理解するとは思ってなかったのか男は間抜けな声を出す。
「料理にしろ、剣や槍、弓や魔法にしろ、技術が必要なのは努力して磨かないと身に付かないのは一緒だろう?」
天才も凡人も努力しないと技術は身に付かねぇよ…と言って彼女は一旦ボウルから下りる。
「…その通りだ」
彼女の意見に男は意外そうに呟く。
「でも魔道書ってのが読むだけで魔術を身に付ける事を出来るのなら…まあ勘違いされても仕方ない」
魔道書と魔導書の違いなんて専門外の人には分からんし…と彼女は生地をひっくり返してビニールを敷いてからまた踏み始めた。
「っと…あんた、野菜と魚介と肉類どれがいい?」
彼女は生地を踏みながら思い出したように、何かを言おうとして口を噤む男に聞く。
「…そうだな、魚介が美味そうだから魚介で」
「んじゃまあ…魚介スープか」
考え込むように腕を組んで生地を踏む彼女が何かを決めたのか、踏むのを止めて冷蔵庫を開ける。
「おっ、スープ用のはまだ残ってるな…刺身を炙って具材にするのも良いかな?」
昼の料理の事を考えながらブツブツ呟いて大きめの鍋に水を溜め始めた。
「…昆布とかつお節と魚の骨で出汁をとって…そしたら麺もちょいと味を変えた方が…」
水の溜まった鍋をコンロに乗せて火を点けると大きなボウルの中にある生地を少し千切り、別の小さいボウルに移す。
「何でいこうかなー?」
彼女は調味料の入った小瓶を集めると一つ一つ指差し確認しながら迷う。
「…かみさまの、いうとおり…っと…」
目を瞑って何かを呟きながら両手の人差し指を動かし始める。
「きーまり、っと」
選んだ調味料を手に取ると小さいボウルの中に少量入れ、手で生地を捏ねた。
0
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる