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「んじゃあアレなの?ゾンビの状態異常が解除できればこの問題は解決?」
「…そうだが…まだ抗ゾンビ薬という物は各国でもまだ研究段階で、量産はしきれてないんだ」
彼女が疑問を口にすると青年が苦虫を噛み潰したような顔で説明する。
「へー…でも作られてるんならあるだけ買えば?」
「…この街の人々を戻す量を買い取るには国家予算でもギリギリ足りない、それに作る端から買い取っていっても街の人々全員戻すには半年以上はかかってしまう」
「副作用の問題とかもありますからね…」
彼女の楽観的な問いに青年は細かく説明していき、女の人も補足した。
「なによりも一番の問題は、その感染力と原因である亜種がこの街に居る事だ」
「…そういやさっきゾンビに噛まれたらゾンビになる、とか言ってたね…」
「治したそばからゾンビになっていけば薬がいくらあっても足りない」
「確かに、魔除けの札の所為というかおかげというか…外の安全な場所には移動できないもんな」
結局彼女の浅はかな解決法の実行は無理だったらしくあっさりと納得して諦める。
「じゃあどうすんの?」
「…こうなると魔物の殲滅、以外に方法が残されていないんだが…」
騎士団の愚かさで巻き込まれゾンビになった人々を殺すなど…!と青年は苦悶の表情を浮かべた。
「まあ私には関係ないからどうでも良いけど…早くしないと買い物の時間が…」
苦悩する青年をよそに彼女は袋から時計を取り出して呟く。
「…そうだったな、どうせ今日明日で解決する問題ではない…」
「ですが!一刻も早く解決しないと政府に何を言われるか!」
彼女の呟きを聞いて更に迷う青年に女の人が声を荒げた。
「だが夕飯までに戻らねば……っ!少し、聞きたい事があるんだが!」
青年は困ったように言うと何かを閃いたのか彼女の方を向く。
「もし…だが、君の料理スキルで作ったメニューの中にゾンビ状態を解除する、という効果のある料理は無いか?」
「え?ああ、あるよ?」
青年の探るような問いに彼女はあっさりと聞き返すように答える。
「うーん…もう少し大きくて深い皿が良いなぁ…」
「すみません、当店ではこれ以上の大きさは…」
店に並べられた皿を手に取って確認しながら注文をつける彼女に店員が謝った。
「だよね…しょうがない、じゃあコレだけでいいや…あとは業務用を買うから」
「お買い上げありがとうございます」
彼女はため息を吐いて手に持ってる皿をカウンターに置いて金を払い商品の入った紙袋を受け取って外に出る。
「業務用専門店は…っと……あっちか」
皿の入った紙袋を袋に入れ、彼女は店を探しながら街を歩く。
「…君も何か買いたい物があるのなら買って来るといい」
「いえ、大丈夫です」
街の外の木の上からストーカーのように双眼鏡で彼女を見は…見守る青年が下にいる女の人に提案するも直ぐに断られた。
「ところで…何をしてるのですか?」
「彼女が危ない目に合った時に直ぐ駆け付けられるように見ているんだ、流石に魔物を外に置いて何かあったらと思うと一緒に中には入れないからな」
「はあ…」
青年の返答に女の人は木の裏側で伏せってる魔物を見て納得出来てないような感じで呟いた。
「…本当に、あの少女の言う通りにするつもりですか?」
女の人は少し考えると木の上の青年に問いかける。
「さあな、どの方法を取るかは政府が決める事だ…だが一つしか無かった方法が二つに増えただけでもありがたい事だろう?」
「それは…そうですが…」
青年が笑いかけながら問い返すと女の人は歯切れ悪く返す。
「…政府がどちらの方法を取るにせよ、結局あの街は騎士団の失敗で滅びた事になるのかもな…」
双眼鏡を覗きながら青年がポツリと零した。
「…私には理解出来ません!あの街の人々を元に戻す代わりに、魔物の住処として街の半分を提供しろ…だなんて…!」
「…彼女が望んでいるのは魔物と人間の共存による平和な世の中なんだろう、君にもいずれ分かるさ」
困惑したように言う女の人に青年が木から下りて肩をポンと叩く。
「…そうだが…まだ抗ゾンビ薬という物は各国でもまだ研究段階で、量産はしきれてないんだ」
彼女が疑問を口にすると青年が苦虫を噛み潰したような顔で説明する。
「へー…でも作られてるんならあるだけ買えば?」
「…この街の人々を戻す量を買い取るには国家予算でもギリギリ足りない、それに作る端から買い取っていっても街の人々全員戻すには半年以上はかかってしまう」
「副作用の問題とかもありますからね…」
彼女の楽観的な問いに青年は細かく説明していき、女の人も補足した。
「なによりも一番の問題は、その感染力と原因である亜種がこの街に居る事だ」
「…そういやさっきゾンビに噛まれたらゾンビになる、とか言ってたね…」
「治したそばからゾンビになっていけば薬がいくらあっても足りない」
「確かに、魔除けの札の所為というかおかげというか…外の安全な場所には移動できないもんな」
結局彼女の浅はかな解決法の実行は無理だったらしくあっさりと納得して諦める。
「じゃあどうすんの?」
「…こうなると魔物の殲滅、以外に方法が残されていないんだが…」
騎士団の愚かさで巻き込まれゾンビになった人々を殺すなど…!と青年は苦悶の表情を浮かべた。
「まあ私には関係ないからどうでも良いけど…早くしないと買い物の時間が…」
苦悩する青年をよそに彼女は袋から時計を取り出して呟く。
「…そうだったな、どうせ今日明日で解決する問題ではない…」
「ですが!一刻も早く解決しないと政府に何を言われるか!」
彼女の呟きを聞いて更に迷う青年に女の人が声を荒げた。
「だが夕飯までに戻らねば……っ!少し、聞きたい事があるんだが!」
青年は困ったように言うと何かを閃いたのか彼女の方を向く。
「もし…だが、君の料理スキルで作ったメニューの中にゾンビ状態を解除する、という効果のある料理は無いか?」
「え?ああ、あるよ?」
青年の探るような問いに彼女はあっさりと聞き返すように答える。
「うーん…もう少し大きくて深い皿が良いなぁ…」
「すみません、当店ではこれ以上の大きさは…」
店に並べられた皿を手に取って確認しながら注文をつける彼女に店員が謝った。
「だよね…しょうがない、じゃあコレだけでいいや…あとは業務用を買うから」
「お買い上げありがとうございます」
彼女はため息を吐いて手に持ってる皿をカウンターに置いて金を払い商品の入った紙袋を受け取って外に出る。
「業務用専門店は…っと……あっちか」
皿の入った紙袋を袋に入れ、彼女は店を探しながら街を歩く。
「…君も何か買いたい物があるのなら買って来るといい」
「いえ、大丈夫です」
街の外の木の上からストーカーのように双眼鏡で彼女を見は…見守る青年が下にいる女の人に提案するも直ぐに断られた。
「ところで…何をしてるのですか?」
「彼女が危ない目に合った時に直ぐ駆け付けられるように見ているんだ、流石に魔物を外に置いて何かあったらと思うと一緒に中には入れないからな」
「はあ…」
青年の返答に女の人は木の裏側で伏せってる魔物を見て納得出来てないような感じで呟いた。
「…本当に、あの少女の言う通りにするつもりですか?」
女の人は少し考えると木の上の青年に問いかける。
「さあな、どの方法を取るかは政府が決める事だ…だが一つしか無かった方法が二つに増えただけでもありがたい事だろう?」
「それは…そうですが…」
青年が笑いかけながら問い返すと女の人は歯切れ悪く返す。
「…政府がどちらの方法を取るにせよ、結局あの街は騎士団の失敗で滅びた事になるのかもな…」
双眼鏡を覗きながら青年がポツリと零した。
「…私には理解出来ません!あの街の人々を元に戻す代わりに、魔物の住処として街の半分を提供しろ…だなんて…!」
「…彼女が望んでいるのは魔物と人間の共存による平和な世の中なんだろう、君にもいずれ分かるさ」
困惑したように言う女の人に青年が木から下りて肩をポンと叩く。
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