料理人がいく!

八神

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男が家から出てきて水の入ったコップを渡すと青年が一気飲みする。


そしてベランダに移動して山の麓で『騎士 Lv16』と表示されていた女の人が倒れてた所から帰って来た所までを話した。


…青年が話している最中に彼女がチャーハンを魔物にあげていた部分などは省略。



「…なるほど、ゾンビに占拠された街か…それにしてもゾンビを治す条件がいかにも彼女らしいな」


青年から話を聞き終わると男が面白そうに笑う。


「ああ、だが政府がその条件を呑むかどうか…」

「もしくは呑んでも終わった後に約束を破棄して、不都合を無理やり修正させるか…」


青年の呟きに男が懸念を付け足す。


「…はぁ…あの時もっと俺がしっかりしていればこんな事には…」

「騎士団の暗部がやらかした事だろう?お前は関係ないんじゃないか?」


青年の悔やむように漏らした言葉に男が疑問を投げかける。


「…強引にやれば止められるタイミングはいくつかあったんだ、俺はソレをあえて逃した…できる事をやらないのはある種の罪だ、今回の件でそれが分かったよ…」

「…まあ、俺がお前と同じ立場だったとしても同じようになってただろうさ…」


彼女に会う前の人間はほとんど同種の事しか考えないモノだ…と落ち込む青年を男が軽く慰めた。


「…そういうのをなんて言うか分かる?自惚れって言うんだよ」

「…聞いてたのか」


後ろから急に話しかけてきた彼女に男がびっくりしたように言う。


「そりゃベランダで窓を開けたまま話してれば嫌でも聞こえてくるって…」


彼女は呆れたようにため息混じりに告げる。


「…それより、自惚れとは?」

「あんたならこの事態を未然に防げた、みたいな事を言ってるけど…実際防げてないじゃん」

「…確かに」


青年が聞くと彼女はバカにしたように言い、男が相槌を打つ。


「そんなバカな事考えてないで、解決法でも考えろよ」

「解決法…?いや、解決法は既に…」

「…どんな?」


彼女の発言に言い返すも冷たい目で聞き返された。


「君がゾンビ解除の料理を作る…」

「で?作った後は?」

「た、食べさせる…」


青年が答えると彼女は直ぐさま聞き返す。


「どうやって?」

「そ、それは…」

「……はぁ~…」


言葉に詰まった青年に彼女は深いため息を吐く。


「私の料理は食べさせないと効果が出ないの、分かる?ゾンビにどうやって食べさせんの?」

「…すまない、そこまで考えていなかった」

「…話を聞いた限り、ゾンビになる毒を撒き散らす感染源の魔物もいるようだし…街の人達を戻すにはそれなりの作戦が必要だな…」


彼女の呆れたような問いかけに青年が頭を下げて謝り、男が口を手で覆いながら考え始める。


「いやいや、そう難しくないよ」

「「え?」」


考え込む二人に彼女が手を振ってそう告げた。


「あんたが騎士団を代表して感染源の魔物に謝りに行って、話し合いの場を設けるように説得してこればいいじゃん」

「…俺が?」

「ん、魔物が毒を撒き散らなきゃゾンビに料理を食わすのが楽になるっしょ?」


彼女の案に唖然としてる青年に彼女が続けて問う。


「…まあ魔物が邪魔しないのであれば、確かに治した側から増えるような事態にはならない…な」

「…だが…」

「できる時にやらないのは罪、とか言ってなかったっけ?」


納得する男とは違い渋っている青年に彼女は冷たく蔑むような声で聞く。
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