料理人がいく!

八神

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それから4日後。


「ふ…ふふ…ふははは!!」


3日前に山小屋の近くに新しく作ったプレハブのような納屋に篭っていた男が高笑いしながら外に出て来る。


「…なに?」

「…随分とご機嫌そうだな」


ちょうど畑から帰って来たばかりの彼女は鬱陶しそうな表情で男を見て、青年がその隣で呟いた。


「どうした?ついに頭のネジが取れたのか?」


ずっと引きこもっていたからな…と青年は心配した様子で男に話しかける。


「ふふふ…遂に俺の悲願が達成されたのだ!見ろ!」


聞く人によってはバカにされてるような言葉にも気がつかないほど嬉しいのか、男は自分の目の前に大きな表示を出した。


「…特に変わったステータスは…おお、魔力がかなり上がっているじゃないか」

「ソコではない!ココだ!」


青年が表示をマジマジと見て軽く驚くと男は不満そうに見て欲しい場所を指差す。


「…なっ…!?」

「ふっふっふ…どうだ、驚いただろう」


『魔術師』から『魔導師』に変わっている表示を見て絶句した青年に男は得意気に笑う。


「ま、魔導師だと…!?」

「俺が十数年費やしても会得できなかったモノを、彼女のおかげでたった数日で会得出来たのだ!」


驚愕する青年に男はそう告げて彼女がさっきまで居た場所を見るが…どうやらもう家の中に戻っていたらしく姿が無い。


「…ありえない…!天賦の才能が無い限り、魔導師になるには最低でも数十年の修行が必要なハズだ…!」

「ふっ…才能とは必ずしも先天的で天が与えてくれるとは限らないという新発見さ」


男は魔導師になった事が信じられないように否定している青年に自虐的に笑いながら告げる。


「俺は子供の頃から魔導師目指してひたすら勉強したが、今に至る十数年で会得した魔法はたった一つ…」


魔導師になるのに何十年かかるんだ、と半ば諦めていたのだが…いやはやチャンスというのはどこに転がっているか分からないな…と男はニヤリと笑って自分の運の良さを自慢した。


「…ソレは何もお前だけに当てはまる事ではあるまい」


裏を返せば俺だってあの子だってチャンスはあるハズだ、と青年は言い返す。


「…お前達に悲願とやらがあるのなら、な…その時は俺も手伝ってやるよ」


男は青年の肩に手を置いて彼女の居るであろう家の中へと入る。


「…俺の、悲願…」


男が居なくなった後に青年は思い返すように空を見上げながら呟いた。


「…どうかしたんですか?」


休憩を終えて家から出てきた女の人が空を見上げてる青年に不思議そうに声をかける。


「いや、なんでもない…鍛錬を続けようか」

「はい!」


青年が適当に返してそう告げると女の人は気合の入った返事をした。


「あ、そういえば…さっき家の中まで高笑い?が聞こえたんですけど…」


なにかあったんですか?と移動中に女の人が青年に聞いてくる。


「ああ…どうやらアイツが魔導師になったらしい」

「…え?…魔導師って…あの…?」


青年の返答に女の人は驚きのあまり立ち止まった。


「…世界三大最職の魔導師だ」

「…凄い…!あの人ってそんなに凄い人だったんですね!」


青年が軽く説明すると女の人は憧れるような感じでテンションを上げる。


「凄い人、か…そうだな、確かに3日もずっと部屋に篭って本を読み続けるというのは凄い事だ」


普通なら…俺ならとてもそんな事は出来ない、と青年は女の人の言葉に頷いた。
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