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しおりを挟む「??」
「畑を増設したんだけど…増やした分何を作ろうか考えててね」
不思議そうな顔をする男に彼女が話し始めた。
「…なるほど、確かに俺たちには関係の無さそうな話だな」
手伝おうにもやり方が分からず君の手を煩わせるだけだし…と男は沈んだような表情になる。
「ソレで…既存の物を増やすか、新しい物を増やすか、既存の物を組み合わせて新種を作るか、新しい物を組み合わせて新種を作るか…で迷ってる」
「…お、おお…」
一気に複雑化した話に男はパチパチと瞬きをするもなんとかついて行こうとした。
「その新しい物…と言うのはその畑に無い物で、種から育てるやつ…だよな?」
「ん」
男の確認に彼女は短く肯定する。
「既存の物を組み合わせる、新しい物を組み合わせる…で出来る新種とはそう簡単に成功するのか?」
「さあ?ソレばっかりはやってみないと分からないけど…成功させるのは難しいんじゃない?何が出来るか、組み合うのかも分からないし?」
男が疑問を聞くと彼女は適当に疑問系で返した。
「…ソレなら既存の物か新しい物を……いや、だがあえて攻めてチャレンジするのも…」
男は自分の意見として何かを言いかけて考え込む。
「…うーむ…」
「な?迷うだろ?」
腕を組んで考え込む男に彼女が珍しく笑いながら聞く。
「…そうだな、悩みというほどでは無いが…」
微妙な表情をしながら男が言いかける。
「とりあえず消去法で既存か新しい物に絞られるんだけど、そっからまた…」
「うむぅ…食べる側からしたら新しい食材はありがたいが、育てる事や料理する事を考えると…」
俺が作るワケじゃないから余計に…と彼女の言葉で男は更に考え込んだ。
「果物は木だし接ぎ木で増やせるからいいとして、やっぱり炭水化物系の穀物系を増やした方が良いかと思ってるんだけど…」
「ち、ちょっと待ってくれ、これ以上選択肢を増やされると…!」
彼女が育てる植物の種類を話すと男が焦ったように制止した。
「えー?選択肢はまだまだあるよ?穀物か野菜か、穀物系にするなら何を多めに育てるか、野菜系にするならどの種類にするか…とか」
「…の、農業ってそんなに奥が深いのか…」
不満そうに言う彼女に男は呆然とした様子で呟く。
「いや、今はかなり浅い方だと思うけど?ただ選択肢が多いだけで」
その呟きを否定するように彼女が聞き返す。
「…すまない、どうやら俺では君の力にはなれないようだ…」
「うん、分かってた」
悔しそうに椅子から立ち上がった男に彼女はバッサリと言い放つ。
「…っ…!…くぅ…!」
その言葉に無力感が出たのか男は泣きそうになって走って家の中から出て行く。
「な、なにかあったのか…?」
少しして青年が様子を伺うように控え目にドアを開けて聞いてくる。
「…なんで?」
「いや…なんかアイツが泣きそうな顔で走って行ったから…」
彼女が聞き返すと青年は心配したように言う
「別に何も無いけど…しいて言えば考えてる事を話しただけだし」
「…そ、そうか…」
青年は彼女の返答を聞いてどっちの意味でか分からないが、ホッと胸を撫で下ろした様子だった。
「…気になるんならあんたも聞く?」
アイツだけじゃ不公平だしね…と彼女が提案する。
「い、いや…今回は遠慮しておく…」
「そう?まああんた達には期待してないからどうでもいいけど」
青年の辞退に彼女は興味無さそうに返してまた目を瞑って考え始めた。
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