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しおりを挟む「…何か変わった所はない?」
「分からない…確認してみよう…っ…!?」
彼女の問いに青年は首を振って呟き、鏡で自分の表示を見て驚愕する。
「…な、なんだコレは…!『魔剣士』だと!?」
『剣士』から『魔剣士』に変わってる職業表示を見て青年が叫んだ。
「『魔剣士』?」
青年の叫びに彼女が首を傾げて不思議そうに聞く。
「…魔剣士とは魔道に落ちた剣士や騎士の事を指す職業なんだ…なぜ俺が…!」
青年は彼女に軽く説明すると困惑したように壁を殴った。
「魔道って魔術師とかが勉強してるっていうあの?」
「…いや、アレとは違う…『魔道』は『魔導』とも言われ、魔法や魔術を学ぶという意味合いだ」
この魔道は堕落や邪道という意味合い…つまりは落ちぶれるという事…と青年が歯ぎしりをして彼女に違いを説明する。
「…ふーん…と言う事は…あんた、堕落したの?」
彼女は言葉も選ばずに直球で青年に聞いた。
「そんな事は無い!俺は決して己の身勝手な欲望の為に他人を犠牲になどしない!」
青年は彼女の言葉に手を振り払って力を込めるように否定する。
「そう?じゃあやっぱり『進化』の効果だ」
青年が力一杯否定したので、彼女は職業が変わったのは料理に付与された効果が原因であると断定した。
「…え?」
アッサリと堕落してないと信じてくれた?彼女に青年は拍子抜けしたように聞き返す。
「…予想だけど、もしかしたら職業とやらをランクアップさせるのかもね」
私の山人みたいにランクとか関係無い職業には効果が無いみたいだけど…と彼女は青年に告げる。
「…ランク、アップ…?」
「多分だけどな、剣士から魔剣士になったって事はそういう事っしょ?」
信じられないように呟いた青年に彼女は疑問系で推測を話す。
「…いや、世間的には見れば逆にランクダウンしたような気がするんだが…」
青年は鏡で『魔剣士』という表示を見ながら苦々しく言う。
「ステータスとかはどうなってる?」
「……軒並み上昇している…しかも倍近く…!?」
彼女の問いにステータスを確認した青年は意外だったのか驚愕したように返した。
「じゃあ良かったんじゃん?」
「いや…だが…」
彼女が楽天的に聞くと青年は戸惑ったように呟く。
「確かにステータスが上がったのは嬉しい、が…魔剣士という職業表示は…」
「…なにが嫌なの?」
不満そうに言い淀む青年に彼女はイラついた様子で問う。
「…魔剣士とは己の力を高めるために禁忌を犯し、魔道に落ちて堕落した者を指す職業…いわば落ちぶれた者の肩書きのようなモノなのだ」
「…なるほど、世間の目や世間体が気になると?」
青年の返答に彼女は蔑むような目と声になり、不快そうな様子になる。
「…ま、まあ…そうなる、な…」
彼女が不機嫌になるのを感じた青年の声がだんだんと小さくなっていく。
「…へぇ、あんたも所詮は世間体を気にするような小物だったんだな…」
彼女は失望したかように冷めた目で青年を見て呟いた。
「…あんたの行動は世間体を気にしたからだった…という事か…」
ガッカリだよ…と彼女はため息混じりに零して青年に背を向ける。
「違う!俺は…!」
「ああ、そう、へー…」
青年が否定しようとするも完全に興味を失った彼女に適当に流された。
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