料理人がいく!

八神

文字の大きさ
107 / 113
番外編『魔法使いがいく!』

15

しおりを挟む
「バカな。シールドは割れていた…!なのに、なぜ、届かない…!」

「『イグノースト』は領域魔法…領域内では術者以外の全てを弾き飛ばす。一つ賢くなって良かったな…魔導スキル『スロータス』」


彼から距離を取って驚いた様子を見せる男をバカにするかのような事を言い、スキルを発動する。


「くっ…!動きが…!だがこの程度で…」

「魔導スキル『ロックハート』」


『スロー』の状態異常にかかってもなお素早い動きで撹乱しようとする男に更にスキルを使って状態異常を重ねた。


「…なんだと!?ただの封印では…」

「全ての付与効果を打ち消してスキルを封印する技だ。コレで終わりだな…魔導スキル『ジャッジメント』」


急に身体が重くなり動きが悪くなった事に驚く男に彼は親切にもわざわざ効果を説明してあげてから攻撃スキルを発動させる。


「ぐっ…あああ!!」


男を中心に魔方陣が展開すると光の柱が出来あがり、111という白い数字と共に身体が浮き上がった。


「…ぐはっ…!」


そして111、111、111、111、111、111、111、111…と連続して白い数字が出ると光が収まり、男は地面に膝を付いて前のめりに倒れる。


「ふん…召喚術を使うまでもない…どうだ、まだ動けるか?」


彼は余裕そうに呟くとHPが赤く点滅してる男に向かって確認を取った。


「…ぐ、う……完敗、か…ぐうの、音も、出な…俺の、敗けだ…」


男が立ち上がろうとするも力が入らないのか仰向けになるのがやっと…という状態で敗けを認める。


「…そうか。コレを飲め」


彼は水筒を取り出してフタをコップに果物ジュースを注いで差し出す。


「……っ!これは…傷が…!」

「…割合回復か、とんでもないな…」


男が差し出されたジュースを飲むと緑色の光に包まれ、HPが赤い点滅から黄色へと回復した。


その様子に二人とも差はあれど驚いたように呟く。


「…なぜ、俺に回復アイテムを…?」

「負けを認めたからだ」


水筒のフタを返しながらの疑問に彼は受け取って簡潔に答える。


「…俺が、再び襲いかかったら…」

「貴様は聖騎士だろう?闇討ち騙し討ちはしないと言った。それに…『相手が誰でも、何でも…等しくチャンスは一回与えるべきだ』…俺の恩人の言葉だ」


流石に二回目は無いらしいが、と彼は例の彼女の言葉を引用した。


「くっくっく…甘いな、お前のその恩人とやらは。世の中が分かっていない」

「今の弱っている貴様ならば残ったMPでも十分だ、だからチャンスをやった」

「…考えあっての事か…お前は少しはマシなようだな」


声に出して笑う男に彼は自分の考えをそのまま告げると少しだけ笑う。


「だが…さっきも言った通り完敗だ。どうやら今の俺では手も足も出ないようだ」

「そうか」

「くっくっくっ…こんな気分は何年振りか…強くなるために一から出直すとしよう」


次に会う時は楽しみしていろ!と彼に指さして宣言し、男は去って行った。


「…アレが聖騎士か…俺でなければ危なかったかもしれん…」


連戦によるMPの問題があったとはいえ、彼は王都を見ながらそう呟く。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

処理中です...