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第4話 縁
02 恋みくじの警告
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〝具合はどう? お参りして、お守りも買ったから、今度会った時に渡すね! お大事に!〟
理世はトークアプリでまひろにメッセージを送信すると、木陰を出て鳥居の方へと歩き出した。
──まひろちゃん、大丈夫かな。
K県東部に位置する舞翔市の、海に面した小さな町に古くから祀られている、橘神社。
恋愛成就や縁結びに御利益があるパワースポットとして全国的に有名で、休日という事もあってか、多くの参拝客で賑わっている。
カップルやグループがほとんどの中、理世は一人で訪れていた。本来はまひろも一緒、というよりも、恋人作りに躍起になっている彼女の付き添いで来るはずが、肝心の本人がどうやら風邪を引いたらしく、発熱と咳の症状があると前日の夜に電話を掛けてきた。
「わたしが一人で行って、まひろちゃんの分もお願いしてこようか? お守りも買うよ」
理世が自らそう提案すると、初めのうちは遠慮していたまひろだったが、最終的には咳をしながら何度も何度も礼の言葉を述べたのだった。
──ここの神社どころか、舞翔市自体が初めてだよなあ。まひろちゃんに誘われなきゃ来る事はなかったかも。
神社を出た直後、まひろから返信があった。
〝りよちゃんほんっっとありがとう!! お金はおまもりもらう時に払うから!! それとは別に今度お礼もさせてね!!〟
複数の絵文字もセットのまひろらしい文章に、理世は微笑んだ。
〝お礼なんていいから全然気にしないで! それより早く風邪直して、一緒に街コン行こうね〟
〝わかった!! マジ感謝です!!〟
理世はスマホをショルダーバッグにしまうと、外ポケットに無造作に入れておいた、折り畳まれている一枚の紙を取り出して開いた。淡水色で正方形のそれは、お守りと一緒に購入した『ひとこと恋みくじ』だ。その名の通り、紙の真ん中に黒字で一言だけ恋愛アドバイスや神託のような言葉が書かれており、よく当たると評判らしい。
──お試しで買ってみたけど、これは……。
〝偶然の再会にご用心〟
どことなく不穏な言葉に、理世は苦笑せざるを得なかった。
「見て見てこれ! 〝甘い言葉は大きな罠〟だって! ヤバァ~イ!」
「うちのは〝灯台下暗し〟……つまり運命の人は身近にいるって事?」
「えーいいなーっ。交換しよ!」
「は? ヤダし。てか意味ねーじゃん! ねえ、そういえばさ──……」
学生服姿の少女が二人、『ひとこと恋みくじ』を片手に喋くりながら理世を追い越してゆく。
──まあ、当たるとは限らないし……?
理世は再びおみくじを折り畳み、外ポケットにしまった。
──さて、何か食べに行こっと。
「お大事にどうぞー」
まひろが処方された薬を受け取り薬局を出たのは、一二時を廻った頃だった。
──お腹減った。早く帰ろ。
まだ微熱はあり咳も出るが、食欲は普段と全く変わらない。子供の頃から胃は丈夫だった。「食い意地張ってるな」とからかう男もいれば、「そういうところも可愛いね」と言ってくれた男もいた。前者は誰だったかはっきりと覚えているのに、後者はすぐに思い出せなそうになかった。
──理世ちゃんも今頃お昼かな?
親切で裏表のなさそうな子だとは思っていたが、本当にお人好しだ。一緒に行ってくれと頼まれただけなのだから、普通は頼んだ張本人が行けなくなったらそれまでだろう。
──もしかしたら理世ちゃんも興味あったのかな……実は彼氏作る気満々だったりして。
そうなると呑気にしてはいられない。理世は地味で一見冴えない風貌をしているが、自分の見立てが正しければ、メイクや服装次第で大化けするタイプだ。
──ま、負けてらんない……モテ女の意地にかけて!
自然と体が震えた。風邪からくる悪寒ではなく、武者震いだ。
──早く風邪治して、万全の状態で挑まないとね!!
まひろは進行方向を変えるとタイミングを見計らって道路を突っ切り、栄養ドリンクを求めて駅前のドラッグストアを目指した。
理世はトークアプリでまひろにメッセージを送信すると、木陰を出て鳥居の方へと歩き出した。
──まひろちゃん、大丈夫かな。
K県東部に位置する舞翔市の、海に面した小さな町に古くから祀られている、橘神社。
恋愛成就や縁結びに御利益があるパワースポットとして全国的に有名で、休日という事もあってか、多くの参拝客で賑わっている。
カップルやグループがほとんどの中、理世は一人で訪れていた。本来はまひろも一緒、というよりも、恋人作りに躍起になっている彼女の付き添いで来るはずが、肝心の本人がどうやら風邪を引いたらしく、発熱と咳の症状があると前日の夜に電話を掛けてきた。
「わたしが一人で行って、まひろちゃんの分もお願いしてこようか? お守りも買うよ」
理世が自らそう提案すると、初めのうちは遠慮していたまひろだったが、最終的には咳をしながら何度も何度も礼の言葉を述べたのだった。
──ここの神社どころか、舞翔市自体が初めてだよなあ。まひろちゃんに誘われなきゃ来る事はなかったかも。
神社を出た直後、まひろから返信があった。
〝りよちゃんほんっっとありがとう!! お金はおまもりもらう時に払うから!! それとは別に今度お礼もさせてね!!〟
複数の絵文字もセットのまひろらしい文章に、理世は微笑んだ。
〝お礼なんていいから全然気にしないで! それより早く風邪直して、一緒に街コン行こうね〟
〝わかった!! マジ感謝です!!〟
理世はスマホをショルダーバッグにしまうと、外ポケットに無造作に入れておいた、折り畳まれている一枚の紙を取り出して開いた。淡水色で正方形のそれは、お守りと一緒に購入した『ひとこと恋みくじ』だ。その名の通り、紙の真ん中に黒字で一言だけ恋愛アドバイスや神託のような言葉が書かれており、よく当たると評判らしい。
──お試しで買ってみたけど、これは……。
〝偶然の再会にご用心〟
どことなく不穏な言葉に、理世は苦笑せざるを得なかった。
「見て見てこれ! 〝甘い言葉は大きな罠〟だって! ヤバァ~イ!」
「うちのは〝灯台下暗し〟……つまり運命の人は身近にいるって事?」
「えーいいなーっ。交換しよ!」
「は? ヤダし。てか意味ねーじゃん! ねえ、そういえばさ──……」
学生服姿の少女が二人、『ひとこと恋みくじ』を片手に喋くりながら理世を追い越してゆく。
──まあ、当たるとは限らないし……?
理世は再びおみくじを折り畳み、外ポケットにしまった。
──さて、何か食べに行こっと。
「お大事にどうぞー」
まひろが処方された薬を受け取り薬局を出たのは、一二時を廻った頃だった。
──お腹減った。早く帰ろ。
まだ微熱はあり咳も出るが、食欲は普段と全く変わらない。子供の頃から胃は丈夫だった。「食い意地張ってるな」とからかう男もいれば、「そういうところも可愛いね」と言ってくれた男もいた。前者は誰だったかはっきりと覚えているのに、後者はすぐに思い出せなそうになかった。
──理世ちゃんも今頃お昼かな?
親切で裏表のなさそうな子だとは思っていたが、本当にお人好しだ。一緒に行ってくれと頼まれただけなのだから、普通は頼んだ張本人が行けなくなったらそれまでだろう。
──もしかしたら理世ちゃんも興味あったのかな……実は彼氏作る気満々だったりして。
そうなると呑気にしてはいられない。理世は地味で一見冴えない風貌をしているが、自分の見立てが正しければ、メイクや服装次第で大化けするタイプだ。
──ま、負けてらんない……モテ女の意地にかけて!
自然と体が震えた。風邪からくる悪寒ではなく、武者震いだ。
──早く風邪治して、万全の状態で挑まないとね!!
まひろは進行方向を変えるとタイミングを見計らって道路を突っ切り、栄養ドリンクを求めて駅前のドラッグストアを目指した。
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