放っておけない 〜とあるお人好しの恐怖体験〜

園村マリノ

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第4話 縁

08 ハロウィンパフェ

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 日曜日、そしてハロウィン当日でもある、一〇月最終日。

「お待たせしました、ハロウィンパフェになります」 
 
 透明なグラスに山盛りの、カラフルで可愛らしい甘味が目の前に置かれると、理世は小さく感嘆の声を上げた。

「ご注文の品は全てお揃いでしょうか?」

「はい!」

「ごゆっくりどうぞ」

 店員はにこやかに言うと、伝票をクルリと丸めて伝票立てに入れ、去っていった。

 ──ああ、美味しそう! 

 パフェグラスの上部には生クリーム、紅芋クリーム、チョコアイス、パンプキンアイス、更にモンブランとコウモリ型の小さなブラウニー、ジャック・オー・ランタン型の小さなクッキーが所狭しと乗せられており、その下にはバナナ、コーンフレーク、コーヒーゼリーが層になっている。

 ──先に写真撮っとこっと。

 浜波駅構内地下一階、カフェ〈ファンファーレ〉。
 内装や家具が木目調で統一され、至る所に植物が配置されている大人の雰囲気なこの店で、ハロウィン期間限定スイーツが販売されるという情報を理世がSNSで入手したのは、昨夜の事だ。
 せっかくなので誰かと楽しみたいと思い、ナナノを誘ってみたが先約が入っていた。シフト制で働いているモカは、基本的に土日は仕事を入れている。次に頭に浮かんだのはだったが、カナデとデートかもしれないと考え、最終的に同伴者は諦めた。

「見て見てあのパフェ! カワイイ~!」

 スマホをテーブルの端に伏せ、両手を合わせると、はしゃいだ声が聞こえてきた。通路を挟んで斜め前の席に座る女性が、理世が注文したハロウィンパフェを見ながら顔を綻ばせている。その正面に座ってスマホをいじる恋人らしき男性は、チラリと振り向いただけで興味を示さなかった。

「あたしもアレ頼めば良かったかな~?」

「頼めばいいじゃん」

「えー、サンドイッチ食べた後には無理だよぉ~」

「じゃあやめとけば」

「え~……」

 理世は何気なく店内を見回した。自分のようなお一人様よりも、二人以上、特にカップルでの来店が多いようだ。それぞれが楽しそうに会話したり見つめ合ったりしている様子に、誰に責められたわけでも笑われたわけでもないのに、何となく居心地の悪さを感じた。

 ──わたしにもいつか、一緒に来てくれる男の人が出来るといいなあ……。

 ソーダスプーンを手に取り、パンプキンアイスを掬おうとした時、理世はある事に気付いて手を止めた。

 ──あれ……何処行った?

 紅芋クリームの上に乗っていたはずの、ジャック・オー・ランタン型の小さなクッキーがない。落ちてしまったのかと思い、パフェ全体やテーブルの上を確認するも見当たらない。

 ──絶対あったよね?

 スマホで撮影したばかりの写真を確認すると、ジャック・オー・ランタンは、間違いなく紅芋クリームの上にちょこんと乗っていた。撮影後、カップルや周囲の客に気を取られて目を離した一分足らずの間に、忽然と消えてしまった事になる。

「な、何で……?」



〝こんな感じ! 美味しかったよ〟

 モカとナナノにハロウィンパフェの写真とメッセージ、そしておちゃらけラビットのスタンプを送信すると、理世は〈ファンファーレ〉を後にした。最後まで行方不明のままだったジャック・オー・ランタンが引っ掛かったままだが、パフェ自体は文句なしの美味しさだった。
 西口から外に出て、街コンの時にも訪れた繁華街を歩く。磨陣市内の繁華街も賑わっているが、やはり浜波市の中心地は突出している。

 ──そういえばこの辺に大きなゲーセンがあったよね。

 かつては多くの街に大小様々なゲームセンターが存在して賑わっており、浜波駅周辺も例外ではなかったと、母方の従兄いとこが以前語っていた。理世自身は、友人とプリクラを撮ったり、音ゲーの初心者向け譜面を試す程度だが、従兄のような若い頃からの生粋のアーケードゲーマーにとって、現状は嘆かわしいものらしい。

 ──ちょっと覗いてみよう。

 赤い壁が目立つ有名チェーン店のゲームセンターまで来ると、出入口付近から順に、並んだプライズマシンを見て回る。

 ──あ、おちゃらけラビット!

 店内奥の一際大きなプライズマシンには、推しキャラクターの特大サイズのぬいぐるみ。理世はガラスドアに指先を付けて、変顔を決めた推しをじっくり眺めた。

〝雑賀さんはおちゃらけラビットが一番お好きなんですか?〟

 ふいに鈴川とのやり取りと彼自身の顔を思い出してしまい、げんなりした。

 ──早く忘れなきゃね。

 理世はその場から離れると、そのまま裏口から外に出た。

 ──次は何処行こうかな。

 ほとんど無意識にショルダーバッグからスマホを取り出し、ロックを解除する。

 ──あれ?

 解除後のディスプレイには、開いていた覚えのないメモ帳アプリの新規メモが表示されていた。そして理世の指先が動くよりも先に、勝手に文字が入力され始めた。

 ──これってまさか……。

〝みぎにいけ〟

 ──右……?

 戸惑いながらも、理世はメッセージに従って歩き始めた。

 ──これは多分……憑依霊さんからだよね。

 偽イワザワさんに狙われた際、憑依霊の男は同じやり方で助け船を出してくれた。恐らく今も、理世が気付いていないだけで何かが起こっているのだろう。
 ある程度進んだところで、理世は道の端で立ち止まり、メッセージに対して質問を打ち込んだ。

〝何があったの?〟

 ひょっとしたら返事はないかもしれないと思ったが、意外にも早く回答が打ち出された。

〝とまるなふりかえるなとっととすすめ〟

「えと……何で?」理世は思わず口にした。

 次に打ち出されたメッセージの内容に、理世の心臓は大きく脈打った。

〝あとをつけられている〟




 













 






 
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