アンハッピー † デス † エンド

0gⅢ

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Ⅰ - 傲慢の檻 -

不穏な足音

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あの日から二週間経つ。
待てども待てども、あの青年はその後、この教会に一向に姿を見せる事はなかった。

あの時の出来事は夏の幻だったのか、あるいは本当に神の御使いが視察に来てたのかもしれない。などと都合の良い妄想を巡らせながら、良司はまたいつも通りの平穏な日常を過ごしていた。

今日は全国的に台風も近づき、強風で天候も悪い。
こんな悪天候の中、わざわざ教会に来る人も居ないだろう。
良司は簡易的ではあるが、教会内の補強を行っていた。
するとギィと重たい音を立て、出入り口の扉が開らき、良司の双子の息子の片割れである兄の“ミツル”が教会の中に入ってきた。

「あっ!コラ!風が強くなってるから外には出るなって言っただろう」

その姿を見つけた良司が少し声を荒らげると、ミツルはその場でビクリと肩を上下させる。

「……だって、天井のステンドグラスが割れないか心配で……ゴメンなさい 」

ミツルは頭を下げショボンとして、真上に広がるステンドグラスを上目で見つめる。
この子は天井に張り巡らされた極彩色のステンドグラスが誰よりも大好きで、暇があればここに入り浸っていた。あらかた、台風による被害を受けないか心配して、此処を訪れたのだろう。

心配そうにチラチラと目線を上げる可愛い我が子のその仕草に、良司は呆れたように笑うと優しく声をかける。

「大丈夫だよ。あとはお父さんがやっておくから、早く家に戻りなさい 」

「はーい…」

強風を受けガタガタと僅かに音を鳴らす重みを増した教会の扉を開くと、朝だと言うのに曇天により辺りは暗く、教会に来たときよりも風は強まり、雨も降り出していた。

扉の外へミツルを連れ出した良司だったが、ふと、中庭へと視線を移す。
良司が家族にも触らせない程に、手入れを行き届かせた自慢の庭も、強風に煽られた木々や草花が葉や花弁を散らしてしまっている。

「いや、大丈夫か… 」

良司は目を細めポツリとそう呟き、中庭から目を逸らすと少し強くミツルの手を握った。
帰り道の安全を確認しようと前方に顔を向けた瞬間、良司の目に見覚えのある姿が飛び込んで来た。

 視線の先、強まってきた雨風の中、傘もささずにずぶ濡れでそこに佇んでいたのは、良司が ”天使” だと揶揄していたあの、青年だった。

「ああ、やはり今日は流石にやって無いですよね……すみません。また、出直します 」

ずぶ濡れになりながら、そう困った様な笑みを浮かべて踵を返す青年に、良司は慌てて声をかける。

「ちょ!ちょっと待ってくれ!この雨風の中帰るのは危ない!!それにそのままじゃ風邪をひいてしまう。車で送るから、ひとまず建物の中へ!」

良司は元来た道を戻っていく青年を大声で呼び止め、一度教会の中に入る様に促す。

「…良いのですか?ありがとうございます 」

その提案を素直に受け入れた青年に、安堵の表情を見せた良司は、彼を教会の中へと招き入れた。

俯きゆっくりとした足取りで教会の出入口へと進む青年は、良司からはその表情を窺うことは出来ないが、その口元には薄っすらと笑みを浮かべており、強風に掻き消される様な小さな声で呟く。

「……貴方が招いたのは、招かれざる客かもしれませんが 」
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