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3.
しおりを挟む窓の外には青く澄んだ空が広がっている。
私はしばしそんな外の景色に視線をやった。
アールは私に続くように窓の外を眺めると、少し迷うようにしてから、口を開いた。
「これから、どうするんだ?」
「さあ。どうなるのかしら」
珍しく真剣味を帯びたアールの言葉に、気のない返事を返す。
これからなんて、考えたこともなかった。
新しく結婚相手を充てがわれるか、それとも修道院にでも入るか。
すぐに思い付くのはその2択だった。
けれど王太子にあんなに盛大に婚約破棄を突きつけられて、いわば傷物の私に結婚が出来るのかは定かではない。
ただ、学園は辞めることになるだろうと思う。
あんな騒ぎを起こしておいて、そのまま通い続けることをお父様が許してくれるはずがない。
「どうしてそんなことを聞くの?」
いつだって決める権利は私にはないことを、アールは知っているはずなのに。
そんな思いを込めて彼を見つめるが、その視線は未だ、窓の外にあった。
「俺の恩人は姫さんで、俺は姫さんだけのものだから。他の誰が言ったって俺は、姫さんだけの命令に従う。父親がどうとか俺には関係がない」
思いもよらない言葉に口をぽかんと開ける。
そんな私の表情を、アールは間抜け顔と言って笑う。
「だからどうしたいか思い付いたら俺に言え。叶えてやる」
こういうとき、どう応えるのが正解だろう。
力強い言葉に私は言葉を失った。
馬鹿じゃないのと思う。
道端で惨めたらしく物乞いをしていたアールを拾い上げて教育を与え、護衛として召し上げたのはこの私だ。
そんな彼が、例えどんなものであったとしても私の願いを叶えられるわけがない。
そう言って切り捨ててしまえばいいと思う。
けれどそれができないのは思いの外、アールの言葉が嬉しかったからかもしれない。
胸の中に去来したこの感情の表し方を私は知らなかった。
「そう」
結局悩んだ末、その一言だけを口から捻り出した。
流石に悪い気がしてアールの様子を伺うと、こちらを見る瞳とかちあって、どきりとする。
アールの口元には何故か満足げな笑みが浮かんでいた。
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