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変わりたい、逃げない
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声を出したのは一番右端の一番前に座っていたショートカットの女の子だ。右手を真上にまっすぐ挙げて力が入っているのがわかる。
「人間ではなく、猫になるって、あの、、、どういうことですか?そこがわからないんですが、、、」
「いいですね。積極的な人間、好きですよ。たしかに猫になるってわからないですよね。まあ、授業を受けていただければそのうちわかっていただけると思うんですが、ここでは猫のような性格やキャラ、仕草を指導していくことで少しずつ人間ではなく『猫』になっていきます。要するに猫のように可愛くて愛される性格になるわけです。そしてすべての授業を終えたときに、みなさんは人間から完全に猫になります」
「…まずはここまでおわかりいただけましたでしょうか?」
わかった。
わかったけど、わからない。
わからないの比率が大きい。
ショートカットの女の子もだまったまま。
「そうですか……う~んどうしましょうか、もう少し噛み砕いてお話ししましょうか。まあ確かにみなそんは猫になるんですが、見た目は人間のままで中身だけ猫になります。なのでこれまで同様人間のまま普通に生活できますし、何も問題はありません。ただ!」
先生(らしき人)の目がより鋭くなった。
「気をつけて欲しいことが、一つ、あります」
「それは、、、」
「………」
「…………」
だいぶ引っ張る。間が長い。もはや魔だ。
「…みなさんが猫だということがバレてしまったら、そこで完全に猫になってしまいます。見た目はもちろん、言葉も失い、二足歩行から四足歩行になり、今までとは全く違う人生、、、いや、猫生が始まってしまいます」
今まで以上に教室は静かになった。
静かを通りこしてどよーんとした重い空気になった。
何を言っているのかわからない人もいるはず。何を言っているのかわかっていてもその事実についていけない人もいるはず。
みんな何か言いたい、でも言えない、そんな雰囲気だった。
「でもね、必ず人気者になれます。それはお約束します。人間じゃなくなりますがバレなければ最高の人生が待っていますが・・・さて、どうしますか?」
♪キーンコーン カーンコーン
キーンコーン カーンコーン~
チャイムが鳴っても、黒コートの先生は立ち尽くしたまま。生徒の反応を伺っている様子だった。
でも、みんな席についたまま誰も立ち上がらない。おそらく立ち上がれない人がほとんど。
普通ならこんなところからすぐにでも逃げ出して、今までの世界に戻りたい、そう思うことだろう。でも今ここに集まっているわたしと同年代の女子たちは、何かに悩み、何かを抱えていた。だからこそ、誰も立ち去ろうとしなかった。もちろん、わたしもその一人だ。
みんな迷っている。自分を変えることに、自分が変わることに迷っている。
変えたい、けど、こわい。
でもやってみなければ何も始まらない。こんな場所で、こんな時にそのタイミングが訪れるとは思わなかったけど、いつかは迎えなければならなかったターニングポイントだ。
だからやってみよう、そんな想いもみんなの表情から伝わってくる。
わたしも同じ気持ちだった。ここから逃げることは簡単だけど、逃げたら何も変わらない。変わりたいんだ、わたしは。自分では何もできないけど、変えたい。
わたしは立ち上がらない。逃げない、そう決めた。
「人間ではなく、猫になるって、あの、、、どういうことですか?そこがわからないんですが、、、」
「いいですね。積極的な人間、好きですよ。たしかに猫になるってわからないですよね。まあ、授業を受けていただければそのうちわかっていただけると思うんですが、ここでは猫のような性格やキャラ、仕草を指導していくことで少しずつ人間ではなく『猫』になっていきます。要するに猫のように可愛くて愛される性格になるわけです。そしてすべての授業を終えたときに、みなさんは人間から完全に猫になります」
「…まずはここまでおわかりいただけましたでしょうか?」
わかった。
わかったけど、わからない。
わからないの比率が大きい。
ショートカットの女の子もだまったまま。
「そうですか……う~んどうしましょうか、もう少し噛み砕いてお話ししましょうか。まあ確かにみなそんは猫になるんですが、見た目は人間のままで中身だけ猫になります。なのでこれまで同様人間のまま普通に生活できますし、何も問題はありません。ただ!」
先生(らしき人)の目がより鋭くなった。
「気をつけて欲しいことが、一つ、あります」
「それは、、、」
「………」
「…………」
だいぶ引っ張る。間が長い。もはや魔だ。
「…みなさんが猫だということがバレてしまったら、そこで完全に猫になってしまいます。見た目はもちろん、言葉も失い、二足歩行から四足歩行になり、今までとは全く違う人生、、、いや、猫生が始まってしまいます」
今まで以上に教室は静かになった。
静かを通りこしてどよーんとした重い空気になった。
何を言っているのかわからない人もいるはず。何を言っているのかわかっていてもその事実についていけない人もいるはず。
みんな何か言いたい、でも言えない、そんな雰囲気だった。
「でもね、必ず人気者になれます。それはお約束します。人間じゃなくなりますがバレなければ最高の人生が待っていますが・・・さて、どうしますか?」
♪キーンコーン カーンコーン
キーンコーン カーンコーン~
チャイムが鳴っても、黒コートの先生は立ち尽くしたまま。生徒の反応を伺っている様子だった。
でも、みんな席についたまま誰も立ち上がらない。おそらく立ち上がれない人がほとんど。
普通ならこんなところからすぐにでも逃げ出して、今までの世界に戻りたい、そう思うことだろう。でも今ここに集まっているわたしと同年代の女子たちは、何かに悩み、何かを抱えていた。だからこそ、誰も立ち去ろうとしなかった。もちろん、わたしもその一人だ。
みんな迷っている。自分を変えることに、自分が変わることに迷っている。
変えたい、けど、こわい。
でもやってみなければ何も始まらない。こんな場所で、こんな時にそのタイミングが訪れるとは思わなかったけど、いつかは迎えなければならなかったターニングポイントだ。
だからやってみよう、そんな想いもみんなの表情から伝わってくる。
わたしも同じ気持ちだった。ここから逃げることは簡単だけど、逃げたら何も変わらない。変わりたいんだ、わたしは。自分では何もできないけど、変えたい。
わたしは立ち上がらない。逃げない、そう決めた。
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