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曲がり角から人影が現れた。
エラはぴたりと立ち止まる。
「……ッ!」
何かに気づいたエラは、顔色を変えて身を翻そうとする。
しかしーー。
がしり、と腕を掴まれてしまい、その場の逃走を封じられてしまった。
「おいおい、そんな逃げなくてもいいだろ?」
力が強く、ふりほどくことはできない。
「いえ、忘れ物をしてしまったので取りに戻ろうとしただけです」
「ハハッ、んな見え透いた嘘付くなよ。お前がそんなヘマするわけねぇだろ。なぁ、灰被りちゃん?」
口調は荒く、高圧的な声色。そして灰被りという不思議な呼び名。
「ちょっと、離してくださいよ……!」
大柄で精力的な身体つきをしており、筋肉質な腕はまだ幼く軽いエラの体は容易に持ち上げられてしまう。
「ふむ……」
じろじろと全身を見定められている。
まるで肉食の危険生物に捕らわれてしまったような感覚になる。
しかし、その顔は大雑把で凶悪ーーというわけではなく、むしろ言動からは全く似つかわしくない程に美しく整っていた。高い鼻に切れ長の瞳、薄い唇は自信満々に三日月を形どっている。
そして、彼女の最も特徴的な部分といえば、配達屋の制服に上に身に付けている、濃い朱色のフード付きマントである。
「お前、相変わらずかっるいなぁ。ちゃんとご飯食べてんのか?」
「これからそのつもりでしたが。ボロが待ってるので、早く離して欲しいのですが」
エラは目を細め声を低くした。これでも精一杯威嚇をしているつもりだったのだが、どうやら少しも効いていないらしく、代わりに不思議そうな顔をしていた。
「ボロ?」
「私の相棒です」
長い睫毛がぱちぱちと上下に揺れる。そして、何かを思い出したかのような調子で言う。
「あぁ、あのへっぽこ竜か」
「一言余計です。否定はできませんが」
「ハッ、まぁなんでもいいや。俺ァあのおっさんに呼ばれてな。んで来てみたらお前がいたってことだ」
にやりと笑う。ハンス局長とはまた違った不気味さがあり、エラはそんな彼女のことが苦手であった。
「そうですか。では早急にハンス局長のところへ向かってください。私なんかに構っている暇はないはずです」
「そんな冷たく言うか? 一応、お前の先輩なんだぜ? ま、従順なやつより生意気なやつのほうがからかい甲斐があるから良いけどよ」
そう言うと、吊り上げていた腕をパッと離す。
「わっ! ちょっと、危ないです! いきなり離さないでくださいよ!」
一瞬の浮遊感に戸惑いつつも、何とか着地が出来たエラは、乱暴な扱いをされたことに憤り詰め寄る。
しかし、どうやらエラの凄みは全く効いておらず、むしろ余裕そうな笑みを浮かべていた。
「くくっ、ほんっとに面白いやつ。けど悪ぃな、おっさんの話が終わったらまた構ってやるからな。じゃあまたな、灰被りちゃん」
「ちょ、ちょっと……!」
彼女はエラの頭にポンと手を乗せ、まるで小動物を愛でるように撫で付ける。
髪の毛がくしゃくしゃになり、更に機嫌が悪そうな顔をするエラを見て、満足そうに笑った後、ひらひらと手を振り、彼女はそのまま郵便局へと向かっていく。
(……はぁ。久しぶりに会ったけど、やっぱり私、あの人のことちょっと苦手かも……)
エラは乱れた髪を直しつつ、背中で揺れる赤いマントを見据える。
彼女の名はブラン=マーガレット。エラが所属している妖精猫の中でも有名な郵便屋であり、エラは彼女に対して苦手意識を抱いていた。
とは言え、配達屋としては三ツ星の実力を持っており、その点においては尊敬している。
「あ、そんなことより、ボロにご飯を食べさせないと」
エラは空腹で機嫌を損ねるボロの顔が頭に浮かび、急いでボロの元へと向かう。
案の定、正面の玄関前で体を小さくまとめていたボロはエラの顔を見るなり飛び付いてきた。
「遅かったよぉ! お腹空いたぁ!」
「ああもう、分かった、分かったから。こんな所で騒がないで」
腕に力をいれて押し退けると、寂しそうな顔を見せていた。かなり限界に近いようである。
「だってもう僕、ペコペコ過ぎてもう歩けないくらいなんだもん!」
「その割には中々元気そうね……。まぁ、話はそこまで長いわけじゃなかったんだけど、その後に……ちょっとね」
「うん? 何かあったの?」
ボロは首をかしげる。
「話すと少し時間かかるから後でね。とりあえず、ご飯を食べに行こう。局長からお昼代を貰ったから、これで何でも食べていいよ」
「え!? 本当!? やった! じゃあ僕大きな肉が食べたいな!」
ボロは畳んでいた翼を大きく広げ、ドンドンと軽く跳び跳ねた。エラの足元が軽く揺れている。はしゃぐのは構わないが、大通りではあまりにも目立ってしまう。
「ボロ、そんな跳び跳ねたら周りの迷惑になるでしょ」
エラは周囲の人々の視線に気付き注意する。ボロはハッとした表情をして「あ、そうだった。ごめんごめん」と身体を小さくした。
それでも尻尾だけはビタン、ビタンと上機嫌にレンガの床を叩いている。
「よし、ほら早く行こう。たくさん食べて、次のお仕事に備えないと!」
ボロは己の頭でエラの背中をぐいぐいと押し出す。余程料理店へ行きたいのだろう、と思いながらエラは歩き出す。
「うん、そうだね。それに今日は非番の日だし、ご飯食べたら消耗品とか買い足しにいかないと」
「えぇ~、明日もお休みでしょ? それなら今日はこのままご飯食べたら、何もせずにグダグダしたいけどなぁ」
「だめ。やるべきことは早めにやらないと。そしたら明日はゆっくり休養できるでしょう?」
「真面目だねぇ」
「それだけが私の取り柄だから」
エラは自信満々に言う。
ボロは口元を緩めた。
「アハハ、エラほどマメで真面目な子なんて見たことないもん」
「別にやるべきことをやってるだけだよ。ボロももう少しちゃんとしてくれたらいいんだけどね?」
目を細めるエラを見て、ボロは苦笑いを浮かべた。
「あ、お店が見えてきたよ。早く行こう!」
タイミング良く目的の料理店の看板が遠くに現れ、ボロは逃げるように駆け出した。
「全く……」
調子のいい竜である。
エラは店の中に入っていったボロを追いかける。
店の看板には『思い出食堂』とやけに古めかしい文字で書かれていた。外装も何処か懐かしい雰囲気に身を包んでおり、その店の中からは賑わっている声が漏れ出ている。
正面の入口はどんな者でも中には入れるように配慮されているのか、かなり大きい。更にそこには上半分を覆う紺色の布が垂れ下がっており、店名が白い文字で書かれていた。
確か……この布の名前は暖簾だったはずだ。ここら辺りでは見掛けないが、どうやら何処かの島国ではごく当たり前の風習なようで、そういったところもこの店の特異性が現れていた。
扉は開いており、暖簾をくぐると中は広々とした空間を埋め尽くす程に客の賑わいがあった。中央には幅広く長い机が店を縦断しており、それを取り囲むように人が座っている。その周囲にはまた違うタイプの円状の机があり、どうやらそこを利用する客は子連れの者や男女のカップルがほとんどなようだ。
ここは老若男女が連日集う人気店。開店してからまだ日は浅いものの、この先もずっと繁盛していくのは誰の目から見ても明白である。
「いらっしゃいませー!!」
エラが入店したことに気づいた一人の従業員が、景気の良いかすれ気味の甲高い声を上げて駆け寄ってくる。
「あ、エラお姉ちゃん! もうお仕事は終わったの?」
とびきりの笑顔で出迎えてくれたのは小さな少年だった。エラは己よりも小さな子供が、このような場所で働いていることに疑問を抱くことはない。
更に、その少年の声を聞き付けてか、他の従業員もエラの存在に気付き大振りに手を振ってくる。
「ううん、今日はお休みだよ。それにしても、ここはいつ来ても繁盛してるね」
エラは歓迎してくれる彼らに対し、小さく手を振り返す。
「うん! だってカグヤお姉ちゃんのご飯は全部美味しいから当たり前だよ!」
少年は鼻高々に胸を張り、店の奥にあるカウンターに視線を向ける。そこには店主がパタパタと忙しなく動き続けていた。
連日客が席を埋める大衆料理店。
そこを切り盛りする店主と聞けば、誰もが大柄で力強い大男と想像することだろう。
しかし、エラの目に写っていたのは、年端も行かぬ可憐な少女であった。
彼女の名はカグヤ=シキミヤ。若くして料理店の店主であり、彼女の働きっぷりは大の大人ですら圧巻の一言であった。
彼女はいくつもの料理品を同時並行にこなし、次々と注文された品を作り上げていく。無駄がなく、洗練された手つきは見惚れてしまう程である。しばらくの間彼女の手際を見ていると、顔を上げた彼女と偶然目が合い、嬉しそうに小振りに手を振ってくれた。
エラは小さく会釈をすると、中央のテーブル付近から野太い声が聞こえてきた。
「あ、注文が入ったから僕もう行くね! エラお姉ちゃんもたくさん食べていってね!」
少年はそう言って従業員を呼んだ客の方へと小走りで向かっていった。
「それにしても……どこにいるんだろう」
エラは周囲を見渡す。いつもであれば、ボロが遠くにいても簡単に見つけれてしまうが、ここは他の大柄な客に埋もれてしまう。
外周りには姿は見えない。となると、中央に集まる屈強な男達の中に囲まれているのかも知れない。
ボロを探そうと中央のテーブルに向かおうとした時、その中にいた一人の男がおもむろに立ち上がり怒声を上げた。
「俺をなめてるのか!!!!?」
エラはぴたりと立ち止まる。
「……ッ!」
何かに気づいたエラは、顔色を変えて身を翻そうとする。
しかしーー。
がしり、と腕を掴まれてしまい、その場の逃走を封じられてしまった。
「おいおい、そんな逃げなくてもいいだろ?」
力が強く、ふりほどくことはできない。
「いえ、忘れ物をしてしまったので取りに戻ろうとしただけです」
「ハハッ、んな見え透いた嘘付くなよ。お前がそんなヘマするわけねぇだろ。なぁ、灰被りちゃん?」
口調は荒く、高圧的な声色。そして灰被りという不思議な呼び名。
「ちょっと、離してくださいよ……!」
大柄で精力的な身体つきをしており、筋肉質な腕はまだ幼く軽いエラの体は容易に持ち上げられてしまう。
「ふむ……」
じろじろと全身を見定められている。
まるで肉食の危険生物に捕らわれてしまったような感覚になる。
しかし、その顔は大雑把で凶悪ーーというわけではなく、むしろ言動からは全く似つかわしくない程に美しく整っていた。高い鼻に切れ長の瞳、薄い唇は自信満々に三日月を形どっている。
そして、彼女の最も特徴的な部分といえば、配達屋の制服に上に身に付けている、濃い朱色のフード付きマントである。
「お前、相変わらずかっるいなぁ。ちゃんとご飯食べてんのか?」
「これからそのつもりでしたが。ボロが待ってるので、早く離して欲しいのですが」
エラは目を細め声を低くした。これでも精一杯威嚇をしているつもりだったのだが、どうやら少しも効いていないらしく、代わりに不思議そうな顔をしていた。
「ボロ?」
「私の相棒です」
長い睫毛がぱちぱちと上下に揺れる。そして、何かを思い出したかのような調子で言う。
「あぁ、あのへっぽこ竜か」
「一言余計です。否定はできませんが」
「ハッ、まぁなんでもいいや。俺ァあのおっさんに呼ばれてな。んで来てみたらお前がいたってことだ」
にやりと笑う。ハンス局長とはまた違った不気味さがあり、エラはそんな彼女のことが苦手であった。
「そうですか。では早急にハンス局長のところへ向かってください。私なんかに構っている暇はないはずです」
「そんな冷たく言うか? 一応、お前の先輩なんだぜ? ま、従順なやつより生意気なやつのほうがからかい甲斐があるから良いけどよ」
そう言うと、吊り上げていた腕をパッと離す。
「わっ! ちょっと、危ないです! いきなり離さないでくださいよ!」
一瞬の浮遊感に戸惑いつつも、何とか着地が出来たエラは、乱暴な扱いをされたことに憤り詰め寄る。
しかし、どうやらエラの凄みは全く効いておらず、むしろ余裕そうな笑みを浮かべていた。
「くくっ、ほんっとに面白いやつ。けど悪ぃな、おっさんの話が終わったらまた構ってやるからな。じゃあまたな、灰被りちゃん」
「ちょ、ちょっと……!」
彼女はエラの頭にポンと手を乗せ、まるで小動物を愛でるように撫で付ける。
髪の毛がくしゃくしゃになり、更に機嫌が悪そうな顔をするエラを見て、満足そうに笑った後、ひらひらと手を振り、彼女はそのまま郵便局へと向かっていく。
(……はぁ。久しぶりに会ったけど、やっぱり私、あの人のことちょっと苦手かも……)
エラは乱れた髪を直しつつ、背中で揺れる赤いマントを見据える。
彼女の名はブラン=マーガレット。エラが所属している妖精猫の中でも有名な郵便屋であり、エラは彼女に対して苦手意識を抱いていた。
とは言え、配達屋としては三ツ星の実力を持っており、その点においては尊敬している。
「あ、そんなことより、ボロにご飯を食べさせないと」
エラは空腹で機嫌を損ねるボロの顔が頭に浮かび、急いでボロの元へと向かう。
案の定、正面の玄関前で体を小さくまとめていたボロはエラの顔を見るなり飛び付いてきた。
「遅かったよぉ! お腹空いたぁ!」
「ああもう、分かった、分かったから。こんな所で騒がないで」
腕に力をいれて押し退けると、寂しそうな顔を見せていた。かなり限界に近いようである。
「だってもう僕、ペコペコ過ぎてもう歩けないくらいなんだもん!」
「その割には中々元気そうね……。まぁ、話はそこまで長いわけじゃなかったんだけど、その後に……ちょっとね」
「うん? 何かあったの?」
ボロは首をかしげる。
「話すと少し時間かかるから後でね。とりあえず、ご飯を食べに行こう。局長からお昼代を貰ったから、これで何でも食べていいよ」
「え!? 本当!? やった! じゃあ僕大きな肉が食べたいな!」
ボロは畳んでいた翼を大きく広げ、ドンドンと軽く跳び跳ねた。エラの足元が軽く揺れている。はしゃぐのは構わないが、大通りではあまりにも目立ってしまう。
「ボロ、そんな跳び跳ねたら周りの迷惑になるでしょ」
エラは周囲の人々の視線に気付き注意する。ボロはハッとした表情をして「あ、そうだった。ごめんごめん」と身体を小さくした。
それでも尻尾だけはビタン、ビタンと上機嫌にレンガの床を叩いている。
「よし、ほら早く行こう。たくさん食べて、次のお仕事に備えないと!」
ボロは己の頭でエラの背中をぐいぐいと押し出す。余程料理店へ行きたいのだろう、と思いながらエラは歩き出す。
「うん、そうだね。それに今日は非番の日だし、ご飯食べたら消耗品とか買い足しにいかないと」
「えぇ~、明日もお休みでしょ? それなら今日はこのままご飯食べたら、何もせずにグダグダしたいけどなぁ」
「だめ。やるべきことは早めにやらないと。そしたら明日はゆっくり休養できるでしょう?」
「真面目だねぇ」
「それだけが私の取り柄だから」
エラは自信満々に言う。
ボロは口元を緩めた。
「アハハ、エラほどマメで真面目な子なんて見たことないもん」
「別にやるべきことをやってるだけだよ。ボロももう少しちゃんとしてくれたらいいんだけどね?」
目を細めるエラを見て、ボロは苦笑いを浮かべた。
「あ、お店が見えてきたよ。早く行こう!」
タイミング良く目的の料理店の看板が遠くに現れ、ボロは逃げるように駆け出した。
「全く……」
調子のいい竜である。
エラは店の中に入っていったボロを追いかける。
店の看板には『思い出食堂』とやけに古めかしい文字で書かれていた。外装も何処か懐かしい雰囲気に身を包んでおり、その店の中からは賑わっている声が漏れ出ている。
正面の入口はどんな者でも中には入れるように配慮されているのか、かなり大きい。更にそこには上半分を覆う紺色の布が垂れ下がっており、店名が白い文字で書かれていた。
確か……この布の名前は暖簾だったはずだ。ここら辺りでは見掛けないが、どうやら何処かの島国ではごく当たり前の風習なようで、そういったところもこの店の特異性が現れていた。
扉は開いており、暖簾をくぐると中は広々とした空間を埋め尽くす程に客の賑わいがあった。中央には幅広く長い机が店を縦断しており、それを取り囲むように人が座っている。その周囲にはまた違うタイプの円状の机があり、どうやらそこを利用する客は子連れの者や男女のカップルがほとんどなようだ。
ここは老若男女が連日集う人気店。開店してからまだ日は浅いものの、この先もずっと繁盛していくのは誰の目から見ても明白である。
「いらっしゃいませー!!」
エラが入店したことに気づいた一人の従業員が、景気の良いかすれ気味の甲高い声を上げて駆け寄ってくる。
「あ、エラお姉ちゃん! もうお仕事は終わったの?」
とびきりの笑顔で出迎えてくれたのは小さな少年だった。エラは己よりも小さな子供が、このような場所で働いていることに疑問を抱くことはない。
更に、その少年の声を聞き付けてか、他の従業員もエラの存在に気付き大振りに手を振ってくる。
「ううん、今日はお休みだよ。それにしても、ここはいつ来ても繁盛してるね」
エラは歓迎してくれる彼らに対し、小さく手を振り返す。
「うん! だってカグヤお姉ちゃんのご飯は全部美味しいから当たり前だよ!」
少年は鼻高々に胸を張り、店の奥にあるカウンターに視線を向ける。そこには店主がパタパタと忙しなく動き続けていた。
連日客が席を埋める大衆料理店。
そこを切り盛りする店主と聞けば、誰もが大柄で力強い大男と想像することだろう。
しかし、エラの目に写っていたのは、年端も行かぬ可憐な少女であった。
彼女の名はカグヤ=シキミヤ。若くして料理店の店主であり、彼女の働きっぷりは大の大人ですら圧巻の一言であった。
彼女はいくつもの料理品を同時並行にこなし、次々と注文された品を作り上げていく。無駄がなく、洗練された手つきは見惚れてしまう程である。しばらくの間彼女の手際を見ていると、顔を上げた彼女と偶然目が合い、嬉しそうに小振りに手を振ってくれた。
エラは小さく会釈をすると、中央のテーブル付近から野太い声が聞こえてきた。
「あ、注文が入ったから僕もう行くね! エラお姉ちゃんもたくさん食べていってね!」
少年はそう言って従業員を呼んだ客の方へと小走りで向かっていった。
「それにしても……どこにいるんだろう」
エラは周囲を見渡す。いつもであれば、ボロが遠くにいても簡単に見つけれてしまうが、ここは他の大柄な客に埋もれてしまう。
外周りには姿は見えない。となると、中央に集まる屈強な男達の中に囲まれているのかも知れない。
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