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第二百七十一話 よみがえる山羊の村
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「結局、見つかったのは一匹だけか」
カレンが静かに悪魔たちを蹂躙した後。フローネの治療によって回復したアマルテイアを保護したカズキ達は、洞窟エリアをクリアして、次の階層へと足を踏み入れた。
「何もない空間にポツンとコアが一つ。となるとサタナキアがこのダンジョンのボスだったという事?」
「多分な。ボスが自由に徘徊してるってのは、初めてのパターンだから何とも言えないが」
ラクトの呟きにカズキが答える。世界的なボーダーブレイクが発生した際、方々のダンジョンを潰しまくったカズキが言うからには、本当に珍しい事なのだと思われた。
「そうだとしたら危ねえな」
耐性のあるラクト達とは違い、豹変したカレンの姿にドン引きしていたエグベルトが、久々に会話に入ってくる。
この世界の人間だけあって、ダンジョンのルールが崩れ、最奥のボスが自由にダンジョン内を闊歩している可能性があるのは由々しき事態と言えるからだ。
「確かに。最下層のボスは、一つ上のランクのモンスターですからね。それが上層を主戦場とする冒険者と遭遇する事になったら・・・・・・」
そう言ってマイネが身を震わせる。実戦経験を積むために入ったプラチナダンジョンの一層目で苦戦していた時、そこにボスモンスターが現れていたらと思ってしまったのだ。
「まあその辺りは冒険者ギルドに注意喚起してもらうしかないな。『急激にランクアップしたダンジョンには気をつけろ』って」
「・・・・・・どうしてそう言い切れる?」
やけに具体的な対策を口にしたカズキに、エグベルトが疑問の表情を浮かべる。それに対するカズキの答えは明快だった。
「ダンジョンコアってのは一つ一つ瘴気の処理能力が違う。これが高ければ高い程、ダンジョンのランクが上になるんだが、それには燃料となる瘴気が必要だ」
「つまり、最近までプラチナランクだったこのダンジョンのコアは、元々オリハルコンランクになれる能力があったって事か?」
「ああ」
半信半疑なエグベルトに、過去に行った”実験”の事を話したカズキは、そのまま先を続ける。
「このダンジョンの場合は、ベヒモスが現れる直前、世界中に瘴気が蔓延した際に、処理能力の限界まで瘴気を得た事で、オリハルコンダンジョンに進化した。ボスが自由に徘徊してたのは、ダンジョンの拡張が急激に起こったせいで、コアの制御を離れたからだ」
「カズキにしては珍しく、やけに断定的に話すね。・・・・・・もしかして、過去を見た?」
「ああ。ちょっと気になったからな」
ラクトの疑問にズルをしていたとあっさり認めたカズキは、これでこの件は片付いたとばかりに、左の掌を上に向ける。すると次の瞬間に、この部屋にあるダンジョンコアに酷似した物が現れた。
「・・・・・それは?」
色々と諦めた表情になったエグベルトが、カズキが手にした球体に興味を示す。どうやら彼も、着々とカズキに毒されているらしかった。
「疑似ダンジョンコア。そこにあるダンジョンコアから、ちょびっと瘴気を分捕った物だな。これを村にあるブロンズダンジョンのコアと入れ替えれば――」
「ハナコの体調が良くなるんだな!」
カズキの言いたい事を理解したエグベルトが、嬉しそうな顔で叫び声を上げる。アマルテイアを始めとする山羊たちが段々と減っていき、それに伴って衰退していく村をどうにかしようと頑張ってきた事が、カズキのお陰にせよ漸く報われたのだから、喜びも一入なのだろう。
「そういう事だ。じゃあ早速帰って、村のダンジョンのコアを差し替えるか」
カズキはそう言って、万が一にもダンジョンコアを壊されないよう、最下層への入り口を魔法で塞いでから、【テレポート】で村へと帰還した。
「こっちだ!」
村に到着するなり大股で歩き出したエグベルトの後を付いていくと、村の中央辺りにぽっかりと大穴が開いていた。その穴には親切にもなだらかなスロープがあり、少し降りると地下なのに牧草地が広がっている。どうやらここが、村にあるダンジョンらしかった。
「エグベルト! 首尾はどうだったんだ!?」
コアがあるという場所へと移動していると、山羊たちの様子を見ていた村人たちの内の一人――エグベルトと一緒に、ハナコを癒す手段はないかと世界中を旅していたおっさん――が声を掛けて来た。
「バッチリだ! ハナコの不調を治す手段は勿論、新しいアマルテイアも一匹手に入った!」
「「「「おおっ!」」」」
「それだけじゃない! ヘイズルーンという、極上の蜜酒を供給してくれる山羊もいっしょだ!」
「「「「マジか!」」」」
やはりハナコの事が心配だったのだろう。エグベルトの話を聞いた村人たちは、興奮の色を隠せない様だった。
「マジだ! それをカズキさんが今から証明してくれる! その瞬間に立ち会いたいなら、ダンジョンコアのある場所まで来てくれ!」
「「「「うおおおおおおおおお!」」」」
エグベルトの言葉に答えて、村人たちは方々へ散っていく。今この場にいない他の村人たちに声を掛ける為だ。
そして10分後。全ての村人たちが集まったところでダンジョンコアの入れ替えが行われ、新しく飼育する事になった山羊たちのお披露目も行われると、当然の様に宴会へと発展。
翌日にはダンジョンのそこかしこで、二日酔いに苦しみながらも笑顔で山羊たちの世話をする村人たちの姿があったという。
カレンが静かに悪魔たちを蹂躙した後。フローネの治療によって回復したアマルテイアを保護したカズキ達は、洞窟エリアをクリアして、次の階層へと足を踏み入れた。
「何もない空間にポツンとコアが一つ。となるとサタナキアがこのダンジョンのボスだったという事?」
「多分な。ボスが自由に徘徊してるってのは、初めてのパターンだから何とも言えないが」
ラクトの呟きにカズキが答える。世界的なボーダーブレイクが発生した際、方々のダンジョンを潰しまくったカズキが言うからには、本当に珍しい事なのだと思われた。
「そうだとしたら危ねえな」
耐性のあるラクト達とは違い、豹変したカレンの姿にドン引きしていたエグベルトが、久々に会話に入ってくる。
この世界の人間だけあって、ダンジョンのルールが崩れ、最奥のボスが自由にダンジョン内を闊歩している可能性があるのは由々しき事態と言えるからだ。
「確かに。最下層のボスは、一つ上のランクのモンスターですからね。それが上層を主戦場とする冒険者と遭遇する事になったら・・・・・・」
そう言ってマイネが身を震わせる。実戦経験を積むために入ったプラチナダンジョンの一層目で苦戦していた時、そこにボスモンスターが現れていたらと思ってしまったのだ。
「まあその辺りは冒険者ギルドに注意喚起してもらうしかないな。『急激にランクアップしたダンジョンには気をつけろ』って」
「・・・・・・どうしてそう言い切れる?」
やけに具体的な対策を口にしたカズキに、エグベルトが疑問の表情を浮かべる。それに対するカズキの答えは明快だった。
「ダンジョンコアってのは一つ一つ瘴気の処理能力が違う。これが高ければ高い程、ダンジョンのランクが上になるんだが、それには燃料となる瘴気が必要だ」
「つまり、最近までプラチナランクだったこのダンジョンのコアは、元々オリハルコンランクになれる能力があったって事か?」
「ああ」
半信半疑なエグベルトに、過去に行った”実験”の事を話したカズキは、そのまま先を続ける。
「このダンジョンの場合は、ベヒモスが現れる直前、世界中に瘴気が蔓延した際に、処理能力の限界まで瘴気を得た事で、オリハルコンダンジョンに進化した。ボスが自由に徘徊してたのは、ダンジョンの拡張が急激に起こったせいで、コアの制御を離れたからだ」
「カズキにしては珍しく、やけに断定的に話すね。・・・・・・もしかして、過去を見た?」
「ああ。ちょっと気になったからな」
ラクトの疑問にズルをしていたとあっさり認めたカズキは、これでこの件は片付いたとばかりに、左の掌を上に向ける。すると次の瞬間に、この部屋にあるダンジョンコアに酷似した物が現れた。
「・・・・・それは?」
色々と諦めた表情になったエグベルトが、カズキが手にした球体に興味を示す。どうやら彼も、着々とカズキに毒されているらしかった。
「疑似ダンジョンコア。そこにあるダンジョンコアから、ちょびっと瘴気を分捕った物だな。これを村にあるブロンズダンジョンのコアと入れ替えれば――」
「ハナコの体調が良くなるんだな!」
カズキの言いたい事を理解したエグベルトが、嬉しそうな顔で叫び声を上げる。アマルテイアを始めとする山羊たちが段々と減っていき、それに伴って衰退していく村をどうにかしようと頑張ってきた事が、カズキのお陰にせよ漸く報われたのだから、喜びも一入なのだろう。
「そういう事だ。じゃあ早速帰って、村のダンジョンのコアを差し替えるか」
カズキはそう言って、万が一にもダンジョンコアを壊されないよう、最下層への入り口を魔法で塞いでから、【テレポート】で村へと帰還した。
「こっちだ!」
村に到着するなり大股で歩き出したエグベルトの後を付いていくと、村の中央辺りにぽっかりと大穴が開いていた。その穴には親切にもなだらかなスロープがあり、少し降りると地下なのに牧草地が広がっている。どうやらここが、村にあるダンジョンらしかった。
「エグベルト! 首尾はどうだったんだ!?」
コアがあるという場所へと移動していると、山羊たちの様子を見ていた村人たちの内の一人――エグベルトと一緒に、ハナコを癒す手段はないかと世界中を旅していたおっさん――が声を掛けて来た。
「バッチリだ! ハナコの不調を治す手段は勿論、新しいアマルテイアも一匹手に入った!」
「「「「おおっ!」」」」
「それだけじゃない! ヘイズルーンという、極上の蜜酒を供給してくれる山羊もいっしょだ!」
「「「「マジか!」」」」
やはりハナコの事が心配だったのだろう。エグベルトの話を聞いた村人たちは、興奮の色を隠せない様だった。
「マジだ! それをカズキさんが今から証明してくれる! その瞬間に立ち会いたいなら、ダンジョンコアのある場所まで来てくれ!」
「「「「うおおおおおおおおお!」」」」
エグベルトの言葉に答えて、村人たちは方々へ散っていく。今この場にいない他の村人たちに声を掛ける為だ。
そして10分後。全ての村人たちが集まったところでダンジョンコアの入れ替えが行われ、新しく飼育する事になった山羊たちのお披露目も行われると、当然の様に宴会へと発展。
翌日にはダンジョンのそこかしこで、二日酔いに苦しみながらも笑顔で山羊たちの世話をする村人たちの姿があったという。
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