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第二百九十七話 カズキ、魔剣を量産する その4
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「これが私の武器よ」
エルザはそう言うと、カズキに愛用のメイスを手渡した。
「結構ずっしりきますね」
受け取ったカズキはその予想外の重さに驚いた。今は慣れたが、普段練習で使っている、刃引きされたロングソードよりも明らかに重かったのだ。
「先端の重みでダメージを与える武器だからね。剣なんかよりもよっぽど威力はあるわ」
「確かに殴られたら痛そうですね。扱いも剣よりは簡単そうだし、僕もこっちにしようかな?」
最近行き詰まりを感じていたカズキは、半ば本気で武器の変更を申し出る。
「それは駄目よ」
だがその提案は、一言でエルザに切り捨てられた。
「ご、御免なさい! わざわざ教えてもらっているのに」
秒で却下されたカズキは、エルザの機嫌を損ねてしまったと思って必死に謝る。だがエルザはそんな理由で否定したのではなかった。
「どうしてもと言うなら止めないけど、私は剣の方が良いと思う。だって、メイスを振り回す魔法使いより、剣でスマートに戦う魔法使いの方が恰好良いでしょ?」
ただ単に、弟には格好良くいて欲しかったのだ。
「・・・・・・確かに」
そしてカズキもまた、その言葉に納得する部分があった。
彼が日本にいた時に読んだファンタジー小説でも、ほぼ全ての魔法戦士は剣を使っていたのだから。
「じゃあエルザさ」
「お姉ちゃん」
「・・・・・・お姉ちゃんがメイスを使っているのもそういう理由なんですか?」
カズキはそう言いながら、同じくファンタジー小説の回復職の事を思い出した。やはり彼ら彼女らは、メイン武器にメイス系を使っている事が多かったのだ。
「それは戒律で決まっているからよ。神職に就くものは、殺傷力のある武器を使ってはならないとかなんとか。実際にはメイスの方が殺傷力が高いと思うのだけど」
因みにだが、カズキに剣術を教えているのはエルザである。その時は刃引きされた剣を使っているので、扱いは鈍器という事になるらしい。
「おや? エルザ様とカズキ殿ではないですか。お二人も武具の点検に?」
いつの間にか話が脱線し、気付けば30分以上話し込んでいた二人が我に返ったのは、自身の武具の点検にきたという第一騎士団長に声を掛けられたからだった。
「少し違うわ。カズキが魔法を掛けた食器が面倒な手入れが不要になったから、私のメイスにも同じ事が出来ないかと思ってここに来たの」
「それは興味深い話ですな。良ければ見学させてもらっても?」
「ええ。構いませんよ」
二人が見守る中、カズキはエルザに返したメイスに魔法を掛ける。見た目はそんなに変わった感じはなかったが、エルザは明確に違いを感じ取っていた。
「メイスが軽くなってるわ」
「本当ですか?」
「ええ。持ってみなさい」
「・・・・・・確かに。半分くらいの重さになってますね」
「でしょ?」
「わ、私にも良いですか?」
「構わないわよ」
「おお! 確かに軽い」
エルザの許可を得た騎士団長がメイスの軽さに驚く。彼は冒険者時代に様々な武器を扱っていた為、メイスの重さを知っているのだ。
「じゃあ次はコッチね」
「えっ?」
これで仕事? も終わりと完全に気を抜いていたカズキに、エルザが自身の為に誂えられた儀礼用の鎧を指し示す。
式典の時しか着用しないのに、無駄に重量のある鎧を長時間着る事を内心で面倒に思っていたエルザが、この絶好の機会を逃すわけがなかったのだ。
エルザはそう言うと、カズキに愛用のメイスを手渡した。
「結構ずっしりきますね」
受け取ったカズキはその予想外の重さに驚いた。今は慣れたが、普段練習で使っている、刃引きされたロングソードよりも明らかに重かったのだ。
「先端の重みでダメージを与える武器だからね。剣なんかよりもよっぽど威力はあるわ」
「確かに殴られたら痛そうですね。扱いも剣よりは簡単そうだし、僕もこっちにしようかな?」
最近行き詰まりを感じていたカズキは、半ば本気で武器の変更を申し出る。
「それは駄目よ」
だがその提案は、一言でエルザに切り捨てられた。
「ご、御免なさい! わざわざ教えてもらっているのに」
秒で却下されたカズキは、エルザの機嫌を損ねてしまったと思って必死に謝る。だがエルザはそんな理由で否定したのではなかった。
「どうしてもと言うなら止めないけど、私は剣の方が良いと思う。だって、メイスを振り回す魔法使いより、剣でスマートに戦う魔法使いの方が恰好良いでしょ?」
ただ単に、弟には格好良くいて欲しかったのだ。
「・・・・・・確かに」
そしてカズキもまた、その言葉に納得する部分があった。
彼が日本にいた時に読んだファンタジー小説でも、ほぼ全ての魔法戦士は剣を使っていたのだから。
「じゃあエルザさ」
「お姉ちゃん」
「・・・・・・お姉ちゃんがメイスを使っているのもそういう理由なんですか?」
カズキはそう言いながら、同じくファンタジー小説の回復職の事を思い出した。やはり彼ら彼女らは、メイン武器にメイス系を使っている事が多かったのだ。
「それは戒律で決まっているからよ。神職に就くものは、殺傷力のある武器を使ってはならないとかなんとか。実際にはメイスの方が殺傷力が高いと思うのだけど」
因みにだが、カズキに剣術を教えているのはエルザである。その時は刃引きされた剣を使っているので、扱いは鈍器という事になるらしい。
「おや? エルザ様とカズキ殿ではないですか。お二人も武具の点検に?」
いつの間にか話が脱線し、気付けば30分以上話し込んでいた二人が我に返ったのは、自身の武具の点検にきたという第一騎士団長に声を掛けられたからだった。
「少し違うわ。カズキが魔法を掛けた食器が面倒な手入れが不要になったから、私のメイスにも同じ事が出来ないかと思ってここに来たの」
「それは興味深い話ですな。良ければ見学させてもらっても?」
「ええ。構いませんよ」
二人が見守る中、カズキはエルザに返したメイスに魔法を掛ける。見た目はそんなに変わった感じはなかったが、エルザは明確に違いを感じ取っていた。
「メイスが軽くなってるわ」
「本当ですか?」
「ええ。持ってみなさい」
「・・・・・・確かに。半分くらいの重さになってますね」
「でしょ?」
「わ、私にも良いですか?」
「構わないわよ」
「おお! 確かに軽い」
エルザの許可を得た騎士団長がメイスの軽さに驚く。彼は冒険者時代に様々な武器を扱っていた為、メイスの重さを知っているのだ。
「じゃあ次はコッチね」
「えっ?」
これで仕事? も終わりと完全に気を抜いていたカズキに、エルザが自身の為に誂えられた儀礼用の鎧を指し示す。
式典の時しか着用しないのに、無駄に重量のある鎧を長時間着る事を内心で面倒に思っていたエルザが、この絶好の機会を逃すわけがなかったのだ。
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