森へ

aiuchi

文字の大きさ
13 / 13

ただ森へと――

しおりを挟む
 現実として森が近くに迫って来たことで悟の恐怖が高まり、これまで何度となく行ってきた抵抗を繰り返すが何も出来ない。体を自分の意志で動かそうにも、可能なのはせいぜい歩くペースを遅くすることのみ。呼吸が荒くなっているのを実感した。そうしている内に悟は抵抗する気力が萎えてしまった。そして森へ行くしかないと言う結論が、理屈も無しに出てきていた。
 ついに悟は道から外れる。しかしそれは一方通行の行進から抜け出せたわけではない、道が曲がっていて森とは別の方向に行くから外れたに過ぎない。
 悟はこの地点には覚えがあった。ほんの一週間前、加奈子が森に魅入られたようになった場所だ。必死に止めてその時は事なきを得たはずだったが、結局無駄だったのかと悟は無力感で一杯だった。少し後回しに出来ただけで結果は変えられなかった。
 運命のように、決まってしまった流れからは逃れることが出来なかったのだと悟は感じた。
(加奈子があの森へ行きたいと言い出した時にはもう手遅れだったのかな……?)

 少年は、加奈子があの時点でもう死ぬことが決まっていたのではないだろうかと思った。森へと行く人たちを、生き物を何一つ止められなかったように。
 そして自分はどうだったか考える。四六時中森のことを考えていた。その時からだろうか。もしかしたらあの犬が森へ向かっているのに気付いた時には――。

 森は木々が鬱蒼としていて中が見通せない。木と草があるだけなのに、そこに入ってしまうと少年は自分の体がバラバラになるか、切り刻まれるかのような恐れを感じた。
 足は止まらない。どれだけ近づいても闇しか見えなかった。汗も心臓の爆発しそうな音も止まらない。
 何が待っているのか。何かが待っているのか。
 手が届く距離だと悟が考えたその一瞬後、加奈子が泣き声か悲鳴のような声を上げ、二人が森に足を踏み入れ――


                                        終わり
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...