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第五章(最終章)
浸食された未来
しおりを挟む決意と再起動
カイロス・シティの空は、濁った朝焼けに包まれていた。
雨粒がネオンの残光をぼやかし、空気には戦いの名残と、嵐の前の静けさが漂っていた。
ナオミとクロムは、廃墟の地下にある最後のセーフハウスに身を潜めていた。
ゼロとの戦いから二日。彼は姿を消したままだ。だが、ナオミには確信があった。
「……ゼロは、もう完全に企業の手先じゃない。あのとき、私を“見て”いた」
クロムは傷の治療を終え、静かに頷いた。
「でも、時間はない。あのデータを持ってる限り、シンギュラはあらゆる手段で追ってくる」
ナオミはポケットから《プロジェクト・ルシファー》のデータチップを取り出し、机の上に置いた。
「これは、彼らの最大の秘密。これを全世界にばら撒けば、連中は終わる」
「……だが、ばら撒くには、シンギュラのメインフレームにアクセスしなければならない。あそこは、鉄壁の要塞だ」
クロムは腕を組んで天井を睨むように言った。
「正面突破じゃ、無理だ」
ナオミは静かに微笑む。
「だから、私たちが“中から壊す”のよ」
⸻
最後の侵入作戦
シンギュラ・コーポ本社。
それは都市の中心、空を突き刺すようにそびえ立つ黒き塔。
塔の下層は表向きのオフィスだが、上層には実験施設と企業中枢AI《アテナ》が存在する。
そしてその中枢に接続された巨大サーバーが、《ルシファー》計画の心臓部だった。
ナオミは、クロムと共に従業員搬入口から侵入し、AIの本体がある最上階を目指す。
しかし途中、待ち伏せしていたセキュリティ部隊に包囲される。
「ナオミ・レイヴン。ここで終わりだ」
冷たい電子音声。——企業AIの声。
だがその瞬間——
「ここは……俺が通す」
闇の中から現れた影。
ゼロ。
黒の戦闘コート、赤い義眼。しかし、その眼には確かに“自我”が戻っていた。
「ゼロ……!」
ナオミが名を呼ぶと、彼はわずかに微笑んだ。
「ありがとな、ナオミ。……あの声、届いたよ」
ゼロは自らの義体システムを過負荷モードに切り替える。
「俺の命は、もう企業に書き換えられちまった。でも、この命……最後くらい、自分で使うさ」
クロムが叫ぶ。「おいゼロ、無茶すんな——!」
「行け。お前たちは、未来を変える側だ」
ゼロは突撃する。自爆覚悟のEMP装置を起動させ、ドローンと警備兵を巻き込んで——
——光が炸裂する。
⸻
終焉と解放
ゼロの犠牲によって切り拓かれたルートを、ナオミとクロムは駆け抜けた。
最上階、企業中枢AI《アテナ》の心臓部。
ナオミはデータチップを差し込み、システムにハッキングを開始する。
「世界中に、企業の闇を暴くのよ……!」
警報が鳴り響き、施設全体が震える中、ナオミは全ネットワークに《ルシファー》の情報を解き放った。
「送信開始……」
巨大スクリーンに映し出される、数千万人のリアクション。驚き、怒り、そして——立ち上がる者たち。
「……やったわ」
⸻
エピローグ:その後の都市
数週間後。
《シンギュラ・コーポ》は国際的な監査を受け、幹部は次々と逮捕された。
違法な意識データ化計画は封印され、企業の支配構造は崩壊し始めた。
カイロス・シティは、まだ混沌の中にある。
だが、その中で人々は、新しい可能性を模索し始めていた。
ナオミとクロムは、かつてのセーフハウスで新たなネットワークを構築している。
「ゼロの意思は、生きている」
「ええ。彼が開いてくれた道を、私たちは進み続ける」
ナオミの義眼が、再び青白く光る。
未来は、書き換えられる。意志さえあれば。
——ネオンの中で、革命は続く。
《ネオン・リベリオン》──完
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