ネオン・リベリオン

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第四章

シンギュラの影

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終わらない追跡

カイロス・シティの闇を切り裂くように、ナオミとクロムのエアバイクが疾走していた。
背後では、ゼロ率いる企業の追跡部隊が猛追している。

「チッ……どこまでついてくるんだ!」

クロムがライフルを構え、背後の武装ドローンに向けて数発撃ち込む。だが、ドローンは俊敏に回避し、逆にエネルギー弾を撃ち返してきた。

「……クロム、掴まって!」

ナオミは一瞬の判断でエアバイクを急旋回させ、狭い路地に飛び込む。ネオンに照らされた濡れた路面を滑るように疾走し、わずかな隙間をすり抜ける。

「クソッ、また無茶する……!」

クロムが振り落とされないようにしがみつく。その間にも、ナオミは高速でネットワークに接続し、ドローンの制御システムを解析していた。

——ハッキング開始。

義眼に無数のコードが走る。彼女は瞬時にドローンの制御プログラムを上書きし、一機を強制シャットダウンさせた。

「——一機撃墜!」

だが、ゼロは容易に引き下がらなかった。

「……ナオミ、ルートがない!」

クロムが叫ぶ。

目の前には巨大な高架道路が立ちはだかる。左右は封鎖された工業地帯、逃げ場はない。

「——なら、飛ぶしかないわね」

ナオミは迷いなく、加速装置を最大にし、エアバイクをジャンプさせた。

——重力が消える一瞬。

二人の身体が宙を舞い、都市のネオンが一瞬だけスローモーションのように流れる。

「うおおおおおお!!」

クロムが叫ぶ中、エアバイクは辛うじて反対側のビルの屋上に着地した。

だが、その瞬間——

ゼロが、ビルの上で待っていた。

ゼロとの決戦

「……逃がさない」

ゼロがナノブレードを展開する。

クロムがライフルを構えるが、ゼロは一瞬で間合いを詰め、クロムの腕を蹴り上げた。銃が宙を舞い、ゼロの手がクロムの喉を掴む。

「ぐっ……!」

ナオミは即座にプログラムを展開し、ゼロの神経ネットワークに接続を試みる。

《アクセス拒否》

「……くそっ、やっぱり完全防壁……!」

ゼロの義体には、企業が仕込んだ強固なセキュリティが施されていた。

「ナオミ、逃げろ……!」

クロムが苦しみながら叫ぶ。

「……逃げないわ」

ナオミはゼロの義体に直接接続する方法を模索する。

——選択肢は一つ。

ナオミは小型のEMPデバイスを取り出し、ゼロに向かって投げつけた。

——炸裂。

電磁パルスが空間を歪ませ、ゼロの動きが一瞬だけ止まる。

「今よ……!」

ナオミはすかさずゼロの義体に直接リンクを試みる。

ゼロの記憶の中へ

——意識が、ネットワークの深淵へと引き込まれる。

ナオミの視界が暗転し、次の瞬間、彼女はデジタル空間の中に立っていた。

「……ここは……?」

目の前には無数のデータストリームが流れ、ゼロの記憶の断片が浮かんでいた。

——ゼロの過去。

かつての彼は、ナオミと並んで企業と戦う仲間だった。彼らはシンギュラ・コーポの闇を暴き、この世界を変えようとしていた。

だが、ゼロは捕まり、企業に“書き換えられた”。

記憶を消去され、新たなプログラムが上書きされた。

「……そんなの、許さない……」

ナオミはゼロのオリジナルデータを探し出し、復元を試みる。

だが——

《データ破損》

「くっ……!」

完全に取り戻すことはできない。

ならば、方法は一つ。

「ゼロ、私を思い出して!」

ナオミは叫ぶ。

「あなたは企業の兵器じゃない! 私たちの仲間よ!」

データ空間の中で、ゼロの姿が微かに揺れる。

「……ナ……オ……ミ……?」

ゼロの意識がわずかに揺らいだ瞬間——

《外部からの強制遮断》

ナオミの意識が弾き飛ばされる。

ゼロの選択

現実世界に戻ると、ゼロは依然として無表情だった。

だが——

その目の奥には、一瞬だけ迷いが見えた。

「……ゼロ?」

ゼロは沈黙したまま、ゆっくりとナノブレードを下ろした。

「……撤退する」

そう呟くと、彼は闇の中へと姿を消した。

「……ゼロ……!」

ナオミは呼び止めたかった。だが、今はまだ、彼を完全に取り戻せない。

「……でも、確実に届いたわ」

クロムが肩で息をしながら言う。

「アイツ……自分を取り戻しかけてる」

ナオミは静かに頷いた。

「ええ……次は、完全に取り戻す」

彼女は決意した。

——次の戦場は、シンギュラ・コーポ本社。

ゼロを取り戻し、企業の支配を終わらせるために。

夜のカイロス・シティが、新たな戦いの幕開けを告げていた——。


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