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一章 始まりの街
12 試験
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ダルメアノの冒険者ギルドにある訓練場では、超人の剣戟が繰り広げられていた。方や鬼人と呼ばれる歴戦と戦士であるギルドマスター、方やそれと並ぶ力を持つ転生者。
どちらも並大抵のモノではない。
何とかスキルレベルを上げた『回避』を用いて、ゴルーダルと渡り合う。彼の剣は重いが、速度はオレのほうが勝っている。
残像が見えるかというほどの速度で、ゴルーダルに連撃で切りかかった。しかし、流石はギルドマスター。普段と変わらぬ様子で防いでいく。
「そろそろギアを一つ上げるぜ」
戦闘の最中、そう呟くと共にオレの短剣の連撃を大きくかち上げる。そして、最も力強い一撃を横薙ぎに払った。
オレは『回避』をフル稼働させ、ギリギリでなんとか避ける。そしてバックステップで距離を取った。それでも剣先が革鎧に掠り、大きく傷跡が付いく。
オレを離したゴルーダルは、自身の大剣の刃に手を添え、目を閉じて集中する。
「『我が奥底に眠りし力―今目覚めよ』“気纏法”!!」
「なッ――その技は!!ギルドマスター!?」
その叫びと共に、ゴルーダルの体に金色のオーラが纏った。スキル欄に書かれてあった『気纏法』を発動したのだろう。
受付嬢もその技を使うのは想定外だったのか、思わず声を上げる。
彼をよく観察していると、視界の端に映るウィンドウが彼のHPを捉えた。少しずつ、本当に微小ながらHPが減少していっている。
恐らく体に大きな負担を掛けているのだろう。
数値的に考えれば少ないとはいえ、体感は相当な筈だ。それでもゴルーダルは、戦闘に笑みを浮かべている。
筋金入りの戦闘狂だ。
「さあ、第二回戦と行こうじゃないか」
そういって、またしてもオレに斬りかかってくる。速さは先程とは比べ物にならない。
補正系スキルを全て発動させ、ステータスの底上げを図る。
それでも追い付くのがやっとだ。大剣の衝撃が凄まじい。
右手に持つ短剣を左手でも支え、何とか軌道を逸らす。火花を散らせ、ギャリギャリと嫌な音を立てながらも何とか受け流す事ができた。
しかし、そこに『危機察知』が発動する。視界にゴルーダルの脚からオレの胴にかけ、赤いラインが浮かび上がった。
それをなぞるように、がら空きになった胴にゴルーダルは蹴りを放つ。
オレはその衝撃をもろに受け、後方に吹き飛ばされた。
壁に叩き付けられるが、『堅牢』のお陰か体感よりは、HPの減少は少ない。
だが、この世界に訪れて初めてともいえるまともなダメージに、オレは思わず立ち上がれずにいた。
叩き付けられた衝撃で肺の空気が外に押し出され、呼吸がままならない。上手く受け身を取ることができなかった。
蹴られた胴が、激しく痛みを訴える。
【解析完了】
【『気纏法』Ⅴを獲得】
【『痛覚耐性』Ⅰを獲得】
「おいおい、ギアを一つ上げただけだぞ。もう終わりか?」
「ギルドマスター!!当然じゃないですか!!!ついこの間までFランク冒険者だった相手に『気纏法』を使うなんて!!」
ゴルーダルが煽ってくるが、それを受付嬢が諌める。もう勝負はついたものだと思われているようだ。
ゴルーダルは少しつまらなさそうな顔をしている。
その事実にオレは腹が立った、そしてそれは動けない自分にもだ。
先程獲得した『痛覚耐性』を最大まで上げる。痛みがスッと引いていった。そしてもう一つ、『気纏法』のレベルも上げる。
ぬらりと立ち上がって、またしても短剣を逆手で構えた。
「勝手に終わらすな……」
「お、それがお前の本性か。いいぜ、もっと楽しもう」
いつの間にか敬語が消えていたが、今はもうあまり気にならない。
カザドの店でやった以来に、本気で集中をする。水の中へ深く潜るような、そんな感覚だ。
オレは短剣を強く握りしめると、新たなアーツを発動させる。ただ呟くように。
「《疾風の刃》」
【短剣アーツ《疾風の刃》Ⅰを獲得】
唱えた瞬間、オレは一瞬でゴルーダルの前に現れた。そして短剣に引っ張られるように、オレは腕を交差させバツ字のように下から斬り上げた。
「なッ!」
ゴルーダルも意識外からの攻撃だったのか、反応が遅れる。バックステップで避けようとするが、僅かに掠った。
「アーツか……やるな!」
【解析完了】
【『見切り』Ⅲを獲得】
先程、『見切り』で避けられたがお陰で解析する事ができた。最大まですぐさまレベルを上げる。
ゴルーダルが何やら嬉しそうに言っているが、声が耳に入って来ない。それ程までに戦いに集中している。
【『集中』Ⅰを獲得】
「こっちも全力で向かうか――」
そう言うと、ゴルーダルは剣を足元へ突き刺し、瞳を閉じて何やら集中する。恐らく、また何かしらの技を発動させるのだろう。
こちらとしても、解析を行えば手段が増える。この隙を見逃すのは惜しいが、背に腹は替えられない。暫し待つ。
念の為、『集中』のスキルレベルを上げておく。
――ピキリッ!
体に何か違和感が走った。しかし、それも気のせいだったのか、直ぐに収まる。
オレは勘違いだと思い、今は戦いに集中した。
「『魔力よ―我が肉体を奮起させ―強き力を』“身体能力強化”『我を恐れよ―我に怯えよ―我が力は強大なり―跪け』“重圧”」
ゴルーダルは、オレが求めていた『魔法』を発動させる。
詠唱を詠い、ゴルーダルの体から魔力が溢れるのが感じられる。
【解析完了】
【『無属性魔法』Ⅲを獲得】
【『魔力操作』Ⅱを獲得】
【スペル『身体能力強化』Ⅳを獲得】
【スペル『重圧』Ⅲを獲得】
それと同時に、場の空気が変わった。放出された魔力が、実際の重みを帯びて、体にのし掛かる。
そして『気纏法』に重ね掛けで魔法である身体能力強化が加わり、ゴルーダルの身体能力も向上していた。
「待たせて悪かったな、それじゃ行くぜ!!」
そういうと、ゴルーダルは先程とは比較にならない速さで突撃してきた。
何とか『集中』と『見切り』を用いて見極める。攻撃は相変わらず叩きつけに来ると単調だが、それを覆す威力がある。
『短剣術』と『二刀流(亜種)』の本領を発揮させ、技量の限界を引き出す。
体は驚くほど自然に動き出した。周囲の時間が遅く感じられる。まるで『無我ノ極地』を発動させたときと似ている。
全てがはっきりと知覚できている。いうなれば、全能感に満ちていた。
【『思考加速』Ⅰを獲得】
スローモーションのように袈裟斬りを放ちつつ突っ込んでくるゴルーダルに、またしてもアーツを発動させる。『二刀流(亜種)』のもう一つのスキル効果である、アーツの二つ同時発動を用いて。
「《ブロー》《リバースティン》」
「くッ!?」
ゴルーダルはまるで距離感を身誤ったかのように、慌てて防御の構えを取る。懐で受けた攻撃を立て直すのはなかなか難しい。ましてやゴルーダルの獲物は大剣だ、取り回しは相当悪い。その点、短剣は便利だ。どんな体制からでも立て直す事ができる。
勿論、当人の技量も関係するだろうが、リーチが短い代わりにそういった利点がある。
先程、ゴルーダルが距離感を見誤ったのは、『神隠しの面』の効果だ。流石に目の前で姿すら消すのは怪しまれる。
だが、気配を完全に断てば、いつもと戦っている感覚が異なり、その距離を図るのは容易ではない。感覚に優れた人物は、尚更だろう。
体制の崩れたゴルーダルに、怒涛の連撃をオレは仕掛ける。時折アーツも交えつつ、攻撃を繋げる事を意識して続けた。
また、握り方も工夫する。振るときは優しく包むように握り、勢いを乗せる。そして相手の剣に当てる瞬間に力を全力で入れる。
勢いが乗り、瞬発力も利用した剣撃はオレの威力の底上げになった。
『連撃』も合間って、この素早い攻撃にぎこちなさは無い。
『気纏法』や魔法を使い、圧倒的な優勢になると思われていたゴルーダルが、今や完全にオレに押されている。
周囲の野次馬や受付嬢なんかは目を丸くして、この試験に魅入っていた。もはや試験の意味をなしていない。
ゴルーダルは顔を歪め、オレの連撃を耐えている。
「ナメんじゃ――ねぇ!!」
そういうと、またしても大振りの攻撃でオレを離そうとする。しかし、それはもう見た。
間合いギリギリでその攻撃を避け、がら空きになった胴に攻撃を食らわす。
だが、ゴルーダルは笑みを浮かべていた。
「ぐッ《エクスプッシャー》!!」
オレを上から叩き潰す形で、ゴルーダルは大剣を振り下ろす。アーツによる威力上昇も相まって、その威力は洒落にならない。
短剣を頭の上で交差して構え、耐えようとしたが、敢え無く吹き飛ばされる。何とか後ろへ飛び、威力を分散したがそれでも短剣が押し負け額に当たった。脳が揺さぶられ、額からは血が出る。
軌道をズラされた大剣は、地面へとそのまま行く。
大剣が叩き付けられた爆せ、地面がめくれ上がる。訓練場全体に、ビリビリと衝撃が伝わった。
そして砂埃も同時に巻き起こる。
「ギルドマスター!!何て事をッ!」
「はッ!……しまった、頭に血が上り過ぎたか……」
どうも受付嬢とゴルーダルはオレが重傷を負ったとでも思っているらしい。だが、そう思われても仕方のない被害だ。
頭に血が上ったとはいえ、流石にゴルーダルは何を考えているのだろうか。本当にギルドマスターのなのかすら怪しい。
オレは砂埃の中で『神隠しの面』とその他隠蔽に関するスキルを発動させて、周囲に溶け込む。気配を絶ち、その姿すら認識させない。レベルマックスのスキルも複数発動させているのだ。誰も気付くことは出来まい。
そのままゴルーダルの背後へと回り込むと、首元と背中から心臓を突ける位置に短剣を添える。
砂埃が晴れていくと共に、『神隠しの面』の効果を解除し、完全に晴れたときにゴルーダルにこう告げた。
「詰みだ、武器を捨てろ」
「なッ!!」
自身のスキルにもある『気配察知』で砂埃の中でも状況を判断できると過信したのだろう。完全な意識外からの宣告に、ゴルーダルは驚愕していた。
それは確かに相手が普通ならば通じるだろう。だが、近接戦闘で戦っていたため気付かれていないかも知れないが、オレの本業は暗殺者の類い。相手の死角からの攻撃など基礎中の基礎だ。
ゴルーダルは暫し呆然とし、状況を理解すると武器を手放した。
「負けだ、負け負け」
やれやれといった形で手を上げる。オレは添えていた剣を戻した。
「それにしてもお前強かったな――っておい、大丈夫か!?」
ゴルーダルの心配を他所に、オレは段々と意識が遠のいていった。
あの時、出血はそこまででもないが、脳が揺さぶられた事が脳震盪となったのだろう。ふらふらと倒れ、訓練場のざわつきを聞きながら、意識は闇へ落ちていった。
【解析完了】
【大剣アーツ《エクスプッシャー》Ⅱを獲得】
【ユニークスキル『武術の寵愛』を獲得】
【職業[重戦士]Ⅵを獲得】
【職業[気纏士]Ⅶを獲得】
――ピキリッ!
どちらも並大抵のモノではない。
何とかスキルレベルを上げた『回避』を用いて、ゴルーダルと渡り合う。彼の剣は重いが、速度はオレのほうが勝っている。
残像が見えるかというほどの速度で、ゴルーダルに連撃で切りかかった。しかし、流石はギルドマスター。普段と変わらぬ様子で防いでいく。
「そろそろギアを一つ上げるぜ」
戦闘の最中、そう呟くと共にオレの短剣の連撃を大きくかち上げる。そして、最も力強い一撃を横薙ぎに払った。
オレは『回避』をフル稼働させ、ギリギリでなんとか避ける。そしてバックステップで距離を取った。それでも剣先が革鎧に掠り、大きく傷跡が付いく。
オレを離したゴルーダルは、自身の大剣の刃に手を添え、目を閉じて集中する。
「『我が奥底に眠りし力―今目覚めよ』“気纏法”!!」
「なッ――その技は!!ギルドマスター!?」
その叫びと共に、ゴルーダルの体に金色のオーラが纏った。スキル欄に書かれてあった『気纏法』を発動したのだろう。
受付嬢もその技を使うのは想定外だったのか、思わず声を上げる。
彼をよく観察していると、視界の端に映るウィンドウが彼のHPを捉えた。少しずつ、本当に微小ながらHPが減少していっている。
恐らく体に大きな負担を掛けているのだろう。
数値的に考えれば少ないとはいえ、体感は相当な筈だ。それでもゴルーダルは、戦闘に笑みを浮かべている。
筋金入りの戦闘狂だ。
「さあ、第二回戦と行こうじゃないか」
そういって、またしてもオレに斬りかかってくる。速さは先程とは比べ物にならない。
補正系スキルを全て発動させ、ステータスの底上げを図る。
それでも追い付くのがやっとだ。大剣の衝撃が凄まじい。
右手に持つ短剣を左手でも支え、何とか軌道を逸らす。火花を散らせ、ギャリギャリと嫌な音を立てながらも何とか受け流す事ができた。
しかし、そこに『危機察知』が発動する。視界にゴルーダルの脚からオレの胴にかけ、赤いラインが浮かび上がった。
それをなぞるように、がら空きになった胴にゴルーダルは蹴りを放つ。
オレはその衝撃をもろに受け、後方に吹き飛ばされた。
壁に叩き付けられるが、『堅牢』のお陰か体感よりは、HPの減少は少ない。
だが、この世界に訪れて初めてともいえるまともなダメージに、オレは思わず立ち上がれずにいた。
叩き付けられた衝撃で肺の空気が外に押し出され、呼吸がままならない。上手く受け身を取ることができなかった。
蹴られた胴が、激しく痛みを訴える。
【解析完了】
【『気纏法』Ⅴを獲得】
【『痛覚耐性』Ⅰを獲得】
「おいおい、ギアを一つ上げただけだぞ。もう終わりか?」
「ギルドマスター!!当然じゃないですか!!!ついこの間までFランク冒険者だった相手に『気纏法』を使うなんて!!」
ゴルーダルが煽ってくるが、それを受付嬢が諌める。もう勝負はついたものだと思われているようだ。
ゴルーダルは少しつまらなさそうな顔をしている。
その事実にオレは腹が立った、そしてそれは動けない自分にもだ。
先程獲得した『痛覚耐性』を最大まで上げる。痛みがスッと引いていった。そしてもう一つ、『気纏法』のレベルも上げる。
ぬらりと立ち上がって、またしても短剣を逆手で構えた。
「勝手に終わらすな……」
「お、それがお前の本性か。いいぜ、もっと楽しもう」
いつの間にか敬語が消えていたが、今はもうあまり気にならない。
カザドの店でやった以来に、本気で集中をする。水の中へ深く潜るような、そんな感覚だ。
オレは短剣を強く握りしめると、新たなアーツを発動させる。ただ呟くように。
「《疾風の刃》」
【短剣アーツ《疾風の刃》Ⅰを獲得】
唱えた瞬間、オレは一瞬でゴルーダルの前に現れた。そして短剣に引っ張られるように、オレは腕を交差させバツ字のように下から斬り上げた。
「なッ!」
ゴルーダルも意識外からの攻撃だったのか、反応が遅れる。バックステップで避けようとするが、僅かに掠った。
「アーツか……やるな!」
【解析完了】
【『見切り』Ⅲを獲得】
先程、『見切り』で避けられたがお陰で解析する事ができた。最大まですぐさまレベルを上げる。
ゴルーダルが何やら嬉しそうに言っているが、声が耳に入って来ない。それ程までに戦いに集中している。
【『集中』Ⅰを獲得】
「こっちも全力で向かうか――」
そう言うと、ゴルーダルは剣を足元へ突き刺し、瞳を閉じて何やら集中する。恐らく、また何かしらの技を発動させるのだろう。
こちらとしても、解析を行えば手段が増える。この隙を見逃すのは惜しいが、背に腹は替えられない。暫し待つ。
念の為、『集中』のスキルレベルを上げておく。
――ピキリッ!
体に何か違和感が走った。しかし、それも気のせいだったのか、直ぐに収まる。
オレは勘違いだと思い、今は戦いに集中した。
「『魔力よ―我が肉体を奮起させ―強き力を』“身体能力強化”『我を恐れよ―我に怯えよ―我が力は強大なり―跪け』“重圧”」
ゴルーダルは、オレが求めていた『魔法』を発動させる。
詠唱を詠い、ゴルーダルの体から魔力が溢れるのが感じられる。
【解析完了】
【『無属性魔法』Ⅲを獲得】
【『魔力操作』Ⅱを獲得】
【スペル『身体能力強化』Ⅳを獲得】
【スペル『重圧』Ⅲを獲得】
それと同時に、場の空気が変わった。放出された魔力が、実際の重みを帯びて、体にのし掛かる。
そして『気纏法』に重ね掛けで魔法である身体能力強化が加わり、ゴルーダルの身体能力も向上していた。
「待たせて悪かったな、それじゃ行くぜ!!」
そういうと、ゴルーダルは先程とは比較にならない速さで突撃してきた。
何とか『集中』と『見切り』を用いて見極める。攻撃は相変わらず叩きつけに来ると単調だが、それを覆す威力がある。
『短剣術』と『二刀流(亜種)』の本領を発揮させ、技量の限界を引き出す。
体は驚くほど自然に動き出した。周囲の時間が遅く感じられる。まるで『無我ノ極地』を発動させたときと似ている。
全てがはっきりと知覚できている。いうなれば、全能感に満ちていた。
【『思考加速』Ⅰを獲得】
スローモーションのように袈裟斬りを放ちつつ突っ込んでくるゴルーダルに、またしてもアーツを発動させる。『二刀流(亜種)』のもう一つのスキル効果である、アーツの二つ同時発動を用いて。
「《ブロー》《リバースティン》」
「くッ!?」
ゴルーダルはまるで距離感を身誤ったかのように、慌てて防御の構えを取る。懐で受けた攻撃を立て直すのはなかなか難しい。ましてやゴルーダルの獲物は大剣だ、取り回しは相当悪い。その点、短剣は便利だ。どんな体制からでも立て直す事ができる。
勿論、当人の技量も関係するだろうが、リーチが短い代わりにそういった利点がある。
先程、ゴルーダルが距離感を見誤ったのは、『神隠しの面』の効果だ。流石に目の前で姿すら消すのは怪しまれる。
だが、気配を完全に断てば、いつもと戦っている感覚が異なり、その距離を図るのは容易ではない。感覚に優れた人物は、尚更だろう。
体制の崩れたゴルーダルに、怒涛の連撃をオレは仕掛ける。時折アーツも交えつつ、攻撃を繋げる事を意識して続けた。
また、握り方も工夫する。振るときは優しく包むように握り、勢いを乗せる。そして相手の剣に当てる瞬間に力を全力で入れる。
勢いが乗り、瞬発力も利用した剣撃はオレの威力の底上げになった。
『連撃』も合間って、この素早い攻撃にぎこちなさは無い。
『気纏法』や魔法を使い、圧倒的な優勢になると思われていたゴルーダルが、今や完全にオレに押されている。
周囲の野次馬や受付嬢なんかは目を丸くして、この試験に魅入っていた。もはや試験の意味をなしていない。
ゴルーダルは顔を歪め、オレの連撃を耐えている。
「ナメんじゃ――ねぇ!!」
そういうと、またしても大振りの攻撃でオレを離そうとする。しかし、それはもう見た。
間合いギリギリでその攻撃を避け、がら空きになった胴に攻撃を食らわす。
だが、ゴルーダルは笑みを浮かべていた。
「ぐッ《エクスプッシャー》!!」
オレを上から叩き潰す形で、ゴルーダルは大剣を振り下ろす。アーツによる威力上昇も相まって、その威力は洒落にならない。
短剣を頭の上で交差して構え、耐えようとしたが、敢え無く吹き飛ばされる。何とか後ろへ飛び、威力を分散したがそれでも短剣が押し負け額に当たった。脳が揺さぶられ、額からは血が出る。
軌道をズラされた大剣は、地面へとそのまま行く。
大剣が叩き付けられた爆せ、地面がめくれ上がる。訓練場全体に、ビリビリと衝撃が伝わった。
そして砂埃も同時に巻き起こる。
「ギルドマスター!!何て事をッ!」
「はッ!……しまった、頭に血が上り過ぎたか……」
どうも受付嬢とゴルーダルはオレが重傷を負ったとでも思っているらしい。だが、そう思われても仕方のない被害だ。
頭に血が上ったとはいえ、流石にゴルーダルは何を考えているのだろうか。本当にギルドマスターのなのかすら怪しい。
オレは砂埃の中で『神隠しの面』とその他隠蔽に関するスキルを発動させて、周囲に溶け込む。気配を絶ち、その姿すら認識させない。レベルマックスのスキルも複数発動させているのだ。誰も気付くことは出来まい。
そのままゴルーダルの背後へと回り込むと、首元と背中から心臓を突ける位置に短剣を添える。
砂埃が晴れていくと共に、『神隠しの面』の効果を解除し、完全に晴れたときにゴルーダルにこう告げた。
「詰みだ、武器を捨てろ」
「なッ!!」
自身のスキルにもある『気配察知』で砂埃の中でも状況を判断できると過信したのだろう。完全な意識外からの宣告に、ゴルーダルは驚愕していた。
それは確かに相手が普通ならば通じるだろう。だが、近接戦闘で戦っていたため気付かれていないかも知れないが、オレの本業は暗殺者の類い。相手の死角からの攻撃など基礎中の基礎だ。
ゴルーダルは暫し呆然とし、状況を理解すると武器を手放した。
「負けだ、負け負け」
やれやれといった形で手を上げる。オレは添えていた剣を戻した。
「それにしてもお前強かったな――っておい、大丈夫か!?」
ゴルーダルの心配を他所に、オレは段々と意識が遠のいていった。
あの時、出血はそこまででもないが、脳が揺さぶられた事が脳震盪となったのだろう。ふらふらと倒れ、訓練場のざわつきを聞きながら、意識は闇へ落ちていった。
【解析完了】
【大剣アーツ《エクスプッシャー》Ⅱを獲得】
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