【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

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一章 始まりの街

15 魔法薬

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 アルマシオンを出て、空を見上げると、まだ日暮れとは言えない時間帯だ。ギルドから配られた冊子を読んでも良いが、あれはもうすぐ読み終えてしまう。

 以前行った、冒険者ギルドにある本を読みに、ゴルーダルへの報告を兼ね行っても良いが、とそこまで考えて思い止まった。

 確か、以前青年らに絡まれている所に介入した時知り合った、アルメナが魔法薬屋をやっていると言っていたな。そう何とか思い出した。

 すっかり行くのを忘れてしまっていた。
 魔法薬といえば、ゲームで言う所のポーションだろうか?現在回復手段が、自動回復しかない身にとっては必需品と言える。

 迷宮探索に置いては、重要なアイテムだろう。
 アルメナが言っていた通り、ダルメアノの東の魔法薬屋をMAPで検索し、向かった。





◇◆◇◆◇





 着いた先は、魔法使いが住む家というような、いかにもという外見の店だった。扉には「開店中」と書かれているので、どうやらまだやっているらしい。

 扉を開けて中に入ると、扉に付いたベルの音と共に薬草の良い匂いが出迎えてくれた。
 何種類ものハーブを混ぜ合わせたかのような、人によっては好き嫌いの別れる匂いだろうが、オレは好きだ。

 店内には、多くの瓶とその中には、緑色や青色といった明らかにおかしな色の液体が入っている。
 カウンターには、一人の老婆が店番をしていた。

「いらっしゃい」

 嗄れた声で、無愛想にそう言う老婆。恐らく彼女がアルメナの祖母だろう。

「こんにちは。体力を回復する魔法薬を探しているのですが、何処でしょうか?」

 アルメナの祖母は右の棚を指差した。
 そこへ近づくと、確かに商品名には体力回復魔法薬と書かれている。液体の色は緑色だ。
 下級、中級といった具合に別れている。値段も高く、下級ですら一本大銅貨三枚だ。中級では一本銀貨一枚もする。

 上級が無い事が気になり、アルメナの祖母へ尋ねる。

「上級の魔法薬は無いのですか?」
「そんなもん王都に行かなきゃありゃしないよ」

 アルメナの祖母は吐き捨てるように言った。
 流石に失礼だったか。恐らくこの店の魔法薬は、全て彼女が作っているのだろう。
 その腕を軽視されたようなものだ。

「それは、すみませんでした」
「ふんッ」

 軽く頭を下げる。アルメナの祖母は鼻を鳴らして不機嫌そうにした。

 これはやってしまったか?
 不穏な雰囲気が流れ始めた所に、カウンターの奥の扉から一人の金髪の少女が出て来た。

「お婆ちゃん、そろそろ変わるよ――ってエノクさん!?」

 奥から出て来た少女――アルメナは、オレがいる事にとても驚いていた。
 小走りで駆け寄ってくる。

「やっといらして下さったんですね!」
「申し訳ありません、お久しぶりですね」

 アルメナは、非常に嬉しそうに喜んだ。今にも小躍りをしそうなほどだ。

「何だい、あんたが家の孫を助けてくれたのかい?」
「助けたというほどではありませんよ」

 そういって謙遜する。自分で勝手に介入しておきながら、助けたと主張するのは流石に横暴だろう。

「謙虚だねぇ、そんならさっきは済まなかったね」
「いえ、こちらが失礼をしただけですので」

 アルメナはオレと祖母を交互に見て、困惑していた。先程の会話について行けないらしい。

「んや、別に構いやしないよ。あんたは礼儀を弁えてるらしいしね」

 苦笑いしながら、軽く会釈をする。

「それよりもエノクさん、今日はどうしたんですか?」

 アルメナは迷っていたが、自分から話題を振ってきた。オレも、それに答える。

「迷宮に行く事になったので、回復薬を買いに――」
「ええ!エノクさん、もう迷宮へ行くようになったんですか!?失礼ながら、数日前までは駆け出しではありませんでしたか?」

 アルメナは非常に驚いている。それもそのはずだ。
 迷宮へ行けるのはCランク以上の、特殊な試験を受けた者のみだ。これだけの期間でDランクになれただけでも異例なのに、迷宮へ行くなど常識を超えている。

 指名依頼の内容をなるべくぼかしながら、理由を伝えた。指名依頼は、内容をバラすと問題になり事もあり、口外するのは避けられているのだ。

「ある特別な方から指名依頼を頂きまして、迷宮への要件だったので許可を貰えたんですよ……」
「それでも凄いじゃないですか!!」

 アルメナは興奮してオレを褒め称えている。少々小っ恥ずかしい気になるが、その騒ぎに待ったを掛けるものがいた。

「アルメナ、お客の買い物を邪魔するんじゃないよ!」

 祖母がアルメナに、叱咤の声を飛ばした。
 店内に、他の客がいなかった事が幸いしたのだろう。その声にアルメナはハッとし、オレから離れた。
 申し訳なさそうな顔をしながら、アルメナは謝る。

「すみませんでした、買い物の邪魔をしてしまって……」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それにアルメナさんとお話するのは楽しいですしね」
「えっ!?」

 アルメナはポッと顔を赤く染めるが、誤解を招かない為にも一応訂正はしておく。

「同じ年代の人とあまり話したことが無いのでね」

 アルメナが、明らかにがっかりしたような顔になる。

 オレは何処ぞの主人公たちのように、鈍感などでは無い。それにオレには心に決めた人がいる。だから、他人に目移りすることなど無い……はずだ。

――ゾワッ!

 突如、背筋に寒気が走る。

(な、何だ!?今何か寒い物が背中に……)

 周囲を見渡しても何もない。アルメナたちが不思議そうにオレを見ていた。
 恐らくオレの気のせいだったのだろう。

「あ、そ、それでは今日は何をお求めですか?」

 私語は祖母からの叱咤が飛ぶので、どうやら仕事なら良いだろうと切り替えたようだ。
 オレもそれには苦笑いしながら、こう言った。

「それでは体力回復魔法薬の下級と中級をそれぞれ三つずつください」





◇◆◇◆◇





 あの後、代金を支払って出て来た。その時に、また来るようアルメナから念を押されたが、来るのは暫く後になるだろう。

 これで迷宮探索に必要な武器、防具、回復薬は揃った。後は食料の問題だが、メニューのショップがある時点で解決している。
 迷宮では、その場その場で購入すればいいだろう。

 宿へ戻り、飯を取る。いつも通りの美味しさに、顔が綻んだ。適当に行水も浴びて、部屋へ戻る。

「そういえば、魔法薬の回復量を見ておくか……」

 そう言ってオレはストレージから魔法薬を取り出した。『解析眼』を発動させ、効能を確かめる。

『下級体力回復魔法薬』
HPを150回復する魔法薬。小さな傷を瞬時に治す。品質を一定にするために、白芽粉が使われている。
材料:ファイ薬草 綺麗な水 白芽粉

『中級体力回復魔法薬』
HPを400回復する魔法薬。大きな傷や病を瞬時に治せるが、部位破損は治す事ができない。品質を一定に保つために白芽粉が使われている。
材料:流花草 ファイ薬草 綺麗な水 白芽粉

「え?」

 オレは目を疑った。だが、目に映る解析結果には、この魔法薬を作る原材料が書かれていた。

 そして、それも揃えられそうな物が多い。

 これは……作れるんじゃないか?

 直感的にそう思った。

 一先ず今現状で揃えられるものを揃えよう、そう思った。すれば、行動は早かった。
 メニューからショップを開く。以前はあまり使っていなかったが、これからが使い時だ。

 買った魔法薬はガラス瓶に詰められているが、使い方が合えばそれで良い。試験管の10本のコルク蓋付きの物が銅貨六枚で売られていたので即購入。
 他にも、プラスチック製のボウルや薬草を磨り潰す薬研を購入する。こちらは若干高めで、大銅貨五枚だ。

 だがそれも、塩のお陰で臨時収入のあったオレには何ら問題はない。
 このまま購入を続ける。
 材料に綺麗な水とあったので、2Lペットボトルの天然水を何種類か買う。箱ごと買った方がお得だったので、つい三箱ほど買ってしまった。
 いつか大量に使うだろうと、その日に期待する。

 水は、もしこの世界の物でなくてはいけない場合があっては困るので、一先ず宿の裏の井戸から数杯桶で組み上げる。
 その水を、そのままストレージにぶち込んだ。容器は後からどうとでもなるだろう。

 これで一先ずは、あらかた用意は整った。後は、採取へ出向くだけだが、外はもう真っ暗なので、明日に期待をする。

 幸いにして、オレの『採取』のレベルはⅩだ。それに『探知』もある。比較的効率良く素材を集める事ができるだろう。

 今の所、謎なのは白芽粉と流花草だが、明日ゴルーダルの報告ついでにギルドで調べればいい。あの書庫に、少しぐらい書かれているだろう。

 そうと決まれば、オレは明日に備え、早々へ床についた。




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