お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

おっさん妖精現る

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 二人の従者と共にガッツリ勉強&マナーを受けているリリアンです。
 勉強を嫌っていたガリオンだったが、意外な事に歴史に興味を持ち兵法を交えて歴史を熱く語り合う仲になりました。
 一方、アリーシャは勤勉でどの授業も優秀だが突出しているのがないオールマイティな子でした。
 二人とも私より頭が良い。
 やっぱり地頭の出来の違いでしょうか。
 今日の魔法授業は、精霊魔法についてだった。
 スミス先生自身は使えないのですが、こういう魔法もあるということを知っておくのが大切だと言われました。
 精霊魔法は、通常の魔法よりも威力の桁が違い魔力の消費も低いとのこと。
 精霊は気まぐれなので、気に入った者に加護を与え世界の意思を伝えるんだと。
 人に限らず魔物にも加護を与えることもあると聞いて、俄然精霊が見たくなった。
「スミス先生、どうやったら精霊が見えるんですか?」
「それは解明出来ておらんが、精霊と親和性が高ければ見えると言われておるぞ」
「そうですか」
 親和性がないと見えないのか残念だ、と諦めるような私ではない!
 親和性なにそれ美味しいの?
 オタクの妄想力を舐めるなよ。
 某少年誌の忍者漫画を思い出しながら、チャクラならぬ魔力を目に集中させてみたら何かキラキラしいものが見えた。
 よーく凝らしてみると、小さな小人が居た。
「……おっさん妖精」
「誰がおっさんじゃ!」
 私の感想に対し、目の前でプリプリと怒るおっさん妖精。
 トンガリ帽子に緑のワンピースと同じ緑のブーツを履いている。
 ぽっこり腹が、中年オヤジに見えるのは仕方がない。
 例えるなら全身緑のサンタクロースをデフォルメして縮めたものだと思えば分かりやすいかもしれない。
 背中に半透明な羽が生えている。
 お世辞にも可愛いとは形容しがたい姿である。
「失礼しました。私は、リリアン・フォン・アングロサクソンです。貴方は、妖精さんですか?」
「ん? 嬢ちゃん、ワシの言ってることが聞こえるのか?」
「聞こえるし、見えますよ」
 そう答えると円らな瞳をこれでもかと大きく見開き私の周りをグルグルと一頻り飛び回ったかと思うと、顎に手を当てて云々と唸っている。
「普通は見えんし聞こえんぞ。聞こえる奴は、稀にいると聞くが……何者じゃ?」
「普通の人?」
「普通なら我らの姿は見えんし聞こえんわ!!」
 茶化したわけでもないのだが、私の答えにブチッと切れた精霊が怒り出した。
 面倒臭いなぁ。
 仕方がないので、前世のことも交えて教えてあげたら黙ってしまった。
「おーい、無視しないで。精霊魔法について教えて欲しいんだけど」
「精霊魔法を知ってどうするつもりじゃ」
「いや、どうもしないけど。生活を豊かに出来る魔法なら取り入れたいなーと思っただけだけど」
 魔力消費も少なく威力抜群なら素晴らしいエコな魔法ではないか。
 この世界では魔法や魔法具で溢れかえっている。
 魔力量は人によって決まるし、少ない魔力でも効率よくエコで威力抜群な魔法の使い方が出来るならそれに越したことはない。
「そんな事を言ってワシ等を戦争に駆り立てるんだろう」
「非生産的な事はしたくないでござる! そりゃ手を出されたら倍返しするけど、何もしないなら放置案件じゃん。相手が友好的なら、こっちも友好的になるし。敵対してくれば、身を守るために敵対するよね」
「……確かに」
「私個人としては、戦争とか侵略とか面倒臭いことしたくないしやらない。どの種族もそうだけど、友好を育めるなら育んだ方が利益があると思うんだ。理想論だけどさ。競うことは成長のために大切だけど、争うことは何も生まないと思う。精霊魔法が使えたら、色々魔法の幅が広がるかも~と思ったよ。でも見れたから、私の目的は達成したし用はないんだけどね」
 用済みと言い渡すと、また円らな目を大きく見開き凝視してくる。
 おっさんに見つめられても嬉しくないんだが。
 可愛くもないし。
 どうせなら、もっと可愛い妖精が見たかったというのが私の本音である。
「……リリアンと言ったな。変な娘じゃが、お前なら加護を与えてやっても良いぞ」
「え? 要らない」
「はあ!? 何じゃとぉぉお!」
 速攻でお断りしたらキレられた。
「そっちの可愛い妖精の方が良い」
「ワシは、地の大精霊ノーム様じゃぞ! 上級精霊のワシよりも下級精霊が良いと言うのかぁぁあ」
「だって、可愛いもん」
「ワシだって可愛いわ」
「……」
 自分で可愛いとか言えちゃうなんて、凄く図太い精霊が現れた。
 ノームが私の顔(というか、おでこ)に突進してきた。
 ガンッと石でも当たったかのように凄い音と鈍い痛みがした。
「フンッ、これで契約完了じゃ。気が向いたら呼び出しに応じてやる。じゃあな」
 一方的に契約して、さっさとどっかへ行ってしまったノームに私は頭を押さえながら怨嗟の言葉を吐いていた。
「押し売りはお断りじゃ、ボケェェ!!!」
 こうして可愛くないおっさん妖精の加護を得ることが出来ました。
 嬉しくない。
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