お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

チェキもどきの有効活用法

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 カメラを見せびらかしていたら金になると執事長が言い出し、私のあずかり知らぬところで父に報告していて製造方法を書面に起こすように言いつけられた。
 確かにチェキもどきは金になるとは思う、カメラ大好きな日本人なら欲しがるかもしれない。
 しかし、ここは異世界である。
 需要があるとは思えないので、どうやって断ろうかと考えていたらフリック曰く決定的な証拠や釣書にも有効と言われて納得して良いように言いくるめられてしまった。
 ノームがいるので材料には事欠かないが、いつまでノームと契約出来るかも分からないため、私に頼らず材料調達できるようにするのを前提に製造方法を書面に起こした。
 初号機と大量のフォトペーパーとケースを付けて、弟妹の写真を定期的に送ってねと念押しして泣く泣く手放した。
 二号機は見本に取られ、プライベート用の三号機は小型の可愛いものにした。
 ポシェットを作って、そこにチェキもどきとフォトペーパーをしまって装備している。
 王都に来てから、本格的にお后教育が始まりヒーヒー言ってます。
 それと同時に、ユーフェリア教会が聖女認定してきて聖女教育も同時進行でやらされるという苦行。
 週休2日制を訴えたが、却下されてしまった。
 成人する十八歳までにある程度の体裁は必要なのだろう。
 分かっちゃいるが、まだ六歳になったばかりの子供に我慢を強いるのは如何なものか。
 唯一の救いは、自由時間に写真を撮る事が趣味になりつつある。
 今日は、アルベルトとの親睦という名目で王城に来ているのだが絶賛放置されている。
 奴は、私の顔を見た途端にさっさと部屋を出て行ってしまった。
 戻ってくるかと思い暫く待ってみたが、一時間経っても戻ってこないので王妃様にアルベルトの所業をチクって自由時間を頂きました。
 王妃様も現陛下に同じことをされた覚えがあるようで、自分のことのように怒ってくれた。
 そんな王妃様に、チェキもどき四号機とフォトペーパーを渡しておいた。
 四号機は、装飾に凝って薔薇を施し綺麗を追及し過ぎた結果、画質は歴代の中でも最低を極めてしまった品だ。
 それでも、絵よりも鮮明に写るので是非今後の社交界で大いに宣伝して貰いたいものである。
 許可を貰ったとはいえ王城を所かまわずウロウロするわけにはいかないので、折角だから騎士の鍛錬場でも見学することにした。
「済みません。鍛錬場を見たいのですが良いですか?」
 私の護衛として付けられた騎士に聞くと、何とも変な顔をされてしまった。
「鍛錬場ですか? 構いませんが、リリアン様には刺激が強すぎると思いますよ」
「大丈夫です。私も護身術を心得ておりますし、応急処置の心得もありますの」
 主にガリオンのな!
 メアリーに最低限の護身術は必要と言われ、ゲオルグやアリーシャに比べては手加減されているのだろうが、内出血や軽い怪我は当たり前になりつつある。
 王家のスペアと言われるだけあって、その辺りは徹底して教育するのが我が家の家風らしい。
 転生してから、本当にろくでもないことしか起こってない気がするのは何故だろう。
「実際に騎士様達の戦いぶりも見ておきたいのです」
 あざとく首を傾げて言ってみたら、仕方がないですねと笑って鍛錬場へ連れて行って貰った。
 鍛錬場は、まるでコロシアムのような造りになっており観覧席が設けられていた。
「間近で見れると思っていたのですが、ちゃんと席もあるんですね」
「鍛錬場は四年に一度、騎士の武術大会が行われます。王侯貴族の方々が観覧できるような造りになっているのです。城の外にある鍛錬場は、月に一度一般開放しております」
「そこで良いお嬢様方と婚活をするんですね」
「グッ…ゲホゲホ。……どこでそれを」
 私の言葉に咽る騎士に、カラカラと笑う。
「騎士様の九割が男性で御座いましょう。女騎士様もいらっしゃいますが、ほんの一握りですわ。出会いの場を求めるなら、自然と外に目を向けますでしょう? 鍛錬している姿を見て貰い。あわよくばどこぞの貴族令嬢に興味を持って頂きたいと思うのは自然の流れかと。しかし、このやり方では聊か効率が悪いと思うのです。そこで、事前にお互いの容姿や性格などをまとめた釣書を一般公開してはどうでしょう? それを見て指名を貰いお見合いという流れの方が、出会いは多いかと思いますわ」
「絵姿を一枚描くだけでも相当なお金が必要になります。一介の兵士には到底手が出せませんよ」
「そこにお立ちになって」
「はぁ」
 騎士は言われたままに、訓練場を背に立った。
 私は、ポシェットに入れていたチェキもどきを取り出して彼を写真に収めた。
 ペッと吐き出されたフォトペーパーを拾い暫く待つと騎士が写っている。
「これを見て」
「私ですね。あの一瞬で絵を描かれたのですか!?」
「まあ、そんな感じですわ。これは写真と言いますの。我が領で開発した道具ですわ」
 騎士は写真をマジマジと見つめながら感嘆している。
「この用紙一枚も決して安くはない値段ですが、絵師に描かせるよりは安上がりですわ。大勢は無理ですが3人一組で写せば、安く仕上がりましてよ」
「あの、一枚如何ほどになりますか?」
「そうですわね。大銀貨一枚でしょうか」
 青銅貨一枚が日本円で十円・銅貨一枚が百円・銀貨一枚が千円・大銀貨一枚が一万円・金貨一枚が十万円に当たる。
 下級騎士の手取りが大体金貨二~三枚前後なので少し無理をすれば手に届く金額設定にしてある。
「高いですが、三人で割れば払えない金額ではありませんね」
「でしょう? 出会いの場を欲している令嬢は沢山いますので、上官殿にも話を持ちかけてみて下さいませ。その気があれば、我が家へ使いを寄こして頂ければ婚活の場を設けますわ」
 アングロサクソン家の家紋が刺繍されたハンカチを渡しておいた。
 これで行き遅れ令嬢たちの婚活の場が増えれば、私の株が上がり、資産も増えると下世話なことを考えていた。
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