お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

転生者に出会いました

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 露店のおっさんに教えて貰った店を片っ端から回った。
 裏通りのアリスの雑貨屋は、凄く分かりやすかった。
 時計ウサギとアリスの看板が、いかにも『ここです!』って感じで物語を知っている人間ならば分かりやすい目印だ。
 不思議の国のアリスを絵本にするのも良いかも!
 ルンルン気分でアリスの雑貨屋に入ると、可愛いものがいっぱいあった。
「レース編み!! 素晴らしいわ」
 淑女の嗜みで刺繍はするが、レース編みはしたことがない。
 まあ、刺繍も上手ではないがな!
「白のレースしかないのが残念だけど、これだけ複雑なレース編みが出来るなんてスカウトしなくちゃ!!」
 キョロキョロと店内を見渡すと、眼鏡をかけた女性がチョコンとレジの前に座っている。
「ねえ、このレースは貴女が作ったの?」
「違うわ。私の夫が作ったの」
「旦那様が作ったの! 素敵ね!!」
 オトメンがこの世界にいるとは!
 是非とも拝見した……お友達になりたい。
 白しかないが、このレースの豊富さを考えればドレスや下着に革命を起こすことができる。
「製作者の旦那様に合わせて貰えないかしら?」
「えっと……どうしてでしょう?」
「このレースを見て色々と商品を思いついたのよ! 私は、リリーよ」
「その年で商人なのですか?」
「え? あ……まあ、そうなのかな?」
 商売は完全に成り行きだし、一応自前の店を構えているので商人と言っても問題ないか?
 取り合えず肯定しておこう。
「若いのに凄いわね。それも観賞用で実用性がないからお店のディスプレイに使っているの。売り物ではないのよ」
「勿体ない!! こんなに素敵なレース編みが出来るなら是非取引したいものです」
 ドレスに使っても良いし、レースのリボンを作るのもありだ。 
 下着に飾りとして使うのもありだし、無地のハンカチすらレースが付けばお洒落にグレードアップしてくれるだろう。
「リリーさんは、変わった方なのね」
「よく言われます」
 ガリオンなんかは、『変人』の称号を私に付けたくらいだしね。
「商品は勿論買い付けるわ。それとは別に弟子を取って貰えないかしら? 指導料も奮発するし!!」
 フスンッと鼻息荒く契約書とペンを取り出してにじり寄ると、レジに座っていた女性は苦笑いしている。
「夫を呼びますので、直接交渉して貰えませんか?」
「是非、お願いします」
 製作者と話が直接出来るのであれば、それはそれで越したことは無い。
 色々とレース関連の商品が浮かぶので、待っている間に紙と鉛筆でラフ画を描いた。
 暫く没頭していて気付いたら隣にムキムキのマッチョなおっさんがラフ画を手に取り眺めていた。
「あの……どちら様で?」
「アリスの雑貨屋の亭主だ」
 稲妻が私の身体に走った。
 オトメンが、ムキムキマッチョだ…と…。
 風貌は冒険者していそうなのに、玄人並みのレース編みを作るとは思えない。
「貴方が、ここにあるレースの作品を作られた方ですか?」
「ああ、俺の見た目がこれだからな。嫁に店番をお願いしているんだ」
 見た目が厳ついマッチョでも腕が良ければ何でも良い!
「是非、私と専属契約を!!! 貴方の作品は私が全て買い取りますわ! 後、出来ればレース編みの技術を教えて頂きたいの。量産して売りたいの」
「この世界じゃ、レース編みなんて取得しても何の価値もないぞ」
「この世界?」
 オウム返しに聞き返すと、亭主はしまったという顔をした。
 これは、もしや転生者なのでは!?
「月の美少女戦士の決め台詞は?」
「月に代わってお仕置きよ」
 思わずガッチリと握手していた。
「もしかして80年代?」
「いや、90年代だ」
 私より年下か。
 でも、同志を見つけることが出来たのは幸運だ。
「私は、リリアン・フォン・アングロサクソン。これを持って私の名前を出してくれれば取り次いでもらえるから安心して頂戴。白のレースも素敵だけど、他の色でもレース編みして欲しいのよ! そして、もっとお洒落なドレスとか下着とかを作りたいの。貴方のレースは売れるわよ。売れっ子レース作家になれるわ!」
 私は、高笑いしながら契約を迫った。
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