お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

文字の大きさ
38 / 181
幼少期

水の大精霊ウンディーネの襲撃

しおりを挟む
 何か息苦しさを感じ目を開けたら、デブ…ではなく非常にふくよかな羽の生えたおばちゃんがいた。
「どちら様で?」
 多分精霊だよな?
 羽も生えているし。
「貴方がノームを誑かした女ね!」
「いや、誑かしてませんけど」
「噂通り、私の声も聞こえるのね!! そうやってノームを誑かしたんでしょう!!」
「いやいや、どうしてそうなるの?」
 ノームが押しかけて来ただけなのに、何故そうなるかな!
「ノームが、人間に興味を示すわけがないわ!」
「そりゃ、私以外の人間は見えないし声も聞こえないから認知出来ないでしょう」
 ノームだけでなく、他の精霊も同じだろうと指摘すると「でも」「だって」と繰り返すばかり。
「えーっと、まずどちらさん? 私はリリアンよ」
「私の名前を聞いてどうするつもりなの」
「名前がないと呼びづらくない? 貴女とかお前とか言われると嫌じゃない」
 私の答えは、彼女にとって予想外の答えだったらしい。
「……私は、水の大精霊ウンディーネよ」
「ウンディーネは、ノームが私に誑かされて契約したと誤解しているわけね」
「だって、それしか考えられないんだもの」
 目に涙を溜めて泣き出したウンディーネに、私はどうしたものかなーと考えた。
「ノームが興味を持ったのは精霊を見えて聞こえる奇特な存在だからだと思うからよ。そこに恋愛感情とかないから」
 見た目がおっさんで、擬態がトカゲに恋しろというのは酷すぎる。
 真面目に考えても、あれはない。
 中身がもうね、ダメダメなの。
 私の好みじゃないし、スミス先生なら万歳三唱でウェルカムなんだけど婚約者がいる身なので口に出すこともできない。
「でも、あの気まぐれ屋のノームが契約するなんて信じられない」
「じゃあ、本人に聞けば?」
「出来たらとっくにしているわよ!」
 乙女だなー。
 見た目は、おばちゃんなのに。
 精霊ってもっと美麗な存在が多いと思っていたが、格が上がるにつれおっさん・おばちゃんになるんだろうか。
「押しかけで無理矢理契約させられたからなぁ。私に拒否権はなかったし。ノームなら地龍の幼体に擬態しているから、まあ邪魔にならない程度なら居ていいよ」
 人のベッドでグースカ寝ているノームを指さすと、ウンディーネは百年の恋も冷めたと言わんばかりにヨロヨロとベッドの上に落ちた。
「ノームがトカゲになっている……」
「あ、そう見えるよね。ノームは、カッコイイと思っているみたいだよ」
「どこが恰好良いのよ!! どうみてもトカゲじゃない」
「そこが、男と女の感性の違いだと思うよ」
 逆もまたしかり。
 女の子の可愛いは、男に理解出来ないものがある。
 美は共通しているのに、可愛いや格好いいは共有できないのが現実である。
「……暫く、ここに居るわ。ノームを説得してみせる」
「良いけど、うちの者や調度品に危害を加えるのは止めてね。私が怒られるから」
「分かった」
「じゃあ、お休み」
 私は、ウンディーネを腹の上から退けて二度寝の体制に入った。
 翌朝、ノームの悲鳴と共に叩き起こされることとなる。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ
恋愛
 王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。 「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」  しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。    完結致しました(2022/06/28完結表記) GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。 ★お礼★  たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます! 中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!

断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。

パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。 将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。 平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。 根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。 その突然の失踪に、大騒ぎ。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

処理中です...