お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

逆鱗に触れたらこうなった

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 昼食にレストランの個室を借りて、証拠集めに勤しみました。
 何の証拠化というと、あのバカ神官が付けた痣をチェキもどきに収めるためです。
 日付入りの紙を持ってドレスを若干はだけさせ肩を露出した写真を数枚撮りました。
 くっきりと指の痕が残っていたので、良い攻撃材料になる。
 言い逃れ出来ない様に、顔も写しています。
 撮影が終わり、私はテーブルの上に並ぶ写真を手に取りながらニマニマしていた。
「ふふふ、良い攻撃材料が出来たわ。最近、何かと聖女教育のために掛かる費用を請求してきているみたいだから良い打撃になると思うよのねぇ」
「お嬢様、顔が凄いことになってます。一応、外なんで取り繕って下さい。でないと、私がメアリー様にお仕置きされますぅ。いや、もう教会と仲たがいしている時点で怒られる? それは嫌ぁぁ」
 一人恐怖に震えているユリアを見て、少しは成長したと思ったのにヘッポコメイドは健在だったようだ。
「叱られないわよ。むしろ、良くやったと褒められるわよ。お父様の手紙には、教会についての愚痴が恨み辛みごとのように書き綴られていたんだから。怪我の功名ってやつよ。昼食後から時間が空くから、十七時から行う視察を抜き打ちで行うわ。後で、事情を各店長に伝えておいて。それからアリスの雑貨店に先ぶれを出して十七時から品評会が出来ないか確認をお願い。了承してくれたら、関係者各位に連絡して迷惑料金貨十枚渡しておいて。翌月発刊の絵本について編集者と打ち合わせする時間も変更になるから、早めに絵師と編集長を呼んで接待するように伝えて。今日は、私の都合で彼らを振り回すのだから絶対に失礼のないように対応してね」
 そう念押しする私に対し、
「お嬢様って本当に六歳ですか? サバ読んでませんよね?」
とユリアが失礼なことを言って来た。
「…ユリア、あんた不敬罪で減俸一ヶ月にするわよ」
「嫌だなぁ、冗談ですよー。お嬢様と話していると、大人と話してるみたいになるんですよねー。シンディーラ様とローラン様絡みになると暴走するので、その時は六歳児なんだと痛感しています」
「シンディーとローランは、私の可愛い天使なのよ。お父様に手紙じゃなく写真を送れと催促しているのだけど、全然送ってくれないの。いっそうの事お父様を蹴落として……」
「それ以上はダメですぅ!! 物騒な事を言わないで下さい」
「冗談よ。ユリア、さっさと動いて頂戴。私は、ここでご飯を食べているから」
「ううっ……私もお腹減ってるんですけど」
「移動時間に屋台で好きな物買ってあげるから仕事しなさい。仕事」
「約束ですからねー!!!」
 好きな物を買ってあげるという言葉に釣られてなのかは分からないが、ユリアの機嫌は直ったようで私と護衛役のユリアの夫ルイを残して部屋から出て行った。
 開けっ放しの扉をルイが無言で閉めている。
「貴方、あれが妻で本当に良かったの?」
「ああいう天然なところも好きなんです」
 苦笑いを浮かべながらノロケられたので、私はテーブルに肩ひじ付いて大きなため息を吐いた。
 ユリアの根回しのおかげで、その日の業務は滞りなく進みいつもより早い時間に寝床に着くことが出来た。


 聖女剥奪&神官による暴行事件は、速攻で父に手紙と証拠の写真を同封して送りつけた。
 私の手紙が着くころには、教会側からの抗議文も届いていることだろう。
 聖女の称号剥奪を言われたのを良いことに、ガッツリ聖女の勉強を一週間ほどサボっています。
 紅茶を片手に、かわら版に目を通していると気になることが書かれていた。
「突如、治癒魔法が使えなくなる者が続出している!? なになに……冒険者だけでなく、教会の者も治癒魔法が突如使えなくなる現象が多発しているようだ。先日、聖女をとある神官が貶めていたところを目撃した信者の証言あり。神の逆鱗に触れたのではと専らの噂。それが本当ならとんでもないことになる。あわや大惨事となる前に、件の神官の処分の署名を集めて断罪の嘆願すべし……って怖いわ!!」
 教会は、治癒と結界の役割を果たしている。
 低所得者は専ら薬で治すが、中堅から上級の冒険者や富裕層は教会からの治癒師に回復魔法をかけてもらい治して貰っている。
 冒険者の活動が滞れば、強い魔物と対峙した時に命を落とす危険が増して依頼を受けなくなる可能性もある。
 一体全体どうなって、治癒魔法が使えなくなっているだと疑問に思っていると、私の周りを飛んでいた精霊が口々に言った。
「私達の愛し子をいじめたー」
「だから魔法を使えなくした」
「自業自得」
「あいつムカつく」
 口々に悪態を吐く精霊に、私はかわら版をグシャッと握りつぶして頭を抱えた。
「あんた達の仕業か」
「「「「そーだよー」」」」
 悪びれる様子もなく肯定する精霊たちに、
「やり過ぎだから、元に戻しなさい」
と言うとプクゥと頬を膨らませて嫌の大合唱をされた。
「いやいや、やり過ぎだからね。魔法を使えないようにするんだったら、あの神官だけで良くない?」
「連帯責任だー」
「そうだそうだー」
 やいのやいのと騒ぐ精霊たちに私はどうしてこうなったと頭を抱えた。
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