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幼少期
事情聴取という名目で王宮への召喚状が届きました
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イーサント国全土で回復魔法が使えなくなる現象が、不当による聖女の資格剥奪および聖女へ暴行を行ったことを正式に声明として発表された。
私の息がかかったかわら版屋には、その辺りの経緯を具体的に書かせて全国紙にするように依頼した。
父に頼み、語り手を雇って全国津々浦々巡って貰いました。
ユーフェリア教会に対し怒りを露にする者が多かったが、私が聖女であることには変わらないことに対し、今までよりも気軽に使えるようになったことに感謝の念を持つため複雑な心境らしい。
陛下から直々にお手紙を頂きました。
要約すると、事情を聞きたいから出頭しろとのことです。
まあ、あれだけ大騒ぎになったんだから行くしかないか。
「私一人で行くより、お父様と一緒に行った方が良いよね」
フリックに確認すると、
「さようで御座いますね。リリアン様が、いくら優秀とはいえ王宮は魔窟で御座います。魑魅魍魎の住む場所ゆえジョーズ様を同伴されるか、シュバルツ様を同伴されて行かれた方が賢明です」
と返された。
何を要求してくるか分からないからね。
馬鹿陛下は完全に私を駒と見てるし、王妃様とは程よい関係を保っているが隙を見せたらペロッと食べられそうで怖い。
「お父様を王都へ召喚するにしても時間がかかるし、お爺様を捕まえた方が早いかしら?」
「そうですなあ」
フリックは、あごに手を当てて少し考えた後に笑みを浮かべて言った。
「シュバルツ様を捕獲してきます。ジョーズ様は、社交シーズン前で仕事が立て込んでおりますので丁度良いでしょう」
サラッと捕獲とか言っちゃうフリックは、やっぱり何か他の者と違うものを感じる。
笑みを浮かべているのに、全然目が笑ってないのがさらに怖い!!
「う、うん。お願いね」
「畏まりました。今日中には連れてまいりますのでご安心下さいませ」
フリックが、颯爽と何事もなかったかのように退出して私は呆気にとられた。
「フリックって何者なの?」
思わずポツリと呟いた言葉に、いつの間にか控えていたメアリーが口を開いた。
「元は、凄腕の暗殺者ですよ。シュバルツ様に挑んで負かされてから、金魚のフンの様に付きまとって今では執事長まで上り詰めた傑物です」
「……メアリー、もしかしてお爺様に嫉妬している?」
「まさか」
表情の読めない能面な顔に何の感情も見えないが、言葉の端々に『面白くない』というのが伝わってくる。
可愛いところもあるもんだ。
王家への召喚状の返事は、一旦保留にしてフリック達が戻るまでの間は変わらず勉学に勤しむことになった。
夕食前にシュバルツを簀巻きにして戻ってきたフリックに、私は仰天した。
一応、雇い主だよね?
そんな扱い雑で良いの?
色んな言葉が頭に浮かんだが出てきたのは、
「お帰りなさい」
の一言だけだった。
「ただいま戻りました、お嬢様」
「フリック、何故お爺様は簀巻きにされているんでしょう?」
「ああ、王城へ行くと伝えましたら逃げ出しましたので捕縛しました」
サラッと黒いこと言っちゃってるよ!!
扱いが凄く雑なんだけど、大丈夫なのか?」
「お爺様が嫌がるなら、お父様に頼むから無理して連れて来なくても良かったのに……」
「リリアン……お前はなんて良い子なんだぁああ」
簀巻きになりながらビタンビタンと地べたを這って近づいてくるシュバルツを見て、これが元当主かと思うと頭が痛くなってきた。
「暴れないで下さい。埃が立ちます」
ガスッと祖父の背中を足蹴にしているフリックを見て、立場が逆転しているんじゃないかと錯覚させるくらい強烈だった。
隣から冷気を感じ、チラッと見るとメアリーが男どもを蛆虫を見るような目で見ていた。
何このカオス的展開!!
滅茶苦茶怖いんですけど。
一人で出かけた方が良かったんじゃないかと今更ながら思ってしまった。
暴力的な漫才を一頻りした後、祖父は簀巻きから解放され私を抱き上げた。
「フリックから話は聞いておるぞ。じいじも王宮には行きたくないが、行きたくないが可愛い孫のため一緒に行こう」
「いや、行きたくないならお父様を召喚するので」
「あれを召喚したら、本気であいつを王座から引きずり下ろすぞ」
「今それをされたら困りますね」
「そうだろう。ワシも当主の座に逆戻りは嫌だからな。まあ、報告だけで済むように睨みを利かせる程度にはなるだろうよ。ただ、アンジェリカ妃が苦手でなあ」
言わんとしていることは分かる。
恋愛脳な陛下の手綱を握り操縦している傑物を前にしたら、誰もが下手なことを言えなくなる。
言えば最後、良い材料だと細く微笑み脅してくる姿が目に浮かぶ。
「……一緒に頑張りましょう」
ファイトとシュバルツを励ましながら、色々打ち合わせをして翌日伺う旨の先ぶれを出した。
私の息がかかったかわら版屋には、その辺りの経緯を具体的に書かせて全国紙にするように依頼した。
父に頼み、語り手を雇って全国津々浦々巡って貰いました。
ユーフェリア教会に対し怒りを露にする者が多かったが、私が聖女であることには変わらないことに対し、今までよりも気軽に使えるようになったことに感謝の念を持つため複雑な心境らしい。
陛下から直々にお手紙を頂きました。
要約すると、事情を聞きたいから出頭しろとのことです。
まあ、あれだけ大騒ぎになったんだから行くしかないか。
「私一人で行くより、お父様と一緒に行った方が良いよね」
フリックに確認すると、
「さようで御座いますね。リリアン様が、いくら優秀とはいえ王宮は魔窟で御座います。魑魅魍魎の住む場所ゆえジョーズ様を同伴されるか、シュバルツ様を同伴されて行かれた方が賢明です」
と返された。
何を要求してくるか分からないからね。
馬鹿陛下は完全に私を駒と見てるし、王妃様とは程よい関係を保っているが隙を見せたらペロッと食べられそうで怖い。
「お父様を王都へ召喚するにしても時間がかかるし、お爺様を捕まえた方が早いかしら?」
「そうですなあ」
フリックは、あごに手を当てて少し考えた後に笑みを浮かべて言った。
「シュバルツ様を捕獲してきます。ジョーズ様は、社交シーズン前で仕事が立て込んでおりますので丁度良いでしょう」
サラッと捕獲とか言っちゃうフリックは、やっぱり何か他の者と違うものを感じる。
笑みを浮かべているのに、全然目が笑ってないのがさらに怖い!!
「う、うん。お願いね」
「畏まりました。今日中には連れてまいりますのでご安心下さいませ」
フリックが、颯爽と何事もなかったかのように退出して私は呆気にとられた。
「フリックって何者なの?」
思わずポツリと呟いた言葉に、いつの間にか控えていたメアリーが口を開いた。
「元は、凄腕の暗殺者ですよ。シュバルツ様に挑んで負かされてから、金魚のフンの様に付きまとって今では執事長まで上り詰めた傑物です」
「……メアリー、もしかしてお爺様に嫉妬している?」
「まさか」
表情の読めない能面な顔に何の感情も見えないが、言葉の端々に『面白くない』というのが伝わってくる。
可愛いところもあるもんだ。
王家への召喚状の返事は、一旦保留にしてフリック達が戻るまでの間は変わらず勉学に勤しむことになった。
夕食前にシュバルツを簀巻きにして戻ってきたフリックに、私は仰天した。
一応、雇い主だよね?
そんな扱い雑で良いの?
色んな言葉が頭に浮かんだが出てきたのは、
「お帰りなさい」
の一言だけだった。
「ただいま戻りました、お嬢様」
「フリック、何故お爺様は簀巻きにされているんでしょう?」
「ああ、王城へ行くと伝えましたら逃げ出しましたので捕縛しました」
サラッと黒いこと言っちゃってるよ!!
扱いが凄く雑なんだけど、大丈夫なのか?」
「お爺様が嫌がるなら、お父様に頼むから無理して連れて来なくても良かったのに……」
「リリアン……お前はなんて良い子なんだぁああ」
簀巻きになりながらビタンビタンと地べたを這って近づいてくるシュバルツを見て、これが元当主かと思うと頭が痛くなってきた。
「暴れないで下さい。埃が立ちます」
ガスッと祖父の背中を足蹴にしているフリックを見て、立場が逆転しているんじゃないかと錯覚させるくらい強烈だった。
隣から冷気を感じ、チラッと見るとメアリーが男どもを蛆虫を見るような目で見ていた。
何このカオス的展開!!
滅茶苦茶怖いんですけど。
一人で出かけた方が良かったんじゃないかと今更ながら思ってしまった。
暴力的な漫才を一頻りした後、祖父は簀巻きから解放され私を抱き上げた。
「フリックから話は聞いておるぞ。じいじも王宮には行きたくないが、行きたくないが可愛い孫のため一緒に行こう」
「いや、行きたくないならお父様を召喚するので」
「あれを召喚したら、本気であいつを王座から引きずり下ろすぞ」
「今それをされたら困りますね」
「そうだろう。ワシも当主の座に逆戻りは嫌だからな。まあ、報告だけで済むように睨みを利かせる程度にはなるだろうよ。ただ、アンジェリカ妃が苦手でなあ」
言わんとしていることは分かる。
恋愛脳な陛下の手綱を握り操縦している傑物を前にしたら、誰もが下手なことを言えなくなる。
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