54 / 181
幼少期
解散したとの後で
しおりを挟む
取り合えず、巷で賑わっていた回復魔法使えない事件については説明したので追求はなかった。
しかし、精霊が陛下を燃やしたことで問題も噴出したため後日ゆっくり話しましょうと遠回しに言われて解放された。
まあ、王妃が言わんとしている所は何となく分かる。
馬鹿一人のせいで、王族の直系は等しく魔法を使えなくなった。
使えなくなったというのは語弊があるが、実質使えないのだからこの表現でも問題ないだろう。
帰宅してドッと疲れが出た。
やる気が起きない。
遅い昼食を取りながら祖父に行った。
「お爺様、申し訳ないのですが今しばらく王都へ留まって貰えませんか?」
「お嬢様、勿論いらっしゃいますよ」
何故かフリックが返事している。
「フリック、殺気をしまってくれ。リリー、暫くとは言わず王都に滞在するから安心しなさい。精霊の粛清を教会に続き王族も食らったとなれば、あの場に居た連中はリリアンを取り込むのを諦めるだろう。しかし、王妃だけは違う。からめ手できそうでなぁ。用心するに越したことは無い。それに、リリーなら大丈夫だと思うが万が一精霊が暴走した時の対抗策も考えねばならん」
「うっかり暴走して消しちゃったテヘ……なんて事になったら、シンディーとローランに顔向けできなくなるわ」
その場に居た誰もが『違うだろう』と突っ込みを入れていたが、私はのほほんとパンをちぎって食べていた。
「しかし、ここで疑問が一つ出るんだが。アルベルト殿下には精霊は何もしてこなかったのは何故だ?」
「そう言われてみればそうですね。実際に聞いてみては、如何でしょうか。ノーム、ウンディーネどういうこと?」
ダイエット用に作ったおからケーキを頬張るウンディーネと肉の塊に格闘しているノームが、チラリと私を一瞥して言った。
「あんたが、精霊の愛し子と言われ始めたのは本当に最近のことなのよ。高々一柱の精霊が気に入っているくらいで愛し子とは言わないわ。加護を与えられただけで、人間が勝手に愛し子と言っているだけよ。でもね、創造神テトラグラマトン様が愛し子と認めた。その時、精霊界で激震が走ったわ。だから、短気な火の奴もあんたを見に来てたわけ。精霊を利用しようとした王は、あいつの逆鱗に触れて丸焦げになって今も延々と煉獄に焼かれる虚像を魅せられているんでしょう。自業自得だけど、やることが本当にえげつないわ」
「じゃあ、これから殿下の態度が悪かったら陛下と同じ轍を踏むの?」
冗談キツイよ!!
目の前で火だるまを見せられ、次は何仕出かすか分からない恐怖を悶々と抱えて接することになるのかと思うとゾッとする。
「お前を通じて精霊を利用しようと考えなけりゃあ問題ない。基本的に人間同士のいざこざなんか気にしないからな。ただし、下級精霊は思考が幼いから手綱を握ってないと大惨事になりかねん。適当に小さな嫌がらせをさせておけば良いだろう」
アルベルトが私に反発しているうちは、まあ大丈夫だろう。
ただ、あの態度を取り続けるなら顰蹙を買うのは必至だろう。
普段から普通に『殺っちゃう?』とか言っている精霊達の手綱を握るのは苦労しそうだ。
「……何か私ばかり貧乏くじを引かされている気がするのは何故だろう」
異世界でまったりスローライフを過ごしつつ、魔法を使ってスゲーってやりたかったのに。
全然違う方向へ進んでしまい、今や愛し子(笑)になっている。
「ノームの時も思ったけど、精霊って加護を押し売りするの止めて欲しいんだけど」
火の大精霊の加護を成り行きで受けてしまったが、正直要らねえ。
火の魔法を使ってド派手にバトル漫画の主人公のように戦いたいとか思わない。
魔法に憧れたけど、ノーコンの私にそんな危険な物を授けてどうするんだと声を大にして言いたい。
「あいつが、加護を渡したの!? あの偏屈短気野郎が?? ……あり得ない」
「面白いとか言って加護を押し付けてったわよ。陛下を断罪しながらね」
あの時は、肝が冷えたわ。
ノームやウンディーネと違ってファーセリアは、一歩間違えたら自分も一緒に爆破されてご臨終しそうな危険性を孕んでいる。
「押し付けたとは酷いな、愛し子よ」
燭台の炎がボウッと勢いよく燃えたかと思うと、青い鳥がテーブルのちょこんと乗っていた。
「あんた何しに来たのよ!」
フーッと毛を逆立てて威嚇する猫もといウンディーネをチラリと一瞥して鼻で笑った。
「加護した愛し子を見守りに来ただけさ。そういう水のは、土のを追いかけまわしているのか? 相変わらず暇な事だな。相手にされていないことを早々に理解して諦めれば良いものを」
ズバッと触れてはいけないところに触れた!!
「あんたに関係ないでしょー!!」
ウンディーネは精霊の姿に戻りファーセリアに特攻をかましている。
そんなファーセリアは、ひらりひらりと交わしながらウンディーネを揶揄っていた。
こうして我が家に一匹新たな精霊が加わった。
しかし、精霊が陛下を燃やしたことで問題も噴出したため後日ゆっくり話しましょうと遠回しに言われて解放された。
まあ、王妃が言わんとしている所は何となく分かる。
馬鹿一人のせいで、王族の直系は等しく魔法を使えなくなった。
使えなくなったというのは語弊があるが、実質使えないのだからこの表現でも問題ないだろう。
帰宅してドッと疲れが出た。
やる気が起きない。
遅い昼食を取りながら祖父に行った。
「お爺様、申し訳ないのですが今しばらく王都へ留まって貰えませんか?」
「お嬢様、勿論いらっしゃいますよ」
何故かフリックが返事している。
「フリック、殺気をしまってくれ。リリー、暫くとは言わず王都に滞在するから安心しなさい。精霊の粛清を教会に続き王族も食らったとなれば、あの場に居た連中はリリアンを取り込むのを諦めるだろう。しかし、王妃だけは違う。からめ手できそうでなぁ。用心するに越したことは無い。それに、リリーなら大丈夫だと思うが万が一精霊が暴走した時の対抗策も考えねばならん」
「うっかり暴走して消しちゃったテヘ……なんて事になったら、シンディーとローランに顔向けできなくなるわ」
その場に居た誰もが『違うだろう』と突っ込みを入れていたが、私はのほほんとパンをちぎって食べていた。
「しかし、ここで疑問が一つ出るんだが。アルベルト殿下には精霊は何もしてこなかったのは何故だ?」
「そう言われてみればそうですね。実際に聞いてみては、如何でしょうか。ノーム、ウンディーネどういうこと?」
ダイエット用に作ったおからケーキを頬張るウンディーネと肉の塊に格闘しているノームが、チラリと私を一瞥して言った。
「あんたが、精霊の愛し子と言われ始めたのは本当に最近のことなのよ。高々一柱の精霊が気に入っているくらいで愛し子とは言わないわ。加護を与えられただけで、人間が勝手に愛し子と言っているだけよ。でもね、創造神テトラグラマトン様が愛し子と認めた。その時、精霊界で激震が走ったわ。だから、短気な火の奴もあんたを見に来てたわけ。精霊を利用しようとした王は、あいつの逆鱗に触れて丸焦げになって今も延々と煉獄に焼かれる虚像を魅せられているんでしょう。自業自得だけど、やることが本当にえげつないわ」
「じゃあ、これから殿下の態度が悪かったら陛下と同じ轍を踏むの?」
冗談キツイよ!!
目の前で火だるまを見せられ、次は何仕出かすか分からない恐怖を悶々と抱えて接することになるのかと思うとゾッとする。
「お前を通じて精霊を利用しようと考えなけりゃあ問題ない。基本的に人間同士のいざこざなんか気にしないからな。ただし、下級精霊は思考が幼いから手綱を握ってないと大惨事になりかねん。適当に小さな嫌がらせをさせておけば良いだろう」
アルベルトが私に反発しているうちは、まあ大丈夫だろう。
ただ、あの態度を取り続けるなら顰蹙を買うのは必至だろう。
普段から普通に『殺っちゃう?』とか言っている精霊達の手綱を握るのは苦労しそうだ。
「……何か私ばかり貧乏くじを引かされている気がするのは何故だろう」
異世界でまったりスローライフを過ごしつつ、魔法を使ってスゲーってやりたかったのに。
全然違う方向へ進んでしまい、今や愛し子(笑)になっている。
「ノームの時も思ったけど、精霊って加護を押し売りするの止めて欲しいんだけど」
火の大精霊の加護を成り行きで受けてしまったが、正直要らねえ。
火の魔法を使ってド派手にバトル漫画の主人公のように戦いたいとか思わない。
魔法に憧れたけど、ノーコンの私にそんな危険な物を授けてどうするんだと声を大にして言いたい。
「あいつが、加護を渡したの!? あの偏屈短気野郎が?? ……あり得ない」
「面白いとか言って加護を押し付けてったわよ。陛下を断罪しながらね」
あの時は、肝が冷えたわ。
ノームやウンディーネと違ってファーセリアは、一歩間違えたら自分も一緒に爆破されてご臨終しそうな危険性を孕んでいる。
「押し付けたとは酷いな、愛し子よ」
燭台の炎がボウッと勢いよく燃えたかと思うと、青い鳥がテーブルのちょこんと乗っていた。
「あんた何しに来たのよ!」
フーッと毛を逆立てて威嚇する猫もといウンディーネをチラリと一瞥して鼻で笑った。
「加護した愛し子を見守りに来ただけさ。そういう水のは、土のを追いかけまわしているのか? 相変わらず暇な事だな。相手にされていないことを早々に理解して諦めれば良いものを」
ズバッと触れてはいけないところに触れた!!
「あんたに関係ないでしょー!!」
ウンディーネは精霊の姿に戻りファーセリアに特攻をかましている。
そんなファーセリアは、ひらりひらりと交わしながらウンディーネを揶揄っていた。
こうして我が家に一匹新たな精霊が加わった。
1
あなたにおすすめの小説
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
【完結】お飾りではなかった王妃の実力
鏑木 うりこ
恋愛
王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。
「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」
しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。
完結致しました(2022/06/28完結表記)
GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。
★お礼★
たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます!
中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!
断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。
パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。
将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。
平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。
根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。
その突然の失踪に、大騒ぎ。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる