お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

解散したとの後で

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 取り合えず、巷で賑わっていた回復魔法使えない事件については説明したので追求はなかった。
 しかし、精霊が陛下を燃やしたことで問題も噴出したため後日ゆっくり話しましょうと遠回しに言われて解放された。
 まあ、王妃が言わんとしている所は何となく分かる。
 馬鹿一人のせいで、王族の直系は等しく魔法を使えなくなった。
 使えなくなったというのは語弊があるが、実質使えないのだからこの表現でも問題ないだろう。
 帰宅してドッと疲れが出た。
 やる気が起きない。
 遅い昼食を取りながら祖父に行った。
「お爺様、申し訳ないのですが今しばらく王都へ留まって貰えませんか?」
「お嬢様、勿論いらっしゃいますよ」
 何故かフリックが返事している。
「フリック、殺気をしまってくれ。リリー、暫くとは言わず王都に滞在するから安心しなさい。精霊の粛清を教会に続き王族も食らったとなれば、あの場に居た連中はリリアンを取り込むのを諦めるだろう。しかし、王妃だけは違う。からめ手できそうでなぁ。用心するに越したことは無い。それに、リリーなら大丈夫だと思うが万が一精霊が暴走した時の対抗策も考えねばならん」
「うっかり暴走して消しちゃったテヘ……なんて事になったら、シンディーとローランに顔向けできなくなるわ」
 その場に居た誰もが『違うだろう』と突っ込みを入れていたが、私はのほほんとパンをちぎって食べていた。
「しかし、ここで疑問が一つ出るんだが。アルベルト殿下には精霊は何もしてこなかったのは何故だ?」
「そう言われてみればそうですね。実際に聞いてみては、如何でしょうか。ノーム、ウンディーネどういうこと?」
 ダイエット用に作ったおからケーキを頬張るウンディーネと肉の塊に格闘しているノームが、チラリと私を一瞥して言った。
「あんたが、精霊の愛し子と言われ始めたのは本当に最近のことなのよ。高々一柱の精霊が気に入っているくらいで愛し子とは言わないわ。加護を与えられただけで、人間が勝手に愛し子と言っているだけよ。でもね、創造神テトラグラマトン様が愛し子と認めた。その時、精霊界で激震が走ったわ。だから、短気な火の奴もあんたを見に来てたわけ。精霊を利用しようとした王は、あいつの逆鱗に触れて丸焦げになって今も延々と煉獄に焼かれる虚像を魅せられているんでしょう。自業自得だけど、やることが本当にえげつないわ」
「じゃあ、これから殿下の態度が悪かったら陛下と同じ轍を踏むの?」
 冗談キツイよ!!
 目の前で火だるまを見せられ、次は何仕出かすか分からない恐怖を悶々と抱えて接することになるのかと思うとゾッとする。
「お前を通じて精霊を利用しようと考えなけりゃあ問題ない。基本的に人間同士のいざこざなんか気にしないからな。ただし、下級精霊は思考が幼いから手綱を握ってないと大惨事になりかねん。適当に小さな嫌がらせをさせておけば良いだろう」
 アルベルトが私に反発しているうちは、まあ大丈夫だろう。
 ただ、あの態度を取り続けるなら顰蹙を買うのは必至だろう。
 普段から普通に『殺っちゃう?』とか言っている精霊達の手綱を握るのは苦労しそうだ。
「……何か私ばかり貧乏くじを引かされている気がするのは何故だろう」
 異世界でまったりスローライフを過ごしつつ、魔法を使ってスゲーってやりたかったのに。
 全然違う方向へ進んでしまい、今や愛し子(笑)になっている。
「ノームの時も思ったけど、精霊って加護を押し売りするの止めて欲しいんだけど」
 火の大精霊の加護を成り行きで受けてしまったが、正直要らねえ。
 火の魔法を使ってド派手にバトル漫画の主人公のように戦いたいとか思わない。
 魔法に憧れたけど、ノーコンの私にそんな危険な物を授けてどうするんだと声を大にして言いたい。
「あいつが、加護を渡したの!? あの偏屈短気野郎が?? ……あり得ない」
「面白いとか言って加護を押し付けてったわよ。陛下を断罪しながらね」
 あの時は、肝が冷えたわ。
 ノームやウンディーネと違ってファーセリアは、一歩間違えたら自分も一緒に爆破されてご臨終しそうな危険性を孕んでいる。
「押し付けたとは酷いな、愛し子よ」
 燭台の炎がボウッと勢いよく燃えたかと思うと、青い鳥がテーブルのちょこんと乗っていた。
「あんた何しに来たのよ!」
 フーッと毛を逆立てて威嚇する猫もといウンディーネをチラリと一瞥して鼻で笑った。
「加護した愛し子を見守りに来ただけさ。そういう水のは、土のを追いかけまわしているのか? 相変わらず暇な事だな。相手にされていないことを早々に理解して諦めれば良いものを」
 ズバッと触れてはいけないところに触れた!!
「あんたに関係ないでしょー!!」
 ウンディーネは精霊の姿に戻りファーセリアに特攻をかましている。
 そんなファーセリアは、ひらりひらりと交わしながらウンディーネを揶揄っていた。
 こうして我が家に一匹新たな精霊が加わった。
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