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幼少期
決闘を申し込まれた
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洗礼を受けてから、父の胃に穴が開きそうな勢いです。
理由は、予想外の結果だったから。
闇魔法と言えば、魔族を連想させるくらい『悪』とされている。
闇魔法は、使い方を誤れば大量虐殺や精神障害を起こすことも出来る。
禁術の多くは、闇魔法が根底にあるからだとか。
聖女が、聖魔法の使い手ではない事と創造神の加護を得たことに激震が走った。
聖女補佐という新しい地位を作り、アリーシャを任命することで落ち着いた。
問題は、ガリオンである。
魔王復活や魔物の活動も活発になり始めて来た時に、聖剣の職業を持つ者が現れれば『勇者』として担ぎ上げられるのは目に見えている。
父も私と同じで時期を見て公表の考えで一致した。
ガリオンは、将来の選択肢が増えた。
私は、ガリオンの執事教育を国防の頂点である大総帥への教育へと舵を切った。
幸い歩兵隊将軍のベルガーと懇意にしていたのが功をなした。
王宮で教育を受けている間は、ベルガーにガリオンを預けて教育して貰うように父を通して依頼した。
スー夫妻の下でも戦闘訓練は施されているが、現場の人間と直に触れ合い揉まれて貰う方がガリオンにもいい影響を与えるだろう。
一兵卒と切磋琢磨に稽古に励むガリオンに、馬鹿王子がやってくれました。
私との授業は嫌だと逃げ出して、訓練場をうろついていた王子がガリオンを見て勝負を挑んでしまった。
勿論、その話は授業中の私の耳にも入る。
不敬覚悟も承知で慌てて飛び込んできた兵が、あらましを伝えられた時は多分般若の顔をしていたと思う。
その場に居た者が、「ヒィッ」と悲鳴を上げたくらいだもの。
「分かりました。そちらに向かいます。先生、済みません。一旦、席を離れます」
「あ、ああ」
私は席を立ち競歩しているかと思うくらい、早歩きで移動した。
本当は走りたいのだが、淑女たるもの如何なる時でも人前で走ることははしたないと考えられているので、どうしても競歩になってしまう。
大理石を廊下を歩く度にカツカツと音が響く。
耳障りだが、致し方ない。
「殿下が勝負を吹っかけたとのことですが、ガリオンは勿論勝負に乗ってませんよね?」
「何度も丁重にお断りされておりましたが、その…殿下の癇癪が酷くて……」
困惑気味の兵の言葉に、私はハァと大きな溜息を吐いた。
アルベルトも最低限の剣術は習っているだろうが、スー夫妻の扱きを受けてケロッとしているガリオンと戦えば瞬殺どころか大怪我を負ってしまう。
ガリオンは、手加減出来るほどの腕は持っていない。
うっかりアルベルトを殺したら、その責任はアングロサクソン家に問われてしまう。
王妃の子供が、無事誕生して成長して貰うまでは死なれては困る。
「ここからでも殿下の怒号が聞こえてきますわね」
訓練場の門をくぐると、アルベルトがガリオンに向かって罵声を飛ばしている。
私の側近ということもあり、難癖をつけていた。
「お止めなさい!! 殿下、何をなさっていますの! 授業中に抜け出して、訓練所を荒らすなんて言語同断でしてよ。さあ、皆さまに非礼を詫びてお戻りくださいまし」
「うるさい! お前が傍にいるだけでヘドが出る。この俺が、直々に相手してやろうと誘ったのに逆らう馬鹿が悪いんだ」
何言ってんだコイツという視線が、アルベルトに集中するが当の本人は怒りで気付いていない。
「私の従者を貶めるようなことは許しません。大体、殿下とガリオンでは勝負になりませんわ。実力の差も分からない時点で、負けてましてよ」
私の言葉に頭に血が上ったアルベルトは、嵌めていた手袋を投げつけて来た。
「拾え! 命令だ!!」
唾を飛ばしながら叫ぶアルベルトに、私はやれやれと肩を竦めた。
「命令と言われましても、アングロサクソン家に対し決闘を申し込むのですか? 淑女の私に?」
「代理でそこの腰抜けを立てれば良いだろう。俺が勝ったら婚約解消だ!」
フンッと鼻で笑うアルベルトを見て、どこから勝てる自信が出てくるのか謎だ。
「私が勝てば、殿下に対し躾の一環として教育者および婚約者は体罰も許される条件で受けましょう」
「ふん、もう勝った気でいるのか! 勝つのは俺だからな!!」
肩で風を切りながら、訓練場の中心に歩いて行った。
ガリオンもうんざりとした顔で向かおうとしたのを止めた。
「ガリオンは、兵士の皆様たちと一緒に下がってなさい」
「それは、出来ません。お嬢様の護衛ですよ」
主を戦わせたとなればガリオンの面目が潰れてしまうが、こうして堂々とアルベルトをボコれる機会はないのだ。
このチャンスを逃してなるものか。
「殿下は、私に対して決闘を申し込んだのよ。だったら、私自身が受けても問題ないでしょう。兵士の皆様方は、観客席で観戦してて下さいませ。念のため、怪我が出ないとも限りませんので回復薬の用意をお願いします」
「リリアン様が戦うのは承服出来かねます」
ニコー少佐が真っ青な顔で止めてくるが、笑み一つで封じた。
満面の笑みなのに、何が怖かったのか青から白へと顔色が変わった。
訓練場の中央にいるアルベルトの前に立ち、再度確認をした。
「これは、殿下から決闘を申し込んだのです。怪我をされたとしても自己責任でしてよ。誰も処罰させませんし、その権限も殿下にはありません。魔法は使わない。剣術での勝負で宜しいですね?」
「ああ、良いぞ。剣術で俺に勝てると思うなよ」
刃が潰れた剣を私と王子それぞれに渡される。
それぞれ所定の位置につき、ニコー少佐に合図を送るとヤケになったのか「始め!」と合図を出した。
理由は、予想外の結果だったから。
闇魔法と言えば、魔族を連想させるくらい『悪』とされている。
闇魔法は、使い方を誤れば大量虐殺や精神障害を起こすことも出来る。
禁術の多くは、闇魔法が根底にあるからだとか。
聖女が、聖魔法の使い手ではない事と創造神の加護を得たことに激震が走った。
聖女補佐という新しい地位を作り、アリーシャを任命することで落ち着いた。
問題は、ガリオンである。
魔王復活や魔物の活動も活発になり始めて来た時に、聖剣の職業を持つ者が現れれば『勇者』として担ぎ上げられるのは目に見えている。
父も私と同じで時期を見て公表の考えで一致した。
ガリオンは、将来の選択肢が増えた。
私は、ガリオンの執事教育を国防の頂点である大総帥への教育へと舵を切った。
幸い歩兵隊将軍のベルガーと懇意にしていたのが功をなした。
王宮で教育を受けている間は、ベルガーにガリオンを預けて教育して貰うように父を通して依頼した。
スー夫妻の下でも戦闘訓練は施されているが、現場の人間と直に触れ合い揉まれて貰う方がガリオンにもいい影響を与えるだろう。
一兵卒と切磋琢磨に稽古に励むガリオンに、馬鹿王子がやってくれました。
私との授業は嫌だと逃げ出して、訓練場をうろついていた王子がガリオンを見て勝負を挑んでしまった。
勿論、その話は授業中の私の耳にも入る。
不敬覚悟も承知で慌てて飛び込んできた兵が、あらましを伝えられた時は多分般若の顔をしていたと思う。
その場に居た者が、「ヒィッ」と悲鳴を上げたくらいだもの。
「分かりました。そちらに向かいます。先生、済みません。一旦、席を離れます」
「あ、ああ」
私は席を立ち競歩しているかと思うくらい、早歩きで移動した。
本当は走りたいのだが、淑女たるもの如何なる時でも人前で走ることははしたないと考えられているので、どうしても競歩になってしまう。
大理石を廊下を歩く度にカツカツと音が響く。
耳障りだが、致し方ない。
「殿下が勝負を吹っかけたとのことですが、ガリオンは勿論勝負に乗ってませんよね?」
「何度も丁重にお断りされておりましたが、その…殿下の癇癪が酷くて……」
困惑気味の兵の言葉に、私はハァと大きな溜息を吐いた。
アルベルトも最低限の剣術は習っているだろうが、スー夫妻の扱きを受けてケロッとしているガリオンと戦えば瞬殺どころか大怪我を負ってしまう。
ガリオンは、手加減出来るほどの腕は持っていない。
うっかりアルベルトを殺したら、その責任はアングロサクソン家に問われてしまう。
王妃の子供が、無事誕生して成長して貰うまでは死なれては困る。
「ここからでも殿下の怒号が聞こえてきますわね」
訓練場の門をくぐると、アルベルトがガリオンに向かって罵声を飛ばしている。
私の側近ということもあり、難癖をつけていた。
「お止めなさい!! 殿下、何をなさっていますの! 授業中に抜け出して、訓練所を荒らすなんて言語同断でしてよ。さあ、皆さまに非礼を詫びてお戻りくださいまし」
「うるさい! お前が傍にいるだけでヘドが出る。この俺が、直々に相手してやろうと誘ったのに逆らう馬鹿が悪いんだ」
何言ってんだコイツという視線が、アルベルトに集中するが当の本人は怒りで気付いていない。
「私の従者を貶めるようなことは許しません。大体、殿下とガリオンでは勝負になりませんわ。実力の差も分からない時点で、負けてましてよ」
私の言葉に頭に血が上ったアルベルトは、嵌めていた手袋を投げつけて来た。
「拾え! 命令だ!!」
唾を飛ばしながら叫ぶアルベルトに、私はやれやれと肩を竦めた。
「命令と言われましても、アングロサクソン家に対し決闘を申し込むのですか? 淑女の私に?」
「代理でそこの腰抜けを立てれば良いだろう。俺が勝ったら婚約解消だ!」
フンッと鼻で笑うアルベルトを見て、どこから勝てる自信が出てくるのか謎だ。
「私が勝てば、殿下に対し躾の一環として教育者および婚約者は体罰も許される条件で受けましょう」
「ふん、もう勝った気でいるのか! 勝つのは俺だからな!!」
肩で風を切りながら、訓練場の中心に歩いて行った。
ガリオンもうんざりとした顔で向かおうとしたのを止めた。
「ガリオンは、兵士の皆様たちと一緒に下がってなさい」
「それは、出来ません。お嬢様の護衛ですよ」
主を戦わせたとなればガリオンの面目が潰れてしまうが、こうして堂々とアルベルトをボコれる機会はないのだ。
このチャンスを逃してなるものか。
「殿下は、私に対して決闘を申し込んだのよ。だったら、私自身が受けても問題ないでしょう。兵士の皆様方は、観客席で観戦してて下さいませ。念のため、怪我が出ないとも限りませんので回復薬の用意をお願いします」
「リリアン様が戦うのは承服出来かねます」
ニコー少佐が真っ青な顔で止めてくるが、笑み一つで封じた。
満面の笑みなのに、何が怖かったのか青から白へと顔色が変わった。
訓練場の中央にいるアルベルトの前に立ち、再度確認をした。
「これは、殿下から決闘を申し込んだのです。怪我をされたとしても自己責任でしてよ。誰も処罰させませんし、その権限も殿下にはありません。魔法は使わない。剣術での勝負で宜しいですね?」
「ああ、良いぞ。剣術で俺に勝てると思うなよ」
刃が潰れた剣を私と王子それぞれに渡される。
それぞれ所定の位置につき、ニコー少佐に合図を送るとヤケになったのか「始め!」と合図を出した。
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