お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

サンドバッグを手に入れました

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「……罪人用に魔力を封じる道具があったはずです。それをアルベルトに身につけさせます。今、このタイミングでアルベルトの出生を明かせば王家の失墜だけでは済まなくなります。マリアンヌは、王家を謀った罪で内々に処理します。アルベルトの王位継承権の剥奪も早々に行います。リリアンには、不愉快なで不便な思いをさせてしまうでしょう。この子が、十一歳になるまで待って欲しいの」
 お腹を摩りながら、王妃は申し訳なさそうに懇願してきた。
「学園の卒業と同時に、アルベルトの罪を合法的に処罰。アンジェリカ様の御子を王太子として指名なさると。構いませんよ。アレでも虫よけくらいにはなりますし、サンドバックが手に入ったと思っておきます。一つ貸しということで宜しいですか?」
 得てせずにサンドバックが手に入ったのだ。
 ニヤニヤが止まらない。
 王家に貸しを作ることが出来たし、無茶振りされた時用に取っておこう。
「……それで構わないわ」
「魔力封じの道具に関してですが、封じるのではなく吸い上げる物にしましょう。吸い上げた魔力は、城の結界の動力に使いましょう」
「魔力を吸い上げ過ぎて死なないか?」
「大丈夫です。平民の殆どは魔法が使えません。それは何故か? 殆どの者が、魔力を持って無いからです。故に魔力が無くても死にません。精々、身体が怠くなるくらいで収まるでしょう」
 魔法を発動する条件は二つある。
 一つ、明確な呪文もしくはイメージをし己の魔力を消費する方法。
 一つ、明確な呪文もしくはイメージをし己の魔力を精霊に与えて消費する方法。
 前者は、後者に比べて魔力の消費量が大きい。
 前者が10なら後者は1といった具合に魔力消費量に大きな差がある。
 魔力を吸い上げ続けられれば、魔力操作が上手くても発動させる魔力を集めることが出来ずに不発に終わる。
 それに――。
「今まで詐取してきたのだから、今度は搾取されるべきだと思いませんか? これまで掛かった費用と、今後掛かる費用を学園卒業後に請求すれば宜しいかと」
 アルベルトが王族らしい人間であったのならば、まだ他の道は用意出来たかもしれない。
 更生の余地がない者に、慈悲は無い。
 魔力封じ何て生ぬるいことはしない。
 キッチリと今までアルベルトに掛かった金をその身を持って取り立ててるまでだ。
 借金を背負わせて身動きが取れないようにすれば、人体実験もやりたい放題。
 ああ、卒業の日が楽しみだ。
 満面の笑みを浮かべる私に、父は固まり王妃は良い笑顔を浮かべている。
「それは妙案ね」
「表向きは王族として扱うことになります。勉強はこれまで通り行って、成長過程で使える人材に育つのであれば適当な地位を与えて一家臣として仕えさせましょう。無理なら不慮の事故や病気になって表舞台から消えて貰いましょう」
 アルベルトに期待はしていないが、人間どう転ぶか分からない。
 人生の転機が訪れて考えがガラッと変わるかもしれないし、一生傲慢なままかもしれない。
 現時点で物理的に首と胴を斬る事は可能だが、それは色々と厄介な問題や情勢が絡んでくるので保留を選択するのが一番だろう。
「リリアン、アレが更生するとは思えないのだが?」
「お父様、未来はどう転ぶか分かりませんわ。使えるかどうかを決めるのは、もう少し猶予を与えても良いと思います」
 折角のサンドバックを手放してなるものか、とは言わないでおく。
「魔力封じの道具はあるが、魔力を吸い上げる魔法具は存在しない。どうするつもりだ?」
「お父様、無いなら作れば宜しいのです。ノーム、ちょっと来て頂戴」
 ノームに呼びかけると、壁から地龍に擬態したノームが現れた。
「何だ?」
「こういう奴を作って欲しいんだけど」
 ボソボソとノームに自動調整型の魔力吸引バングルを説明した。
 城の結界と連結して一方的に吸い上げる物を注文を付け加えると、ノームは私の魔力を吸い上げて土を捏ね繰り回して銀のバングルを作り上げた。
「これを嵌めれば、嵌めた者が死ぬまで魔力を吸い続け城の結界の魔力に変換される。一度嵌めたら死ぬまで外せない。リリアン、これで良いか?」
「上出来だわ。ありがとう、ノーム」
 グッジョブと親指を立てて褒めると、
「ワシは戻って寝る」
と言い残しさっさと帰ってしまった。
「……大精霊をあんな風に扱えるのは貴女くらいよ。心臓に悪いわ」
「王妃様、大精霊よりも自我が幼い精霊を押さえる方が大変ですよ。ノームは、比較的フランクに付き合える精霊ではありますが節度を持って接していれば害はありません。お父様、マリアンヌの毒殺とアルベルトの王位継承権剥奪の手続きを直ぐに行って下さいませ。私は気絶しているアルベルトのところへ行って、この腕輪を嵌めてきます。マリアンヌの死は、陛下の病が移って死んだと言うことにしておけば大丈夫でしょう」
「分かった」
「では、これで失礼致しますわ」
 ドレスの裾を持ち上げてカエルスクワットで挨拶をして退室した。
 競歩でアルベルトの寝室まで行き、気絶している奴の手首にバングルを嵌める。
 バングルはドンドンと縮み外れないようにピッタリと手首に嵌った。
 私の用事は済んだ。
 私は、Myサンドバッグを手に入れることが出来た。
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