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エルブンガルド魔法学園 中等部
ウワサと贈り物
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ガリオンとアリーシャにウワサを流して貰いつつ、『今欲しいもの』の調査をして貰った。
女子生徒の回答の大部分は、ヘリオト商会の基礎化粧品セットだった。
男子生徒の回答は、結構別れた。
想定内ではあるが、取り分け多かったのが剣・万年筆・魔法の杖だ。
専攻している学科によって異なるが、脳筋は剣を欲しがり、お役所勤め希望であれば万年筆、魔法省への入省を希望する者は専門の杖を欲しがっているとのこと。
万年筆は何とかなるが、剣や杖に関しては本人の力量や相性によって異なるので贈り物としては不向きだ。
一番でなくても共通して欲しいものは、万国共通…いや次元を超えた先でも共通しているとは何ともはや。
リストアップした人物を風の精霊を使って情報の裏付けを取り、流したウワサが忘れられた頃を見計らって厳選した人物にそれぞれ品を贈った。
匿名の贈り物には、ヘリオト商会の刻印がされたカラフルな包装紙を用いている。
さて、これでどれだけの人間が私に気付くだろうか。
平静を装いながら、アルベルトの監視をしつつ授業を受けていた。
騎士科や侍女科で授業を受けている彼らの方はどうだろう。
精霊から聞く限りでは、中身を見ずに捨てた者もいれば開けて喜んだものと反応は様々だった。
保守派のキャロル・チャイルドに至っては、早々に私だと当たりを付けたようだ。
彼女とは、アルベルト主催のパーティー以来だ。
実家が保守派という事もあり、幼い頃からリズベットの太鼓持ちをしていたようだ。
侯爵家でありながら、実際は豪商よりも貧しい生活を強いられている。
それもそのはず、愚鈍な当主が何度も騙されて民から徴収した税を注ぎ込んでは数多の事業に失敗しているのだから、家族や領民は堪ったものではないだろう。
長男は、当主に比べてまともではあるが平凡で突出した特技すらない。
地位を継いだところで、領の発展は望めない。
長女は金持ちの後妻として身売りされたようなもので、次女であるキャロルも中等部卒業と同時にオブシディアン家に融通してもらい金持ちの変態ジジイに売り払われるのも容易に想像が出来る。
姉という前例がある以上、彼女に拒否権はない。
男尊女卑の世で、女は政略の道具として扱われるのは至って普通のことである。
私の家が特殊であって、異質なのだ。
キャロルにとって、これはチャンスでもある。
実家と縁を切りアングロサクソン家を後ろ盾にし自由を勝ち取るか、それとも親の言いなりになり理不尽な仕打ちを受け続け我慢を一生強いられるか。
結論は本人次第ではあるが、得られた情報から推察するに『己の利用価値を知り最大限に生かせる』そんな人物像が見えてくる。
だから、彼女は恐らく何かしらの接触を図ってくるだろう。
もう一人、エマ・レイスという人物もなかなか興味深い。
彼女は子爵と実家の位自体は高くはないが、実家は童話のコウモリのような存在だ。
イソップ物語に『卑怯なコウモリ』という話がある。
どっちにも良い顔をして、最後は仲間外れになり一人ぼっちになるお話だ。
イソップ物語のコウモリと違うのは、レイス家の歴代当主は『筋を通す』ところだ。
先見の目を持ち、状況に応じて保守派にも改革派にもなる。
時には、沈黙を選択し中立の立場を取った当主もいた。
レイス家が、対立している派閥のどちらかに加わっている時は情勢が動くとされ、賢い貴族は一目置いている。
今の当主は保守派寄りの中立を守っているのは、王妃の存在が大きい。
一方、私がアルベルトと婚約した事で王妃ルートが表面的にほぼ確定したようなものである。
私の存在や動向を気にしている所がある。
仮に……万が一ないと断言するが、王妃になった場合は『改革派』が大きく幅を利かせることになるだろう。
世界に点在するユーフェリア教会の聖女であることから、教会に対する権力や実権を私が握ることになるとなれば、保守派にいては旨味はないと判断するだろう。
今のうちに、どちらの陣営に就くか。
それとも沈黙を取るか。
レイス家の次期女主人は、どう判断するか見ものである。
エマに関しては、接触してくる確率は五分五分なので気長に待つことにしよう。
問題は男子生徒だったが、
「まさかエロ本が、ここまで効果があるとは計算外だったわ」
と心底関心してしまうくらいに効果があった。
エロ本とは言ったが、厳密にいえばグラビアの画集である。
露出の多いナイトドレスに際どいポーズが約十枚色付きで閉じられた本である。
全て同じ本にしようとも考えたが、好みは人それぞれなので性癖も調べた。
後で、何かの役に立つかもと思ってね。
男子生徒に関しては、誰一人捨てずに大切に持っており、一種のステータスになっているという。
何じゃそりゃと思ったが、寮生活していると持て余した性欲を発散させる方法の一つとして女顔の小柄な男子を手籠めにする悪習も存在している。
腐女子には堪らないネタではあるが、あくまで二次元に限る。
三次元でされても、全然萌えない。
そんな中で、ある日突然現れた救世主が滾る男の欲望の捌け口になったわけだ。
教師に見つかれば没収されてしまうが、男子教諭であれば同じ穴のムジナであることには変わりなく、貸す代わりに見逃して貰うことも考えうる事態だろう。
エロ本を持つ選ばれし勇者(笑)の株は、一部の男子から人気を集めていた。
次号に続くと書かれているので、奴らは指折り数えて次号が届くのを待つだろう。
その時に、もう一度別のウワサを流して絡め取る算段だ。
「ふふふ…どこまで切り崩せるか楽しみだわ」
私は、上機嫌に鼻歌を歌いながら今か今かと訪問者を心待ちにしていた。
因みにエロ本のモデルは、アルベルトである。
アルベルトと特定出来ないようには加工してあるが、ビッチの愛妾によく似た顔立ちのため、庇護欲や征服欲を満たせる存在になれると見出した私は凄いと自画自賛した。
女子生徒の回答の大部分は、ヘリオト商会の基礎化粧品セットだった。
男子生徒の回答は、結構別れた。
想定内ではあるが、取り分け多かったのが剣・万年筆・魔法の杖だ。
専攻している学科によって異なるが、脳筋は剣を欲しがり、お役所勤め希望であれば万年筆、魔法省への入省を希望する者は専門の杖を欲しがっているとのこと。
万年筆は何とかなるが、剣や杖に関しては本人の力量や相性によって異なるので贈り物としては不向きだ。
一番でなくても共通して欲しいものは、万国共通…いや次元を超えた先でも共通しているとは何ともはや。
リストアップした人物を風の精霊を使って情報の裏付けを取り、流したウワサが忘れられた頃を見計らって厳選した人物にそれぞれ品を贈った。
匿名の贈り物には、ヘリオト商会の刻印がされたカラフルな包装紙を用いている。
さて、これでどれだけの人間が私に気付くだろうか。
平静を装いながら、アルベルトの監視をしつつ授業を受けていた。
騎士科や侍女科で授業を受けている彼らの方はどうだろう。
精霊から聞く限りでは、中身を見ずに捨てた者もいれば開けて喜んだものと反応は様々だった。
保守派のキャロル・チャイルドに至っては、早々に私だと当たりを付けたようだ。
彼女とは、アルベルト主催のパーティー以来だ。
実家が保守派という事もあり、幼い頃からリズベットの太鼓持ちをしていたようだ。
侯爵家でありながら、実際は豪商よりも貧しい生活を強いられている。
それもそのはず、愚鈍な当主が何度も騙されて民から徴収した税を注ぎ込んでは数多の事業に失敗しているのだから、家族や領民は堪ったものではないだろう。
長男は、当主に比べてまともではあるが平凡で突出した特技すらない。
地位を継いだところで、領の発展は望めない。
長女は金持ちの後妻として身売りされたようなもので、次女であるキャロルも中等部卒業と同時にオブシディアン家に融通してもらい金持ちの変態ジジイに売り払われるのも容易に想像が出来る。
姉という前例がある以上、彼女に拒否権はない。
男尊女卑の世で、女は政略の道具として扱われるのは至って普通のことである。
私の家が特殊であって、異質なのだ。
キャロルにとって、これはチャンスでもある。
実家と縁を切りアングロサクソン家を後ろ盾にし自由を勝ち取るか、それとも親の言いなりになり理不尽な仕打ちを受け続け我慢を一生強いられるか。
結論は本人次第ではあるが、得られた情報から推察するに『己の利用価値を知り最大限に生かせる』そんな人物像が見えてくる。
だから、彼女は恐らく何かしらの接触を図ってくるだろう。
もう一人、エマ・レイスという人物もなかなか興味深い。
彼女は子爵と実家の位自体は高くはないが、実家は童話のコウモリのような存在だ。
イソップ物語に『卑怯なコウモリ』という話がある。
どっちにも良い顔をして、最後は仲間外れになり一人ぼっちになるお話だ。
イソップ物語のコウモリと違うのは、レイス家の歴代当主は『筋を通す』ところだ。
先見の目を持ち、状況に応じて保守派にも改革派にもなる。
時には、沈黙を選択し中立の立場を取った当主もいた。
レイス家が、対立している派閥のどちらかに加わっている時は情勢が動くとされ、賢い貴族は一目置いている。
今の当主は保守派寄りの中立を守っているのは、王妃の存在が大きい。
一方、私がアルベルトと婚約した事で王妃ルートが表面的にほぼ確定したようなものである。
私の存在や動向を気にしている所がある。
仮に……万が一ないと断言するが、王妃になった場合は『改革派』が大きく幅を利かせることになるだろう。
世界に点在するユーフェリア教会の聖女であることから、教会に対する権力や実権を私が握ることになるとなれば、保守派にいては旨味はないと判断するだろう。
今のうちに、どちらの陣営に就くか。
それとも沈黙を取るか。
レイス家の次期女主人は、どう判断するか見ものである。
エマに関しては、接触してくる確率は五分五分なので気長に待つことにしよう。
問題は男子生徒だったが、
「まさかエロ本が、ここまで効果があるとは計算外だったわ」
と心底関心してしまうくらいに効果があった。
エロ本とは言ったが、厳密にいえばグラビアの画集である。
露出の多いナイトドレスに際どいポーズが約十枚色付きで閉じられた本である。
全て同じ本にしようとも考えたが、好みは人それぞれなので性癖も調べた。
後で、何かの役に立つかもと思ってね。
男子生徒に関しては、誰一人捨てずに大切に持っており、一種のステータスになっているという。
何じゃそりゃと思ったが、寮生活していると持て余した性欲を発散させる方法の一つとして女顔の小柄な男子を手籠めにする悪習も存在している。
腐女子には堪らないネタではあるが、あくまで二次元に限る。
三次元でされても、全然萌えない。
そんな中で、ある日突然現れた救世主が滾る男の欲望の捌け口になったわけだ。
教師に見つかれば没収されてしまうが、男子教諭であれば同じ穴のムジナであることには変わりなく、貸す代わりに見逃して貰うことも考えうる事態だろう。
エロ本を持つ選ばれし勇者(笑)の株は、一部の男子から人気を集めていた。
次号に続くと書かれているので、奴らは指折り数えて次号が届くのを待つだろう。
その時に、もう一度別のウワサを流して絡め取る算段だ。
「ふふふ…どこまで切り崩せるか楽しみだわ」
私は、上機嫌に鼻歌を歌いながら今か今かと訪問者を心待ちにしていた。
因みにエロ本のモデルは、アルベルトである。
アルベルトと特定出来ないようには加工してあるが、ビッチの愛妾によく似た顔立ちのため、庇護欲や征服欲を満たせる存在になれると見出した私は凄いと自画自賛した。
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