お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

文字の大きさ
97 / 181
エルブンガルド魔法学園 中等部

ウワサと贈り物

しおりを挟む
 ガリオンとアリーシャにウワサを流して貰いつつ、『今欲しいもの』の調査をして貰った。
 女子生徒の回答の大部分は、ヘリオト商会の基礎化粧品セットだった。
 男子生徒の回答は、結構別れた。
 想定内ではあるが、取り分け多かったのが剣・万年筆・魔法の杖だ。
 専攻している学科によって異なるが、脳筋は剣を欲しがり、お役所勤め希望であれば万年筆、魔法省への入省を希望する者は専門の杖を欲しがっているとのこと。
 万年筆は何とかなるが、剣や杖に関しては本人の力量や相性によって異なるので贈り物としては不向きだ。
 一番でなくても共通して欲しいものは、万国共通…いや次元を超えた先でも共通しているとは何ともはや。
 リストアップした人物を風の精霊を使って情報の裏付けを取り、流したウワサが忘れられた頃を見計らって厳選した人物にそれぞれ品を贈った。
 匿名の贈り物には、ヘリオト商会の刻印がされたカラフルな包装紙を用いている。
 さて、これでどれだけの人間が私に気付くだろうか。
 平静を装いながら、アルベルトの監視をしつつ授業を受けていた。
 騎士科や侍女科で授業を受けている彼らの方はどうだろう。
 精霊から聞く限りでは、中身を見ずに捨てた者もいれば開けて喜んだものと反応は様々だった。
 保守派のキャロル・チャイルドに至っては、早々に私だと当たりを付けたようだ。
 彼女とは、アルベルト主催のパーティー以来だ。
 実家が保守派という事もあり、幼い頃からリズベットの太鼓持ちをしていたようだ。
 侯爵家でありながら、実際は豪商よりも貧しい生活を強いられている。
 それもそのはず、愚鈍な当主が何度も騙されて民から徴収した税を注ぎ込んでは数多の事業に失敗しているのだから、家族や領民は堪ったものではないだろう。
 長男は、当主に比べてまともではあるが平凡で突出した特技すらない。
 地位を継いだところで、領の発展は望めない。
 長女は金持ちの後妻として身売りされたようなもので、次女であるキャロルも中等部卒業と同時にオブシディアン家に融通してもらい金持ちの変態ジジイに売り払われるのも容易に想像が出来る。
 姉という前例がある以上、彼女に拒否権はない。
 男尊女卑の世で、女は政略の道具として扱われるのは至って普通のことである。
 私の家が特殊であって、異質なのだ。
 キャロルにとって、これはチャンスでもある。
 実家と縁を切りアングロサクソン家を後ろ盾にし自由を勝ち取るか、それとも親の言いなりになり理不尽な仕打ちを受け続け我慢を一生強いられるか。
 結論は本人次第ではあるが、得られた情報から推察するに『己の利用価値を知り最大限に生かせる』そんな人物像が見えてくる。
 だから、彼女は恐らく何かしらの接触を図ってくるだろう。
 もう一人、エマ・レイスという人物もなかなか興味深い。
 彼女は子爵と実家の位自体は高くはないが、実家は童話のコウモリのような存在だ。
 イソップ物語に『卑怯なコウモリ』という話がある。
 どっちにも良い顔をして、最後は仲間外れになり一人ぼっちになるお話だ。
 イソップ物語のコウモリと違うのは、レイス家の歴代当主は『筋を通す』ところだ。
 先見の目を持ち、状況に応じて保守派にも改革派にもなる。
 時には、沈黙を選択し中立の立場を取った当主もいた。
 レイス家が、対立している派閥のどちらかに加わっている時は情勢が動くとされ、賢い貴族は一目置いている。
 今の当主は保守派寄りの中立を守っているのは、王妃の存在が大きい。
 一方、私がアルベルトと婚約した事で王妃ルートが表面的にほぼ確定したようなものである。
 私の存在や動向を気にしている所がある。
 仮に……万が一ないと断言するが、王妃になった場合は『改革派』が大きく幅を利かせることになるだろう。
 世界に点在するユーフェリア教会の聖女であることから、教会に対する権力や実権を私が握ることになるとなれば、保守派にいては旨味はないと判断するだろう。
 今のうちに、どちらの陣営に就くか。
 それとも沈黙を取るか。
 レイス家の次期女主人は、どう判断するか見ものである。
 エマに関しては、接触してくる確率は五分五分なので気長に待つことにしよう。
 問題は男子生徒だったが、
「まさかエロ本が、ここまで効果があるとは計算外だったわ」
と心底関心してしまうくらいに効果があった。
 エロ本とは言ったが、厳密にいえばグラビアの画集である。
 露出の多いナイトドレスに際どいポーズが約十枚色付きで閉じられた本である。
 全て同じ本にしようとも考えたが、好みは人それぞれなので性癖も調べた。
 後で、何かの役に立つかもと思ってね。
 男子生徒に関しては、誰一人捨てずに大切に持っており、一種のステータスになっているという。
 何じゃそりゃと思ったが、寮生活していると持て余した性欲を発散させる方法の一つとして女顔の小柄な男子を手籠めにする悪習も存在している。
 腐女子には堪らないネタではあるが、あくまで二次元に限る。
 三次元でされても、全然萌えない。
 そんな中で、ある日突然現れた救世主エロ本が滾る男の欲望の捌け口になったわけだ。
 教師に見つかれば没収されてしまうが、男子教諭であれば同じ穴のムジナであることには変わりなく、貸す代わりに見逃して貰うことも考えうる事態だろう。
 エロ本を持つ選ばれし勇者(笑)の株は、一部の男子から人気を集めていた。
 次号に続くと書かれているので、奴らは指折り数えて次号が届くのを待つだろう。
 その時に、もう一度別のウワサを流して絡め取る算段だ。
「ふふふ…どこまで切り崩せるか楽しみだわ」
 私は、上機嫌に鼻歌を歌いながら今か今かと訪問者を心待ちにしていた。
 因みにエロ本のモデルは、アルベルトである。
 アルベルトと特定出来ないようには加工してあるが、ビッチの愛妾によく似た顔立ちのため、庇護欲や征服欲を満たせる存在になれると見出した私は凄いと自画自賛した。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ
恋愛
 王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。 「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」  しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。    完結致しました(2022/06/28完結表記) GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。 ★お礼★  たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます! 中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!

断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。

パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。 将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。 平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。 根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。 その突然の失踪に、大騒ぎ。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

処理中です...