お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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エルブンガルド魔法学園 中等部

お茶会を開くことにしました

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 私が少人数のお茶会をするという話は、瞬く間に学園中に広がった。
 誘われると思っている者がいるのは知っていたが、アプローチの仕方がウザかった。
 ヘリオトロープの会から最も優秀で最も私に懐疑的で反抗的な人間を選んだ。
 恐らくどこかの誰かさんのスパイなんだろうけど、絡め手で篭絡するのは歴史上の人物から嫌と学ぶことが出来る。
 豊臣秀吉は、人誑しで有名な武将だ。
 敵将を京の都で茶席を設けたり、マメな手紙と贈り物で相手の心を掌握したりと、伝説は様々ある。
 私もそれに倣って、人心掌握をやってみようと思う。
 境界線の夜明けの会と夕焼けの騎士団からも、一人ずつ声を掛けた。
 優秀過ぎるが故に疎まれている者を選択する私も良い性格をしているなと、我ながら思う。
 エマ・レイスは、私から誘うのは得策ではないと判断し向こうから声を掛けてくるか、次回に持ち越しするか保留にした。
 私のお茶会に堂々と参加するつもりでいたアルベルトに、私は先にぶっとい釘を刺しておいた。
「殿下、私のお茶会に参加しようなどと思わないで下さいね」
「何でだよ!!」
 呼ばれないこと自体がおかしいと言いたげなアルベルトに、
「今回のお茶会は全員が女性ですのよ」
と言うと、何かピンときたのかドヤ顔でトンチンカンな事を言って来た。
「巷で言う女子会というやつか?」
 城下で仕入れてくる知識は、徐々にアルベルトの中に女子力が蓄積されつつある。
 女子会とお茶会を一緒にする当たり馬鹿なんだが、説明したところで目の前の駄犬が理解するとは思えない。
 私は悟りの境地で、笑みを浮かべ肯定した。
「古今東西広い意味では、そうですね。男性を交えてのお茶会は後日機会があれば開催しますわ。何分、わたくしも多忙な身の上なので。その時は、殿下もお誘いしますわ。アングロサクソン家秘蔵新作のスイーツの一つでもご賞味下さいね」
「女子会に菓子が出るのなら、出たいが?」
 菓子に釣られんな、馬鹿王子! と心の中で罵倒した。
 頬を引きつらせながら、はっきりと断言する。
「殿下も食べた事のあるものを用意しますわ。じつは、ここだけの話なんですが丁度同じ日にヘリオト商会のお菓子部門で新作スイーツが発売されるんですのよ。この頃、殿下も頑張っていらっしゃるので青薔薇の会に差し入れする予定だったのですけど。その日、青薔薇の会にいらしゃらないのなら食べられませんわね。お可哀そうに」
 目を細め扇子で口元を隠して笑うと、アルベルトは即行で自分の意見を引っ込めた。
「俺は、その日は青薔薇の会で普段通り過ごすことにしよう」
「あら、それで宜しいのですか?」
「問題ない」
「畏まりました。殿下の分もお届けするように、うちの者に伝えておきますわ」
 これでアルベルトの乱入してくる確率は減った。
 0じゃないのが怖いが、アルベルトは奴の友人達に任せよう。
 アルベルトのせいで要らぬ出費が出てしまったが、乱入されて作戦をぶち壊されるよりマシと考えれば安いものである。
 お茶会の招待状も香り付きの押し花が入った和紙を使った。
 毛筆で書かれた文字の斬新さと美しさに見惚れるが良い。
 と言うのは冗談だが、興味を引くものだとは思う。
 派閥の垣根を越えて集めた人をお茶会という席に着かせ、相手に満足して帰って貰わねばならない。
 その為の労力もお金も惜しむ気はない。
 今回は『女子』限定で行うので、お小遣いで買える範囲のカタログを用意している。
 貴族用のカタログのモデルはアルベルトだが、庶民用のチラシにはアルベルトの友人達がモデルになっている。
 約一名、男装の麗人的な雰囲気になる奴がいるので乗馬服を中心にモデルとして起用している。
 時々、男性用のカタログにも掲載しているので、男性か女性かで意見が分かれているらしい。
 まあ、顔も化粧で弄っているので早々バレることはないだろう。
 粛々と招待状を出し、お茶会の段取りを済ませ当日を迎えた。


 王族が使えるサロンを開放して貰い、私は招待客たちを案内した。
 キャロルが連れて来たのは、彼女の幼馴染のデリエラ・ヒルスと親友のベリル・ロンド。
 リズベットの取り巻き達だ。
 リズベットからの扱いは、酷いの一言に尽きる。
 彼女の失敗は押し付けられ、手柄は横取りされる典型的な搾取される人間の立場だ。
 ヘリオトロープの会からはオリバー・フェルト、夕焼けの騎士団からはカリーナ・イエーガー、境界線の夜明けからはレビ・フィルマが参加している。
 カリーナの実力は女性の身でありながら団長のグレイスより上と言うことで不遇の扱いを受けていた。
 レビは、ビックリ箱のような失言と無駄な行動力に除名寸前だそうだ。
 何故レビを招待したかと言えば、そのビックリ箱な失言は視点を変えるだけで助言であることが証明されているからだ。
 表面上の言葉だけを受け取れば、彼女は「なんて無礼な人間なのだろう」と思う人が殆どだろう。
 言葉の裏を読み合う貴族社会で、彼女ほど言葉に本心を隠すのが上手な人はいない。
 ただ上手に伝えられないだけなのかもしれないが、私からすればそんな些細なことはどうでも良い。
「さあ、皆様お座りになって。今日は、ヘリオト商会から新作のお菓子とお茶を取り寄せましたの。是非、感想を聞かせて頂戴」
 パンパンと二回手を叩くと、ユリアとメイド姿のアリーシャが配膳をしていく。
「リリアン様、本当にこのサロンでお茶会なんて良いんですか?」
「ヒルス様、質問の意図が分かりかねますわ。具体的にお願いします」
 扇子で口元を覆い、ニッコリと笑みを浮かべると口ごもるように言った。
「あの……このサロンは、王族しか使えないサロンだと聞いているのですが…」
「ああ、そういう意味でしたの。失礼、ご心配には及ばなくてよ。わたくしも王族ですもの。殿下の婚約が無くても、王家の血は引いておりますの。王位継承権も低いですがありますのよ。だから、このサロンも使えますの。だからご心配には及ばないわ。お菓子がパサついてしまうわ。どうぞ、ご賞味下さいまし」
 私が一口生クリームたっぷりの苺のショートケーキを食べると、皆食べ始めた。
 初めて食べた味に感動している。
 まずまずの出だしと言えるだろう。
 これから、掌握しにかからせて頂きますよ。
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