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エルブンガルド魔法学園 中等部
アルベルト攻略開始6
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貴族街のヘリオト商会は、平民街よりもモダンで落ち着いた雰囲気の格式高い商会といった感じでコレットは入るのも躊躇してしまう。
「何をしている。さっさと中に入るぞ」
入口のベルボーイが、ドアを開けている。
アルベルトは、すでに入店しておりコレットを睨んでいる。
え? 私、睨まれるようなことした??
混乱する頭で言われるままに入店した。
一階は靴を専門に扱っているのか、絶妙な間隔で靴がアートのように配置されている。
女性靴が七割、男性靴が三割といった感じで置かれている。
アルベルトは、女性靴を手に取り紙に番号をメモしていた。
「アル様、一体何をなさっているのですか?」
「注文する時に、番号で伝えた方が早いし分かりやすいんだ。俺は、忙しいんだ。邪魔するな」
コレットを邪険に扱い、真剣に靴を眺めている。
その間は、ずっとブツブツ何か言っていて気持ち悪い。
靴売り場を見て回って、店員に番号を伝えている。
「あ、アル様……」
「あ? 何だ?」
「私もアル様の御役に立ちたいので、是非一緒に選ばせて下さい」
「お前、俺の婚約者の容姿は知らないだろう。顔も見たこともない相手のプレゼントを選べると思えるんだ?」
思ってもみない言葉を言われ、コレットは一瞬呆気に取られる。
「え、いや……だって私がプレゼントのアドバイスをするという話だったのではなかったのですか?」
「別にアドバイスは要らん。俺は、外に出る口実が出来るなら丁度良いと思って利用しただけだ。お前に全身コーディネート出来るセンスがあるとは思えん」
何とも失礼な暴言だ。
男のアルベルトより女の自分の方が、同じ同性の好みくらいは大体把握できる。
「そんな事ありません。私だって出来ます!」
女の尊厳を傷つけられて黙ってはいられない。
反論すると、アルベルトは顎に手を当てて何か考えている。
「よし、全身コーディネート対決だ。判定は、オーナーにして貰おう」
「受けて立ちます!」
「負けた方が、勝った方の服を買う。文句はないな?」
「良いですよ」
コレットは、アルベルトの挑発に乗り安易に賭けに乗ってしまった。
「俺は、まだ買い物がある。時間がかかるから、その間にじっくりと選んでおけ」
「……分かりました」
釈然としない部分はあるが、考える時間があるなら好都合だ。
コレットは、まずはドレスからと店員にドレス売り場を案内して貰った。
アルベルトは買い物を済ませたのか、コレットの前に現れた。
「アル様、もう買い物は終わったのですか?」
「ああ、必要な物はカタログで目ぼしを付けておいたからな。事前に予約もしていたから買うだけならものの数分で終わる」
「それにしては、一時間以上経ってますよ」
「カタログと現物を見比べる為に決まっているだろうが。イメージが違ったら意味はないからな」
確かにアルベルトの言うことは一理ある。
ネット通販で購入したのが、失敗だったと思ったことは過去に何度もある。
思ったのと違うと返品したくなる気持ちを思い出し、アルベルトは洋服にこだわりの強い人間だとコレット脳内メモに書き留めた。
「私は、既に準備が出来ています。アル様は、どうなんですか?」
「注文の合間に選んだから問題ない」
「分かりましたら。勝手も恨みっこはなしですよ?」
「ああ、分かっている」
余裕打っているアルベルトの顔をギャフンと言わせたい。
「オーナーさん、判定をお願いします」
「畏まりました」
コレットがコーディネートした服一式をマネキンに着せ、ワゴンに小物が置かれている。
コレットがコーディネートしたのは、ピンクのマーメードドレスに赤のパンプス、スパンコールが沢山ついたパーティーバッグだ。
純金のブレスレットとイヤリング、ネックレスというシンプルな装いだ。
対してアルベルトは、濃紺色のAラインドレスに同系色のパンプス、ガーネットのチョーカーだけだった。
「これだけですか? バッグは?」
「要らん。寧ろある方が、逆に美を損ねる」
アルベルトの言っている意味が分からず首を傾げていると、
「おい、早く判定をしろ」
とアルベルトがオーナーを急かしている。
オーナーは、私とアルベルトのコーディネートを見比べて言った。
「この対決は、アルベルト様の勝ちですね」
「何でよ!? 私の方が、センスが良いでしょう!」
思わずアルベルトがいることも忘れて怒鳴ってしまった。
「お嬢様のコーディネートは、どれもこれも主張し過ぎてバランスが悪い。同系色でも濃い色を足元に持ってくるのであれば、ネックレスはガーネットなどの赤い一粒石のネックレスにするべきでした。バッグもスパンコールにするのではなく、ベロアの生地を使った物を選ぶべきです。全体的にどれも主張が激し過ぎて見ていて、凄くみっともない貧相な装いに見えます。言うなれば成金丸出しと言ったところでしょうか。それに比べ殿下は、その辺りを心得ておられるようチョーカーにアクセントを置いて全体を綺麗にまとめておられます。また、選んだドレスは一見装飾もない生地に見えますが、近くで見ると花の柄が裾から胸元にかけて斜めに鏤められています。黒に近い紺の絹糸で刺繍された物なので刺繍だけでも金貨一枚は下りません」
その言葉を聞いて、コレットの顔から色が消えうせる。
「あ、あの……総額は幾らなんですか?」
「全てで大金貨一枚と中金貨七枚です」
「わ、私……そんなお金持ってません。お支払い出来ないです」
安易に賭けに乗った結果、日本円で約千七百万円の支払いを肩代わりすることになることにコレットは首を振った。
「絶対勝てると思って挑んだ賭けなのだろう? なら、ちゃんと払って貰わないと」
「そんなぁ……」
こんなクソだと知っていたら、絶対にちょっかい出さなかったのに!!
コレットは、内心悔しさでアルベルトを罵倒しながらボロボロと涙を流す。
「流石に虐めすぎでは?」
「チッ……分割は可能か?」
「審査で通れば可能です」
「そうか。審査にどれくらいかかる?」
「一週間ほどですね」
「おい、俺が立て替えておいてやる。お前は、毎月決まった額を俺にちゃんと返せよ」
アルベルトは、そう言うと手書きの借用書を渡してきた。
コレットは、アルベルトに言われるままに名前をサインした。
これが、後にリリアンの耳に入り特大の雷が落ちることになるのは少し先の話である。
「何をしている。さっさと中に入るぞ」
入口のベルボーイが、ドアを開けている。
アルベルトは、すでに入店しておりコレットを睨んでいる。
え? 私、睨まれるようなことした??
混乱する頭で言われるままに入店した。
一階は靴を専門に扱っているのか、絶妙な間隔で靴がアートのように配置されている。
女性靴が七割、男性靴が三割といった感じで置かれている。
アルベルトは、女性靴を手に取り紙に番号をメモしていた。
「アル様、一体何をなさっているのですか?」
「注文する時に、番号で伝えた方が早いし分かりやすいんだ。俺は、忙しいんだ。邪魔するな」
コレットを邪険に扱い、真剣に靴を眺めている。
その間は、ずっとブツブツ何か言っていて気持ち悪い。
靴売り場を見て回って、店員に番号を伝えている。
「あ、アル様……」
「あ? 何だ?」
「私もアル様の御役に立ちたいので、是非一緒に選ばせて下さい」
「お前、俺の婚約者の容姿は知らないだろう。顔も見たこともない相手のプレゼントを選べると思えるんだ?」
思ってもみない言葉を言われ、コレットは一瞬呆気に取られる。
「え、いや……だって私がプレゼントのアドバイスをするという話だったのではなかったのですか?」
「別にアドバイスは要らん。俺は、外に出る口実が出来るなら丁度良いと思って利用しただけだ。お前に全身コーディネート出来るセンスがあるとは思えん」
何とも失礼な暴言だ。
男のアルベルトより女の自分の方が、同じ同性の好みくらいは大体把握できる。
「そんな事ありません。私だって出来ます!」
女の尊厳を傷つけられて黙ってはいられない。
反論すると、アルベルトは顎に手を当てて何か考えている。
「よし、全身コーディネート対決だ。判定は、オーナーにして貰おう」
「受けて立ちます!」
「負けた方が、勝った方の服を買う。文句はないな?」
「良いですよ」
コレットは、アルベルトの挑発に乗り安易に賭けに乗ってしまった。
「俺は、まだ買い物がある。時間がかかるから、その間にじっくりと選んでおけ」
「……分かりました」
釈然としない部分はあるが、考える時間があるなら好都合だ。
コレットは、まずはドレスからと店員にドレス売り場を案内して貰った。
アルベルトは買い物を済ませたのか、コレットの前に現れた。
「アル様、もう買い物は終わったのですか?」
「ああ、必要な物はカタログで目ぼしを付けておいたからな。事前に予約もしていたから買うだけならものの数分で終わる」
「それにしては、一時間以上経ってますよ」
「カタログと現物を見比べる為に決まっているだろうが。イメージが違ったら意味はないからな」
確かにアルベルトの言うことは一理ある。
ネット通販で購入したのが、失敗だったと思ったことは過去に何度もある。
思ったのと違うと返品したくなる気持ちを思い出し、アルベルトは洋服にこだわりの強い人間だとコレット脳内メモに書き留めた。
「私は、既に準備が出来ています。アル様は、どうなんですか?」
「注文の合間に選んだから問題ない」
「分かりましたら。勝手も恨みっこはなしですよ?」
「ああ、分かっている」
余裕打っているアルベルトの顔をギャフンと言わせたい。
「オーナーさん、判定をお願いします」
「畏まりました」
コレットがコーディネートした服一式をマネキンに着せ、ワゴンに小物が置かれている。
コレットがコーディネートしたのは、ピンクのマーメードドレスに赤のパンプス、スパンコールが沢山ついたパーティーバッグだ。
純金のブレスレットとイヤリング、ネックレスというシンプルな装いだ。
対してアルベルトは、濃紺色のAラインドレスに同系色のパンプス、ガーネットのチョーカーだけだった。
「これだけですか? バッグは?」
「要らん。寧ろある方が、逆に美を損ねる」
アルベルトの言っている意味が分からず首を傾げていると、
「おい、早く判定をしろ」
とアルベルトがオーナーを急かしている。
オーナーは、私とアルベルトのコーディネートを見比べて言った。
「この対決は、アルベルト様の勝ちですね」
「何でよ!? 私の方が、センスが良いでしょう!」
思わずアルベルトがいることも忘れて怒鳴ってしまった。
「お嬢様のコーディネートは、どれもこれも主張し過ぎてバランスが悪い。同系色でも濃い色を足元に持ってくるのであれば、ネックレスはガーネットなどの赤い一粒石のネックレスにするべきでした。バッグもスパンコールにするのではなく、ベロアの生地を使った物を選ぶべきです。全体的にどれも主張が激し過ぎて見ていて、凄くみっともない貧相な装いに見えます。言うなれば成金丸出しと言ったところでしょうか。それに比べ殿下は、その辺りを心得ておられるようチョーカーにアクセントを置いて全体を綺麗にまとめておられます。また、選んだドレスは一見装飾もない生地に見えますが、近くで見ると花の柄が裾から胸元にかけて斜めに鏤められています。黒に近い紺の絹糸で刺繍された物なので刺繍だけでも金貨一枚は下りません」
その言葉を聞いて、コレットの顔から色が消えうせる。
「あ、あの……総額は幾らなんですか?」
「全てで大金貨一枚と中金貨七枚です」
「わ、私……そんなお金持ってません。お支払い出来ないです」
安易に賭けに乗った結果、日本円で約千七百万円の支払いを肩代わりすることになることにコレットは首を振った。
「絶対勝てると思って挑んだ賭けなのだろう? なら、ちゃんと払って貰わないと」
「そんなぁ……」
こんなクソだと知っていたら、絶対にちょっかい出さなかったのに!!
コレットは、内心悔しさでアルベルトを罵倒しながらボロボロと涙を流す。
「流石に虐めすぎでは?」
「チッ……分割は可能か?」
「審査で通れば可能です」
「そうか。審査にどれくらいかかる?」
「一週間ほどですね」
「おい、俺が立て替えておいてやる。お前は、毎月決まった額を俺にちゃんと返せよ」
アルベルトは、そう言うと手書きの借用書を渡してきた。
コレットは、アルベルトに言われるままに名前をサインした。
これが、後にリリアンの耳に入り特大の雷が落ちることになるのは少し先の話である。
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