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エルブンガルド魔法学園 中等部
キャロルの葛藤3
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キャロルの指示を元に、エマが会員を使って全ての手筈を整えた。
コレットの被害に遭った者は、誰でも相談が出来るように白薔薇の会で押さえているサロンの一角を解放した。
最初の相談者は、コレットのクラスメイトだ。
そこから噂が噂を呼んで、白薔薇の会に被害者が引っ切り無しに訪れている。
ヘリオトロープの会からもガリオンが派遣され、どうしたいのかという具体的な解決方法を提案している。
婚約と言っても殆どが政略結婚だ。
婚約破棄となれば、色々と手続きを踏まなくてはならない上に如何なる理由があっても『婚約破棄された女』というレッテルを貼られてしまう。
そのアフターケアはどうするか考えていたら、ガリオンから提案をされた。
「お見合いのセッティングをしてみては如何でしょうか?」
「王都で流行っているアレですか? 会員費等が掛かりますし、お金に余裕のない家も少なからずいます」
見合いは画期的ではあるが、参加するにしてもお金がかかる。
必ずしも良い相手と巡り合えるとは限らない。
案自体は悪くはないが、見合いするにしても様々な柵がある。
保守派同士の繋がりを壊すわけにはいかない。
「今回、被害に遭われた方や情報提供して頂いた方、協力をして頂いた方のみ限定で無償で場所を設けます」
「リリアン様の許可もなく、勝手なことを行って良いのですか?」
「大丈夫です。ある程度の権限は、リリアン様から頂いていますので」
ニッコリと笑みを浮かべるガリオンに、キャロルはゾクッと背筋に冷たいものが滑り落ちて来た感覚を覚えた。
アリーシャも大概だが、目の前にいる男も相当ぶっ飛んだ思考回路をしている。
下手に手を出したら、オブシディアン家のように潰されそうだ。
「……では、被害者の方々には新しい出会いの場を設けましょう。こちらも、出来る限りお相手探しに協力致します」
「ありがとう御座います。では、早速ですがキャロル様主体で関係者とその親御さんから見合いの参加の可否と、条件を聞き出して提出をお願いします」
などと、無茶ぶりを言ってきた。
「私が、するんですか?」
「そうですよ。他に誰がいるんですか」
コレットの被害者だけでも二十人以上はいる。
関係者を含めたら倍以上の数になる。
助けを求めるようにエマを見ると、彼女は我関せずを貫いている。
「見合いの条件と言われても、千差万別だと思うのですが……」
「こちらの用紙をお手紙に同封して頂ければ大丈夫です」
細かいチェック項目がビッシリと書かれた紙を手渡された。
内容は、相手に求める条件の項目が細かく書かれてある。
逆に、見合いする本人の情報のチェック項目もビッシリと書かれていた。
「……こんなに細かい条件で見合いが成立するのでしょうか?」
「あくまで希望ですからね。すべての条件に合う人なんていませんよ。一番近い条件の人と引き合わせるだけで、その後の保障は一切しません。ちゃんと、その事も記載されています。本来なら有償で行うものを無償で提供するので、反発は少ないでしょう。リリアン様との連名にしておいて下さいね」
そう釘を刺すガリオンに、キャロルは疲れた顔で「はい」と返事を返した。
コレットの出没スポットに白薔薇の会の会員達に張り込みをお願いし、定期的に巡回をしていると高確率で彼女と遭遇するようになった。
「セド様、ありがとう御座います。迷子になっちゃって困ってたんですぅ」
甘ったるい猫なで声で喋るコレットに対し、カルセドニーの反応は薄い。
「そうですか。編入して一月以上経過しているのですから、いい加減場所を覚えたらどうです」
「私、すっごい方向音痴なんですよ。この学園って広いですし、場所を覚えるのが大変なんです。セド様が、校内を案内してくれませんか?」
コレットはカルセドニーの腕に手を添えて密着しようとしているが、本人は迷惑そうにコレットの肩を押して距離を保とうとしている。
アルベルトがコレットを『友人』と公言している以上、彼女を邪険に扱うことが出来ないのだろう。
「ロナウド様、御機嫌よう。コレットさん、往来で男性に身体をくっつけるものではありませんよ。愛称も貴族の間では、親兄弟か婚約者が呼べるものです。軽々しく愛称を口にしてはなりません。きちんとロナルド様とお呼びなさい」
「……何ですか。また、意地悪しに来たんですか?」
頓珍漢なコレットの返答に、キャロルは大きな溜息を吐いた。
注意を促すたびに彼女は、イジメているだの、意地悪するだのと口にするのだ。
「注意です。学園の風紀を乱さないで下さい。それで、今日はどちらに行かれるのですか? ご案内しますよ」
「貴女には、関係ありません。行きましょう、セド様」
カルセドニーの腕を掴み、コレットはその場を立ち去ろうとしている。
「いや、私は行くところがあるので彼女に連れて行って貰いなさい。チャイルド嬢、申し訳ないが彼女を白百合の間へ連れて行って貰えないだろうか? 中に、アリーシャがいる。彼女に引き渡してくれ」
「畏まりました。では、コレットさん参りましょうか」
カルセドニーからコレットを引き剥がして、力づくで引き摺るように白百合の間まで連行をする。
カルセドニーの姿が見えなくなった途端、怪鳥の如くギャーギャーと汚い言葉で罵ってくる。
「アル様に言いつけてやるんだからね! 泣いて後悔したって遅いんだから!」
と意味不明なことを毎回言うのだから、相当な馬鹿なんだと思う。
アリーシャの前にコレットを付き出すのが、最近の日課になりつつあるのが辛い。
何でこんなことをしているんだろうとキャロルは、遠い目をしながら自分の境遇を恨んだ。
コレットの被害に遭った者は、誰でも相談が出来るように白薔薇の会で押さえているサロンの一角を解放した。
最初の相談者は、コレットのクラスメイトだ。
そこから噂が噂を呼んで、白薔薇の会に被害者が引っ切り無しに訪れている。
ヘリオトロープの会からもガリオンが派遣され、どうしたいのかという具体的な解決方法を提案している。
婚約と言っても殆どが政略結婚だ。
婚約破棄となれば、色々と手続きを踏まなくてはならない上に如何なる理由があっても『婚約破棄された女』というレッテルを貼られてしまう。
そのアフターケアはどうするか考えていたら、ガリオンから提案をされた。
「お見合いのセッティングをしてみては如何でしょうか?」
「王都で流行っているアレですか? 会員費等が掛かりますし、お金に余裕のない家も少なからずいます」
見合いは画期的ではあるが、参加するにしてもお金がかかる。
必ずしも良い相手と巡り合えるとは限らない。
案自体は悪くはないが、見合いするにしても様々な柵がある。
保守派同士の繋がりを壊すわけにはいかない。
「今回、被害に遭われた方や情報提供して頂いた方、協力をして頂いた方のみ限定で無償で場所を設けます」
「リリアン様の許可もなく、勝手なことを行って良いのですか?」
「大丈夫です。ある程度の権限は、リリアン様から頂いていますので」
ニッコリと笑みを浮かべるガリオンに、キャロルはゾクッと背筋に冷たいものが滑り落ちて来た感覚を覚えた。
アリーシャも大概だが、目の前にいる男も相当ぶっ飛んだ思考回路をしている。
下手に手を出したら、オブシディアン家のように潰されそうだ。
「……では、被害者の方々には新しい出会いの場を設けましょう。こちらも、出来る限りお相手探しに協力致します」
「ありがとう御座います。では、早速ですがキャロル様主体で関係者とその親御さんから見合いの参加の可否と、条件を聞き出して提出をお願いします」
などと、無茶ぶりを言ってきた。
「私が、するんですか?」
「そうですよ。他に誰がいるんですか」
コレットの被害者だけでも二十人以上はいる。
関係者を含めたら倍以上の数になる。
助けを求めるようにエマを見ると、彼女は我関せずを貫いている。
「見合いの条件と言われても、千差万別だと思うのですが……」
「こちらの用紙をお手紙に同封して頂ければ大丈夫です」
細かいチェック項目がビッシリと書かれた紙を手渡された。
内容は、相手に求める条件の項目が細かく書かれてある。
逆に、見合いする本人の情報のチェック項目もビッシリと書かれていた。
「……こんなに細かい条件で見合いが成立するのでしょうか?」
「あくまで希望ですからね。すべての条件に合う人なんていませんよ。一番近い条件の人と引き合わせるだけで、その後の保障は一切しません。ちゃんと、その事も記載されています。本来なら有償で行うものを無償で提供するので、反発は少ないでしょう。リリアン様との連名にしておいて下さいね」
そう釘を刺すガリオンに、キャロルは疲れた顔で「はい」と返事を返した。
コレットの出没スポットに白薔薇の会の会員達に張り込みをお願いし、定期的に巡回をしていると高確率で彼女と遭遇するようになった。
「セド様、ありがとう御座います。迷子になっちゃって困ってたんですぅ」
甘ったるい猫なで声で喋るコレットに対し、カルセドニーの反応は薄い。
「そうですか。編入して一月以上経過しているのですから、いい加減場所を覚えたらどうです」
「私、すっごい方向音痴なんですよ。この学園って広いですし、場所を覚えるのが大変なんです。セド様が、校内を案内してくれませんか?」
コレットはカルセドニーの腕に手を添えて密着しようとしているが、本人は迷惑そうにコレットの肩を押して距離を保とうとしている。
アルベルトがコレットを『友人』と公言している以上、彼女を邪険に扱うことが出来ないのだろう。
「ロナウド様、御機嫌よう。コレットさん、往来で男性に身体をくっつけるものではありませんよ。愛称も貴族の間では、親兄弟か婚約者が呼べるものです。軽々しく愛称を口にしてはなりません。きちんとロナルド様とお呼びなさい」
「……何ですか。また、意地悪しに来たんですか?」
頓珍漢なコレットの返答に、キャロルは大きな溜息を吐いた。
注意を促すたびに彼女は、イジメているだの、意地悪するだのと口にするのだ。
「注意です。学園の風紀を乱さないで下さい。それで、今日はどちらに行かれるのですか? ご案内しますよ」
「貴女には、関係ありません。行きましょう、セド様」
カルセドニーの腕を掴み、コレットはその場を立ち去ろうとしている。
「いや、私は行くところがあるので彼女に連れて行って貰いなさい。チャイルド嬢、申し訳ないが彼女を白百合の間へ連れて行って貰えないだろうか? 中に、アリーシャがいる。彼女に引き渡してくれ」
「畏まりました。では、コレットさん参りましょうか」
カルセドニーからコレットを引き剥がして、力づくで引き摺るように白百合の間まで連行をする。
カルセドニーの姿が見えなくなった途端、怪鳥の如くギャーギャーと汚い言葉で罵ってくる。
「アル様に言いつけてやるんだからね! 泣いて後悔したって遅いんだから!」
と意味不明なことを毎回言うのだから、相当な馬鹿なんだと思う。
アリーシャの前にコレットを付き出すのが、最近の日課になりつつあるのが辛い。
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