ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話

NANiMO

文字の大きさ
16 / 53
家主の距離が近すぎる

しおりを挟む
予約公開の日付ミスにより、⑧より先に⑨を公開してしまいました。
申し訳ありません。
______



「ありえない!!」

ブライアン、トーマス、両者ともにキンとする耳を撫でる。リエは周囲からの不審と批判的な眼差しをもろともせずまくしたてた。

「ありえないわ! 日本人にとって告白は大事な文化なの。二人が付き合う時に告白がないなんて! 海外では問題なくても、こっちは脈アリなんだかキープなんだか理解できなくてストレスが溜まる状況にさらされるの! っていうかトーマス、あなたカレに自分が同性愛者だってこと、伝えているの? もしくはカレもなの?」

「あー……伝えてない。それに、カレはノンケだよ。でも、でもね? カレはJPとUKのハーフで、昔は向こうで暮らしていたんだ。それにパートナーだと認めてくれた。キスだってした。カレは嫌じゃないと言った」
「でも、あなたのカレ、気が弱いんでしょ?」
「それは言い方の違いだよ。シャイなんだ……ほんの少しだけね。ああ、待って」

一言断って、トーマスはスマートフォンの画面に目を移す。人差し指をこめかみに当てるのは、どうしたものかと困っている時の癖だ。

「あぁ……彼は食事とはどういったものなのかを知らないのか? いつも同じエネルギーバーを食べて、スポンサー契約でもしているのか?」
「噂のカレ?」
「そうだよ、噂のカレだ。ちゃんと食事しているか気になってね。だけど、私に監視されているからといって、彼は彼のスタイルを変えるつもりはないみたいだ。今日もエネルギーバーだよ、ありえないだろ」

スマートフォンを覗き込んで、首を横に振る。
『大豆バーだから健康だよ』なんてメッセージが添えられた写真に隠し切れない失望のため息。
一部始終を見ていたブライアンがブッと噴き出す。

「監視! ペットカメラでもつけてるのか? カレは子猫ちゃんかな」
「体はシリアル並みに軽いし、小さいし、目を離すと死んでしまいそうで不安なんだ。一番下の妹より心配になる」

思わぬ過保護ぶりにブライアンが体をのけ反らせ、リエは目を輝かせた。色恋の話が大好物のようだ。

「お、おい。僕は確かにきみのことを認め、理解しているけど、さすがにペドはマズいだろ……」
「彼は成人男性だよ。少し年下だけど、カワイイ子なんだ」
「そうか……僕はもう関与しないよ。僕は僕の恋愛で手一杯だからね」
「きみのことも応援してるよ。新しい恋を始める踏ん切りがつかなくても、とりあえずバーに行ったらいい」
「僕は振られてない!」
「それで、話はあなたのシリアルカレシのこと。正面から話し合った方がいいと思うわ」

カレから連絡が来たことは、ナイスタイミングな口実になったが、リエは話を逸らすことを許してくれなかった。トーマスはがっかりして首を横に振る。

「リエ、何度も言うけどそんなに心配しなくてもいいよ。私たちはうまく行ってる」
「今後もそうだとは言えないじゃない。ほら、ブライアンを見て。付き合ってるつもりだったのにカノジョにすげなく振られた男がここにいるのよ」
「うーん……」
「僕を『反面教師』にするな! トーマス、納得するなよ!」

トーマスは己を省みる。
しかし、自らの行動になんら問題があったとは思えない。

自分がゲイだと伝えなかったのは、意図的にそうしたわけではなく、単にタイミングを逃した状態で前進してしまったからだ。何の計画も持たずに旅行へ行くようなものだったが、結果的にトーマスとハイネは行き当たりばったりでもなんとかやっていけるほど相性が良かった。

それに、いくら2年以上の付き合いとはいえ、好意のない相手から突然一緒に住もうと提案されたら断るなり訝しむなりするだろう。ところがハイネは二つ返事で了承して、事実、現在自分の家にいる。それはつまり、ハイネも運命を感じたということに他ならない。
気のない相手とキスするか? 同棲の誘いをした時点で、自身が同性愛者であることは簡単に察することができるはずだ。ハイネはそれを承知で了承し、キスまでは許してくれた。

リエの言い分からすると、ハイネは流されるままに同棲の了承をして、キスを許したということになる。
そんな、まさか。

トーマスは内心で笑い飛ばすが、同時に、心の底に燻っていた黒い塊も、のっそりと首をもたげた。
ハイネに不満が無いと言えば嘘になる。シャイでウブだから、キスだけであんなに慌てるのだと納得していたが、本当はすぐにでもベッドに押し倒したい。しかし無理やり奪ってしまったらハイネの心は遠ざかってしまうだろうという煩悶。その不満には根本的な原因が存在して、万が一、もしかしたら……という心配である。

「わかった、わかった。それで、なにを言えばいいんだっけ?」
「自分が相手を好きだってこと、付き合いたい……あなたの場合は付き合っているつもりだってことを」
「きみたち僕のことを『ダシ』にしておいて無視か? 名誉棄損で訴えるぞ!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

処理中です...