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19 二人での朝食
朝、目が覚めると、目が覚めるのを待っていたようにメイドが五人、部屋にやって来た。
「お嬢様、おはようございます」
「おはようございます」
わたしは丁寧に頭を下げました。
頭を動かしても、昨日ほどは、もう痛くない。
「なんだか体調がよくなってきたようです」
「お顔の色も、よくなってきましたよ」
メイドが答えた。
寝不足も解消されてきたのだろう。
体の疲れも、あまり感じない。
「お風呂に入りたいわ」
「医師のアロージョ様に伺ってきます」
メイドの一人が、部屋から出て行った。
「今日の朝食もクラクシオン皇太子殿下が来られるそうです」
「この部屋に、来てくださるの?」
「はい、暫くは不自由だと思われるでしょうが、この部屋の中で過ごしていただきたいそうです」
「ドゥオーモ王国から来た客人に、姿を見せたくないと仰っております」
なるほど。
あの二人のことだ。
わたしの姿が見えなければ、存在も忘れてしまうだろう。
「分かりました」
「今日の予定は、クラクシオン皇太子殿下と共に、皇帝陛下の元に向かわれるそうです」
「はい」
その事は、昨日、クラクシオン様から聞いていたので、承知している。
扉がノックされて、メイドの一人が扉を開けた。
「おはよう。体調はよくなったのか?」
部屋の中に入ってきたのは、アロージョ医師だった。
「はい、体の疲れも、ずいぶん、楽になってきました」
「それはよかった」
「少し、見せてもらうよ」
アロージョ医師はガーゼを剥がして、頭の傷を診た。
「頭は痛くない?」
「昨日は頭を動かしても痛かったのですが、今朝は大丈夫です」
「お腹はどうだ?」
「押さえれば痛いですが、ずいぶん楽です」
「お風呂に入りたいんだったね」
「はい、今日は初めて皇帝陛下に謁見致しますので」
「それなら、長湯しなければ、許可を出そう。気分が悪くなったら、知らせてくれ」
「畏まりました」
メイドが頭を下げる。
「アロージョ医師、感謝致します」
わたしは、頭を下げた。
「俺も、幼い頃のマリアナと一緒に遊んだ。俺の師はマリアナの父だ。カナール医師もファベル医師も優秀な医師だった。ファベル医師にマリアナを取り戻す約束をした。ファベル医師ももう少し長生きできれば、マリアナに会えたのに、本当に残念だ」
「アロージョ医師は母様も父様のことをご存じなのですね」
「ああ、医術を一から教わった。恩人だ」
「両親とも医師だったのですね。わたしも帝国にいられたら、医師になっていたかもしれませんね」
「それは、分からないが。今日は会わせたい人がいる。楽しみにしているといい」
「皇帝陛下ですか?」
「いや、違う」
「誰でしょう」
「とにかくだ。まだ無理はするな。お風呂は短めにしなさい」
「はい」
アロージョ医師は、わたしの頭を優しくポンポンと撫でると、部屋から出て行った。
「では、お嬢様。まずはお顔を洗いましょう。先に、お食事の時間になると思いますので、その支度を致しましょう」
「はい」
わたしはベッドから下りて、朝の支度を始めた。
荷物の中から、ドレスを取り出す。
食事の時に汚してしまうかもしれないので、普段着のドレスを着て、皇帝陛下の謁見の席では、一番、新しいドレスを着ることに決めた。
テキパキと自分でドレスを着る姿を見て、メイド達は驚く。
「お嬢様、どうか甘えてください」
「わたしにメイドはいなかったの。だから、自分のことは自分でできます」
「それでも、どうか甘えてください」
「それでしたら、お風呂からあがったら、髪を整えてくださいますか?」
「任せてください」
メイド達は頭を下げる。
使用済みのベッドを調え、部屋を綺麗にしてくれる。
そうしている間に、クラクシオン様がいらっしゃった。
すぐに食事の支度が始まった。
テーブルの上に、朝食が並べられていく。
今日も贅沢な朝食だ。
フルーツもあり、見たこともない物もある。
「この白い物は何ですか?」
「ヨーグルトだよ。フルーツを混ぜてもジャムを混ぜても美味しいよ」
「初めて食べます」
「ゆっくりお食べ」
「はい」
どれも美味しく、きちんと味を感じることができる。
ドゥオーモ王国での食事は、味を感じることができなかったのに、帝国に来て、クラクシオン様と一緒に食事をしていると、きちんと食事の味が分かるのだ。
そういえば、ダムの視察の時のサンドイッチを食べたときは、味がした。
ドゥオーモ王国での食事で、美味しいと感じたのは、あの時が初めてだったかもしれない。
食事はまだ消化のいい物が並べられているが、料理法なのか、とても満足もできる。
「この国の物は、どれも美味しいです」
「そうか、よかった。食べたい物があったら、何でも言って欲しい」
「ドゥオーモ王国での食事では、味は感じなかったの。味覚異常かと思っていたけれど、クラクシオン様と一緒に食事を食べるときは、味がすることに気づいたのです。これからも、一緒に食事をして欲しいです」
「ああ、一緒に食事をしよう」
クラクシオン様の笑顔につられるように、わたしも自然に笑顔が浮かんだ。
食事を終えると、クラクシオン様が食後の紅茶を入れてくださる。
丁寧な所作で、淹れられるお茶は、香りがよく、とても美味しい。
「今から、お風呂に入るんだってね。長湯は、まだ駄目だよ」
「はい」
「俺はドゥオーモ王国の客人を起こしてくるよ。昨日は、ずいぶんお酒を飲んでいたから、二日酔いかな」
「また、あの二人は礼儀を知らぬ二人なので、本当にご迷惑をおかけします」
わたしは、頭を下げた。
「マリアナが悪いわけではない。頭は下げる必要はない」
「……そう言われれば、そうですね」
わたしは微笑んだ。
やっと離縁できると思うと、嬉しいのだ。
「少し休んでから、お風呂に入りなさい」
「はい」
クラクシオン様は、わたしを抱きしめてから、部屋を出て行かれた。
クラクシオン様の代わりに、メイド達が部屋に入ってくる。
食事の後片付けをする者。お風呂の準備をする者。様々だ。
メイド達のお名前を覚えるようにしなければ、失礼になるかしら?
でも、今はゆっくりさせていただこう。
「お嬢様、おはようございます」
「おはようございます」
わたしは丁寧に頭を下げました。
頭を動かしても、昨日ほどは、もう痛くない。
「なんだか体調がよくなってきたようです」
「お顔の色も、よくなってきましたよ」
メイドが答えた。
寝不足も解消されてきたのだろう。
体の疲れも、あまり感じない。
「お風呂に入りたいわ」
「医師のアロージョ様に伺ってきます」
メイドの一人が、部屋から出て行った。
「今日の朝食もクラクシオン皇太子殿下が来られるそうです」
「この部屋に、来てくださるの?」
「はい、暫くは不自由だと思われるでしょうが、この部屋の中で過ごしていただきたいそうです」
「ドゥオーモ王国から来た客人に、姿を見せたくないと仰っております」
なるほど。
あの二人のことだ。
わたしの姿が見えなければ、存在も忘れてしまうだろう。
「分かりました」
「今日の予定は、クラクシオン皇太子殿下と共に、皇帝陛下の元に向かわれるそうです」
「はい」
その事は、昨日、クラクシオン様から聞いていたので、承知している。
扉がノックされて、メイドの一人が扉を開けた。
「おはよう。体調はよくなったのか?」
部屋の中に入ってきたのは、アロージョ医師だった。
「はい、体の疲れも、ずいぶん、楽になってきました」
「それはよかった」
「少し、見せてもらうよ」
アロージョ医師はガーゼを剥がして、頭の傷を診た。
「頭は痛くない?」
「昨日は頭を動かしても痛かったのですが、今朝は大丈夫です」
「お腹はどうだ?」
「押さえれば痛いですが、ずいぶん楽です」
「お風呂に入りたいんだったね」
「はい、今日は初めて皇帝陛下に謁見致しますので」
「それなら、長湯しなければ、許可を出そう。気分が悪くなったら、知らせてくれ」
「畏まりました」
メイドが頭を下げる。
「アロージョ医師、感謝致します」
わたしは、頭を下げた。
「俺も、幼い頃のマリアナと一緒に遊んだ。俺の師はマリアナの父だ。カナール医師もファベル医師も優秀な医師だった。ファベル医師にマリアナを取り戻す約束をした。ファベル医師ももう少し長生きできれば、マリアナに会えたのに、本当に残念だ」
「アロージョ医師は母様も父様のことをご存じなのですね」
「ああ、医術を一から教わった。恩人だ」
「両親とも医師だったのですね。わたしも帝国にいられたら、医師になっていたかもしれませんね」
「それは、分からないが。今日は会わせたい人がいる。楽しみにしているといい」
「皇帝陛下ですか?」
「いや、違う」
「誰でしょう」
「とにかくだ。まだ無理はするな。お風呂は短めにしなさい」
「はい」
アロージョ医師は、わたしの頭を優しくポンポンと撫でると、部屋から出て行った。
「では、お嬢様。まずはお顔を洗いましょう。先に、お食事の時間になると思いますので、その支度を致しましょう」
「はい」
わたしはベッドから下りて、朝の支度を始めた。
荷物の中から、ドレスを取り出す。
食事の時に汚してしまうかもしれないので、普段着のドレスを着て、皇帝陛下の謁見の席では、一番、新しいドレスを着ることに決めた。
テキパキと自分でドレスを着る姿を見て、メイド達は驚く。
「お嬢様、どうか甘えてください」
「わたしにメイドはいなかったの。だから、自分のことは自分でできます」
「それでも、どうか甘えてください」
「それでしたら、お風呂からあがったら、髪を整えてくださいますか?」
「任せてください」
メイド達は頭を下げる。
使用済みのベッドを調え、部屋を綺麗にしてくれる。
そうしている間に、クラクシオン様がいらっしゃった。
すぐに食事の支度が始まった。
テーブルの上に、朝食が並べられていく。
今日も贅沢な朝食だ。
フルーツもあり、見たこともない物もある。
「この白い物は何ですか?」
「ヨーグルトだよ。フルーツを混ぜてもジャムを混ぜても美味しいよ」
「初めて食べます」
「ゆっくりお食べ」
「はい」
どれも美味しく、きちんと味を感じることができる。
ドゥオーモ王国での食事は、味を感じることができなかったのに、帝国に来て、クラクシオン様と一緒に食事をしていると、きちんと食事の味が分かるのだ。
そういえば、ダムの視察の時のサンドイッチを食べたときは、味がした。
ドゥオーモ王国での食事で、美味しいと感じたのは、あの時が初めてだったかもしれない。
食事はまだ消化のいい物が並べられているが、料理法なのか、とても満足もできる。
「この国の物は、どれも美味しいです」
「そうか、よかった。食べたい物があったら、何でも言って欲しい」
「ドゥオーモ王国での食事では、味は感じなかったの。味覚異常かと思っていたけれど、クラクシオン様と一緒に食事を食べるときは、味がすることに気づいたのです。これからも、一緒に食事をして欲しいです」
「ああ、一緒に食事をしよう」
クラクシオン様の笑顔につられるように、わたしも自然に笑顔が浮かんだ。
食事を終えると、クラクシオン様が食後の紅茶を入れてくださる。
丁寧な所作で、淹れられるお茶は、香りがよく、とても美味しい。
「今から、お風呂に入るんだってね。長湯は、まだ駄目だよ」
「はい」
「俺はドゥオーモ王国の客人を起こしてくるよ。昨日は、ずいぶんお酒を飲んでいたから、二日酔いかな」
「また、あの二人は礼儀を知らぬ二人なので、本当にご迷惑をおかけします」
わたしは、頭を下げた。
「マリアナが悪いわけではない。頭は下げる必要はない」
「……そう言われれば、そうですね」
わたしは微笑んだ。
やっと離縁できると思うと、嬉しいのだ。
「少し休んでから、お風呂に入りなさい」
「はい」
クラクシオン様は、わたしを抱きしめてから、部屋を出て行かれた。
クラクシオン様の代わりに、メイド達が部屋に入ってくる。
食事の後片付けをする者。お風呂の準備をする者。様々だ。
メイド達のお名前を覚えるようにしなければ、失礼になるかしら?
でも、今はゆっくりさせていただこう。
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