《完結》愛されたいわたしは幸せになりたい

綾月百花   

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20   二日酔いの朝

 目を覚ました瞬間から、激しい頭痛がする。

 隣を見ると、愛するジュリアンは、腹を出して寝ている。

 何という格好をしているのだ?

 ドレスの胸元のボタンが外れるならば、自分がしたかもしれないが、腹まで見える位置までは、いつも外さない。ジュリアンは大胆にボタンを開けて、掛布も掛けずにイビキをかいている。

 その体を揺すった。


「ジュリアン、起きろ」

「ん~~~ぐぅ~~」

「ジュリアン、朝だ。ここは我が国ではないぞ」


 ゆさゆさと体を揺すると、「んがっ!」とイビキをかいて、ジュリアンの腕が旋回した。

 バシッと顔を叩かれ、その痛みと、頭痛で、頭にきた。


「ジュリアン!起きろ」


 ジュリアンを跨ぎ、両肩を揺すると、やっと目を開けた。


「リオス、おはよう」

「おまえ、寝相、悪すぎだぞ。イビキも酷い」

「そんなことはないはずよ」


 ジュリアンは、ふわっと欠伸をして、その後、頭を抱えた。


「なんだか、頭が痛いわ」

「昨日、酒を飲み過ぎたのかもしれん」

「そうね、虫みたいな食事は、果実酒で飲み込まないと、とても食べられないわ」


 あたたと、こめかみを押さえて、ジュリアンはやっと乱れたドレス姿である事に気づいた。


「もう、リオス。見境なく、盛るのはよくないわ」

「俺じゃない。自分で脱いだのだろう?」

「そんなはずはないわ」


 ジュリアンは、急いでボタンをはめる。


「ここは帝国だ。しっかりしなくては、父上に叱られるぞ」

「あの女はどうなったかしら?まだ寝込んでいるのかしら?」

「顔はずいぶん腫れていたな。頭もぶつけていたようだし、腹を蹴ったら、動けなくなったようだった。まだ寝込んでいるかもしれないな。まあ自業自得だ」

「それもそうね。私も何度もお腹の上で跳ねたもの」


 襟元までしっかりボタンをはめると、今度は髪が気になってきた。手で髪を梳きながら、昨夜はそのまま寝たことを思い出した。

「お化粧を落とさずに寝ちゃったわ。今からお風呂に入れるかしら?」

「この部屋に風呂場はあったか?」


 俺はベッドから下りると、部屋の中を見て歩く。

 この部屋は、我が国の来賓用の大部屋より、狭い気がする。

 ベッドはダブルベッドであるが、こぢんまりとしている。

 扉を開けていくが、風呂場は備え付けではなかった。

 帝国もそれほど、たいしたことはなさそうだ。

 使用人を呼ぶための鈴を鳴らすと、我が国から連れてきたメイド達が、部屋の中に入ってきた。


「風呂に入りたい」

「直ぐに準備を致します」


 メイド達はテキパキと着替えを出し、「ドレスはどれになさいますか?」と聞いてきた。


「そうね、今日は楽なのがいいわ。ピンクのドレスにしましょう」

「畏まりました」


 その時、扉がノックされた。

 メイドが扉を開けると、にこやかなクラクシオン皇太子殿下が立っていた。


「食事に来られないので、心配して様子を見に来ました。ダイニングルームに行きましょう」


 俺はジュリアンの顔を見た。

 お化粧は取れているが、可愛い顔は健在だ。

 このままでもいいか……。


「では、よろしく頼む」


 威厳だ。 

 威厳を忘れてはならない。

 帝国もたいしたことはない。

 部屋に風呂もないのなら、我がドゥオーモ王国より劣っているのではないか?


「ジュリアン、行くぞ」

「え、お風呂は?」

「一日くらい、風呂に入らなくても死にはしない」

「お化粧も……」

「ジュリアンはそのままで、美しい」


 褒められたジュリアンは、もう舞い上がっている。

 化粧をしなくて美しいと言われて、嬉しくて仕方がない。

 パッと俺の腕に腕を絡め、帝国の皇太子に、にっこりと微笑む。


「時間が遅いので、先に頂いたが、二人でゆっくり食べるがいい。その後は、我が国の宰相が馬車で、流行のドレスや宝石を売っているお店に連れて行く予定でいるが、他に行きたい場所はありますか?」

「取り敢えず、そこに連れて行って」


 ジュリアンは、大喜びで今にもスキップをしそうだった。


「こら、落ち着け」

「だって、流行のドレスですって、宝石も楽しみよ」


 今年の予算は、マリアナの分も含めて、殆ど使ってしまって、残りは僅かなはずだ。

 この帝国に来るために、ドレスを新調したばかりだというのに、どれだけドレスが必要なのだ?

 宝石も、たくさん持っているはずだ。

 全く欲深だな。

 ジュリアンに不満があるならば、まさにそこだ。

 金遣いが荒い。

 国家予算まで手を付けるわけにはいかない。

 だから、マリアナの予算をジュリアンに充てていたのだ。


「では、まず食事をどうぞ」


 クラクシオン皇太子殿下の背後から、クラクシオン皇太子殿下の側に控える宰相が顔を出した。


「では、案内いたします」

「私は皇帝陛下に呼び出されておりますので失礼します」


 クラクシオン皇太子殿下は、一礼をすると廊下を歩いて行った。

 宰相にダイニングに案内された俺とジュリアンは、テーブルに並べられた魚介類を前に硬直した。


「今朝、水揚げされたばかりの魚介類です。新鮮なうちにどうぞ、お召し上がりください」

「ありがとう、ございます」


 隣に立つジュリアンの口を押さえて、俺はお礼を言った。

 今にも悲鳴を上げそうなジュリアンに、こっそり耳打ちする。


「全部、飲み込め」


 ジュリアンは涙目で頷いた。
 

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