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26 マリアナ、国際裁判所へ
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「マリアナ、今日は離婚の手続きの為に、国際裁判所に行く予定でいるが、離婚でいいのだな?」
「はい。早く離婚したいです。わたしはドゥオーモ王国の第一夫人でいることが嫌で仕方がありません。ペリオドス様の妻という座も要りません。執務を行うためのロボットではありません。もう解放して欲しい」
一緒に部屋でクラクシオン様と食事をした後に、最終確認をされました。
離婚はずっと望んでいたことです。
白い。真っ白い結婚なので、ペリオドス様に未練も情もありません。
まだ蹴られた腹が痛みます。
痛むたびに、怖い顔のペリオドス様を思い出して、気分が悪くなってしまいます。
主治医のアロージョ医師は、内臓の腫れもあるかもしれないが、精神的な物が大きいだろうと言いました。
精神的苦痛は五歳の頃から受けてきましたが、もう心が限界値を超えて、涙が零れてしまいます。
両親の墓参りを済ませてから、わたしは気力を使い果たしてしまったように、ベッドに横になっています。
清潔なお風呂に入り、美味しい食事をクラクシオン様と取っていますが、それがなければ、わたしは両親を追いかけているかもしれません。
兄と呼ばれた兄様に顔向けもできません。
母様は事故だったかもしれませんが、父様は間違いなく、わたしの責任で亡くしてしまったのです。
わたしは知らぬ間に、殺人犯になったのです。
その事をクラクシオン様に話したら、それは違うとおっしゃいました。
父様が行った事は、親心と言うそうです。
我が子が誘拐されれば、探し出したいと思うのは親心で、助けたいと想う心も親心だと教えてくださいました。
わたしは何も悪くはないと、何度も言葉に出してくださいます。
その度に、沈み掛けていく心を引き上げてもらっています。
兄様も会いに来ないので、それ以上の心労は今の所、ありません。
わたしを悪く言う人がいないので、その事でも救われています。
また兄様に、責められたら、やはりわたしは謝ることしかできません。
わたしの顔を毎日、見に来るのは、クラクシオン様と五人のメイド達、主治医のアロージョ医師だけです。
宰相様がペリオドス様とジュリアン様のお世話をしているそうです。
二人とも我が儘なので、きっとご苦労を掛けていると思います。
食事後、美味しい紅茶を淹れてくださったクラクシオン様は、いったんお部屋を出て行きました。
その代わりに、メイドが来ます。
「今日はお出かけになるそうですね」
「はい、国際裁判所に行きますの」
「そうですか、国際裁判所は、この宮殿と同じくらい大きな建物なのですよ。どちらの建物も白いですので、地方から来られる方は、間違って宮殿に来てしまう方もいらっしゃいますよ」
「まあ、門番の騎士は大変ね」
「そうですね、でも慣れておりますので、そんな時は、国際裁判所へ案内しております」
「親切だわ」
「国際裁判所は、中立的な裁判所ですから、他国からも来られるのです。いろんな苦しみを抱いて来られる方が殆どですから、皇帝陛下の指示で、親切にするようにとの事です。お嬢様の悩みも直ぐに解決しますわ」
「ありがとう」
「いいえ」
わたしはベッドに横になっていないときは、窓辺に置かれたカウチに座っております。
もともとカウチはなかったのですが、クラクシオン様がお部屋に置いてくださいました。
部屋からの景色が、素晴らしくよくて、風も入ってくるので暑く感じることもありません。
この部屋は、とても過ごしやすいお部屋です。
カウチは大きめなので、うっかりお昼寝をしても寝られるようになっています。
五人のメイドは、時々交代をして、わたしが眠るまで、側にいてくださいます。
この宮殿に来て、一人になった事はありません。
いつも孤独で、寂しかった心も落ち着いております。
本当によくしていただいて、申し訳ないと思うのですが、心遣いに救われていることも確かなのです。
ドゥオーモ王国では、いつも一人でいたので、話し相手がいることがこんなに嬉しいことだと、初めて知りました。
ノックの音がして、メイドが扉を開けに行きました。
「マリアナ、そろそろ行くよ」
「はい」
クラクシオン様の声が聞こえて、嬉しく思います。
素早く返事を返すと、クラクシオン様はわたしを見て微笑んでくれます。
胸が温かくなるような優しい微笑みです。
わたしは普段着の地味なドレスを着ています。
使い古したドレスなので、色も褪せてきていますが、クラクシオン様はもう少し、体調が落ち着いたらドレスを買いに行こうと誘ってくださいました。
今の所、わたしが持っているドレスは、殆ど同じほど傷んでいるので、どれを着てもそれほど変わりません。
そっとクラクシオン様の手が、わたしの手を繋ぎます。
それを見てから、メイドは深く頭を下げます。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
わたしも会釈をしてから部屋を出ます。
単なる挨拶ですが、挨拶をされたことのないわたしは、この遣り取りがとても好きになりました。
想い想われなければ、この言葉は出てきません。
メイドの心遣いが、とても優しいのです。
本当に、皆さん、優しくしてくださいます。
ゆっくり廊下を歩き、階段を降りていきます。
初めは気づかなかったのですが、客間の方の階段は使っていないようです。
うっかりペリオドス様達と出会わないように工夫されたお部屋に道順のようです。
この階段は、正面玄関前に出ます。
扉の前の騎士が、扉を開けてくださいます。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
わたしは騎士の言葉に返事をします。
騎士は微笑んでくれます。
わたしも自然に微笑み返します。
そのわたしの顔を見て、クラクシオン様も微笑みます。
本当に優しい空気に包まれております。
外には、もう馬車が止まっていました。
クラクシオン様の近衛騎士達が馬の手綱を持ち待っています。
皆さん、クラクシオン様がおいでになると、頭を下げておいでです。
忠誠心の確かなお方のようです。
ペリオドス様の近衛騎士は、たった二人です。
我が儘なお方なので、国王陛下が推薦してくださっても、気に入らなければ、勝手にクビにしてしまいます。
上に立つ者としての覚悟も自覚もありません。
国王陛下が心配して、護衛の騎士を多く出しておりますが、正式な近衛騎士はたった二人なのです。
残り物には福があると申しますが、近衛騎士に関しては、去って行かれた方々の方がマトモでした。
馬車に乗ると、馬車は静かに走り出しました。
「緊張しているの?」
「はい、とても」
「国際裁判所は、公平に判断してくれる場所だから、怖くない。むしろ、マリアナの味方になってくれる。信頼してもいい」
「はい」
「一緒にいるから、怖くないよ」
「ありがとうございます」
肩を抱かれて、ドキドキしてきた。
クラクシオン様はスキンシップが激しめだ。
手を繋いで、肩を抱かれて、時々、抱き上げられる。
慣れていないので、ドキドキと胸が騒ぐのです。
でも、嫌なわけではありません。
クラクシオン様の優しさなのだと思うのです。
心地よい優しさに包まれて、白く大きな建物の前に止まった。
本当に宮殿のように美しい白い建物です。
「さあ、到着した。行こうか?」
「……はい」
「離婚したいのだろう?」
「それは、はい」
「ならば、今日は離婚したい気持ちを伝えなさい。怖がっていたら、離婚できないよ」
「離婚します」
わたしは自分の決意を口にしました。
クラクシオン様は大きく頷きました。
「では、行こう」
「はい」
意気地なしのわたしに、力をくださったのだと思う。
今日は頑張ろう。
必ず、離婚してみせる。
父様の為でもあるが、何より自分の為に。
この因縁を断ち切りたい。
「はい。早く離婚したいです。わたしはドゥオーモ王国の第一夫人でいることが嫌で仕方がありません。ペリオドス様の妻という座も要りません。執務を行うためのロボットではありません。もう解放して欲しい」
一緒に部屋でクラクシオン様と食事をした後に、最終確認をされました。
離婚はずっと望んでいたことです。
白い。真っ白い結婚なので、ペリオドス様に未練も情もありません。
まだ蹴られた腹が痛みます。
痛むたびに、怖い顔のペリオドス様を思い出して、気分が悪くなってしまいます。
主治医のアロージョ医師は、内臓の腫れもあるかもしれないが、精神的な物が大きいだろうと言いました。
精神的苦痛は五歳の頃から受けてきましたが、もう心が限界値を超えて、涙が零れてしまいます。
両親の墓参りを済ませてから、わたしは気力を使い果たしてしまったように、ベッドに横になっています。
清潔なお風呂に入り、美味しい食事をクラクシオン様と取っていますが、それがなければ、わたしは両親を追いかけているかもしれません。
兄と呼ばれた兄様に顔向けもできません。
母様は事故だったかもしれませんが、父様は間違いなく、わたしの責任で亡くしてしまったのです。
わたしは知らぬ間に、殺人犯になったのです。
その事をクラクシオン様に話したら、それは違うとおっしゃいました。
父様が行った事は、親心と言うそうです。
我が子が誘拐されれば、探し出したいと思うのは親心で、助けたいと想う心も親心だと教えてくださいました。
わたしは何も悪くはないと、何度も言葉に出してくださいます。
その度に、沈み掛けていく心を引き上げてもらっています。
兄様も会いに来ないので、それ以上の心労は今の所、ありません。
わたしを悪く言う人がいないので、その事でも救われています。
また兄様に、責められたら、やはりわたしは謝ることしかできません。
わたしの顔を毎日、見に来るのは、クラクシオン様と五人のメイド達、主治医のアロージョ医師だけです。
宰相様がペリオドス様とジュリアン様のお世話をしているそうです。
二人とも我が儘なので、きっとご苦労を掛けていると思います。
食事後、美味しい紅茶を淹れてくださったクラクシオン様は、いったんお部屋を出て行きました。
その代わりに、メイドが来ます。
「今日はお出かけになるそうですね」
「はい、国際裁判所に行きますの」
「そうですか、国際裁判所は、この宮殿と同じくらい大きな建物なのですよ。どちらの建物も白いですので、地方から来られる方は、間違って宮殿に来てしまう方もいらっしゃいますよ」
「まあ、門番の騎士は大変ね」
「そうですね、でも慣れておりますので、そんな時は、国際裁判所へ案内しております」
「親切だわ」
「国際裁判所は、中立的な裁判所ですから、他国からも来られるのです。いろんな苦しみを抱いて来られる方が殆どですから、皇帝陛下の指示で、親切にするようにとの事です。お嬢様の悩みも直ぐに解決しますわ」
「ありがとう」
「いいえ」
わたしはベッドに横になっていないときは、窓辺に置かれたカウチに座っております。
もともとカウチはなかったのですが、クラクシオン様がお部屋に置いてくださいました。
部屋からの景色が、素晴らしくよくて、風も入ってくるので暑く感じることもありません。
この部屋は、とても過ごしやすいお部屋です。
カウチは大きめなので、うっかりお昼寝をしても寝られるようになっています。
五人のメイドは、時々交代をして、わたしが眠るまで、側にいてくださいます。
この宮殿に来て、一人になった事はありません。
いつも孤独で、寂しかった心も落ち着いております。
本当によくしていただいて、申し訳ないと思うのですが、心遣いに救われていることも確かなのです。
ドゥオーモ王国では、いつも一人でいたので、話し相手がいることがこんなに嬉しいことだと、初めて知りました。
ノックの音がして、メイドが扉を開けに行きました。
「マリアナ、そろそろ行くよ」
「はい」
クラクシオン様の声が聞こえて、嬉しく思います。
素早く返事を返すと、クラクシオン様はわたしを見て微笑んでくれます。
胸が温かくなるような優しい微笑みです。
わたしは普段着の地味なドレスを着ています。
使い古したドレスなので、色も褪せてきていますが、クラクシオン様はもう少し、体調が落ち着いたらドレスを買いに行こうと誘ってくださいました。
今の所、わたしが持っているドレスは、殆ど同じほど傷んでいるので、どれを着てもそれほど変わりません。
そっとクラクシオン様の手が、わたしの手を繋ぎます。
それを見てから、メイドは深く頭を下げます。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
わたしも会釈をしてから部屋を出ます。
単なる挨拶ですが、挨拶をされたことのないわたしは、この遣り取りがとても好きになりました。
想い想われなければ、この言葉は出てきません。
メイドの心遣いが、とても優しいのです。
本当に、皆さん、優しくしてくださいます。
ゆっくり廊下を歩き、階段を降りていきます。
初めは気づかなかったのですが、客間の方の階段は使っていないようです。
うっかりペリオドス様達と出会わないように工夫されたお部屋に道順のようです。
この階段は、正面玄関前に出ます。
扉の前の騎士が、扉を開けてくださいます。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
わたしは騎士の言葉に返事をします。
騎士は微笑んでくれます。
わたしも自然に微笑み返します。
そのわたしの顔を見て、クラクシオン様も微笑みます。
本当に優しい空気に包まれております。
外には、もう馬車が止まっていました。
クラクシオン様の近衛騎士達が馬の手綱を持ち待っています。
皆さん、クラクシオン様がおいでになると、頭を下げておいでです。
忠誠心の確かなお方のようです。
ペリオドス様の近衛騎士は、たった二人です。
我が儘なお方なので、国王陛下が推薦してくださっても、気に入らなければ、勝手にクビにしてしまいます。
上に立つ者としての覚悟も自覚もありません。
国王陛下が心配して、護衛の騎士を多く出しておりますが、正式な近衛騎士はたった二人なのです。
残り物には福があると申しますが、近衛騎士に関しては、去って行かれた方々の方がマトモでした。
馬車に乗ると、馬車は静かに走り出しました。
「緊張しているの?」
「はい、とても」
「国際裁判所は、公平に判断してくれる場所だから、怖くない。むしろ、マリアナの味方になってくれる。信頼してもいい」
「はい」
「一緒にいるから、怖くないよ」
「ありがとうございます」
肩を抱かれて、ドキドキしてきた。
クラクシオン様はスキンシップが激しめだ。
手を繋いで、肩を抱かれて、時々、抱き上げられる。
慣れていないので、ドキドキと胸が騒ぐのです。
でも、嫌なわけではありません。
クラクシオン様の優しさなのだと思うのです。
心地よい優しさに包まれて、白く大きな建物の前に止まった。
本当に宮殿のように美しい白い建物です。
「さあ、到着した。行こうか?」
「……はい」
「離婚したいのだろう?」
「それは、はい」
「ならば、今日は離婚したい気持ちを伝えなさい。怖がっていたら、離婚できないよ」
「離婚します」
わたしは自分の決意を口にしました。
クラクシオン様は大きく頷きました。
「では、行こう」
「はい」
意気地なしのわたしに、力をくださったのだと思う。
今日は頑張ろう。
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