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27 離婚をしたい
騎士に護られた国際裁判所は、ヒンヤリとした空気が流れている。
夏の季節なのに、と左右を見ると、白い大理石に囲まれた建物のようだ。
長い廊下を歩いて行くと、クラクシオン様は一つの扉の前で足を止めた。
ずっと繋がれていた手が離れて、クラクシオン様は扉をノックした。
「クラクシオンです」
「どうぞ」
中から声がして、クラクシオン様は扉を開けた。
「さあ、自己紹介から初めて」
耳元でそう囁いた。
背中を押されて、部屋の中に入ると、年配の男性が大きな机の向こう側に座っていた。
「初めまして、わたしはドゥオーモ王国の王太子妃です。
第一夫人ですが、夫であるペリオドス王太子とは夫婦の関係ではありません。
わたしは5歳の時に王宮に連れてこられました。馬車の事故で母様がわたしを庇って儚くなった事は覚えておりますが、その他の記憶は名前以外忘れてしまったのです。
わたしは部屋から出てはいけないと国王陛下の命令で、部屋の中で住んでおりました。
国王陛下は、わたしは病気だからとおっしゃっていましたが、自覚症状は記憶がないことだけです。
わたしには侍女が一人付けられました。
とても寂しくて、その侍女に甘えた事が一度だけございました。そうしたら、わたしは懲罰室に閉じ込められました。
王妃様が、甘えてはなりません。一人で何でもできなければなりません。着替えも掃除も自分でしなさいとおっしゃいました。
そのまま月明かりさえない真っ暗な懲罰室に閉じ込められました。
一晩中泣いていました。5歳の頃の話です。その時気が狂ってしまえばよかったのに……とよく思いました。
翌朝、国王陛下が、助けに来てくださいました。
それから、国王陛下の事は父のように思うようになっておりました。
唯一頼れるのが、国王陛下だったのです。
その国王陛下が部屋から出てはいけませんと言うなら出てはいけないと、わたしは部屋で本を読んだり勉強をしたりして暮らしていました。
わたしにつけられた侍女は、味方ではありません。
時に意地悪な事もされました。部屋に来ない日もありました。お風呂も一人で入っていました。食事も一人です。そんなわたしが人恋しくなっても仕方がない事だと思います。
あるとき、同じ頃合いの男の子が、王宮にいることに気づきました。
それはわたしが10歳の頃です。
わたしはペリオドス様と友達になったのです。隠れて会っていることに王妃様は直ぐに気づかれました。
そうしたら、王妃様はお茶会を開いて、わたしとペリオドス様がお話をする場を作ってくださいましたが、そこには、いつも王妃様がいらっしゃいました。
わたしは自分からお話をすることができなくなりました。
何か物申すと、王妃様が睨むのです。わたしはペリオドス様の言葉に頷くことしかできなくなりました。
そんな生活は一年も続きませんでした。ペリオドス様は、年上の異性に興味を持たれるようになったのです。
お茶会の回数は減っていきました。
わたしは自分の家庭教師にそれとなく聞いてみたのです。家庭教師の先生は「きっと閨の教育がなされたのでしょう」と教えてくださいました。
それから、ペリオドス様はいろんな女性とお付き合いを始めました。
『マリアナは妻で、愛する者は他に作る。真実の愛を探すのだ』と、ペリオドス様は、こんな事を言いました。
それからお茶会は自然消滅しました。わたしが11歳の頃、既に国王陛下と公務によく出掛けておりました。
わたしが13歳の頃、ペリオドス様は、第二夫人になるジュリアン様と運命の出会いをなさったのです。
わたしには記憶がありませんので正式な誕生日は知りません。
国王陛下は、4月を誕生日に決めていたような気がします。
わたしが13歳になった頃、ペリオドス様は、ジュリアン様と結婚をしたくてしかたないようでした。
そこで、大急ぎで、第一夫人であるわたしの挙式が簡略的に行なわれ、その一ヶ月後、ジュリアン様の挙式が大々的に行われました。挙式が行われ、初夜という日にも、ペリオドス様はわたしの元には来られませんでした。
きっと、ジュリアン様の元にいたのだと思います。
その後も、わたしは、執務を行うための機械のようでした。
ペリオドス様も王妃様も誰も手伝ってはくださいません。
王妃様は、わたしを嫌っておいでだったので、文官や宰相の仕事もわたしの元に運ばれておりました。
わたしは寝食もできずに、ひたすら執務と公務を続けておりました。
目の下には絶えず隈ができ、体はふらつき、わたしの体が弱ってきていることに気づきました。
それでも、仕事は回されてきます。
ペリオドス様の印のいるものは、国王陛下にお願いしておりました。
そんな折りに、帝国からクラクシオン様が視察においでになりました。
視察のお礼に帝国に招かれました。宿場町で一泊したときの事でございます。
旅館は庶民が泊まる旅館しかございません。
旅館での出来事です。
食事の後で、わたしが先に大浴場に入ったのです。
その事が気に入らず、ジュリアン様は激怒されました。
わたしは、食事のマナーの悪さや大浴場でのマナーなどを話したのです。
生意気だとおっしゃいました。頬を左右叩かれました。
その夜、隣の部屋から、ペリオドス様とジュリアン様は激しく抱き合っておいででした。あまりにうるさくて、眠れなかったのです。
それにジュリアン様は、わたしの悪口を泣きながら、ペリオドス様に告げられておいででした。
ペリオドス様は、『俺が愛しているのは、ジュリアンだけだ。あの女は形だけの王太子妃だ。気にするな。真実の愛は、俺とジュリアンの元にある』と何度も言っておりました。
あまりに惨めで、辛くなりました。
わたしは5歳から誰からも愛されてはおりません。
真実の愛をお探しになったペリオドス様を愛する気持ちも湧きませんでした。
このまま一生を終えるなら、死んでしまいたい。でも、その前に、離婚をしていただきたいと思っておりました。
翌朝の事です。ペリオドス様に離婚をお願いしました。
ペリオドス様の気持ちは、一晩中、聞こえておりました。
この先に愛は生まれるとは思えませんでした。だから、自由にしていただきたかったのです。
けれど、ペリオドス様はわたしを殴りました。その勢いで廊下の壁に飛ばされ、頭をぶつけて、廊下に倒れました。
その倒れたわたしを足蹴にされたのです。子を孕む大切なお腹を、痣ができるほどの力で蹴られました。
その直後、第二夫人のジュリアン様は腹の上で何度も飛び跳ねました。
私は気分が悪くなり吐きました。
痛くて動けないわたしを置き去りにして、ジュリアン様の侍女もわたしを助ける事はありませんでした。
倒れているわたしを騎士達が見つけて部屋に運ばれました。
わたしは、痛くて起き上がることはできませんでした。
そんなわたしは、布団を敷いた辻馬車に寝かされ、帝国に連れて行かれました。そうして、クラクシオン様に保護されました。
帝国で、わたしは誘拐されたと聞きました。本当の父様はわたしの生存を信じて探し続けてくださっていたようです。
なのに、記憶をなくしたわたしは、本物の父様の前を通っても気づく事もできなかった親不孝者です。
けれど、ドゥオーモ王国と縁を切りたい。
ペリオドス様と離婚をしたい。
もう精神的に限界なのです。
あの方の妻である事が苦痛で、涙が流れます。
死んでしまいたいと思う事もございます。それをクラクシオン様が支えてくださっています。
ドゥオーモ王国では、食事の味もしなかったのに、クラクシオン様と一緒に食事をすると美味しく感じられます。
ギリギリの精神を護ってくださるクラクシオン様が与えてくださった、離婚の場で、どうか、わたしの婚姻の無効を証明してください。お願いします」
わたしは長い自己紹介をした。
クラクシオン様も机の向こう側に座っている男性も真剣に聞いてくれた。
多少端折った所もあるが、離婚についての話なら、これで伝わるはずだ。
「初めまして、私は裁判官のナルコーゼ・アネスステジーアと申します。お話は聞かせていただきました。婚姻無効について、お話を聞く限り可能かと思いますが、一つ問題がございます。万が一、誰かと関係を持った事のある場合は、離婚は不可能となります。自分は純潔だと思われる方のみ検査をして、証明されれば、直ぐに離婚、婚姻無効となります。どうなさいますか?」
「検査を受けます」
「分かりました。直ぐに準備を致します」
ナルコーゼ・アネスステジーア様は、手元にある鈴を鳴らした。
直ぐに扉がノックされる。
「入れ」
「はい」
入ってきたのは、男性だった。
「彼は助手のエモシオン」
わたしはお辞儀をした。
「彼女をエリーゼ様の元にお連れください」
「はい」
「エリーゼはシスターだ。怖くはない。安心して行ってきなさい」
「はい」
わたしはクラクシオン様を見た。
クラクシオン様はわたしに頷いた。
わたしは、エモシオン様について、部屋を出た。
廊下を歩いて、その先の扉をノックした。
「どうぞ」
女性の声がする。
「ナルコーゼ・アネスステジーア様からお願いされました」
「分かりました。下がりなさい」
「はい」
エモシオン様は部屋を出て行った。
部屋の中は大きな机と白いカバーのかかったベッドが一つ置かれていた。
他はソファーセットが置かれているだけの普通の部屋だ。
「私はシスターエリーゼ。ここで、白い結婚の検査をしています」
「はい。わたしはマリアナと申します」
「端的に言うと誰とも結ばれていないか検査をします。少しだけ、触りますが、我慢できますか?」
「はい。初めてなので、お願いします」
「そう、ここに来る女性の皆は、初めてよ。痛くはないわ。少し覗くだけよ」
「はい」
「了解できたら、下履きを脱いで、ベッドに横になってください」
「はい」
シスターエリーゼは、部屋の鍵を掛けると、ベッドの横のカーテンを閉めた。
わたしはカーテンの中に入った。
下履きを脱ぐと、ベッドにあがった。
「できました」
「はい」
カーテンが揺れて、シスターエリーゼがカーテンの中に入ってきた。
「膝を立ててくれるかしら?」
「はい」
わたしは膝を立てた。
「スカートを捲るわ」
「はい」
「怖かったら、目を閉じていなさい。少し触るわよ」
「はい」
シスターエリーゼは温かな手で、誰も触れたことのない場所に触れた。
「確認しました。貴方は間違いなく処女です」
「ありがとうございます」
「もう終わりよ。下履きを履いて、一緒にナルコーゼ・アネスステジーアの元に行きましょう」
「はい」
シスターエリーゼはカーテンの外に出た。
わたしは下履きを履いて。ドレスの裾を直した。
「ありがとうございます」
カーテンの外に出ると、シスターエリーゼは「よく頑張りました」と褒めてくださいました。
「勇気の要ることですよ。勇気を振り絞って、勝ち取った自由に、これから幸が訪れますように」
そう言うと、わたしの為に、祈りを捧げてくださいました。
胸に沁みる言葉に、わたしは、必死に涙を堪えましたが、シスターエリーゼが抱きしめてくださいました。
「今日の勇気を忘れないで、この先、きっと幸福になれますよ」
緊張して震えていた背中を優しく撫でられて、我慢していた涙が頬を流れました。
「さあ、自由を手に入れに行きましょう」
「はい」
わたしはシスターエリーゼに連れられて、元いた部屋につれて行かれた。
ノックの後に、直ぐに「どうぞ」と声が上がる。
「失礼しますわ」
シスターエリーゼは、微笑んで、わたしを前に連れて行った。
「正真正銘の処女よ。早く自由にしてあげてちょうだい」
「シスターエリーゼ感謝します。では、判決を言い渡します。マリアナ・ドゥオーモ。貴方は今日をもって、ペリオドス殿との婚礼はなかった事になりました。従って、ドゥオーモ王国の第一夫人である事は、抹消されます。貴方は今日から、マリアナ・プロートニク公爵令嬢となりました。この先に幸ある事を祈っております。まずは、白い結婚であった証明書です。婚姻無効と書かれております。ドゥオーモ王国には、通知書を国際裁判所から届けます。郵送だと心配ですので、国際裁判所から届けますので安心してください」
「ありがとうございます。あと、母の事ですが、事故の後、目を覚ますと、わたしはノンブル侯爵家で保護されておりました。国王陛下の話ですと、わたしの父はノンブル侯爵だと説明を受けておりました。極秘の資料を見つけて書類を目にしましたが、ノンブル侯爵に多額のお金が払われておりました。わたしは人身売買だと思ったのです。父がわたしを売った。後妻がすぐに訪ねてきましたから。馬車の事故はノンブル侯爵が起こした殺人ではないかと考えて、国王陛下に尋ねたことがございます。国王陛下は偶然が重なった事故だったと。でも、郊外の街道で、馬車はそれほど速く走らないと思います。馬車の車輪も簡単に外れたりしないと思います。ずっとモヤモヤしております。母は殺されたのか、事故だったのか、それを知る事は可能でしょうか?」
「証拠となる物が少なすぎる。皇帝陛下もその事故については調査をしたが、結果は今も出ていない」
「そうですか。皇帝陛下も……ありがとうございます」
「今日は貴方が自由を得た日ですので。その事を喜びましょう。お母様もきっと喜んでいるでしょう。長年にわたって、人質として捕らわれて、大変辛かったでしょう。まだ心は簡単に癒えないと思いますが、貴方を護り、探し続け
た者達がいることを忘れないで、勇気を出して新しい人生を歩き始めてください」
「ありがとうございます」
人質……。
言われてみれば、わたしは人質だったのかもしれない。
ドゥオーモ王国は、帝国を恐れていた。
わたしは公爵家のお嬢様だった。皇帝陛下とは親戚だった。
なんてことでしょう。
目的はわたしだった。
母様は巻き込まれた可能性が高い。
馬車はどちらに向かって走っていたのだ?
逃げようとしていたのなら……。
馬車が襲われた可能性もあるって事なのね。
ふらりとして、背後からクラクシオン様が、わたしの体を支えている。
「マリアナは一話して、十理解する子だ」
「そうか、すまない。そちらの捜査は引き続き行う。ドゥオーモ王国がマリアナ嬢をなくして、どう動くか、暫くは目を離さない方がいい」
「ああ、そのつもりだ。後は、誘拐の処罰について、ドゥオーモ王国の国王陛下への処罰。王妃への処罰。元夫ペリオドス王太子への処罰。第二夫人ジュリアンに対しての処分。ドゥオーモ王国への処分。我が領地の一つにしてもいいが、第二夫人のお子が、10歳だったね。その子に継がせるという手もあるが、罰としてなら全て廃位にすべきか」
「その処分については、審査をするつもりだ。また知らせる」
「では頼む」
クラクシオン様はわたしの肩を抱きながら歩いて行く。
「まずは、おめでとう」
「ありがとうございます」
わたしは晴れて、婚姻無効になり、もうドゥオーモ王国の王太子妃ではなくなった。
よかった。
本当に、よかった。
「クラクシオン様、宮殿に戻りましたら皇帝陛下とお話はできますか?」
「会えるようにしよう」
「婚姻無効になった事をお伝えして、母様の事故の事を少しお話ししたいのです」
「俺も一緒に行こう」
「お願いします」
「マリアナ、もうドゥオーモ王国の王太子妃ではないのだから、ありがとうでいいんだ。俺と婚約をしよう」
「わたしは傷物ですわ」
「傷物ではないと証明されたではないか?俺はマリアナを諦めることができなかった。婚約者候補は探されたが、全て拒絶した。俺の婚約者はマリアナしかいないのだ」
「いいのですか?甘えても」
「俺はマリアナを愛し続けている」
「わたしを愛してくれるのですか?」
「離れていた時間を取り戻したい。マリアナを妻にしたいとずっと思っていた。ずっと探して、必死で救い出そうと思っていた。何年もな。マリアナが俺の前から姿を消したのは、俺が10歳の時だ。あれから11年、忘れたことはなかった。マリアナの誕生日は5月15日だ。忘れたことは俺が教える。俺の誕生日は4月30日だ」
「いいのですか?」
「勿論だ」
「お願いします」
わたしは国際裁判所の明るい廊下で、クラクシオン様に頭を下げた。
「妻になるな?」
「はい」
クラクシオン様は嬉しそうにわたしを抱きしめた。
「やっと手に入れた。愛しているマリアナ」
「わたしもクラクシオン様をお慕いしております」
「いいか、父上に話すぞ」
「はい」
クラクシオン様はわたしを抱きしめて、クルクルと回る。
まるで子供のようだ。
わたしは知らぬ間に笑顔になっていた。
それから、わたしを引き寄せて、額にキスをして、頬にキスをして、最後に、唇にキスをした。
触れるだけの優しいキスに、顔が熱くなる。ドキドキと胸が騒いでいる。
「早めに結婚しよう。もう誰にも引き裂かれないように」
見つめ合う瞳の熱さに、わたしは頷いていた。
「もうクラクシオン様から離れたりしません」
「マリアナ」
最後は優しく抱きしめられた。
安心できるクラクシオン様の胸にしっかり抱きついた。
外から、拍手が聞こえる。
クラクシオン様の近衛騎士達が拍手をしていた。
皆さん、笑顔だ。
「俺の妻になるぞ。皆、よくしてくれ」
「はっ!」
皆さん、敬礼した。
クラクシオン様に手を握られて、国際裁判所から出て、クラクシオン様の近衛騎士達に拍手で見守られながら、馬車に乗った。
国際裁判所の騎士達も拍手をしてくださっていた。
こんなにも温かな気持ちになったのは、初めての事だ。
照れくさくて、それでも、嬉しくて。
今がとても幸せだと思えた。
クラクシオン様を見つめれば、優しく微笑んでくれる。
二人で並んで馬車に座った。
ペリオドス様との婚姻無効の書類を手にして、二人でその書類に目を通す。
何度も見ても、婚姻無効と書かれている。
ドゥオーモ王国の王太子妃ではないと書かれている。
触れあう肌と肌が心地よく。
わたしは、この優しいクラクシオン様が好きだと思う。
愛されたいと思う。
夏の季節なのに、と左右を見ると、白い大理石に囲まれた建物のようだ。
長い廊下を歩いて行くと、クラクシオン様は一つの扉の前で足を止めた。
ずっと繋がれていた手が離れて、クラクシオン様は扉をノックした。
「クラクシオンです」
「どうぞ」
中から声がして、クラクシオン様は扉を開けた。
「さあ、自己紹介から初めて」
耳元でそう囁いた。
背中を押されて、部屋の中に入ると、年配の男性が大きな机の向こう側に座っていた。
「初めまして、わたしはドゥオーモ王国の王太子妃です。
第一夫人ですが、夫であるペリオドス王太子とは夫婦の関係ではありません。
わたしは5歳の時に王宮に連れてこられました。馬車の事故で母様がわたしを庇って儚くなった事は覚えておりますが、その他の記憶は名前以外忘れてしまったのです。
わたしは部屋から出てはいけないと国王陛下の命令で、部屋の中で住んでおりました。
国王陛下は、わたしは病気だからとおっしゃっていましたが、自覚症状は記憶がないことだけです。
わたしには侍女が一人付けられました。
とても寂しくて、その侍女に甘えた事が一度だけございました。そうしたら、わたしは懲罰室に閉じ込められました。
王妃様が、甘えてはなりません。一人で何でもできなければなりません。着替えも掃除も自分でしなさいとおっしゃいました。
そのまま月明かりさえない真っ暗な懲罰室に閉じ込められました。
一晩中泣いていました。5歳の頃の話です。その時気が狂ってしまえばよかったのに……とよく思いました。
翌朝、国王陛下が、助けに来てくださいました。
それから、国王陛下の事は父のように思うようになっておりました。
唯一頼れるのが、国王陛下だったのです。
その国王陛下が部屋から出てはいけませんと言うなら出てはいけないと、わたしは部屋で本を読んだり勉強をしたりして暮らしていました。
わたしにつけられた侍女は、味方ではありません。
時に意地悪な事もされました。部屋に来ない日もありました。お風呂も一人で入っていました。食事も一人です。そんなわたしが人恋しくなっても仕方がない事だと思います。
あるとき、同じ頃合いの男の子が、王宮にいることに気づきました。
それはわたしが10歳の頃です。
わたしはペリオドス様と友達になったのです。隠れて会っていることに王妃様は直ぐに気づかれました。
そうしたら、王妃様はお茶会を開いて、わたしとペリオドス様がお話をする場を作ってくださいましたが、そこには、いつも王妃様がいらっしゃいました。
わたしは自分からお話をすることができなくなりました。
何か物申すと、王妃様が睨むのです。わたしはペリオドス様の言葉に頷くことしかできなくなりました。
そんな生活は一年も続きませんでした。ペリオドス様は、年上の異性に興味を持たれるようになったのです。
お茶会の回数は減っていきました。
わたしは自分の家庭教師にそれとなく聞いてみたのです。家庭教師の先生は「きっと閨の教育がなされたのでしょう」と教えてくださいました。
それから、ペリオドス様はいろんな女性とお付き合いを始めました。
『マリアナは妻で、愛する者は他に作る。真実の愛を探すのだ』と、ペリオドス様は、こんな事を言いました。
それからお茶会は自然消滅しました。わたしが11歳の頃、既に国王陛下と公務によく出掛けておりました。
わたしが13歳の頃、ペリオドス様は、第二夫人になるジュリアン様と運命の出会いをなさったのです。
わたしには記憶がありませんので正式な誕生日は知りません。
国王陛下は、4月を誕生日に決めていたような気がします。
わたしが13歳になった頃、ペリオドス様は、ジュリアン様と結婚をしたくてしかたないようでした。
そこで、大急ぎで、第一夫人であるわたしの挙式が簡略的に行なわれ、その一ヶ月後、ジュリアン様の挙式が大々的に行われました。挙式が行われ、初夜という日にも、ペリオドス様はわたしの元には来られませんでした。
きっと、ジュリアン様の元にいたのだと思います。
その後も、わたしは、執務を行うための機械のようでした。
ペリオドス様も王妃様も誰も手伝ってはくださいません。
王妃様は、わたしを嫌っておいでだったので、文官や宰相の仕事もわたしの元に運ばれておりました。
わたしは寝食もできずに、ひたすら執務と公務を続けておりました。
目の下には絶えず隈ができ、体はふらつき、わたしの体が弱ってきていることに気づきました。
それでも、仕事は回されてきます。
ペリオドス様の印のいるものは、国王陛下にお願いしておりました。
そんな折りに、帝国からクラクシオン様が視察においでになりました。
視察のお礼に帝国に招かれました。宿場町で一泊したときの事でございます。
旅館は庶民が泊まる旅館しかございません。
旅館での出来事です。
食事の後で、わたしが先に大浴場に入ったのです。
その事が気に入らず、ジュリアン様は激怒されました。
わたしは、食事のマナーの悪さや大浴場でのマナーなどを話したのです。
生意気だとおっしゃいました。頬を左右叩かれました。
その夜、隣の部屋から、ペリオドス様とジュリアン様は激しく抱き合っておいででした。あまりにうるさくて、眠れなかったのです。
それにジュリアン様は、わたしの悪口を泣きながら、ペリオドス様に告げられておいででした。
ペリオドス様は、『俺が愛しているのは、ジュリアンだけだ。あの女は形だけの王太子妃だ。気にするな。真実の愛は、俺とジュリアンの元にある』と何度も言っておりました。
あまりに惨めで、辛くなりました。
わたしは5歳から誰からも愛されてはおりません。
真実の愛をお探しになったペリオドス様を愛する気持ちも湧きませんでした。
このまま一生を終えるなら、死んでしまいたい。でも、その前に、離婚をしていただきたいと思っておりました。
翌朝の事です。ペリオドス様に離婚をお願いしました。
ペリオドス様の気持ちは、一晩中、聞こえておりました。
この先に愛は生まれるとは思えませんでした。だから、自由にしていただきたかったのです。
けれど、ペリオドス様はわたしを殴りました。その勢いで廊下の壁に飛ばされ、頭をぶつけて、廊下に倒れました。
その倒れたわたしを足蹴にされたのです。子を孕む大切なお腹を、痣ができるほどの力で蹴られました。
その直後、第二夫人のジュリアン様は腹の上で何度も飛び跳ねました。
私は気分が悪くなり吐きました。
痛くて動けないわたしを置き去りにして、ジュリアン様の侍女もわたしを助ける事はありませんでした。
倒れているわたしを騎士達が見つけて部屋に運ばれました。
わたしは、痛くて起き上がることはできませんでした。
そんなわたしは、布団を敷いた辻馬車に寝かされ、帝国に連れて行かれました。そうして、クラクシオン様に保護されました。
帝国で、わたしは誘拐されたと聞きました。本当の父様はわたしの生存を信じて探し続けてくださっていたようです。
なのに、記憶をなくしたわたしは、本物の父様の前を通っても気づく事もできなかった親不孝者です。
けれど、ドゥオーモ王国と縁を切りたい。
ペリオドス様と離婚をしたい。
もう精神的に限界なのです。
あの方の妻である事が苦痛で、涙が流れます。
死んでしまいたいと思う事もございます。それをクラクシオン様が支えてくださっています。
ドゥオーモ王国では、食事の味もしなかったのに、クラクシオン様と一緒に食事をすると美味しく感じられます。
ギリギリの精神を護ってくださるクラクシオン様が与えてくださった、離婚の場で、どうか、わたしの婚姻の無効を証明してください。お願いします」
わたしは長い自己紹介をした。
クラクシオン様も机の向こう側に座っている男性も真剣に聞いてくれた。
多少端折った所もあるが、離婚についての話なら、これで伝わるはずだ。
「初めまして、私は裁判官のナルコーゼ・アネスステジーアと申します。お話は聞かせていただきました。婚姻無効について、お話を聞く限り可能かと思いますが、一つ問題がございます。万が一、誰かと関係を持った事のある場合は、離婚は不可能となります。自分は純潔だと思われる方のみ検査をして、証明されれば、直ぐに離婚、婚姻無効となります。どうなさいますか?」
「検査を受けます」
「分かりました。直ぐに準備を致します」
ナルコーゼ・アネスステジーア様は、手元にある鈴を鳴らした。
直ぐに扉がノックされる。
「入れ」
「はい」
入ってきたのは、男性だった。
「彼は助手のエモシオン」
わたしはお辞儀をした。
「彼女をエリーゼ様の元にお連れください」
「はい」
「エリーゼはシスターだ。怖くはない。安心して行ってきなさい」
「はい」
わたしはクラクシオン様を見た。
クラクシオン様はわたしに頷いた。
わたしは、エモシオン様について、部屋を出た。
廊下を歩いて、その先の扉をノックした。
「どうぞ」
女性の声がする。
「ナルコーゼ・アネスステジーア様からお願いされました」
「分かりました。下がりなさい」
「はい」
エモシオン様は部屋を出て行った。
部屋の中は大きな机と白いカバーのかかったベッドが一つ置かれていた。
他はソファーセットが置かれているだけの普通の部屋だ。
「私はシスターエリーゼ。ここで、白い結婚の検査をしています」
「はい。わたしはマリアナと申します」
「端的に言うと誰とも結ばれていないか検査をします。少しだけ、触りますが、我慢できますか?」
「はい。初めてなので、お願いします」
「そう、ここに来る女性の皆は、初めてよ。痛くはないわ。少し覗くだけよ」
「はい」
「了解できたら、下履きを脱いで、ベッドに横になってください」
「はい」
シスターエリーゼは、部屋の鍵を掛けると、ベッドの横のカーテンを閉めた。
わたしはカーテンの中に入った。
下履きを脱ぐと、ベッドにあがった。
「できました」
「はい」
カーテンが揺れて、シスターエリーゼがカーテンの中に入ってきた。
「膝を立ててくれるかしら?」
「はい」
わたしは膝を立てた。
「スカートを捲るわ」
「はい」
「怖かったら、目を閉じていなさい。少し触るわよ」
「はい」
シスターエリーゼは温かな手で、誰も触れたことのない場所に触れた。
「確認しました。貴方は間違いなく処女です」
「ありがとうございます」
「もう終わりよ。下履きを履いて、一緒にナルコーゼ・アネスステジーアの元に行きましょう」
「はい」
シスターエリーゼはカーテンの外に出た。
わたしは下履きを履いて。ドレスの裾を直した。
「ありがとうございます」
カーテンの外に出ると、シスターエリーゼは「よく頑張りました」と褒めてくださいました。
「勇気の要ることですよ。勇気を振り絞って、勝ち取った自由に、これから幸が訪れますように」
そう言うと、わたしの為に、祈りを捧げてくださいました。
胸に沁みる言葉に、わたしは、必死に涙を堪えましたが、シスターエリーゼが抱きしめてくださいました。
「今日の勇気を忘れないで、この先、きっと幸福になれますよ」
緊張して震えていた背中を優しく撫でられて、我慢していた涙が頬を流れました。
「さあ、自由を手に入れに行きましょう」
「はい」
わたしはシスターエリーゼに連れられて、元いた部屋につれて行かれた。
ノックの後に、直ぐに「どうぞ」と声が上がる。
「失礼しますわ」
シスターエリーゼは、微笑んで、わたしを前に連れて行った。
「正真正銘の処女よ。早く自由にしてあげてちょうだい」
「シスターエリーゼ感謝します。では、判決を言い渡します。マリアナ・ドゥオーモ。貴方は今日をもって、ペリオドス殿との婚礼はなかった事になりました。従って、ドゥオーモ王国の第一夫人である事は、抹消されます。貴方は今日から、マリアナ・プロートニク公爵令嬢となりました。この先に幸ある事を祈っております。まずは、白い結婚であった証明書です。婚姻無効と書かれております。ドゥオーモ王国には、通知書を国際裁判所から届けます。郵送だと心配ですので、国際裁判所から届けますので安心してください」
「ありがとうございます。あと、母の事ですが、事故の後、目を覚ますと、わたしはノンブル侯爵家で保護されておりました。国王陛下の話ですと、わたしの父はノンブル侯爵だと説明を受けておりました。極秘の資料を見つけて書類を目にしましたが、ノンブル侯爵に多額のお金が払われておりました。わたしは人身売買だと思ったのです。父がわたしを売った。後妻がすぐに訪ねてきましたから。馬車の事故はノンブル侯爵が起こした殺人ではないかと考えて、国王陛下に尋ねたことがございます。国王陛下は偶然が重なった事故だったと。でも、郊外の街道で、馬車はそれほど速く走らないと思います。馬車の車輪も簡単に外れたりしないと思います。ずっとモヤモヤしております。母は殺されたのか、事故だったのか、それを知る事は可能でしょうか?」
「証拠となる物が少なすぎる。皇帝陛下もその事故については調査をしたが、結果は今も出ていない」
「そうですか。皇帝陛下も……ありがとうございます」
「今日は貴方が自由を得た日ですので。その事を喜びましょう。お母様もきっと喜んでいるでしょう。長年にわたって、人質として捕らわれて、大変辛かったでしょう。まだ心は簡単に癒えないと思いますが、貴方を護り、探し続け
た者達がいることを忘れないで、勇気を出して新しい人生を歩き始めてください」
「ありがとうございます」
人質……。
言われてみれば、わたしは人質だったのかもしれない。
ドゥオーモ王国は、帝国を恐れていた。
わたしは公爵家のお嬢様だった。皇帝陛下とは親戚だった。
なんてことでしょう。
目的はわたしだった。
母様は巻き込まれた可能性が高い。
馬車はどちらに向かって走っていたのだ?
逃げようとしていたのなら……。
馬車が襲われた可能性もあるって事なのね。
ふらりとして、背後からクラクシオン様が、わたしの体を支えている。
「マリアナは一話して、十理解する子だ」
「そうか、すまない。そちらの捜査は引き続き行う。ドゥオーモ王国がマリアナ嬢をなくして、どう動くか、暫くは目を離さない方がいい」
「ああ、そのつもりだ。後は、誘拐の処罰について、ドゥオーモ王国の国王陛下への処罰。王妃への処罰。元夫ペリオドス王太子への処罰。第二夫人ジュリアンに対しての処分。ドゥオーモ王国への処分。我が領地の一つにしてもいいが、第二夫人のお子が、10歳だったね。その子に継がせるという手もあるが、罰としてなら全て廃位にすべきか」
「その処分については、審査をするつもりだ。また知らせる」
「では頼む」
クラクシオン様はわたしの肩を抱きながら歩いて行く。
「まずは、おめでとう」
「ありがとうございます」
わたしは晴れて、婚姻無効になり、もうドゥオーモ王国の王太子妃ではなくなった。
よかった。
本当に、よかった。
「クラクシオン様、宮殿に戻りましたら皇帝陛下とお話はできますか?」
「会えるようにしよう」
「婚姻無効になった事をお伝えして、母様の事故の事を少しお話ししたいのです」
「俺も一緒に行こう」
「お願いします」
「マリアナ、もうドゥオーモ王国の王太子妃ではないのだから、ありがとうでいいんだ。俺と婚約をしよう」
「わたしは傷物ですわ」
「傷物ではないと証明されたではないか?俺はマリアナを諦めることができなかった。婚約者候補は探されたが、全て拒絶した。俺の婚約者はマリアナしかいないのだ」
「いいのですか?甘えても」
「俺はマリアナを愛し続けている」
「わたしを愛してくれるのですか?」
「離れていた時間を取り戻したい。マリアナを妻にしたいとずっと思っていた。ずっと探して、必死で救い出そうと思っていた。何年もな。マリアナが俺の前から姿を消したのは、俺が10歳の時だ。あれから11年、忘れたことはなかった。マリアナの誕生日は5月15日だ。忘れたことは俺が教える。俺の誕生日は4月30日だ」
「いいのですか?」
「勿論だ」
「お願いします」
わたしは国際裁判所の明るい廊下で、クラクシオン様に頭を下げた。
「妻になるな?」
「はい」
クラクシオン様は嬉しそうにわたしを抱きしめた。
「やっと手に入れた。愛しているマリアナ」
「わたしもクラクシオン様をお慕いしております」
「いいか、父上に話すぞ」
「はい」
クラクシオン様はわたしを抱きしめて、クルクルと回る。
まるで子供のようだ。
わたしは知らぬ間に笑顔になっていた。
それから、わたしを引き寄せて、額にキスをして、頬にキスをして、最後に、唇にキスをした。
触れるだけの優しいキスに、顔が熱くなる。ドキドキと胸が騒いでいる。
「早めに結婚しよう。もう誰にも引き裂かれないように」
見つめ合う瞳の熱さに、わたしは頷いていた。
「もうクラクシオン様から離れたりしません」
「マリアナ」
最後は優しく抱きしめられた。
安心できるクラクシオン様の胸にしっかり抱きついた。
外から、拍手が聞こえる。
クラクシオン様の近衛騎士達が拍手をしていた。
皆さん、笑顔だ。
「俺の妻になるぞ。皆、よくしてくれ」
「はっ!」
皆さん、敬礼した。
クラクシオン様に手を握られて、国際裁判所から出て、クラクシオン様の近衛騎士達に拍手で見守られながら、馬車に乗った。
国際裁判所の騎士達も拍手をしてくださっていた。
こんなにも温かな気持ちになったのは、初めての事だ。
照れくさくて、それでも、嬉しくて。
今がとても幸せだと思えた。
クラクシオン様を見つめれば、優しく微笑んでくれる。
二人で並んで馬車に座った。
ペリオドス様との婚姻無効の書類を手にして、二人でその書類に目を通す。
何度も見ても、婚姻無効と書かれている。
ドゥオーモ王国の王太子妃ではないと書かれている。
触れあう肌と肌が心地よく。
わたしは、この優しいクラクシオン様が好きだと思う。
愛されたいと思う。
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