《完結》愛されたいわたしは幸せになりたい

綾月百花   

文字の大きさ
33 / 71

33    ジュリアン

 リオスと出会ったのは、私が13歳の頃だった。

 質素なドレスしかなくて、恥ずかしく思いながら出席した、王家主催の舞踏会でした。

 私は男爵家の三女で、ドレスはお姉様達のお下がりなので、色褪せて型崩れもしていたのでした。

 それを恥ずかしく思いながらも、華やかな舞踏会には興味がありました。

 ドゥオーモ王国の淑女は13歳で社交界デビューをします。

 長兄が私をエスコートしてくださいました。

 我が家には、兄姉はたくさんおりました。

 長兄に長姉、中兄、中姉、末兄に続いて、私がおりました。

 6人兄姉の末っ子なのです。

 父は農家をしていました。兄姉の手は多いので、農地に井戸を掘ったのです。そうしたら、水が湧き出しました。

 井戸でよかったのに、池ができました。水が涌く池です。池から水が溢れるほど出てしまって、家も水没する始末。父が言うには、上手く水脈に当たったそうです。王家に知らせると、そのまま川を造って欲しいと要望されました。

 当時、私は11歳の頃でした。

 王家から、私と同じくらいの女の子が来て、指示を出しています。

 近所の農家達とも協力して、湧き出た池をせき止めて、川を造り始めました。

 私も土を掘り、川を造って行きました。

 あの女の子は誰だろう?

 最初はそう思いました。

 その女の子は国王陛下とお話をしながら、的確な指示を出していきます。

 最終的に、川を作り、その川に面した場所にまた池を作り、川にはたくさんの池ができました。

 その池を川魚の養殖場にしたのです。

 水脈を発見したご褒美に、我が家は国王陛下から男爵の位を戴いたのです。

 そのお陰で、水没した家は、高台に移動させて、今までより立派な家を建てることができました。

 国王陛下の指示で、父は水脈の池の管理、川の管理、川に増設された池の管理を受け持ちました。それに付随する形で、川魚の養殖場の管理も受け持っております。

 けれど、私は魚が大の苦手で、食事に出される魚も食べることができないほど、魚が大っ嫌いでした。

 泳ぐ姿も魚のぬめりも、全部、嫌いなのです。

 どうして、お父様は池など掘り当ててしまったのだろうと日々嘆いておりましたが、男爵家になった我が家には、王家からパーティーのお誘いの連絡が来るようになりました。

 お茶会などという女性が主催の催し物もあるようです。

 お母様やお姉様は、それはそれは楽しそうにして出掛けていきます。

 それを羨ましく思いながら、私はいつも留守番をしておりました。

 13歳の社交界デビューに長兄にエスコートされて、初めて社交界の場に出た私は、初めて人前でダンスを踊ったのです。

 毎日、家のリビングで練習をした甲斐がありました。

 ファーストダンスの後に、素敵な紳士にダンスを申し込まれました。

 その素敵な男性が、ドゥオーモ王国の王太子のペリオドス王太子殿下だったのです。

 ペリオドス王太子殿下は、私の淡いピンクの髪も赤い瞳も気に入り、しきりに可愛いとおっしゃってくださいました。

 ダンスもたくさん踊りました。

 その日のダンスの終わりに、ペリオドス王太子殿下とデートの約束をしました。

 ペリオドス王太子殿下は、私に『運命の相手かもしれない』と囁きました。

 それから、ペリオドス王太子殿下とお付き合いを始めたのです。

 両親も兄弟達も大喜びをしました。

 魚の嫌いな私の前には、魚以外の料理が並ぶようになりました。

「王家に嫁ぐ事になったら、恥をかきますからね」とお母様が、テーブルマナーを教えてくださいました。


 ペリオドス王太子殿下は私に新しいドレスをプレゼントしてくださいました。

 そのドレスは今まで着たドレスの中で一番美しい物でした。


「やはり似合う。可愛いよ」


 ペリオドス王太子殿下は、いつも、私を可愛いと言ってくださいます。

 デートは頻繁に行われるようになりました。

 今まで食べたことのない。クッキーやケーキもたくさん食べさせてくれます。

 プレゼントも頻繁にくださいました。

 見たこともない宝石まで、高価な物なのに、贈ってくれたのです。

 そして、王宮に泊まりにおいでと誘われました。

 初めてのお泊まりで、私はペリオドス王太子殿下と結ばれました。

「結婚は早くしよう」と言われました。

 そして、何より衝撃的だったのは、私は第一夫人になれない事でした。

「真実の愛はジュリアンの元にある。だが、ジュリアンは第二夫人なのだ」と悲しげに言われました。

 第一夫人は国王陛下と一緒に河川工事の指示を出していたマリアナという女性に決められているそうです。

「マリアナに愛情はないけれど、これは父が決めたことだ」と告げられました。

 愛情がないのなら、愛情がある私が王太子妃でもいいと思いましたが、それだけはできない約束だと言われました。

 第二夫人に迎えても、私をいつも一番に考えてくれると約束してくださいました。

 交際を始めて三ヶ月過ぎた頃に、私の月に物が来ないことがありました。

 まだ13歳なのに、もしかしたら、赤ちゃんができてしまったかもしれないと告げました。

 ペリオドス王太子殿下は大喜びをしましたが、結婚の準備があります。

 先に私と結婚するわけにいかないようです。私は第二夫人なので、先に第一夫人と結婚しなければならないと焦っておいででした。

 マリアナとの結婚式は簡略的な物ですませてしまい、ドレスもなかったそうです。

 マリアナとの初夜の日も、わたしと一緒にいてくださいました。

 そうして、私の結婚式は大々的に行われました。

 けれど、どうやら妊娠はしていなかったようで、月の物は遅れてやって来ました。

 その事は、ペリオドス王太子殿下は残念がっていましたが、結婚できる喜びの方が大きかったようです。

 素敵なウエディングドレスを身につけて、パレードまでしてくださいました。

 本当に、愛されているんだと思いました。

 私は、その頃からペリオドス王太子殿下のことを愛称で呼ぶようになっておりました。

 リオス。

 特別な者しか呼ぶことが許されない愛称です。

 マリアナには呼ばせてはいないと言っておりました。

 リオスは、正真正銘、私の理想の旦那様です。

 第二夫人ですが、一番に愛されているのは私です。

 結婚してからは、リオスはマリアナに仕事を全て押しつけて、私が街に行きたいと強請ると、連れて行ってくれます。

 仕事より私を優先して、毎日、愛してくれます。

 マリアナの予算も私の物にしてくれて、ドレスや宝石を買ってくれます。

 マリアナは執務に追われて、食事をする時間も眠る時間もないようです。

 もともと痩せていたのに、どんどん痩せていき、いつも目の下に隈を作っています。

 最初は可愛い女の子なので、リオスが心変わりをするのではないかと心配していましたが、とっても見窄らしい姿になっていきました。

 心配するだけ無駄だと思えるほどです。

 リオスの愛は、いつも私に向けられています。

 帝国から客人が来たときも、私だけ留守番をさせられるのかと思っていましたが、リオスは、私も一緒に連れていってくれました。

 帝国に行くときも、私を優先してくださいました。

 マリアナと同じ馬車に乗るのは嫌でしたけれど、警備の都合上、どうしても同じ馬車に乗らなくてはならないとリオスが言いました。

 我が儘ばかりを言っていると、置いて行かれそうでしたので了解しました。

 だけど、宿泊地で、マリアナが先に大浴場に入っているところを見たら、無性に腹が立ちました。

 リオスに愛されているのは私なのに、マリアナは第一夫人だから、自分が先に入る権利があると言ったのです。

 あまり腹が立ったので、マリアナの頬を叩いてやりました。

 一回で怒りが収まらなかったので、もう一発、思いっきり手を振り上げて、頬を叩きました。

 いい音がしました。

 マリアナの頬が赤くなっているのが分かりました。

 もう一発叩いてやろうとしたのですが、マリアナは逃げていきました。

 ざま~ですわね。

 いい気になって、愛されてもいないのに、生意気な説教などするから、叩かれるのです。

 逃げ出した背中を見送り、私はこれから、何か言われたら叩いてやろうと思いましたわ。

 だって、逃げ出したのよ。

 何も言わずに。

 私の勝ちですわ。

 その夜、大袈裟にマリアナが酷いことを言ったと泣いて見せたら、リオスは私を優しく慰めてくださいました。

『俺が愛しているのは、ジュリアンだけだ。あの女は形だけの王太子妃だ。気にするな。真実の愛は、俺とジュリアンの元にある』と……。

 リオスの心は、いつも私の元にあるのです。

 愛されないマリアナは、仕事だけをしていればいいのですわ。

 せいぜい稼いで、私のドレスを買うための資金を多くしてくれればいいのよ。

 夜中中、愛された私は、満たされていました。

 その上、リオスは朝食前に、マリアナを見つけると、その頬をグーで殴って、勢いで飛ばされたマリアナは壁に頭をぶつけて、廊下に倒れたのよ。

 その倒れたマリアナのお腹を、リオスは思いっきり蹴ったのです。

 マリアナは、相当痛かったのか、吐いたわね。

 汚かったけれど、いい物を見たわ。

 益々、スッキリしたわ。

 女性にとって、お腹は子を孕むための大切な場所ですもの。

 そのお腹を思いっきり蹴ったって事は、マリアナの子はいらないということですもの。

 私は嬉しくって、倒れているマリアナのお腹の上で、ピョンピョンと跳ねてやったのよ。だって、マリアナの子は要らないんですもの。

 子供ができない体になったって、いいって言うことですものね。

 マリアナは苦しそうに、吐いていたけれど、なんだかいい気味でしたわ。

 同じ馬車に乗るのが嫌だと騒ぐと、騎士達は辻馬車を借りてきたわ。

 帝国に行くのも、マリアナは辻馬車に乗せられていったのよ。

 王太子妃とは名ばかりにお飾りだと誰もが思うでしょうね。

 ドゥオーモ王国の騎士達は、頬を腫らして、明らかに殴られた痕が残っているのに、リオスが言ったように、病気として扱ったのよ。

 リオス、すごく威厳があるのね、とても格好よかったわ。

 帝国に到着してから、マリアナは寝込んでいるようだ。

 姿も見せない。

 殴られたショックが強いのか、はたまた腹を蹴られて、具合が悪くなったのか?

 どうでもいいけど。

 リオスは私にドレスを買ってくれたし。

 宝石は次の機会にと言われたけど、確かに帰りに宿代もないのは、よくないわね。

 野宿なんてしたくないし、リオスの言うことは分かった。

 私も我が儘を言いすぎたわ。

 それにしても、帝国の料理が焼き魚ばかりなのは、帝国が焼き魚ブームでも起こしているのだろうか?

 食事の時間は最悪だわ。

 嫌いな焼き魚と虫みたいな黒胡麻は勘弁して欲しいわ。

 野菜もあまり好きではないのよ。

 目の前に飾ってあるフルーツが食べたいわね。

 ドゥオーモ王国は、フルーツの栽培はあまりしていない。

 果実酒は美味しいけど、その後、意識が飛ぶのよ。

 それほど美味しいからかしらね?

 それにしても、朝、リオスと喧嘩をして、リオスの姿が見当たらないのだけど、どこに行ったのかしら?

 可愛い私が側にいないと寂しいんじゃないかと心配なの。
感想 115

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

愛を知った私は、もう二度と跪きません

阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。 家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。 「呪われた男にでも喰われてこい」 そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。 彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。 その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。 「エカテリーナ様、どうかお助けを!」 かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。

王太子に「戦友としか思えない」と言われたので、婚約を解消しました

明衣令央
恋愛
婚約者である王太子ヘンリーから「君のことは戦友としか思えない」と告げられた、公爵令嬢アリスティア。 十年以上の王妃教育を積んできた彼女は、静かに婚約解消を受け入れる。 一年後、幸せな結婚を迎えた彼女にとって、ヘンリーのその後は――もうどうでもいいことだった。

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

【優秀賞受賞】賭けから始まった偽りの結婚~愛する旦那様を解放したのになぜか辺境まで押しかけて来て愛息子ごと溺愛されてます~【完結】

Tubling
恋愛
無事完結しました^^ 読んでくださった皆様に感謝です! この度、こちらの作品がアルファポリス第19回恋愛小説大賞にて「優秀賞」を受賞いたしました! ありがとうございます!!<(_ _)> ルシェンテ王国の末の王女カタリナは、姉たちから凄惨な嫌がらせをされる日々に王女とは名ばかりの惨めな生活を送っていた。 両親は自分に無関心、兄にも煙たがられ、いっそ透明人間になれたらと思う日々。 そんな中、隣国ジグマリン王国の建国祭に国賓として訪れた際、「鬼神」と恐れられている騎士公爵レブランドと出会う。 しかし鬼とは程遠い公爵の素顔に触れたカタリナは、彼に惹かれていく。 やがて想い人から縁談の話が舞い込み、夢見心地で嫁いでいったカタリナを待っていたのは悲しい現実で…? 旦那様の為に邸を去ったけれど、お腹には天使が―――― 息子の為に生きよう。 そう決意して生活する私と息子のもとへ、あの人がやってくるなんて。 再会した彼には絶対に帰らないと伝えたはずなのに、2人とも連れて帰ると言ってきかないんですけど? 私が邪魔者だったはずなのに、なんだか彼の態度がおかしくて… 愛された事のない王女がただ一つの宝物(息子)を授かり、愛し愛される喜びを知るロマンスファンタジーです。 ●近世ヨーロッパ風ですが空想のお話です。史実ではありませんので近世ヨーロッパはこうだというこだわりがある方はブラウザバックをお願いします。 ●本編は10万字ほどで完結予定。 ●最初こそシリアスですが、だんだんとほのぼのになっていきます^^ ●最後はハッピーエンドです。

【奨励賞】初恋のその先で、私は母になる

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。 王宮で12年働き、気づけば28歳。 恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。 優しく守ろうとする彼。 けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。 揺れる想いの中で、彼女が選んだのは―― 自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。 これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。 ※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。