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39 ノンブル侯爵の裁判
国際裁判所の大きな部屋の中には、原告を皇帝陛下として、被告はノンブル侯爵が座っていた。裁判官が壇上の上に座っている。
「ノンブル侯爵、大金がドゥオーモ王国から支払われた証拠は、こちらに書面として残されております。この大金は、なんの金ですか?」
「そのお金は、我が侯爵家が興した事業が、国の為になったと証明され、謝礼として受け取りました」
「どんな事業でしょうか?」
「だから、人助けになったのです」
ノンブル侯爵は何度も続く質問に顔色を悪くして、話しているが、毎度、話が変わる。
嘘を言っているのは確かだ。
嘘のつき方も稚拙で、すぐに翻るだろう。
原告側から裁判官に一枚の書類が提出されて、裁判官はそれを読み上げる。
「11年前、ノンブル侯爵家の妻、ルル夫人は難病に罹り、財政難だった。興していた事業は傾き、多額の借金の為に、爵位返上も考えていた」
裁判官は顔を上げて、「正しいですか?」とノンブル侯爵に尋ねた。
ノンブル侯爵の顔色は白を通り越して、青白くなっている。
「5月28日ルル夫人、病状悪化の為に、主治医であるカナール・プロートニク公爵夫人を呼びに行かせる。夜通し馬で走り帝国のプロートニク公爵家に到着し、カナール女史を呼び寄せた。当時、5歳のマリアナは、医師見習いとして、珍しい難病のルル夫人の様子を継続的に観察していた。病状悪化と知りマリアナもカナール女史と共に、ドゥオーモ王国のノンブル侯爵家を尋ねた。帝国からドゥオーモ王国まで、夜通しで行けば、翌日に到着する。5月30日、カナール女史はルル夫人を診察した。点滴治療と投薬にて改善した為に、カナール女史は娘、マリアナと共に、帰路につくが、そこで、ノンブル侯爵は何かしませんでしたか?」
「何もしていません」
「そうですか?ノンブル侯爵家から押収した書類によりますと、ドゥオーモ王国の国王陛下から直々に手紙が届いたとありますが。内容を読みましょうか?」
「……」
ノンブル侯爵は堅く口を閉じて、目を見開いている。
「『馬車の車輪に細工をして、娘を手に入れよ』こんなメモが出てきましたが、どういうことでしょうか?」
「知りません」
「一つ確認があります」
「はい」
「カナール・プロートニク公爵夫人が公爵家の人間だと認識できていましたね?」
「はい」
「その娘も同じく公爵家の令嬢だと認識できていましたね」
「はい」
「帝国で公爵家と言うことは、皇帝陛下の姻戚だと知らぬ者はいないと思いますが、知っていましたね?」
「……」
「黙秘ですか?」
「……」
「黙秘は認めたと同義と最初の宣誓で伝えましたね」
「知っていましたね?」
「はい」
「宜しい」
「……」
「当時の事故現場近くにいた者の話が聞けました。ものすごい速さで走る馬車の後ろをノンブル侯爵家の馬車が追いかけていたと……当時、かなり有名な話になっていたようですね」
「知りません」
「追いかけられていた馬車は、車輪が外れて横転したとか。事故の状況を見た物は多くいたようです」
数枚の紙を提出して、その紙をノンブル侯爵に見せる。
「この紙には、この事故を見たと言う者の署名がされております。事故現場での話では、馬車は横転して、形も崩れていたと。馬車の中から、血が流れていたと、かなり凄惨な事故現場だったようですね。人々は救出を行った。馬車の中には、女性に抱きかかえられた少女が生存していたと。ノンブル侯爵が我が子であると皆の前で発言したと。女性に誘拐されていたので、追いかけたと証言していたと覚えている者が多くいた」
ノンブル侯爵は頭を抱えた。
「これ以上、罪を増やしたくなければ、正直に話しなさい」
「確かに私はそう言いました。カナール女史は亡くなっていましたから、好都合だったのです。子供は意識を失っていたが、まだ生きていた。国王陛下から無事な姿で誘拐するようにと言われていたのに、怪我をさせてしまったので、私は焦っていました。我が家に連れて行くと同時に、町医者を呼んだのです。子供、……少女は頭に酷い裂傷を起こしていましたので、救出と同時に圧迫し止血しておりました。医師到着後に止血作業と怪我の縫合をしてもらいました。医師には国王陛下が口止め料として大金を積んで渡しました。その医師は、処置だけして、ドゥオーモ王国からいなくなりました。我が家のメイドが、病院から持ち出した消毒液を使って、頭の傷の消毒を行いました。少女が目を覚ましたのは、5日後だったと思います。少女は自分の名前と母親が死んだ事しか覚えていませんでした。私の事は父親だと思ったようです。私は病気の妻がいましたが、浮気をして、今の妻と子供がおりました。愛人が何か手伝えることがあればと訪ねてきた所を少女に見られ、どうやら母親を裏切ったと勘違いをされてしまいました。意識が戻った事を国王陛下にお伝えして、少女は王宮に連れて行かれました。王宮から謝礼として、大金を受け取り、そのお金を使い、事業の立て直しを行ったのです。妻は数日後に亡くなりましたので、愛人と結婚をしました」
「奥様の難病を治療して戴きながら、カナール女史を殺したのは、ノンブル侯爵ですね?」
「馬車に細工をして、馬車で追いかけただけです」
「事故現場は、カーブがあり、下り坂だった。普通ならば、その場所ではスピードは落とされますが、カナール女史の乗った馬車はスピードを落とさずに、そのカーブに突入した。突入した理由は追われていたからですね。追いかければ、その場所で事故が起きると、貴方は分かっていた」
「はい」
「思惑通り事故が起きて、馬車が横転し、カナール女史が亡くなったのですから、貴方が殺したと同じですね?」
裁判官、ナルコーゼ・アネスステジーアは静かな声で、ノンブル侯爵に尋ねた。
ノンブル侯爵は「はい」と静かな声で、返事をした。
「では、ノンブル侯爵に判決を言い渡す。ノンブル侯爵は爵位取り消しの上に、極刑。またその家族は、この罪を知っていながら長年に渡り隠していた。よって、ノンブル侯爵夫人、リーヴ夫人は、帝国最北端にある修道院にて永久に勤めるように。テルマ令嬢は、東の修道院にて、15年勤めるように。コリエンテ・ノンブル侯爵子息は西の炭鉱にて、15年勤めるように」
「どうもすみませんでした」
ノンブル侯爵は深く頭を下げ、家族を振り返ると、頭を下げた。
その妻も子供達も涙を流していた。
「これにて閉廷致します」
わたしは、母親を殺したノンブル侯爵の顔を睨み付けた。
クラクシオン様が怒りで震えているわたしの手を握ってくれている。
クラクシオン様はわたしを裁判所に連れてきてくれた。
兄様も傍聴しに来たが、互いに会話はなかった。互いに離れた場所に座った。
ノンブル侯爵が法廷から連れ出されるとき、思わず、「母様を返して」と叫んでいた。
ノンブル侯爵はわたしを見て、深く頭を下げただけだった。
謝罪はなかった。
その家族達は、一家バラバラにされて、子供達は15年の刑が言い渡された。子供に対しては辛い刑だと思う。奥様は、知っていただろうが、子供が知っていたかは分からない。
明日は、国王陛下の裁判が始まる。
「ノンブル侯爵、大金がドゥオーモ王国から支払われた証拠は、こちらに書面として残されております。この大金は、なんの金ですか?」
「そのお金は、我が侯爵家が興した事業が、国の為になったと証明され、謝礼として受け取りました」
「どんな事業でしょうか?」
「だから、人助けになったのです」
ノンブル侯爵は何度も続く質問に顔色を悪くして、話しているが、毎度、話が変わる。
嘘を言っているのは確かだ。
嘘のつき方も稚拙で、すぐに翻るだろう。
原告側から裁判官に一枚の書類が提出されて、裁判官はそれを読み上げる。
「11年前、ノンブル侯爵家の妻、ルル夫人は難病に罹り、財政難だった。興していた事業は傾き、多額の借金の為に、爵位返上も考えていた」
裁判官は顔を上げて、「正しいですか?」とノンブル侯爵に尋ねた。
ノンブル侯爵の顔色は白を通り越して、青白くなっている。
「5月28日ルル夫人、病状悪化の為に、主治医であるカナール・プロートニク公爵夫人を呼びに行かせる。夜通し馬で走り帝国のプロートニク公爵家に到着し、カナール女史を呼び寄せた。当時、5歳のマリアナは、医師見習いとして、珍しい難病のルル夫人の様子を継続的に観察していた。病状悪化と知りマリアナもカナール女史と共に、ドゥオーモ王国のノンブル侯爵家を尋ねた。帝国からドゥオーモ王国まで、夜通しで行けば、翌日に到着する。5月30日、カナール女史はルル夫人を診察した。点滴治療と投薬にて改善した為に、カナール女史は娘、マリアナと共に、帰路につくが、そこで、ノンブル侯爵は何かしませんでしたか?」
「何もしていません」
「そうですか?ノンブル侯爵家から押収した書類によりますと、ドゥオーモ王国の国王陛下から直々に手紙が届いたとありますが。内容を読みましょうか?」
「……」
ノンブル侯爵は堅く口を閉じて、目を見開いている。
「『馬車の車輪に細工をして、娘を手に入れよ』こんなメモが出てきましたが、どういうことでしょうか?」
「知りません」
「一つ確認があります」
「はい」
「カナール・プロートニク公爵夫人が公爵家の人間だと認識できていましたね?」
「はい」
「その娘も同じく公爵家の令嬢だと認識できていましたね」
「はい」
「帝国で公爵家と言うことは、皇帝陛下の姻戚だと知らぬ者はいないと思いますが、知っていましたね?」
「……」
「黙秘ですか?」
「……」
「黙秘は認めたと同義と最初の宣誓で伝えましたね」
「知っていましたね?」
「はい」
「宜しい」
「……」
「当時の事故現場近くにいた者の話が聞けました。ものすごい速さで走る馬車の後ろをノンブル侯爵家の馬車が追いかけていたと……当時、かなり有名な話になっていたようですね」
「知りません」
「追いかけられていた馬車は、車輪が外れて横転したとか。事故の状況を見た物は多くいたようです」
数枚の紙を提出して、その紙をノンブル侯爵に見せる。
「この紙には、この事故を見たと言う者の署名がされております。事故現場での話では、馬車は横転して、形も崩れていたと。馬車の中から、血が流れていたと、かなり凄惨な事故現場だったようですね。人々は救出を行った。馬車の中には、女性に抱きかかえられた少女が生存していたと。ノンブル侯爵が我が子であると皆の前で発言したと。女性に誘拐されていたので、追いかけたと証言していたと覚えている者が多くいた」
ノンブル侯爵は頭を抱えた。
「これ以上、罪を増やしたくなければ、正直に話しなさい」
「確かに私はそう言いました。カナール女史は亡くなっていましたから、好都合だったのです。子供は意識を失っていたが、まだ生きていた。国王陛下から無事な姿で誘拐するようにと言われていたのに、怪我をさせてしまったので、私は焦っていました。我が家に連れて行くと同時に、町医者を呼んだのです。子供、……少女は頭に酷い裂傷を起こしていましたので、救出と同時に圧迫し止血しておりました。医師到着後に止血作業と怪我の縫合をしてもらいました。医師には国王陛下が口止め料として大金を積んで渡しました。その医師は、処置だけして、ドゥオーモ王国からいなくなりました。我が家のメイドが、病院から持ち出した消毒液を使って、頭の傷の消毒を行いました。少女が目を覚ましたのは、5日後だったと思います。少女は自分の名前と母親が死んだ事しか覚えていませんでした。私の事は父親だと思ったようです。私は病気の妻がいましたが、浮気をして、今の妻と子供がおりました。愛人が何か手伝えることがあればと訪ねてきた所を少女に見られ、どうやら母親を裏切ったと勘違いをされてしまいました。意識が戻った事を国王陛下にお伝えして、少女は王宮に連れて行かれました。王宮から謝礼として、大金を受け取り、そのお金を使い、事業の立て直しを行ったのです。妻は数日後に亡くなりましたので、愛人と結婚をしました」
「奥様の難病を治療して戴きながら、カナール女史を殺したのは、ノンブル侯爵ですね?」
「馬車に細工をして、馬車で追いかけただけです」
「事故現場は、カーブがあり、下り坂だった。普通ならば、その場所ではスピードは落とされますが、カナール女史の乗った馬車はスピードを落とさずに、そのカーブに突入した。突入した理由は追われていたからですね。追いかければ、その場所で事故が起きると、貴方は分かっていた」
「はい」
「思惑通り事故が起きて、馬車が横転し、カナール女史が亡くなったのですから、貴方が殺したと同じですね?」
裁判官、ナルコーゼ・アネスステジーアは静かな声で、ノンブル侯爵に尋ねた。
ノンブル侯爵は「はい」と静かな声で、返事をした。
「では、ノンブル侯爵に判決を言い渡す。ノンブル侯爵は爵位取り消しの上に、極刑。またその家族は、この罪を知っていながら長年に渡り隠していた。よって、ノンブル侯爵夫人、リーヴ夫人は、帝国最北端にある修道院にて永久に勤めるように。テルマ令嬢は、東の修道院にて、15年勤めるように。コリエンテ・ノンブル侯爵子息は西の炭鉱にて、15年勤めるように」
「どうもすみませんでした」
ノンブル侯爵は深く頭を下げ、家族を振り返ると、頭を下げた。
その妻も子供達も涙を流していた。
「これにて閉廷致します」
わたしは、母親を殺したノンブル侯爵の顔を睨み付けた。
クラクシオン様が怒りで震えているわたしの手を握ってくれている。
クラクシオン様はわたしを裁判所に連れてきてくれた。
兄様も傍聴しに来たが、互いに会話はなかった。互いに離れた場所に座った。
ノンブル侯爵が法廷から連れ出されるとき、思わず、「母様を返して」と叫んでいた。
ノンブル侯爵はわたしを見て、深く頭を下げただけだった。
謝罪はなかった。
その家族達は、一家バラバラにされて、子供達は15年の刑が言い渡された。子供に対しては辛い刑だと思う。奥様は、知っていただろうが、子供が知っていたかは分からない。
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