《完結》愛されたいわたしは幸せになりたい

綾月百花   

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45   婚約パーティー

 秋も深まった頃に、わたしとクラクシオン様の婚約パーティーが開かれた。

 夏に行うはずの婚約パーティーは、わたしの心情を考えて、時期は遅らされたが、シリピリー様の結婚式があるために、急遽行われた。

 人気デザイナーのテスラ様のドレスを着て、わたしはクラクシオン様と公の場所で初めてダンスを踊った。

 わたしは社交界デビューをしていなかったので、ダンスのレッスンは、帝国に来て初めて行った。

 気分の沈んだわたしを、勇気づけるように、クラクシオン様が根気よく、レッスンに付き合ってくれた。

 今日のわたしは、やっと笑顔で踊れるようになった。

 記憶は消えたままだけれど、昔のわたしはダンスが好きで、よく踊っていたのだとクラクシオン様が教えてくれた。

 わたしの知らないわたしを、クラクシオン様はよく教えてくれる。

 宮殿の花壇の端にある木の裏に書かれた悪戯書きや物置小屋に隠されたわたしの宝物だった物など。

 昔のわたしは、どうやら、すごくお転婆だったようだ。

 昔のまま残しておいてくれたクラクシオン様の優しさも嬉しかった。

 きっとわたし達は、幸せな結婚をして、幸せな生活を送るのだと思う。

 3曲ダンスを踊って、わたし達は、皆様にお辞儀をした。

 拍手が湧き上がり、わたしはクラクシオン様を見て、微笑んだ。

 お披露目は終えたようだ。

 新しい曲が流れ出す。

 今度は招待した客人がダンスを踊り出す。

 わたし達は、クラクシオン様の知り合いに挨拶に向かう。

 最初にわたしが記憶を失っていることをクラクシオン様が話したので、挨拶に向かっても、その事を聞かれることはなかった。

 クラクシオン様は人気者で、たくさんの友人や貴族達が祝いを告げていく。

 今日はアロージョ医師も人気デザイナーのテスタ様も来ている。

 クラクシオン様とアロージョ医師、宰相のラルファ様、テスタ様は、幼馴染みで同い年なのだとか。

 ラルファ様に宰相になって欲しいとお願いしたのは、クラクシオン様だと言っておいででした。


「こんな面倒な仕事をするつもりはなかった」とラルファ様は、クラクシオン様を横目で見ながら遠慮のない発言をなさっていた。


 一応、宰相の立場上、敬称を付けているが、きっと二人きりの時は、名前を呼び合っているのではないかと思えますの。

 宰相の立場上、クラクシオン様を立てているが、四人はとても仲がよろしいようです。

 気心知れた相手だから、好きなことを言い合えると、クラクシオン様は満足げだった。

 第一皇女のシリピリー様は、壁の花になっております。

 シリピリー様の婚約者であるラーメ王国は、帝国から遠く、移動に早くても一ヶ月もかかるので、招待状を送ったのですが、欠席の報せと、シリピリー様への手紙が届けられました。

 シリピリー様はたいへん残念がっておりましたが、ラーメ王国が遠方である事は承知の上での婚約ですので、直ぐに気分を変えたようです。

 お相手に貴族の令息を、皇帝陛下と皇妃様はすぐに探しましたけれど、シリピリー様が拒絶なさいました。

『私のお相手はゴルド様以外おりません』と……。

 それでも、なんだか寂しそうですわ。

 婚礼の時期は、正式には決まっておりませんが、冬に行われるとシリピリー様が言っておいででした。

 シリピリー様のお嫁入りの準備もずいぶん整っているようです。

 ウエディングドレスを見せて戴きましたが、それはそれは美しいシルクのドレスでした。

 皇帝陛下や皇后様が、どれほどシリピリー様を愛しているのか伝わってきます。

 第二皇女のアメリア様にも婚約者候補はいるようです。

 ですが、アメリア様は婚約者候補の一人ではなく、自分が好きになったお方をダンスのお相手にされています。

 今夜、アメリア様をエスコートされている方が、アメリア様の思い人です。

 アメリア様の好きなお方は、侯爵家の嫡男で、クラクシオン様の後輩にあたるお方だとか。

 アメリア様が押して押して、やっと今回のパーティーのお相手になってもらえたお相手だとか、まだ婚約式は行われていませんが、凜々しいお顔立ちの剣士だとか。

 わたしの救出の為に、ドゥオーモ王国にいらしたクラクシオン様の近衛騎士団長クラース様だそうです。

 20歳で近衛騎士団長を務めるクラース様は、体格ががっしりした剛健です。

 皇帝陛下と皇后様は、この交際を反対されています。

 クラクシオン様は皇太子で、いずれ皇帝陛下になるお方なので、その側近となれば、常にクラクシオン様をお守りするのが務めなので、アメリア様の婚約は、まだ(仮)ともされていません。

 今日はアメリア様がクラクシオン様にお願いして、クラース様は仕事として、パーティーへと参加しております。

 近衛騎士は、いつもクラクシオン様をお守りしているので、皇后様も「結婚しても寂しい想いをする」とアメリア様を説得している状態です。

 時々、アメリア様は皇帝陛下と皇后様と言い争っておいでです。

 この恋の行方は、どうなるのでしょうか?

 アメリア様が隠れて泣いているお姿も見ているので、ハラハラしております。

 皇帝陛下は、公爵家へ嫁ぐようにとその候補も出ておりますが、アメリア様が好きなお方は、クラース様のようで、話し合いは平行線です。

 クラース様のお気持ちは、クラクシオン様をお守りするのが勤めだと言っておいでのようです。

 今日は任務としてお願いしたとか。

 それなので渋々承諾して、アメリア様のお相手になっているようです。

 アメリア様の恋の成就は難しそうです。

 一緒に食事を取るようになってから、クラクシオン様の周りの様子も見えてきています。

 皇子達には、既に婚約者がいますが、クラクシオン様だけが、どの令嬢を連れてきても、承諾しなかったと知りました。

 クラクシオン様はわたしを取り戻す事を諦めてはいなかったのです。

 その事を知り、またわたしはクラクシオン様の愛情の深さを知ったのです。

 わたしは幸せ者です。

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