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53 突然の結婚式
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約束の10時に間に合うように、わたしは美しいウエディングドレスを身につけ、綺麗にお化粧をして戴きました。
そうして、クラクシオン様と手を繋いで馬車に乗って教会に行きました。
クラクシオン様も白いお召し物を着て、お揃いです。
わたしの髪に飾られた赤いアネモネの花を、クラクシオン様は胸のポケットに入れています。
参列者は皇帝陛下と皇后様、皇子達とシリピリー様とアメリア様、宰相のラルファ様、医師のアロージョ様、人気デザイナーのテスタ様。
兄様はおいでにならなかった。
期待はしていなかったので、失望はない。
皆様はもう着席されております。
祭壇の前には、牧師がいる。
拍手に包まれながら、わたしはクラクシオン様と腕を組み、ゆっくりバージンロードを歩いて行く。
護衛の騎士は、急遽、全員に招集がかかり、近衛騎士も宮殿を守る騎士も配置されている。
そんな厳戒態勢の状態で、教会の中だけは、穏やかな空気に包まれている。
クラクシオン様は、ずっと笑顔だ。
待合室で、「この日を待ちわびていた」と、緊張しているわたしに告げた。
「だから、この日を楽しもう」と、わたしの両手を掴んで、「大丈夫」と何度も言ってくれた。
緊張しているけど、わたしは、クラクシオン様の笑顔で、わたしも笑顔でいられる。
これからの時間、クラクシオン様と一緒に時を刻むのだ。その時間は、きっとわたしの記憶に残る。
もう消えたりしない。
忘れたりしない。
この結婚式も思い出になる。
そう思うと、楽しい結婚式の思い出が欲しくなった。
初めて着るウエディングドレスは、とても嬉しくて、とても綺麗で、ヴェールで微かに隠されたバージンロードも、輝いて見える。
本来はバージンロードは、父様と歩くそうです。
でも、父様はもうこの世にいません。
クラクシオン様に日記帳というバトンを渡されて、儚くなりました。
父様はもうこの世にいませんので、クラクシオン様は父様の代わりもしているのです。
皇帝陛下が代わりに歩くと言った言葉を、「断る」と一刀両断されました。
牧師の前まで歩くと、皆さんが立ち上がり、賛美歌が歌われました。
オルガンの音が響いて、とても幻想的です。
ステンドガラスから差し込む日差しもいろんな色彩が混ざって美しい。
「愛には偽りがあってはなりません。
悪を忌み嫌い、善から離れてはなりません。
互いに兄弟愛をもって心から愛し、競い合って尊敬し合いなさい。
熱心で怠らず、心を燃やし、主に仕え、希望をもって喜び、苦難を耐え忍び、
弛まず祈りに励みなさい。
聖なる人々の貧しさを自分のものと考えて力を貸し、手厚く人をもてなしなさい。
あなたがたを迫害する者の上に祝福を願いなさい。
祝福を願うのであって、呪いを求めてはなりません。
喜ぶ者とともに喜び、泣く者とともに泣きなさい。
互いに思いを一つにし、高ぶらず、身分の低い人々の仲間となりなさい。
自分は賢い者だとうぬぼれてはなりません。
誰に対しても悪に悪で返さず、すべての人の前で善いことを行うように心がけなさい。
できることなら、あなた方の力の及ぶかぎり、すべての人と平和に暮らしなさい」
牧師が聖書の一節を読み上げた。
わたし達が歩む道しるべのようなお言葉に、わたしは皇太子妃としての自覚を持ちました。
わたしはこの結婚式を終えたら、正式に皇太子妃となります。
王太子妃であった時より、より自覚をするのは、神聖な結婚式をしているからでしょうか?
ドゥオーモ王国でも、わたしは全力で王太子妃の勤めを果たしてきましたが、わたしは誰からも愛されていなかった。
だから、仕事だけしていればいいと、仕事に逃げていた。
逃げるしか生きる術はなかったのだけれど。
今は違う。
まず、愛がある。
執務はまだ一つも任されてはいない。
ゆったりと愛を育んで、やっとわたしに覚悟ができた。
この帝国には、愛してくれる人がたくさんいる。
わたし一人で走らなくても、皆が支えてくれる。
わたしは牧師の問いかけに、全て「誓います」と答えた。
指輪の交換は、ドゥオーモ王国ではなかった。
なので、指輪をはめるのも初めてだ。
クラクシオン様がわたしの指に指輪をはめてくれた。
次にわたしがクラクシオン様の指に指輪をはめる。
シンプルだが、瞳と同じ色の宝石があしらわれている。
これはタンザナイトだろうか?
本でしか見たことのない石だが、きっとそうだ。
ヴェールが捲られ、直接、クラクシオン様のお顔がはっきり見える。
微笑んだクラクシオン様が、体をかがめて唇に触れるだけのキスをした。
「神の名のもとに二人の結婚をしたことを宣言します」
粛々と牧師の言葉で、式が進んで行く。
わたし達は結婚証明書に互いの名前を書き記した。
これで結婚したことになる。
互いに顔を見合わせ、微笑み合う。
帝国では、この証明書を役所に提出する決まりになっている。
教会で結婚式を挙げた者は、牧師が責任を持って役所に提出することになっているという。
ドゥオーモ王国でも、結婚証明書に署名した覚えがある。
それだけで結婚式と言えるだろうか?と思った事が遭った。
簡略的で義務的な結婚だったので、仕方がない。
愛がなかったのだから当然だったのだろう。
でも、今は違う。
愛され、愛して、こうしてクラクシオン様と一緒に署名をした。
なんて、幸せだろう。
わたしは、生きている限りクラクシオン様を信じて、愛していこうと神に誓った。
「これにて、二人の結婚が成立しました」
牧師の言葉の後、大きな拍手に包まれ、わたし達は皆様にお辞儀をして拍手の中、クラクシオン様と腕を組み、微笑んでバージンロードを歩いて退場する。
教会の扉が、騎士の手で開けられ、クラクシオン様の近衛騎士達がわたし達を囲み、馬車まで誘導する。
教会の前には、たくさんの馬車が並んでいた。
街の人々が、何事が起きているのかと足を止めるが、騎士に促されて、静止を禁じられているようだった。
素早く乗り込んだ馬車は、直ぐに走り出す。
馬車の周りには、クラクシオン様の近衛騎士が付いている。
きっと後続から、続々と皇族の者達が宮殿を目指しているだろう。
「アナ、やっと結婚をした」
「クラクシオン様」
「シオンと呼んではくれないのか?」
「シオン」
「そうだ。今日から夫婦だ。きちんとシオンと呼んでくれ。この日を俺は楽しみにしてきた」
「はい」
「畏まるなよ。俺は聖書を読まないが、今日、牧師が言っていた言葉はいい言葉だった」
「ええ」
「互いに想い合いたい」
「わたしも」
シオンがわたしにキスをしてくる。
何度も重なって、口の中に舌が入ってきて、驚いた。
驚いて逃げると、シオンが悪戯っぽく笑った。
「これから、キスもたくさんしよう」
「え?」
わたしは恥ずかしくて、シオンの胸に顔を埋めた。
しがみついているわたしを引き剥がさずに、背中に手を回して抱きしめてくれる。
「逃げているのか?甘えているのか?どっちかな?」
「意地悪はしないでね」
シオンはクスクス笑っている。
でも、無理強いはしなかった。
わたしは今日からクラクシオン様をシオンと呼ぶことにした。
5歳の頃、呼び合っていた愛称で、名前を呼び合う。
結婚をする前に、クラクシオン様が望んでいた事だ。
記憶はないけれど、わたしはアナと確かに呼ばれていたようだ。
日記を読んだり、子供の頃に書いた手紙を読んだりして、わたしは新たな記憶を刻んでいる。
「アナ、愛している」
優しいささやき。
「わたしも愛しているわ」
シオンの手が、わたしの背中を撫でている。
照れくさいけれど、嬉しい気持ちが勝っていた。
そうして、クラクシオン様と手を繋いで馬車に乗って教会に行きました。
クラクシオン様も白いお召し物を着て、お揃いです。
わたしの髪に飾られた赤いアネモネの花を、クラクシオン様は胸のポケットに入れています。
参列者は皇帝陛下と皇后様、皇子達とシリピリー様とアメリア様、宰相のラルファ様、医師のアロージョ様、人気デザイナーのテスタ様。
兄様はおいでにならなかった。
期待はしていなかったので、失望はない。
皆様はもう着席されております。
祭壇の前には、牧師がいる。
拍手に包まれながら、わたしはクラクシオン様と腕を組み、ゆっくりバージンロードを歩いて行く。
護衛の騎士は、急遽、全員に招集がかかり、近衛騎士も宮殿を守る騎士も配置されている。
そんな厳戒態勢の状態で、教会の中だけは、穏やかな空気に包まれている。
クラクシオン様は、ずっと笑顔だ。
待合室で、「この日を待ちわびていた」と、緊張しているわたしに告げた。
「だから、この日を楽しもう」と、わたしの両手を掴んで、「大丈夫」と何度も言ってくれた。
緊張しているけど、わたしは、クラクシオン様の笑顔で、わたしも笑顔でいられる。
これからの時間、クラクシオン様と一緒に時を刻むのだ。その時間は、きっとわたしの記憶に残る。
もう消えたりしない。
忘れたりしない。
この結婚式も思い出になる。
そう思うと、楽しい結婚式の思い出が欲しくなった。
初めて着るウエディングドレスは、とても嬉しくて、とても綺麗で、ヴェールで微かに隠されたバージンロードも、輝いて見える。
本来はバージンロードは、父様と歩くそうです。
でも、父様はもうこの世にいません。
クラクシオン様に日記帳というバトンを渡されて、儚くなりました。
父様はもうこの世にいませんので、クラクシオン様は父様の代わりもしているのです。
皇帝陛下が代わりに歩くと言った言葉を、「断る」と一刀両断されました。
牧師の前まで歩くと、皆さんが立ち上がり、賛美歌が歌われました。
オルガンの音が響いて、とても幻想的です。
ステンドガラスから差し込む日差しもいろんな色彩が混ざって美しい。
「愛には偽りがあってはなりません。
悪を忌み嫌い、善から離れてはなりません。
互いに兄弟愛をもって心から愛し、競い合って尊敬し合いなさい。
熱心で怠らず、心を燃やし、主に仕え、希望をもって喜び、苦難を耐え忍び、
弛まず祈りに励みなさい。
聖なる人々の貧しさを自分のものと考えて力を貸し、手厚く人をもてなしなさい。
あなたがたを迫害する者の上に祝福を願いなさい。
祝福を願うのであって、呪いを求めてはなりません。
喜ぶ者とともに喜び、泣く者とともに泣きなさい。
互いに思いを一つにし、高ぶらず、身分の低い人々の仲間となりなさい。
自分は賢い者だとうぬぼれてはなりません。
誰に対しても悪に悪で返さず、すべての人の前で善いことを行うように心がけなさい。
できることなら、あなた方の力の及ぶかぎり、すべての人と平和に暮らしなさい」
牧師が聖書の一節を読み上げた。
わたし達が歩む道しるべのようなお言葉に、わたしは皇太子妃としての自覚を持ちました。
わたしはこの結婚式を終えたら、正式に皇太子妃となります。
王太子妃であった時より、より自覚をするのは、神聖な結婚式をしているからでしょうか?
ドゥオーモ王国でも、わたしは全力で王太子妃の勤めを果たしてきましたが、わたしは誰からも愛されていなかった。
だから、仕事だけしていればいいと、仕事に逃げていた。
逃げるしか生きる術はなかったのだけれど。
今は違う。
まず、愛がある。
執務はまだ一つも任されてはいない。
ゆったりと愛を育んで、やっとわたしに覚悟ができた。
この帝国には、愛してくれる人がたくさんいる。
わたし一人で走らなくても、皆が支えてくれる。
わたしは牧師の問いかけに、全て「誓います」と答えた。
指輪の交換は、ドゥオーモ王国ではなかった。
なので、指輪をはめるのも初めてだ。
クラクシオン様がわたしの指に指輪をはめてくれた。
次にわたしがクラクシオン様の指に指輪をはめる。
シンプルだが、瞳と同じ色の宝石があしらわれている。
これはタンザナイトだろうか?
本でしか見たことのない石だが、きっとそうだ。
ヴェールが捲られ、直接、クラクシオン様のお顔がはっきり見える。
微笑んだクラクシオン様が、体をかがめて唇に触れるだけのキスをした。
「神の名のもとに二人の結婚をしたことを宣言します」
粛々と牧師の言葉で、式が進んで行く。
わたし達は結婚証明書に互いの名前を書き記した。
これで結婚したことになる。
互いに顔を見合わせ、微笑み合う。
帝国では、この証明書を役所に提出する決まりになっている。
教会で結婚式を挙げた者は、牧師が責任を持って役所に提出することになっているという。
ドゥオーモ王国でも、結婚証明書に署名した覚えがある。
それだけで結婚式と言えるだろうか?と思った事が遭った。
簡略的で義務的な結婚だったので、仕方がない。
愛がなかったのだから当然だったのだろう。
でも、今は違う。
愛され、愛して、こうしてクラクシオン様と一緒に署名をした。
なんて、幸せだろう。
わたしは、生きている限りクラクシオン様を信じて、愛していこうと神に誓った。
「これにて、二人の結婚が成立しました」
牧師の言葉の後、大きな拍手に包まれ、わたし達は皆様にお辞儀をして拍手の中、クラクシオン様と腕を組み、微笑んでバージンロードを歩いて退場する。
教会の扉が、騎士の手で開けられ、クラクシオン様の近衛騎士達がわたし達を囲み、馬車まで誘導する。
教会の前には、たくさんの馬車が並んでいた。
街の人々が、何事が起きているのかと足を止めるが、騎士に促されて、静止を禁じられているようだった。
素早く乗り込んだ馬車は、直ぐに走り出す。
馬車の周りには、クラクシオン様の近衛騎士が付いている。
きっと後続から、続々と皇族の者達が宮殿を目指しているだろう。
「アナ、やっと結婚をした」
「クラクシオン様」
「シオンと呼んではくれないのか?」
「シオン」
「そうだ。今日から夫婦だ。きちんとシオンと呼んでくれ。この日を俺は楽しみにしてきた」
「はい」
「畏まるなよ。俺は聖書を読まないが、今日、牧師が言っていた言葉はいい言葉だった」
「ええ」
「互いに想い合いたい」
「わたしも」
シオンがわたしにキスをしてくる。
何度も重なって、口の中に舌が入ってきて、驚いた。
驚いて逃げると、シオンが悪戯っぽく笑った。
「これから、キスもたくさんしよう」
「え?」
わたしは恥ずかしくて、シオンの胸に顔を埋めた。
しがみついているわたしを引き剥がさずに、背中に手を回して抱きしめてくれる。
「逃げているのか?甘えているのか?どっちかな?」
「意地悪はしないでね」
シオンはクスクス笑っている。
でも、無理強いはしなかった。
わたしは今日からクラクシオン様をシオンと呼ぶことにした。
5歳の頃、呼び合っていた愛称で、名前を呼び合う。
結婚をする前に、クラクシオン様が望んでいた事だ。
記憶はないけれど、わたしはアナと確かに呼ばれていたようだ。
日記を読んだり、子供の頃に書いた手紙を読んだりして、わたしは新たな記憶を刻んでいる。
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