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55 初夜
果樹酒でほろ酔いのわたしは、シオンに部屋まで戻された。
「ゆっくり休みなさい」
「ありがとう」
シオンと皇子達はそのまま夕食をいただくと言っておいででしたが、わたしは、もう一ミリもお腹に入りそうにありません。
「奥様、ウエディングドレスを脱ぎましょうか?」
「奥様?」
わたしはその響きがなんだかおかしくて、クスクス笑う。
ドゥオーモ王国で結婚証明書に名を記入した後も、そんな風に呼ばれたことはありません。
せいぜい、第一夫人ですもの。
夫婦なった実感もありませんでした。
それが奥様と、メイド達が呼びますのよ。
「奥様、お酒を飲み過ぎましたか?」
「ええ、いっぱい飲んだわ。果樹酒って、美味しいわね」
わたしは帝国に来てから、この味を知った。
ドゥオーモ王国では、わたしは水しかもらえなかった。
食事中に果樹酒が飲めるなんて、なんて豪華なのでしょう。
最近、紅茶の淹れ方も覚えて、やっと貴婦人になったような気がします。
わたしの専属メイド達は、五人で相談をしています。
漏れ聞こえる会話から、ウエディングドレスを脱がせて、どうやらお化粧を落として、お風呂に入れたいようだ。
でも、ちょっと飲み過ぎちゃったわね。
頭がくらくらしますの。
「では、奥様。少し酔いが醒めるまで、カウチで休まれますか?」
「そうね」
メイドに手を引かれて、窓辺のカウチに案内される。
テーブルの上に、水の入ったグラスが置かれた。
それに手を伸ばす。
喉が渇いていた。
窓は閉められていた。
最近、夜になると肌寒くなってきた。
出窓には、相変わらず、赤いアネモネが飾られている。
毎朝、シオンが一輪、わたしにプレゼントを持って、わたしを朝食を誘いに来る。
わたしが花言葉を覚えたのは、シオンの話では5歳前だったらしい。
よく考えてみると、ドゥオーモ王国に図鑑などなかった。
ドゥオーモ王国の花壇など、幼いころに見たこともないし、成長して王国の庭園には、花壇などなかった。
王宮を囲むように、木が植わっていたくらいだ。
薔薇園は少しだけあった。
確か、王妃様の庭園だと聞いた。
ドゥオーモ王国は、裕福な国ではなかった。
シオンに、シオンと一緒に図鑑を見て、覚えたのだと教わった。
この記憶は5歳前の記憶になる。
その時の情景や経緯は忘れているけれど、わたしには5歳前の記憶が存在すると立証できたと、シオンは嬉しそうに、わたしに自慢した。
ドゥオーモ王国で、5歳にして天才と呼ばれたことがあった。
確か、家庭教師がつけられて、たくさんテストを受けたことがあった。その後のことだったと思う。
国王陛下が『5歳にして天才』と言っていたような気がする。
それは、わたしが5歳までに身につけた勉強や習慣などで、他にも記憶力の良さだったりしたのだろう。
医術については、まったく覚えていない。
触れていくうちに気付くことがあるかもしれないが、医術はもう今更、学んでも遅いであろう。
両親が医者にしようとわたしに教えていたことは忘れてしまったので、医師になる道は諦めることにした。
ほかにもシオンと一緒に学んだものがあるかもしれない。
それが何かわからないが、少しずつ新しい環境で生きていくうちに、気づくことがあるかもしれない。
今はそれが楽しみでもある。
水を飲んで、グラスをテーブルに置くと、わたしはウエディングドレスの繊細なスカート部分に触れた。
もう一度、着る機会があることを思い出して、汚してはいけないことに気づいた。
「ドレスを脱がせてください」
半年か一年後に、お披露目パーティーがあるのだ。
先に結婚式を挙げたので、順序が逆になってしまったが、それでも以前の結婚より何十倍も何百倍も嬉しい。
今回の初夜は、待ちぼうけになったりしないだろうか?
シオンなら、きっと愛してくれる。
それなら、お風呂も入らなくては……。
脱衣所でドレスを脱がされ、メイドにお風呂に促された。
お化粧も落としてもらって、風呂も入れてもらう。
今日はメイドも気合いが入っている。
五人のメイドはテキパキと動いて、風呂上がりの紅茶まで入れてくださいました。
「ドレス、汚していないと思うけれど、お願いします」
「畏まりました」
「もう酔いは覚めてきましたか?」
「頭がスッキリしてきました」
「そうですか、良かったですわ」
今日のお風呂は、温かなお湯だった。
あまりにも気持ちが良くて、眠り落ちてしまいそうになって、「奥様」と声をかけられる。
「皆様も、奥様にお酒を飲ませすぎですわ」
「今日は大切な初夜ですのに」
メイド達は文句を言い出した。
「今日はとても楽しくて、つい飲み過ぎてしまったのよ。誰も悪くはないわ」
わたしのお酒の量は、シリピリー様やアメリア様より、きっと少ない。それでも、酔ってしまったのだ。
きっと、それは、飲み過ぎと言うより、今まで飲んでこなかったからだと思うのだ。
「奥様、お酒を飲んでいるので、長湯はいけません」
「そうね、でも温かくて、気持ちがいいわ」
「この後、少しマッサージをしましょう。マッサージも気持ちがいいですわ」
「分かったわ」
わたしはお風呂から上がった。
メイドがバスローブを着せて、長い髪をタオルで包んだ。
そういえば、わたしの髪は、事故の時に、髪を丸坊主にされた。
目が覚めたら、髪がなかったのだ。
その事にもショックを受けて、体の痛みと傷の痛みと心の傷も受けた。
それから、髪は切っていない。
伸ばすだけでお手入れもしてなかったので、シリピリー様やアメリア様のように美しくはない。
「髪を切ろうかしら」
「今夜はどうぞそのままで」
「そうですわ、綺麗な髪ですわ」
「クラクシオン皇太子殿下とよく相談をなさった方が宜しいかと」
「夜では美容師がおりません。クラクシオン皇太子殿下とよく相談なさって、許可が出たら美容師に来て戴きましょう」
「もう夜ですわね」
窓の外を見れば、もう暗くなっていた。
メイドに宥められて、わたしは自分の髪を指先で梳く。
メイド達の腕がいいので、絡まることはないけれど、前髪と後ろの髪の長さが同じで、前髪を分けているので、なんだかシリピリー様やアメリア様のように可愛らしくはない。
ペリオドス様がジュリアン様を可愛がっていたのが、分かるような気がするのだ。
鏡の中のわたしは、気の強そうな女に見える。
わたしも可愛くなりたい。
「奥様、不安なのですね。大丈夫ですわ。クラクシオン皇太子殿下は、紳士的ですから、お任せしていれば、全て上手く事が運びますわ」
初夜のことを言っているのだろうと、分かりました。
メイド長のカリタは、わたしの心の裡を、よく理解してくれて、わたしに的確な助言をしてくださいます。
今度の結婚は、間違いはない……はずなのだ。
互いに愛し合っている。
キスだってしている。
手もいつも握っている。
不安はないはずなのに、やはり不安なのです。
初めの結婚式の日、朝までソファーに座って待っていた事があった。
あんな想いをするのなら、寝てしまえば良かったのだ。
「ネグリジェはどれになさいますか?」
メイドが真新しいネグリジェを何着も持ってきた。
皇后様とシリピリー様が選んでくれたスケスケだ。
急に恥ずかしくなり、顔に熱が集まってくる。
「地味な物でお願いします」
ネグリジェから視線を外し、俯いて答えると、メイドが二人、ネグリジェを持ち、クロークルームに入っていった。
皇后様はたくさん買ってくださったから。
地味な物などなかったような気がする。
他のメイドが肌を整えてくれる。
皇后様が勧めてくれた、眠るときのお化粧をすると、なんだかいい香りがする。
「奥様、では、ネグリジェは地味な物に致しました。こちらで如何ですか?」
「地味ならそれでいいです」
チラリと見たネグリジェは、少しも地味ではなかった。
わたしは恥を忍んで、それを身につけていく。
薄い上に短い。
下着はない。
必要ないと言われて、確かに必要ないかもしれないけれど、あまりに恥ずかしい。
わたしは、すぐにガウンを着た。
そのガウンは人気のデザイナーのテスタ様が自ら作られたガウンで、レースで作られている。
どこもかしこもスケスケで、わたしは居たたまれずに、自分のベッドに入った。
「奥様」
「今日から夫婦の部屋の扉が開きますわ」
「でも、来ないかもしれないのに、こんな姿でいるのが恥ずかしいわ」
「クラクシオン皇太子殿下は、そんなお方とは違います」
メイドの一人の声に、わたしの体がビクンと震えた。
シオンはペリオドス様とは違う。けれど、不安は拭えない。
「ナダ、マリアナ皇太子妃に謝罪しなさい。マリアナ皇太子妃は傷を抱えていらっしゃるのです。今日のような日は、不安になっても仕方がありません」
メイドのカリタが、ナダを叱った。
「奥様、マリアナ皇太子妃、出過ぎた事を申し上げました。申し訳ございません」
「ナダ、気にしなくてもいいのよ。わたしの心の問題ですもの」
「気遣いが足りなかった言葉でした」
ナダは、深くお辞儀をした。
そんなに謝罪されることではないわ。
でも、ここで、わたしが何か言葉を返すと、ナダが責められるような気がして、わたしは本心から怒っていないと伝えるために、笑顔を浮かべた。
どんなときでも笑顔を見せられるのは、ドゥオーモ王国で習得した演技だけれど、どの国であっても笑顔に勝る武器はないとわたしは思っている。
ナダの表情が、柔らかくなった。
きっともうカリタに叱られないはずだ。
「大丈夫よ、今日の結婚式は、きっと永遠に忘れない素敵な式でした。今夜、夫婦の部屋が開かなくても、落胆など致しません」
そう落胆などしない。
それほど、わたしは幸せなのだ。
「ゆっくり休みなさい」
「ありがとう」
シオンと皇子達はそのまま夕食をいただくと言っておいででしたが、わたしは、もう一ミリもお腹に入りそうにありません。
「奥様、ウエディングドレスを脱ぎましょうか?」
「奥様?」
わたしはその響きがなんだかおかしくて、クスクス笑う。
ドゥオーモ王国で結婚証明書に名を記入した後も、そんな風に呼ばれたことはありません。
せいぜい、第一夫人ですもの。
夫婦なった実感もありませんでした。
それが奥様と、メイド達が呼びますのよ。
「奥様、お酒を飲み過ぎましたか?」
「ええ、いっぱい飲んだわ。果樹酒って、美味しいわね」
わたしは帝国に来てから、この味を知った。
ドゥオーモ王国では、わたしは水しかもらえなかった。
食事中に果樹酒が飲めるなんて、なんて豪華なのでしょう。
最近、紅茶の淹れ方も覚えて、やっと貴婦人になったような気がします。
わたしの専属メイド達は、五人で相談をしています。
漏れ聞こえる会話から、ウエディングドレスを脱がせて、どうやらお化粧を落として、お風呂に入れたいようだ。
でも、ちょっと飲み過ぎちゃったわね。
頭がくらくらしますの。
「では、奥様。少し酔いが醒めるまで、カウチで休まれますか?」
「そうね」
メイドに手を引かれて、窓辺のカウチに案内される。
テーブルの上に、水の入ったグラスが置かれた。
それに手を伸ばす。
喉が渇いていた。
窓は閉められていた。
最近、夜になると肌寒くなってきた。
出窓には、相変わらず、赤いアネモネが飾られている。
毎朝、シオンが一輪、わたしにプレゼントを持って、わたしを朝食を誘いに来る。
わたしが花言葉を覚えたのは、シオンの話では5歳前だったらしい。
よく考えてみると、ドゥオーモ王国に図鑑などなかった。
ドゥオーモ王国の花壇など、幼いころに見たこともないし、成長して王国の庭園には、花壇などなかった。
王宮を囲むように、木が植わっていたくらいだ。
薔薇園は少しだけあった。
確か、王妃様の庭園だと聞いた。
ドゥオーモ王国は、裕福な国ではなかった。
シオンに、シオンと一緒に図鑑を見て、覚えたのだと教わった。
この記憶は5歳前の記憶になる。
その時の情景や経緯は忘れているけれど、わたしには5歳前の記憶が存在すると立証できたと、シオンは嬉しそうに、わたしに自慢した。
ドゥオーモ王国で、5歳にして天才と呼ばれたことがあった。
確か、家庭教師がつけられて、たくさんテストを受けたことがあった。その後のことだったと思う。
国王陛下が『5歳にして天才』と言っていたような気がする。
それは、わたしが5歳までに身につけた勉強や習慣などで、他にも記憶力の良さだったりしたのだろう。
医術については、まったく覚えていない。
触れていくうちに気付くことがあるかもしれないが、医術はもう今更、学んでも遅いであろう。
両親が医者にしようとわたしに教えていたことは忘れてしまったので、医師になる道は諦めることにした。
ほかにもシオンと一緒に学んだものがあるかもしれない。
それが何かわからないが、少しずつ新しい環境で生きていくうちに、気づくことがあるかもしれない。
今はそれが楽しみでもある。
水を飲んで、グラスをテーブルに置くと、わたしはウエディングドレスの繊細なスカート部分に触れた。
もう一度、着る機会があることを思い出して、汚してはいけないことに気づいた。
「ドレスを脱がせてください」
半年か一年後に、お披露目パーティーがあるのだ。
先に結婚式を挙げたので、順序が逆になってしまったが、それでも以前の結婚より何十倍も何百倍も嬉しい。
今回の初夜は、待ちぼうけになったりしないだろうか?
シオンなら、きっと愛してくれる。
それなら、お風呂も入らなくては……。
脱衣所でドレスを脱がされ、メイドにお風呂に促された。
お化粧も落としてもらって、風呂も入れてもらう。
今日はメイドも気合いが入っている。
五人のメイドはテキパキと動いて、風呂上がりの紅茶まで入れてくださいました。
「ドレス、汚していないと思うけれど、お願いします」
「畏まりました」
「もう酔いは覚めてきましたか?」
「頭がスッキリしてきました」
「そうですか、良かったですわ」
今日のお風呂は、温かなお湯だった。
あまりにも気持ちが良くて、眠り落ちてしまいそうになって、「奥様」と声をかけられる。
「皆様も、奥様にお酒を飲ませすぎですわ」
「今日は大切な初夜ですのに」
メイド達は文句を言い出した。
「今日はとても楽しくて、つい飲み過ぎてしまったのよ。誰も悪くはないわ」
わたしのお酒の量は、シリピリー様やアメリア様より、きっと少ない。それでも、酔ってしまったのだ。
きっと、それは、飲み過ぎと言うより、今まで飲んでこなかったからだと思うのだ。
「奥様、お酒を飲んでいるので、長湯はいけません」
「そうね、でも温かくて、気持ちがいいわ」
「この後、少しマッサージをしましょう。マッサージも気持ちがいいですわ」
「分かったわ」
わたしはお風呂から上がった。
メイドがバスローブを着せて、長い髪をタオルで包んだ。
そういえば、わたしの髪は、事故の時に、髪を丸坊主にされた。
目が覚めたら、髪がなかったのだ。
その事にもショックを受けて、体の痛みと傷の痛みと心の傷も受けた。
それから、髪は切っていない。
伸ばすだけでお手入れもしてなかったので、シリピリー様やアメリア様のように美しくはない。
「髪を切ろうかしら」
「今夜はどうぞそのままで」
「そうですわ、綺麗な髪ですわ」
「クラクシオン皇太子殿下とよく相談をなさった方が宜しいかと」
「夜では美容師がおりません。クラクシオン皇太子殿下とよく相談なさって、許可が出たら美容師に来て戴きましょう」
「もう夜ですわね」
窓の外を見れば、もう暗くなっていた。
メイドに宥められて、わたしは自分の髪を指先で梳く。
メイド達の腕がいいので、絡まることはないけれど、前髪と後ろの髪の長さが同じで、前髪を分けているので、なんだかシリピリー様やアメリア様のように可愛らしくはない。
ペリオドス様がジュリアン様を可愛がっていたのが、分かるような気がするのだ。
鏡の中のわたしは、気の強そうな女に見える。
わたしも可愛くなりたい。
「奥様、不安なのですね。大丈夫ですわ。クラクシオン皇太子殿下は、紳士的ですから、お任せしていれば、全て上手く事が運びますわ」
初夜のことを言っているのだろうと、分かりました。
メイド長のカリタは、わたしの心の裡を、よく理解してくれて、わたしに的確な助言をしてくださいます。
今度の結婚は、間違いはない……はずなのだ。
互いに愛し合っている。
キスだってしている。
手もいつも握っている。
不安はないはずなのに、やはり不安なのです。
初めの結婚式の日、朝までソファーに座って待っていた事があった。
あんな想いをするのなら、寝てしまえば良かったのだ。
「ネグリジェはどれになさいますか?」
メイドが真新しいネグリジェを何着も持ってきた。
皇后様とシリピリー様が選んでくれたスケスケだ。
急に恥ずかしくなり、顔に熱が集まってくる。
「地味な物でお願いします」
ネグリジェから視線を外し、俯いて答えると、メイドが二人、ネグリジェを持ち、クロークルームに入っていった。
皇后様はたくさん買ってくださったから。
地味な物などなかったような気がする。
他のメイドが肌を整えてくれる。
皇后様が勧めてくれた、眠るときのお化粧をすると、なんだかいい香りがする。
「奥様、では、ネグリジェは地味な物に致しました。こちらで如何ですか?」
「地味ならそれでいいです」
チラリと見たネグリジェは、少しも地味ではなかった。
わたしは恥を忍んで、それを身につけていく。
薄い上に短い。
下着はない。
必要ないと言われて、確かに必要ないかもしれないけれど、あまりに恥ずかしい。
わたしは、すぐにガウンを着た。
そのガウンは人気のデザイナーのテスタ様が自ら作られたガウンで、レースで作られている。
どこもかしこもスケスケで、わたしは居たたまれずに、自分のベッドに入った。
「奥様」
「今日から夫婦の部屋の扉が開きますわ」
「でも、来ないかもしれないのに、こんな姿でいるのが恥ずかしいわ」
「クラクシオン皇太子殿下は、そんなお方とは違います」
メイドの一人の声に、わたしの体がビクンと震えた。
シオンはペリオドス様とは違う。けれど、不安は拭えない。
「ナダ、マリアナ皇太子妃に謝罪しなさい。マリアナ皇太子妃は傷を抱えていらっしゃるのです。今日のような日は、不安になっても仕方がありません」
メイドのカリタが、ナダを叱った。
「奥様、マリアナ皇太子妃、出過ぎた事を申し上げました。申し訳ございません」
「ナダ、気にしなくてもいいのよ。わたしの心の問題ですもの」
「気遣いが足りなかった言葉でした」
ナダは、深くお辞儀をした。
そんなに謝罪されることではないわ。
でも、ここで、わたしが何か言葉を返すと、ナダが責められるような気がして、わたしは本心から怒っていないと伝えるために、笑顔を浮かべた。
どんなときでも笑顔を見せられるのは、ドゥオーモ王国で習得した演技だけれど、どの国であっても笑顔に勝る武器はないとわたしは思っている。
ナダの表情が、柔らかくなった。
きっともうカリタに叱られないはずだ。
「大丈夫よ、今日の結婚式は、きっと永遠に忘れない素敵な式でした。今夜、夫婦の部屋が開かなくても、落胆など致しません」
そう落胆などしない。
それほど、わたしは幸せなのだ。
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