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58 行くのが正しいか、止めるのが正しいか?
シオンに抱かれるようになって、一ヶ月ほどが経った。
あれほど痛かった行為は、徐々に慣れていき、今では楽しみになってきた。
シオンは、わたしの大好きな筋肉をいっぱい触らせてくれるし、わたしを貫く、逞しい象徴も触らせてくれます。
好奇心旺盛な、わたしはシオンの体の隅々まで、見せていただきました。
その代わり、シオンもわたしの体を隅々まで見てくるけれど、子供の頃のお医者さんごっこを大人になって、楽しんでいますの。
子供の頃のお医者さんごっこを思い出してから、母様の怒った顔と父様の困った顔も思い出しました。
わたしもお医者さんごっこの後に、父様と母様に叱られました。
『淑女たる者、殿方の前でドレスを脱いではいけません。況してや、体を触らせるなど、あってはなりません。マリアナが結婚をして、その相手と、初めて、肌を触れさせるのです。もう二度と、してはなりません』
わたしがシオンを唆した事が、分かっていたので、母様がシオンでも、駄目ですと、とてもたくさん叱られた事を思い出した。
とても微笑ましくて、とても嬉しくて、死ぬ寸前の母様のお顔から、いろんな表情のお顔を思い出して、今まで思い出せなかった父様のお顔も、ちゃんと思い出せますの。
やっぱりわたしは、相当、お転婆だったようでした。
両親のお顔は思い出せるようになりましたけれど、兄様のお顔も存在も、思い出せません。
兄様とは、ドゥオーモ王国の国王陛下の裁判でお目にかかって以来、ずっと会っておりません。
兄様は、わたしの事を心から嫌っておいでになるのでしょう。結婚式も来てくださいませんでしたし、それ以降も、皇帝陛下が何かと食事に誘ってくださいましたが、来てはくれません。なので、兄様の事は、あまり考えないようにしております。
何はさておき、両親の事を思い出せた事は、嬉しい事です。
母様、わたしはシオンと結婚しました。
お医者さんごっこの続きもしています。
結婚したから、もう怒ったりしませんよね?
シオンに抱かれながら、母様と父様に心の中で語りかける。
体の中に性を一杯出されて、わたしは今日も楽しく妊活をしています。
シオンの子なら、きっと立派な殿方になるはずです。
シオンのような立派な筋肉も、身につけるに違いがありません。
わたしは、どうしてか生まれてくる子は男の子のような気がしていますの。
まだ妊娠もしていないのに、不思議な事です。
朝まで抱きしめられて眠るのも大好きなのです。
目を覚ました時に、シオンがわたしを見ているのです。
『おはよう』と挨拶することも大好きです。初めは『おはようございます』でしたけれど、シオンが『おはよう』にしようと言ったので、今では朝の挨拶は『おはよう』になっています。
毎朝、シオンはメイドにわたしを預けると、自室に戻っていきます。
身支度を済ませて、わたしを迎えに来てくださいます。
一緒に食事に向かうのです。
「アクセレラシオン、マリアナ、おはよう」
「おはようございます」
二人で挨拶をすると、皇帝陛下と皇妃様が優しく微笑みます。
「アメリアの婚約披露パーティーが開かれる」
「おめでとうございます」
二人で皇帝陛下にお辞儀をして、ダイニングルームの中にいるはずのアメリア様を探す。
「アメリア、おめでとう」
先に見つけたシオンが、先に声をかけた。
「ありがとう。お姉様は皆に祝ってもらえないけれど、私は祝ってもらえるのよ」
「別に祝ってもらわなくても構わないわ。私の人生は、私が自分で考えて決めたんですもの」
アメリア様とシリピリー様は、並んで座っておいでになります。
シリピリー様は、明日、ラーメ王国に向かわれます。
帝国からは、結婚の準備の馬車が5台と護衛の騎士が50人ほどと専属メイドは10人ほど参ります。馬が60頭、嫁入り道具一式は最低限の物だけになったそうですが、それでも馬車一台分はあります。
途中で盗賊に遭遇する可能性があるので、護衛の騎士は、更に増えて、約100名がシリピリー様を送って行かれます。
帝国からシリピリー様をラーメ王国でお守りするための人選は、かなり慎重にされました。
家族が反対する者。
妻帯者などは、家族の許可が出ない者は排除され、まだ若い新人の騎士がずいぶん多く、ラーメ王国に渡ることになりました。
騎士達も専属メイドも、嫁入り道具の一つです。
帝国の騎士は、大勢いるそうですが、シリピリー様の護衛のために抜ける方も多く、今、帝国は騎士の募集を大々的にしています。
シリピリー様の為に、これほどの人を送り出すのは、前代未聞だとシオンは言っておりました。
ですが、シリピリー様は、これからラーメ王国で一人で過ごす事になるかもしれないので、皇帝陛下の愛情だとも言っておられた。
当のシリピリー様が、皇帝陛下の心遣いに気づいているのかは、分かりませんが、親の愛情と言うものを、私は目にしました。
私の父様は、私への愛故に、私を探し続けた理由が、私は皇帝陛下のこの大がかりな、婚礼の準備を見ていて、納得できたのです。
なんと有り難いことでしょうか。
シリピリー様は、明日、一人で馬車に乗り、出かけていくのです。
お相手のゴルド様は迎えに来ない。
ゴルド様はお世継ぎなので、ラーメ王国の国境で、待ち合わせをすることしか許可が出なかったそうです。
ラーメ王国まで、約一ヶ月かかります。
アメリア様の婚約式には、もう、この帝国にはいらっしゃいません。
シオンと手を繋ぎ、テーブルに移動していきます。
他の皇子達は、皆さん、地方に出ているようで、今日はいらっしゃいません。
帝国は広いので、治める地区に泊まりがけで行かれることはしょっちゅうです。
皆さんが集まる時は、何かの行事がある時くらいです。
明日のシリピリー様の出発は、どうやら、特別なことは行われないようです。
盗賊に狙われないように、極秘で出発されるのです。
皇女の結婚なのに、なんと寂しい事でしょう。
旅の途中に、何もなければいいのですけれど。
「さあ、皆の者、一緒に食べようぞ」と皇帝陛下が声を上げた。
「いただきます」と皆が声を揃えます。
朝食は、できる限り皆と一緒に食べる習慣があるそうです。
真冬の料理は、温かなスープに、パンも温められています。
今朝は鳥料理に、真冬なのに、生野菜もあります。
お庭の温室で、野菜が育てられているそうです。
お花の温室もあるので、シオンが赤いアネモネを持って来てくださいます。
もうすぐ、クリスマスが来るのに、こんなに寒い季節にお嫁に行かなくてもいいのに。
新年は、馬車の中です。
気候が安定した春まで、婚礼を待てなかったのだろうか?
雪が降る可能性もあり、移動は、路面が滑る可能性があるので、温かい季節での移動より時間がかかると言われておりました。
皇帝陛下は、時期を温かくなる春まで待つように言われましたが、わたしとシオンが結婚したのに、どうして許してはくれないの?と親子喧嘩になりラーメ王国と手紙の遣り取りで、この季節に出発となったのです。
足下が悪い季節なので、ラーメ王国はゴルド様がお迎えに上がることはできないと、文末に書かれていたそうです。
来るのはいつでも構わないが、お迎えはできないと言うことです。
ラーメ王国は、帝国の次に大きな国ではあるが、北の国でこの季節は、かなり冷え込むはずです。
わたしの記憶が正しければ、第一王子の上に、姫が二人いたと思います。
確か、年子で三人生まれて、第一王子は姫達に溺愛されていると学びました。
ゴルド様は、17歳で、お姉様達は18歳と19歳となります。
お嫁に行ったとは報せは来ていなかったと思います。
シリピリー様は、溺愛されたゴルド様の元に行って、幸せになれるかしらと心配になります。
王子は、第二王子が、まだ15歳頃だったと記憶しております。
かなりの秀才だと、噂に上がっておりました。
17歳のシリピリー様は、小姑がいる王家で、色々、我慢できるのでしょうか?
皇帝陛下も皇妃も結婚式には出席できないと言われておりました。
国まで遠く、帝国で何かあれば取り返しがつかないとおっしゃっていました。
親の務めは、シリピリー様が不自由しないように、護衛を多くするよりなかったのです。
食後の紅茶が配られて、シリピリー様とアメリア様が、喧嘩をなさっていらっしゃいます。
「早く、田舎へ行けばいいわ。この寒い時期に行く馬鹿は、お姉様だけだわ。クリスマスも新年の行事もなしよ。一人寂しく、馬車の中で震えていればいいのよ」
「アメリアの馬鹿」
パチンと頬を撃つ音が聞こえました。
シリピリー様は気が強いのです。
怒りで、手を上げることもあります。
「シリピリー、アメリアに謝りなさい。直ぐ手を上げる癖も直さず、嫁入りできるのか?」
「明日、旅立ちます。もう二度と、帝国に戻る事はないと思います。お父様、お母様に心配をかけることもありませんわ」
シリピリー様は、立ち上がると、ダイニングルームの中を走って出て行かれました。
今日と明日の朝しか、お話ができないのに、喧嘩別れは良くないわ。
けれど、わたしに何かできることはありません。
メイドが、冷たいおしぼりをアメリア様に渡しております。
「シリピリーは、あれでやっていけるのでしょうか?外はかなり冷えております。今からでも、婚礼の時期を遅らせた方がいいかと思いますが、護衛の騎士もメイド達も、かなり辛い旅になります」
「何度も、そう言っておるが、どうしてもシリピリーが聞かんのだ」
「この際、護衛も馬車も出さないと言ったらどうでしょうか?」
「その手があったか」
「シリピリーの我が儘で、護衛の者が具合を悪くする可能性が高いうえに、雪でも降っていたら立ち往生です。行くことも戻る事もできません」
シオンが皇帝陛下と話している。
わたしもシオンの意見に賛成だけれど、シリピリー様はかなり荒れるだろう。
わたしが学んだラーメ王国の事情などを考えると、シリピリー様はラーメ王国で、きっと孤立すると思うのだ。
ゴルド様の姉たちの名前までは忘れてしまったが、間違いなく、姉たちがシリピリー様をゴルド様に近づけさせない。
わたしはドゥオーモ王国で、第二夫人に夫なったペリオドス様を独り占めされたように。
最悪、触れあう事もできない可能性があることを考えた事はあるだろうか?
後で、シオンに話しておこう。
お茶を飲んで、カップを下ろすと、皇帝陛下が「ご馳走様」と声を上げた。
皆で「ご馳走様」と告げる。
シェフやメイド達が、頭を下げている。
皇帝陛下のこの習慣は、働く物に意欲を持たせて、食事に対して、命を戴いていると自覚させられる。
残す事は許されないと自覚する。
シオンが後を継いだ後も続けたい習慣だと思った。
「アナ、俺は父上とシリピリーの事で話しをしたい。部屋に戻ってくれるか?」
「わたしも一緒に行ってもいいでしょうか?何か考えが浮かぶかもしれません」
「それなら、一緒に来なさい。アメリアはどうする?」
「勝手にすれば、いいわ。お姉様は、頭に血が上ると、手が出てきますもの。全く、これからデートですのに、頬が腫れてしまったわ」
アメリア様は、頬を冷やしたまま、ダイニングルームの外に出て行った。
「では、場所を移動しよう」
皇帝陛下は皇妃様をエスコートして、歩いて行きます。
二人は、とても仲がいいのです。
仕事の分担もしっかりなさっています。
今は皇妃様に色々学んでいますが、わたしの勤めは、まるで諜者のようですわ。
貴族の間で交わされる噂や話題を集めます。
パーティーやお茶会でも、黙って微笑んでおいでになりますけれど、知りたい話題があるときは、それとなく言葉にして、後は情報収集ですわ。
記憶が得意なわたしは、皇妃様とお茶会に出て、貴族のお顔とお名前を覚えるのが、今の仕事ですわ。
家族の一覧から、勤めている者達のお顔やお名前まで皇妃様は、覚えていらっしゃいます。
何か不穏な動きがあれば、すぐに皇帝陛下にお知らせするのです。
わたしの部屋には、この帝国の貴族の写真が貼られた名簿が置かれています。
それを暗記するのが、今の仕事です。
皇妃様はお淑やかに見えるけれど、かなりの才女です。そして、とても美しいお姿をしていらっしゃいます。
さすがシオンの母上です。
皇帝陛下もシオンが歳を取ったようなお顔立ちと、逞しいお体をしていらっしゃいます。
脱いだら、きっとシオンのような筋肉があるのだと思います。
シオンに聞いたら、ペチンとおでこを指で弾かれました。
シオンは、他の男の裸を想像するなと怒ったのです。
シオンだって、他の女性の裸を想像することがあると思うけれど、『ない』と言い切りました。
なので、わたしはきちんと謝罪をして、それ以来、洋服の下の筋肉の状態を想像することを止めました。
わたしの心の中に、幼い頃に刻まれた医師になるという習慣のようなものがあるのではないかと思うのです。
人を観察することは、既に習慣ですから。
父様、母様、賢く生んでくださり感謝します。
場所を皇帝陛下の執務室に移動して、話し合った。
わたしは、その場で、わたしが想像した姉弟の関係性について、素早く話した。それから、ラーメ王国の噂の類いなど。言葉に出すのは恥ずかしい噂についても。
皇帝陛下も皇妃様もシオンも、無言になってしまったが、これは大切な事だと思ったのだ。
帰ろうとしても、馬車で一ヶ月もかかる遠い国へ嫁がせるのだから、よく考えた方がいいと思うのだ。
ラーメ王国では、迎えは行かないと言われている。
来るなら拒まないが、迎えには行かないと言われたと同義である。
寒い北国で、孤独になる可能性があるならば、まだこの縁談を破談にできる。
嫁を迎えに来ないならば、嫁にはやらぬと言えば、済むことだ。
これから、誰よりも大切にしてくれるならば、嫁に出すことも考えるが、大切にされない可能性があるのならば、この縁は切った方がいい。
帝国の皇女を嫁に欲しい国は、多くあるし、そもそも、皇帝陛下は他国に嫁に出すつもりはなかった。
それなら、帝国で嫁ぎ先を探してしまった方が、ずっと安心できる。
小姑が二人もいる状態で、夫婦生活が上手くいくはずもない。
弟を溺愛している姉の存在は、ゴルド様も姉には弱いであろう。
シリピリー様を守る前に、姉達を守る可能性は高い。
ゴルド様は、二度ほど、この宮殿を訪ねてこられたとか。それも、在学中であった。
卒業してからは、鳥が手紙を届けているとか。
直接会うことはなくなった。
学校を卒業して、もう一年以上経っているのに、一度の訪問もなく、その間に心変わりはされていないのだろうか?
卒業と同時に、この交際は終わりだと言えば良かったのだろう。
シリピリー様が、どうしてもお嫁に行きたいと言い出し、遠方故、手紙の遣り取りで、実際に皇帝陛下がラーメ王国に行った事はないという。
わたしは、ドゥオーモ王国にいた頃、大陸の国の情勢や輸出、輸入について調べていた。
そのついでに、国の家族構成なども自然に知る事になっていた。
国の全てをしていたので、噂の類いも、耳にして目にもしてきた。
働き者で、記憶力だけは抜群に良かったので、一度目にした物は忘れなかった。
恥ずかしかったけれど、わたしが知り得ている情報は、全て皇帝陛下に知らせた。
そして、決断は、皇帝陛下に委ねた。
頬を染めた皇妃様を落ち着かせて、皇帝陛下は、明日の出発は中止にした。
その代わりにラーメ王国に影を送る手筈をした。
王宮の様子を観察することが、目的だ。
結婚は延期と手紙を認め、影が届ける任務を得た。
まだシリピリー様には報せていないが、知った時の怒りがどれほどか。
アメリア様と大喧嘩になりそうなので、明日の朝、報せる予定でいると皇帝陛下は、決められた。
影は既に出発している。
10人送られ、暫くの間、ラーメ王国の宮殿の中で下働きや隠れて見張りをする者と分かれる。
報告はやはり鳥が使われる。
文字は暗号になり誰かが見ても分からないように細工されている。
「マリアナ、ギリギリだが助かった。これからも気になることがあれば、教えて欲しい」
皇帝陛下と皇妃様は、わたしに頭を下げてくださいました。
自分の娘の事ですもの、心配に決まっています。
「はい」
わたしはお辞儀をしたけれど、心の中では、ドキドキしていた。
わたしの告げ口で、婚礼が無効になれば、わたしはシリピリー様に恨まれる。
それは避けて欲しい。
人に恨まれるのは、やはりいい気持ちにはならない。
兄様に嫌われているだけでも、ストレスが溜まるのに、これ以上は避けたい物だ。
「父上、マリアナの事は極秘で」
「ああ、当然だ。決めるのは父である私だ」
「よろしくお願いします」
シオンも気にしてくれた。
「では、部屋に戻ります」
「ああ、助かった。茶も出さずに、済まなかった」
「いいえ、では」
シオンは皇帝陛下に一礼した。
わたしはお辞儀をした。
シオンの手がわたしの手を繋ぐ。
そのまま部屋の外に出た。
廊下から外が見えた。
なんと雪が降っていた。
「このまま積もるといいが」
「そうね」
フルリと体が震える。
かなり気温が下がっているようだ。
「アナ、部屋に行こう。風邪を引いてしまう」
「ええ、寒いわ」
「白ギツネのコートは、どうした?」
「食事の時には、コートは着ないわ。でもお部屋に戻ったら、着ようかしら」
「ああ、体は冷やすな」
「はい」
わたし達は、妊活をしている。
シオンに帝国を守れるほどの子供が必要だと言われて、子供ができなかったらどうしたらいいかと悩んだ。
子供ができなかったら、弟妹達がいると言われて、少しホッとしたけれど、できたら、シオンの子を産みたい。
食事も子ができやすい物が作られている。
「夫婦の部屋に暖炉があるだろう。あの部屋で過ごせばいい。ソファーを移動させよう」
「でも、ベッドがあるお部屋よ」
「抱き合うところを見せるわけではない。体は冷やすな。暖炉を使いなさい」
「分かったわ」
「部屋に戻ったら、少し家具を移動させよう」
シオンは優しく、わたしを最優先に考えてくれる。
わたしもシオンを大切にしたいと思っている。
あれほど痛かった行為は、徐々に慣れていき、今では楽しみになってきた。
シオンは、わたしの大好きな筋肉をいっぱい触らせてくれるし、わたしを貫く、逞しい象徴も触らせてくれます。
好奇心旺盛な、わたしはシオンの体の隅々まで、見せていただきました。
その代わり、シオンもわたしの体を隅々まで見てくるけれど、子供の頃のお医者さんごっこを大人になって、楽しんでいますの。
子供の頃のお医者さんごっこを思い出してから、母様の怒った顔と父様の困った顔も思い出しました。
わたしもお医者さんごっこの後に、父様と母様に叱られました。
『淑女たる者、殿方の前でドレスを脱いではいけません。況してや、体を触らせるなど、あってはなりません。マリアナが結婚をして、その相手と、初めて、肌を触れさせるのです。もう二度と、してはなりません』
わたしがシオンを唆した事が、分かっていたので、母様がシオンでも、駄目ですと、とてもたくさん叱られた事を思い出した。
とても微笑ましくて、とても嬉しくて、死ぬ寸前の母様のお顔から、いろんな表情のお顔を思い出して、今まで思い出せなかった父様のお顔も、ちゃんと思い出せますの。
やっぱりわたしは、相当、お転婆だったようでした。
両親のお顔は思い出せるようになりましたけれど、兄様のお顔も存在も、思い出せません。
兄様とは、ドゥオーモ王国の国王陛下の裁判でお目にかかって以来、ずっと会っておりません。
兄様は、わたしの事を心から嫌っておいでになるのでしょう。結婚式も来てくださいませんでしたし、それ以降も、皇帝陛下が何かと食事に誘ってくださいましたが、来てはくれません。なので、兄様の事は、あまり考えないようにしております。
何はさておき、両親の事を思い出せた事は、嬉しい事です。
母様、わたしはシオンと結婚しました。
お医者さんごっこの続きもしています。
結婚したから、もう怒ったりしませんよね?
シオンに抱かれながら、母様と父様に心の中で語りかける。
体の中に性を一杯出されて、わたしは今日も楽しく妊活をしています。
シオンの子なら、きっと立派な殿方になるはずです。
シオンのような立派な筋肉も、身につけるに違いがありません。
わたしは、どうしてか生まれてくる子は男の子のような気がしていますの。
まだ妊娠もしていないのに、不思議な事です。
朝まで抱きしめられて眠るのも大好きなのです。
目を覚ました時に、シオンがわたしを見ているのです。
『おはよう』と挨拶することも大好きです。初めは『おはようございます』でしたけれど、シオンが『おはよう』にしようと言ったので、今では朝の挨拶は『おはよう』になっています。
毎朝、シオンはメイドにわたしを預けると、自室に戻っていきます。
身支度を済ませて、わたしを迎えに来てくださいます。
一緒に食事に向かうのです。
「アクセレラシオン、マリアナ、おはよう」
「おはようございます」
二人で挨拶をすると、皇帝陛下と皇妃様が優しく微笑みます。
「アメリアの婚約披露パーティーが開かれる」
「おめでとうございます」
二人で皇帝陛下にお辞儀をして、ダイニングルームの中にいるはずのアメリア様を探す。
「アメリア、おめでとう」
先に見つけたシオンが、先に声をかけた。
「ありがとう。お姉様は皆に祝ってもらえないけれど、私は祝ってもらえるのよ」
「別に祝ってもらわなくても構わないわ。私の人生は、私が自分で考えて決めたんですもの」
アメリア様とシリピリー様は、並んで座っておいでになります。
シリピリー様は、明日、ラーメ王国に向かわれます。
帝国からは、結婚の準備の馬車が5台と護衛の騎士が50人ほどと専属メイドは10人ほど参ります。馬が60頭、嫁入り道具一式は最低限の物だけになったそうですが、それでも馬車一台分はあります。
途中で盗賊に遭遇する可能性があるので、護衛の騎士は、更に増えて、約100名がシリピリー様を送って行かれます。
帝国からシリピリー様をラーメ王国でお守りするための人選は、かなり慎重にされました。
家族が反対する者。
妻帯者などは、家族の許可が出ない者は排除され、まだ若い新人の騎士がずいぶん多く、ラーメ王国に渡ることになりました。
騎士達も専属メイドも、嫁入り道具の一つです。
帝国の騎士は、大勢いるそうですが、シリピリー様の護衛のために抜ける方も多く、今、帝国は騎士の募集を大々的にしています。
シリピリー様の為に、これほどの人を送り出すのは、前代未聞だとシオンは言っておりました。
ですが、シリピリー様は、これからラーメ王国で一人で過ごす事になるかもしれないので、皇帝陛下の愛情だとも言っておられた。
当のシリピリー様が、皇帝陛下の心遣いに気づいているのかは、分かりませんが、親の愛情と言うものを、私は目にしました。
私の父様は、私への愛故に、私を探し続けた理由が、私は皇帝陛下のこの大がかりな、婚礼の準備を見ていて、納得できたのです。
なんと有り難いことでしょうか。
シリピリー様は、明日、一人で馬車に乗り、出かけていくのです。
お相手のゴルド様は迎えに来ない。
ゴルド様はお世継ぎなので、ラーメ王国の国境で、待ち合わせをすることしか許可が出なかったそうです。
ラーメ王国まで、約一ヶ月かかります。
アメリア様の婚約式には、もう、この帝国にはいらっしゃいません。
シオンと手を繋ぎ、テーブルに移動していきます。
他の皇子達は、皆さん、地方に出ているようで、今日はいらっしゃいません。
帝国は広いので、治める地区に泊まりがけで行かれることはしょっちゅうです。
皆さんが集まる時は、何かの行事がある時くらいです。
明日のシリピリー様の出発は、どうやら、特別なことは行われないようです。
盗賊に狙われないように、極秘で出発されるのです。
皇女の結婚なのに、なんと寂しい事でしょう。
旅の途中に、何もなければいいのですけれど。
「さあ、皆の者、一緒に食べようぞ」と皇帝陛下が声を上げた。
「いただきます」と皆が声を揃えます。
朝食は、できる限り皆と一緒に食べる習慣があるそうです。
真冬の料理は、温かなスープに、パンも温められています。
今朝は鳥料理に、真冬なのに、生野菜もあります。
お庭の温室で、野菜が育てられているそうです。
お花の温室もあるので、シオンが赤いアネモネを持って来てくださいます。
もうすぐ、クリスマスが来るのに、こんなに寒い季節にお嫁に行かなくてもいいのに。
新年は、馬車の中です。
気候が安定した春まで、婚礼を待てなかったのだろうか?
雪が降る可能性もあり、移動は、路面が滑る可能性があるので、温かい季節での移動より時間がかかると言われておりました。
皇帝陛下は、時期を温かくなる春まで待つように言われましたが、わたしとシオンが結婚したのに、どうして許してはくれないの?と親子喧嘩になりラーメ王国と手紙の遣り取りで、この季節に出発となったのです。
足下が悪い季節なので、ラーメ王国はゴルド様がお迎えに上がることはできないと、文末に書かれていたそうです。
来るのはいつでも構わないが、お迎えはできないと言うことです。
ラーメ王国は、帝国の次に大きな国ではあるが、北の国でこの季節は、かなり冷え込むはずです。
わたしの記憶が正しければ、第一王子の上に、姫が二人いたと思います。
確か、年子で三人生まれて、第一王子は姫達に溺愛されていると学びました。
ゴルド様は、17歳で、お姉様達は18歳と19歳となります。
お嫁に行ったとは報せは来ていなかったと思います。
シリピリー様は、溺愛されたゴルド様の元に行って、幸せになれるかしらと心配になります。
王子は、第二王子が、まだ15歳頃だったと記憶しております。
かなりの秀才だと、噂に上がっておりました。
17歳のシリピリー様は、小姑がいる王家で、色々、我慢できるのでしょうか?
皇帝陛下も皇妃も結婚式には出席できないと言われておりました。
国まで遠く、帝国で何かあれば取り返しがつかないとおっしゃっていました。
親の務めは、シリピリー様が不自由しないように、護衛を多くするよりなかったのです。
食後の紅茶が配られて、シリピリー様とアメリア様が、喧嘩をなさっていらっしゃいます。
「早く、田舎へ行けばいいわ。この寒い時期に行く馬鹿は、お姉様だけだわ。クリスマスも新年の行事もなしよ。一人寂しく、馬車の中で震えていればいいのよ」
「アメリアの馬鹿」
パチンと頬を撃つ音が聞こえました。
シリピリー様は気が強いのです。
怒りで、手を上げることもあります。
「シリピリー、アメリアに謝りなさい。直ぐ手を上げる癖も直さず、嫁入りできるのか?」
「明日、旅立ちます。もう二度と、帝国に戻る事はないと思います。お父様、お母様に心配をかけることもありませんわ」
シリピリー様は、立ち上がると、ダイニングルームの中を走って出て行かれました。
今日と明日の朝しか、お話ができないのに、喧嘩別れは良くないわ。
けれど、わたしに何かできることはありません。
メイドが、冷たいおしぼりをアメリア様に渡しております。
「シリピリーは、あれでやっていけるのでしょうか?外はかなり冷えております。今からでも、婚礼の時期を遅らせた方がいいかと思いますが、護衛の騎士もメイド達も、かなり辛い旅になります」
「何度も、そう言っておるが、どうしてもシリピリーが聞かんのだ」
「この際、護衛も馬車も出さないと言ったらどうでしょうか?」
「その手があったか」
「シリピリーの我が儘で、護衛の者が具合を悪くする可能性が高いうえに、雪でも降っていたら立ち往生です。行くことも戻る事もできません」
シオンが皇帝陛下と話している。
わたしもシオンの意見に賛成だけれど、シリピリー様はかなり荒れるだろう。
わたしが学んだラーメ王国の事情などを考えると、シリピリー様はラーメ王国で、きっと孤立すると思うのだ。
ゴルド様の姉たちの名前までは忘れてしまったが、間違いなく、姉たちがシリピリー様をゴルド様に近づけさせない。
わたしはドゥオーモ王国で、第二夫人に夫なったペリオドス様を独り占めされたように。
最悪、触れあう事もできない可能性があることを考えた事はあるだろうか?
後で、シオンに話しておこう。
お茶を飲んで、カップを下ろすと、皇帝陛下が「ご馳走様」と声を上げた。
皆で「ご馳走様」と告げる。
シェフやメイド達が、頭を下げている。
皇帝陛下のこの習慣は、働く物に意欲を持たせて、食事に対して、命を戴いていると自覚させられる。
残す事は許されないと自覚する。
シオンが後を継いだ後も続けたい習慣だと思った。
「アナ、俺は父上とシリピリーの事で話しをしたい。部屋に戻ってくれるか?」
「わたしも一緒に行ってもいいでしょうか?何か考えが浮かぶかもしれません」
「それなら、一緒に来なさい。アメリアはどうする?」
「勝手にすれば、いいわ。お姉様は、頭に血が上ると、手が出てきますもの。全く、これからデートですのに、頬が腫れてしまったわ」
アメリア様は、頬を冷やしたまま、ダイニングルームの外に出て行った。
「では、場所を移動しよう」
皇帝陛下は皇妃様をエスコートして、歩いて行きます。
二人は、とても仲がいいのです。
仕事の分担もしっかりなさっています。
今は皇妃様に色々学んでいますが、わたしの勤めは、まるで諜者のようですわ。
貴族の間で交わされる噂や話題を集めます。
パーティーやお茶会でも、黙って微笑んでおいでになりますけれど、知りたい話題があるときは、それとなく言葉にして、後は情報収集ですわ。
記憶が得意なわたしは、皇妃様とお茶会に出て、貴族のお顔とお名前を覚えるのが、今の仕事ですわ。
家族の一覧から、勤めている者達のお顔やお名前まで皇妃様は、覚えていらっしゃいます。
何か不穏な動きがあれば、すぐに皇帝陛下にお知らせするのです。
わたしの部屋には、この帝国の貴族の写真が貼られた名簿が置かれています。
それを暗記するのが、今の仕事です。
皇妃様はお淑やかに見えるけれど、かなりの才女です。そして、とても美しいお姿をしていらっしゃいます。
さすがシオンの母上です。
皇帝陛下もシオンが歳を取ったようなお顔立ちと、逞しいお体をしていらっしゃいます。
脱いだら、きっとシオンのような筋肉があるのだと思います。
シオンに聞いたら、ペチンとおでこを指で弾かれました。
シオンは、他の男の裸を想像するなと怒ったのです。
シオンだって、他の女性の裸を想像することがあると思うけれど、『ない』と言い切りました。
なので、わたしはきちんと謝罪をして、それ以来、洋服の下の筋肉の状態を想像することを止めました。
わたしの心の中に、幼い頃に刻まれた医師になるという習慣のようなものがあるのではないかと思うのです。
人を観察することは、既に習慣ですから。
父様、母様、賢く生んでくださり感謝します。
場所を皇帝陛下の執務室に移動して、話し合った。
わたしは、その場で、わたしが想像した姉弟の関係性について、素早く話した。それから、ラーメ王国の噂の類いなど。言葉に出すのは恥ずかしい噂についても。
皇帝陛下も皇妃様もシオンも、無言になってしまったが、これは大切な事だと思ったのだ。
帰ろうとしても、馬車で一ヶ月もかかる遠い国へ嫁がせるのだから、よく考えた方がいいと思うのだ。
ラーメ王国では、迎えは行かないと言われている。
来るなら拒まないが、迎えには行かないと言われたと同義である。
寒い北国で、孤独になる可能性があるならば、まだこの縁談を破談にできる。
嫁を迎えに来ないならば、嫁にはやらぬと言えば、済むことだ。
これから、誰よりも大切にしてくれるならば、嫁に出すことも考えるが、大切にされない可能性があるのならば、この縁は切った方がいい。
帝国の皇女を嫁に欲しい国は、多くあるし、そもそも、皇帝陛下は他国に嫁に出すつもりはなかった。
それなら、帝国で嫁ぎ先を探してしまった方が、ずっと安心できる。
小姑が二人もいる状態で、夫婦生活が上手くいくはずもない。
弟を溺愛している姉の存在は、ゴルド様も姉には弱いであろう。
シリピリー様を守る前に、姉達を守る可能性は高い。
ゴルド様は、二度ほど、この宮殿を訪ねてこられたとか。それも、在学中であった。
卒業してからは、鳥が手紙を届けているとか。
直接会うことはなくなった。
学校を卒業して、もう一年以上経っているのに、一度の訪問もなく、その間に心変わりはされていないのだろうか?
卒業と同時に、この交際は終わりだと言えば良かったのだろう。
シリピリー様が、どうしてもお嫁に行きたいと言い出し、遠方故、手紙の遣り取りで、実際に皇帝陛下がラーメ王国に行った事はないという。
わたしは、ドゥオーモ王国にいた頃、大陸の国の情勢や輸出、輸入について調べていた。
そのついでに、国の家族構成なども自然に知る事になっていた。
国の全てをしていたので、噂の類いも、耳にして目にもしてきた。
働き者で、記憶力だけは抜群に良かったので、一度目にした物は忘れなかった。
恥ずかしかったけれど、わたしが知り得ている情報は、全て皇帝陛下に知らせた。
そして、決断は、皇帝陛下に委ねた。
頬を染めた皇妃様を落ち着かせて、皇帝陛下は、明日の出発は中止にした。
その代わりにラーメ王国に影を送る手筈をした。
王宮の様子を観察することが、目的だ。
結婚は延期と手紙を認め、影が届ける任務を得た。
まだシリピリー様には報せていないが、知った時の怒りがどれほどか。
アメリア様と大喧嘩になりそうなので、明日の朝、報せる予定でいると皇帝陛下は、決められた。
影は既に出発している。
10人送られ、暫くの間、ラーメ王国の宮殿の中で下働きや隠れて見張りをする者と分かれる。
報告はやはり鳥が使われる。
文字は暗号になり誰かが見ても分からないように細工されている。
「マリアナ、ギリギリだが助かった。これからも気になることがあれば、教えて欲しい」
皇帝陛下と皇妃様は、わたしに頭を下げてくださいました。
自分の娘の事ですもの、心配に決まっています。
「はい」
わたしはお辞儀をしたけれど、心の中では、ドキドキしていた。
わたしの告げ口で、婚礼が無効になれば、わたしはシリピリー様に恨まれる。
それは避けて欲しい。
人に恨まれるのは、やはりいい気持ちにはならない。
兄様に嫌われているだけでも、ストレスが溜まるのに、これ以上は避けたい物だ。
「父上、マリアナの事は極秘で」
「ああ、当然だ。決めるのは父である私だ」
「よろしくお願いします」
シオンも気にしてくれた。
「では、部屋に戻ります」
「ああ、助かった。茶も出さずに、済まなかった」
「いいえ、では」
シオンは皇帝陛下に一礼した。
わたしはお辞儀をした。
シオンの手がわたしの手を繋ぐ。
そのまま部屋の外に出た。
廊下から外が見えた。
なんと雪が降っていた。
「このまま積もるといいが」
「そうね」
フルリと体が震える。
かなり気温が下がっているようだ。
「アナ、部屋に行こう。風邪を引いてしまう」
「ええ、寒いわ」
「白ギツネのコートは、どうした?」
「食事の時には、コートは着ないわ。でもお部屋に戻ったら、着ようかしら」
「ああ、体は冷やすな」
「はい」
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子供ができなかったら、弟妹達がいると言われて、少しホッとしたけれど、できたら、シオンの子を産みたい。
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「抱き合うところを見せるわけではない。体は冷やすな。暖炉を使いなさい」
「分かったわ」
「部屋に戻ったら、少し家具を移動させよう」
シオンは優しく、わたしを最優先に考えてくれる。
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