唯一の恋

綾月百花   

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「今日は無事に一周忌を迎えることができました。重森のおじさんもおばさんも、来てくださりありがとうございました」
 家長である長男の響介(24歳)が丁寧に頭を下げる。
 その隣で奈都(18歳)も頭を下げる。
「ほら、亜稀(17歳)もお礼して」
 奈都に言われて、亜稀は頭を下げる。
「あらあらいいのよ。おじさんやおばさんに気を遣わなくても」
 重森のおばさんが、明るく笑っている。
「それにしても、奈都くんは綾子さんに似てるのかな、むさ苦しい男所帯の中で花が咲いているみたいだ」
「奈都がしっかりしているから、僕たち両親が急に亡くなったのに、頑張っていられるんですよ」
 響介が奈都の頭を撫でる。
 響介はとにかく奈都に甘い。
「響介くんも24歳か。そろそろいい人でもできたかな?」
「今はそういう気持ちになれません」
「気持ちが落ち着いた頃に、いい縁談でも持ってきてやろう」
「お気持ちだけで十分ですから」
 響介は丁寧に頭を下げた。
「また寄らせてもらうわ。何かあったら、何でも言ってきてね」
 重森のおばさんが、柔らかく微笑んで二人は、玄関から出て行った。
 フーっと三人でため息をついて、法事の行われた仏間に移動する。
 両親が亡くなって1年。
 反対車線から飛び出してきた車と正面衝突をして、二人とも即死だった。あまりに呆気なくて残された兄弟たちは呆然としたが、一番泣いていた奈都が将来を考えてバイトを始めた。
三人だけの生活では無駄だからと言いだし、家にいた家政婦も辞めてもらい、節約を始めた。
 慰謝料と保険金だけでも大学も出られるし生活もできるが、それでも食べるために働かないと生きていけないと言い出して、二人とも懸命に働く奈都に母の姿を見たような気持ちになった。
 メンタルに影響されやすい響介の仕事も支えられ、どうにか仕事を続けることができた。
 亜稀はまだ旅行から帰ってないだけだと言い張り、両親の死を受け入れたのかどうかわからないが、それでも三人の生活に慣れていった。
「僕は台所の片付けするから、テーブルと座布団片付けておいてね」
 奈都が仕切って、台所から布巾を持ってきて、テーブルを綺麗に拭いた。
「響ちゃんと亜稀、掃除機もかけといてよ」
 奈都は仏間から出て行くと台所に立った。
 洗い物を片付けながら、奈都は涙ぐむ。
 本当は一番、泣き虫で怖がりなのだ。バイトに出たのも、兄弟の中にいたらずっと泣き暮れそうで、逃げるように家から出ただけだ。
 響介が言うようにしっかりしているわけではない。
 台所を片付けていると、仏間から喧嘩をしながら片付けている二人の声が聞こえる。
 三人でいるから、生きていける。
 奈都にとって、兄弟はなによりも大切だった。
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